テレビで度々放映されるが、その度につい観てしまう映画がある。
「プラダを着た悪魔」もそのひとつ。
今回もテレビの映画番組で放映されていたので、途中からながら思わず見入ってしまい、久しぶりにまた観てしまった。
公開当時に劇場で観た作品ではあるが、何度観ても飽きない。
世界的に有名なファッション誌の編集部で、「プラダを着た悪魔」と呼ばれる女性の鬼編集長に仕えるジャーナリスト志望の女性アシスタントの奮闘を描き、ファッション業界が舞台だけに劇中で用いられる華麗なブランド品の数々も注目されている。
しかし何よりもこの作品を通して心に響くのは、「仕事とは?」「働くとは?」という点についての様々な示唆である。
オシャレに全く興味が無く、誰もが憧れる一流ファッション誌「ランウェイ」の編集部に渋々入ったアンディは、ファッション業界を軽蔑するような意識を持ったまま働く。
それでも「人を潰す」とまで言われる鬼編集長からの高度な要求に懸命に応えるが、早々に失望の言葉を投げかけられ、ミランダの右腕を務めるファッション・ディレクターのナイジェルにボヤく。
しかしそんなアンディに、ナイジェルは彼女の甘さを指摘する。
「あなたの代わりは5分もあれば見つかる。」
そして一流ファッション誌としての「ランウェイ」がどのような存在であるか、自分達の仕事が世界中の人々に夢を与え、その人生を大きく動かすものであるかを問わず語りに話していく。
ここでアンディは何かに気づき、自分の意識のあり方を変える。
まずは服装もファッショナブルなものを選んで身にまとって周囲が驚くほどの大変身を遂げ、ミランダの要求にも着実に応えるだけでなく、“先回り”をした対応を重ねて信頼を勝ち取っていくのである。
しかしその一方で、生活のほとんどをミランダの対応に費やす彼女のプライベートは“壊れていく”。
友人達との距離は離れ、同棲していた恋人のネイトとも破局を迎える。
ミランダの信望を得たアンディは、彼女の指名でパリ・コレクションへの出張に旅立つ。
これまでに経験したことのない、きらびやかな世界のファッションの最先端に魅了されたアンディだったが、そこでミランダが「ランウェイ」編集部から更迭される計画があることを知り、懸命に彼女にそのことを伝えようとする…
「『ランウェイ』編集部は自分の居るべき場所ではない」と思っているアンディには、ミランダの要求に必死に応えることはできても、“そこまで”でしかない。
「ジャーナリストになりたいわけで、ファッション業界で仕事したいわけじゃない」という思いが邪魔をして、自分が全うすべき仕事そのものに対して、真剣に取り組んでいるとは言えないのである。
しかしナイジェルの話から、「自分が与えられている仕事」の重要さ・素晴らしさに気づいたアンディは一念発起し、「仕事」を真正面から受け止め、その中へ自ら飛び込んでいく覚悟を決める。
そうして仕事に対して真摯に取り組んだからこそ、発売前のハリー・ポッターの原稿を手に入れるという不可能なミッションを可能にしただけでなく、製本してミランダの娘たちの元へ送り届けたうえで予備の冊子までも用意し、ミランダに自分を認めさせることができたのだ。
ミランダの命令は過酷を極めるもので、それに応えるだけでも相当の能力の高さを必要とする。
そんな上司の下に付くことはメッタに無いが、単純に仕事において指示や要望を受けた場合に、
「相手が何を欲しているかを考え、自分で判断して行動する」
ということは、任務を全うするうえでの基本であり、ミッション成功のために最も重要なことである。
それはなにもミランダの下にいるからだけでなく、どんな職場でどんな仕事に就こうとも変わらない、普遍の事柄だ。
そして、仕事に真剣に取り組まずして、目の前のことに対して不平・不満だけを口にしていても何も始まらない。
ことに、学生生活から社会人となったときは、最初はたとえどんな仕事であっても、まずはその仕事に真摯に取り組み、失敗したり成功したり、あらゆる経験を積むことで初めて見えてくるものがあり、スキルが身に付くというもの。
まずはとにかく、与えられた業務・任務に対して一人前になってこそ、言うべきことを真っ当に言えるようになるのである。
そうすれば、自分の身の振り方についても具体的に考えられるようにもなり、ただ今の仕事や職場がイヤだというだけの転職とは成功率が格段に違うものにもなる。
地に足をつけて仕事に取り組み、実績を残すことこそ、どんな状況でも通用する人間になる第一歩だ。
ミランダが贈った言葉が、それを表している。
「今までのアシスタントの中で最も失望させられた。だが、雇わなければバカ。」
そして、自分に対して後ろ足で砂をかけるようにして去っていった者に対しても正当に評価を下すミランダこそ、仕事人の鑑であり、仕えるに値する上司の見本である。
「プラダを着た悪魔」
2006年/アメリカ 監督:デイヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グルニアー
