面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」

2011年02月08日 | 映画
スティーグ・ラーソンのベストセラーミステリー『ミレニアム』3部作、いよいよ完結!


ザラとの対決で瀕死の重傷を負ったリスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)は、ミカエル(ミカエル・ニュークヴィスト)に救出されて一命を取りとめ、病院に収容されていた。
同じ病院に収容された“宿敵”ザラは、不敵な笑いを浮かべながら謀議の中心にいた。
ザラとリスベットの一件を知った、政府公安警察にある秘密組織・特別分析班の元班長であるグルベが、班のメンバーを招集して回復したザラと接触し、対策を練っていたのである。

事件を通して自分たちの秘密が発覚する危険を恐れた“班”のメンバーたちは、関係者の抹殺を企てる。
ミカエルにも魔の手が迫るが、秘密組織を壊滅するために組織された公安警察内のチームとタッグを組み、“班”との対決姿勢を整える。
リスベットの過去を封印し、秘密を守ろうと躍起になる巨大組織と、リスベット、ミカエルたちの壮絶な攻防が始まった…


殺人の容疑で裁かれるリスベットに対してミカエルは、弁護士である自分の妹を弁護人に立てて彼女をサポートする。
そして自身が発行人を務める社会派雑誌「ミレニアム」のメンバーや、公安警察の特別捜索チームと共に真相を究明し、陰謀を暴いていく。
病院のベッドで動けず、回復後は収監されて行動の自由が奪われた“眠れる女”リスベットを守るため、“騎士団”を結成して巨大な悪に立ち向かっていくミカエルの姿は、正に“騎士”そのもの。
大して見映えのよくない中年男だが、ちょっとカッコよく見えてしまうから不思議だ。

様々な真実が明らかとなり、いくつかの事件がつながっていく中、リスベットは法廷で最後の対決の時を迎える。
自分が裁かれる裁判に、髪の毛を逆立て、鋲と黒革のパンク・ファッションに身を包んで現れるリスベットは、鍛え上げた強靭な“体力”ではなく、ずば抜けて明晰な“知力”をもって相手を打ちのめす。
第1章、第2章を通して、心の奥底に澱のように溜まっていたモヤモヤが一気に晴れていくクライマックスは、思わず快哉を叫びたくなるほど痛快極まりない!

なお、最後の最後にリスベットが再びピンチを迎えるのだが、その場面もまた、より深い安らぎへのSTEPとなることを付け加えておく。

「ミレニアム」3部作が、全体を通してどことなく暗く重苦しい雰囲気が漂うのは、人を拒絶するリスベットのキャラクターによるが、最後までその姿勢が崩れないことで彼女の強さが引き立つ。
しかし本作では、これまで決して感情を表すことのなかった、特に喜びの表情を見せることの無かったリスベットが、少しだけ頬をゆがめる表情を見せる。
思わずこちらの頬も緩んでしまうのだが、ダークでクールなヒロインには、微妙に頬が緩む程度の笑顔がふさわしい。


実にオーソドックスな大団円ではあるが、観終わったときの爽快感が心地よすぎるサスペンスの傑作・最終章!


ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
2009年/スウェーデン=デンマーク=ドイツ  監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:ノオミ・ラパス、ミカエル・ニュークヴィスト、レナ・エンドレ、アニカ・ハリン、ペーテル・アンデション、パール・オスカーソン、ヤコブ・エリクソン

「ミレニアム2 火と戯れる女」

2011年02月07日 | 映画
小柄で華奢な体格で背中一面にタトゥーを入れ、ピアスを施した外見に無愛想極まりない態度ながら、凄まじく明晰な頭脳と映像記憶能力と鍛え抜かれた運動能力を持つ天才ハッカー、リスベット・サランデルの活躍を描く、スティーグ・ラーソンのベストセラーミステリー『ミレニアム』3部作の映画化・第2章。


少女売春の取材を進めていた社会派雑誌ミレニアム」の記者2人が惨殺された。
現場で、リスベット(ノオミ・ラパス)の指紋が付いた拳銃が発見される。
その後、彼女の後見人も射殺死体で発見され、3人の人間を殺した殺人容疑を掛けられてしまう。
リスベットは、捜査の網をかいくぐるべく身を隠しながら、独自に調査を進めた。
一方、彼女と共に富豪ヴァンゲル家の少女失踪事件を解決した「ミレニアム」の発行人ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)は彼女の無実を確信し、独自の方法で調査を始めながら、事件以消息を絶っていた彼女との接触を図る。
自分とも必要最小限にしかコミュニケーションを取ろうとはしないリスベットだが、彼は彼女の能力を高く評価する良き理解者だった。

真相に迫っていくリスベットの前に、謎の殺し屋が現れる。
身長2メートルあまりの屈強な肉体と、痛みを感じない特異体質を武器に、邪魔になるものはことごとく“排除”しながら、執拗にリスベットを狙う。
そしてミカエルは、少女買春の顧客リストから、ザラという男をあぶりだした。
そこから彼は、数十年前に公安警察内部に存在した特殊機関と強大な権力が、事件の背後に隠れていることを知る…


