面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

目からウロコ…

2008年02月06日 | ニュースから
正社員のクビを切りやすくする改革は受け入れられるか【辻広雅文 プリズム+one】(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース


辻広雅文氏の論には、目からウロコが落ちた。
この論にあるような発想は持ち得なかった。
それは自分自身が正社員であり、自分の身分を脅かすような発想は、微塵も持てなかったからだ。

「虐げられた人びと、ワーキングプアたちを救えという声は多く聞こえるが、正社員の雇用に手をつけるという視点は、世の中のどこにもない。それは、メデイアを含めて影響力のある人びとの多くが正社員という既得権者であるからだ。」
というのは、正にその通り。
様々な人々が既得権益に固執する醜さに辟易することがあるくせに、自分自身が実は既得権益に守られているという発想は無かった。
既得権益という鎧を身にまとい、
「ワーキング・プアなんていうイヤな言葉が生まれる日本に誰がした!?」
と問うても、ただ滑稽なだけであることには思いが至らなかった。

正社員を非正社員にしやすくする法律が施行されたとき、果たして自分は正社員でいられ続けるのか?
改めて自分の来し方を振り返り、行く末を見定めなければならない。
自分が“労働市場”に放出されたとき、“武器”となるものはあるのだろうか?

「今日本に最も必要な改革は、実は最も困難な改革でもある。自分自身が抵抗勢力であることを見つめ、まず、議論を起こしたい。」
今の自分の“市場価値”を評価したとき、“抵抗勢力”から抜け出す自信はあるか…?


「歓喜の歌」

2008年02月06日 | 映画
年の暮れ、12月30日の朝。
とある町の文化会館に勤務する飯塚主任(小林薫)は、1本の電話を受ける。
それは、大晦日の夜にコンサートを予定している「みたまコーラスガールズ」からの、確認の電話だった。
その横で部下の加藤(伊藤淳史)が青くなっていた。
大晦日には毎年恒例のコンサートがあり、今年もその主催元である「みたまレディースコーラス」の予約を受けていたからだ。
なんと、ダブルブッキング!
「どうせオバさんたちの暇つぶしだから大丈夫だろう」と、お気楽に構える飯塚主任だったが、交渉の席についた両グループは、お互い一歩も譲らない。
なんとか時間をずらして調整してもらうよう、「みたまレディースコーラス」にお願いに行くと、なんとメンバーに市長の夫人がいて、市長から圧力がかかってくる。
そんな飯塚主任に、更に借金取りと離婚を迫る妻が追ってきて…

本庁の土木課から半年前の春の定期異動で“飛ばされてきた”飯塚主任。
ひたすら無責任でお気楽なお調子者。
ダブルブッキングも部下である加藤のせいと逃げ腰で、当事者意識は皆無。
そんな典型的なダメ公務員を小林薫が好演。
つかみどころがなく、頼りなく、とぼけた風情でダメぶりをさらけ出す役が、ピタリと寸分狂わぬ適役としてハマっている。
彼にこんなにコメディアンの素養があるとは思わなかった。

ダメダメぶりは仕事だけでなく、私生活もボロボロ。
一時期、行きつけのスナックで外人ホステスに入れあげ、溜まりに溜まったツケが200万円。
そして、愛想を尽かした妻から三行半を突きつけられ、正に窮地に追い込まれていく。

とことんダメっぷりを発揮する彼はしかし、ダブルブッキングさせた「みたまコーラスガールズ」のメンバー達の、日々懸命に生きながら時間をやりくりして必死にコーラスを続けている様子に、徐々に心を動かされていく。

ラスト近く、離婚を突きつけていた妻が彼を助けることになったとき、
「これからは心を入れ替えます」
とボロボロ泣きじゃくって妻に懇願する場面では、何だか身につまされる。
自分の中にもある“ダメダメぶり”を見せられ、反省させられている気分になるのだ…。
男なら誰しも、こんなダメダメを心の中に“飼い”ながら生きていやしないか?
「誰しも」は語弊があるだろうか…?
少なくとも、女性よりも男の方が、現実から逃げたくて、しょっちゅうダメダメと格闘しているとは思うのだが。

現実逃避的で浮ついている男の弱さと、現実にしっかり立ち向かい必死で生きる女性の強さを見事に活写した物語を創作した立川志の輔は、東西随一の新作落語作家である。
改めてその才能の豊かさに感服した。


歓喜の歌
2007年/日本  監督・脚本:松岡錠司
出演:小林薫、安田成美、伊藤淳史、由紀さおり、浅田美代子