「プラダを着た悪魔」もそのひとつ。
今回もテレビの映画番組で放映されていたので、途中からながら思わず見入ってしまい、久しぶりにまた観てしまった。
公開当時に劇場で観た作品ではあるが、何度観ても飽きない。
世界的に有名なファッション誌の編集部で、「プラダを着た悪魔」と呼ばれる女性の鬼編集長に仕えるジャーナリスト志望の女性アシスタントの奮闘を描き、ファッション業界が舞台だけに劇中で用いられる華麗なブランド品の数々も注目されている。
しかし何よりもこの作品を通して心に響くのは、「仕事とは?」「働くとは?」という点についての様々な示唆である。
オシャレに全く興味が無く、誰もが憧れる一流ファッション誌「ランウェイ」の編集部に渋々入ったアンディは、ファッション業界を軽蔑するような意識を持ったまま働く。
それでも「人を潰す」とまで言われる鬼編集長からの高度な要求に懸命に応えるが、早々に失望の言葉を投げかけられ、ミランダの右腕を務めるファッション・ディレクターのナイジェルにボヤく。
しかしそんなアンディに、ナイジェルは彼女の甘さを指摘する。
「あなたの代わりは5分もあれば見つかる。」
そして一流ファッション誌としての「ランウェイ」がどのような存在であるか、自分達の仕事が世界中の人々に夢を与え、その人生を大きく動かすものであるかを問わず語りに話していく。
ここでアンディは何かに気づき、自分の意識のあり方を変える。
まずは服装もファッショナブルなものを選んで身にまとって周囲が驚くほどの大変身を遂げ、ミランダの要求にも着実に応えるだけでなく、“先回り”をした対応を重ねて信頼を勝ち取っていくのである。
しかしその一方で、生活のほとんどをミランダの対応に費やす彼女のプライベートは“壊れていく”。
友人達との距離は離れ、同棲していた恋人のネイトとも破局を迎える。
ミランダの信望を得たアンディは、彼女の指名でパリ・コレクションへの出張に旅立つ。
これまでに経験したことのない、きらびやかな世界のファッションの最先端に魅了されたアンディだったが、そこでミランダが「ランウェイ」編集部から更迭される計画があることを知り、懸命に彼女にそのことを伝えようとする…
「『ランウェイ』編集部は自分の居るべき場所ではない」と思っているアンディには、ミランダの要求に必死に応えることはできても、“そこまで”でしかない。
「ジャーナリストになりたいわけで、ファッション業界で仕事したいわけじゃない」という思いが邪魔をして、自分が全うすべき仕事そのものに対して、真剣に取り組んでいるとは言えないのである。
しかしナイジェルの話から、「自分が与えられている仕事」の重要さ・素晴らしさに気づいたアンディは一念発起し、「仕事」を真正面から受け止め、その中へ自ら飛び込んでいく覚悟を決める。
そうして仕事に対して真摯に取り組んだからこそ、発売前のハリー・ポッターの原稿を手に入れるという不可能なミッションを可能にしただけでなく、製本してミランダの娘たちの元へ送り届けたうえで予備の冊子までも用意し、ミランダに自分を認めさせることができたのだ。
ミランダの命令は過酷を極めるもので、それに応えるだけでも相当の能力の高さを必要とする。
そんな上司の下に付くことはメッタに無いが、単純に仕事において指示や要望を受けた場合に、
「相手が何を欲しているかを考え、自分で判断して行動する」
ということは、任務を全うするうえでの基本であり、ミッション成功のために最も重要なことである。
それはなにもミランダの下にいるからだけでなく、どんな職場でどんな仕事に就こうとも変わらない、普遍の事柄だ。
そして、仕事に真剣に取り組まずして、目の前のことに対して不平・不満だけを口にしていても何も始まらない。
ことに、学生生活から社会人となったときは、最初はたとえどんな仕事であっても、まずはその仕事に真摯に取り組み、失敗したり成功したり、あらゆる経験を積むことで初めて見えてくるものがあり、スキルが身に付くというもの。
まずはとにかく、与えられた業務・任務に対して一人前になってこそ、言うべきことを真っ当に言えるようになるのである。
そうすれば、自分の身の振り方についても具体的に考えられるようにもなり、ただ今の仕事や職場がイヤだというだけの転職とは成功率が格段に違うものにもなる。
地に足をつけて仕事に取り組み、実績を残すことこそ、どんな状況でも通用する人間になる第一歩だ。
ミランダが贈った言葉が、それを表している。
「今までのアシスタントの中で最も失望させられた。だが、雇わなければバカ。」
そして、自分に対して後ろ足で砂をかけるようにして去っていった者に対しても正当に評価を下すミランダこそ、仕事人の鑑であり、仕えるに値する上司の見本である。
「プラダを着た悪魔」
2006年/アメリカ 監督:デイヴィッド・フランケル
出演:メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ、エイドリアン・グルニアー