普通に言葉を交わせないほど、他人に対して強烈な不信感を抱くリスベットが、なぜそうなってしまったのか。
たまたま巻き込まれてしまった殺人事件をきっかけに、自らの忌まわしい過去と向き合い、巨大な陰謀に立ち向かうことになる。
全編に張り巡らされた伏線と壮大な仕掛けで、よりミステリー色の強い本作は、灰色に曇る冬の空のように、重く寒々とした雰囲気を漂わせる。

感情を露わにすることなく、相手から受けるパンチやキックなどの攻撃はおろか、スタンガンさえ効かない“謎の殺し屋”はまるでゾンビのようで、他の映画でも見たことのないような不気味さを漂わせる。
リスベットとザラの関係、ミカエルが突き止めたザラの犯罪組織と不穏な動きを見せる官僚達の謎など、物語が進むに連れて驚愕の事実が次々と明らかになり、スクリーンから目が離せない。
クライマックスで繰り広げられる“死闘”に思わず息を呑み、全身に力が入って緊張が極限に達したところで登場するミカエルに安堵するが、リスベットと共にボロボロになった気分に襲われた。


脅威の生命力で深手を負いながらも再び立ち上がるリスベットの姿は、応援せずにはいられない!
その勇姿にホセ・メンドーサに対峙する矢吹ジョーを彷彿とさせるのは自分だけか!?
(自分だけだろう)

第3章の結末を観ないことには気分が晴れない心持になる、“to be continued”ながらも上質のサスペンス。


ミレニアム2 火と戯れる女
2009年/スウェーデン=デンマーク=ドイツ  監督:ダニエル・アルフレッドソン
出演:ノオミ・ラパス、ミカエル・ニュークヴィスト、レナ・エンドレ、ペーテル・アンデション、パール・オスカーソン、アニカ・ハリン、パオロ・ロバート、ヤスミン・ガービ、ヤコブ・エリクソン、アレクサンドラ・エイゼンシュテイン、ニクラス・ユールストレム、ラルフ・カールソン、ハンス・クリスチャン・チューリン

「ジーン・ワルツ」

2011年02月06日 | 映画
帝華大学病院・産婦人科医にして帝華大学医学部助教でもある曾根崎理恵(菅野美穂)。
大学で講義を受け持つ彼女は、時に体外人工受精や代理母出産の必要性を説く。
官庁との関係が深い、上司にあたる屋敷教授(西村雅彦)からは“要注意人物”とみなされ、講義を途中で止められることも。
大学当局からは煙たがられる存在となっている彼女を、准教授・清川吾郎(田辺誠一)は複雑な思いで見守っていた。

理恵と吾郎は、かつて産科医院・マリアクリニックで、院長である三枝茉莉亜(浅丘ルリ子)の一人息子・久広(大森南朋)と共に、三人で医学を学んでいた。
しかし後に医院は、久広が医療過誤により逮捕されるという大事件に見舞われ、更には茉莉亜も末期ガンに蝕まれたため、近く閉院する予定になっていたのだった。
理恵は、帝華大学に勤めながらマリアクリニックの院長代理として、医院に通う4人の妊婦を見守っていた。
身ごもった胎児が“無脳症”であると判明した27歳の甘利みね子(白石美帆)、未婚で妊娠し、安易な中絶を望む20歳の青井ユミ(桐谷美玲)、長年にわたる不妊治療の末、ようやく悲願の妊娠をした39歳の荒木浩子(南果歩)、顕微授精により双子を妊娠している55歳の山咲みどり(風吹ジュン)。
そんな理恵を、ジャーナリストの田中美紀(片瀬那奈)が頻繁に訪れていた。

ある日、ニュース番組で不妊治療や代理母出産についてインタビューを受ける理恵の姿が映し出され、帝華大学は大騒ぎに。
しかしそれは、彼女が密かに進めてきたある計画が、実現へと向かう序章に過ぎなかった…


「チーム・バチスタの栄光」では、高度な医療技術を誇るチームにおける確執を描きつつ、不眠不休で働く医師の過酷な労働状況を描き、「ジェネラル・ルージュの凱旋」では救急救命医療の現状を明らかにし、医療界の現状における諸問題を我々に教えてくれる海堂尊原作の医療ドラマ最新作。
今回は、産科医療における諸問題をテーマに、医療の原点ともいえる「命の大切さ」を我々に投げかける。

諸外国では認められているものの日本では制度の確立が進まない代理母出産の問題を中心に、産婦人科医が直面している療過誤問題や妊婦のたらい回し事件などの話題を散りばめ、我々に様々な問題点を提示する。
海堂尊作品の“お約束事”である、次から次へと災難が押し寄せるクライマックス・シーンは健在!
そして今回のクライマックスでは、生まれ来る新たな命が持つ“大いなる力”が奇跡を起こして感動を呼ぶ。


怒濤の展開の後に訪れる穏やかなラストシーンに、小田和正が歌う「こたえ」が見事にマッチし、感動を盛り上げる。
今回も最後の最後までスクリーンに目が釘付けになったまま、あっと言う間にエンドロールを迎えた。

理恵が医学生たちに語りかける、「生命の誕生は、それ自体が奇跡なのです」という言葉が観客の胸にも染みる、医療ドラマの傑作。


ジーン・ワルツ
2011年/日本  監督:大谷健太郎
出演:菅野美穂、田辺誠一、大森南朋、南果歩、白石美帆、桐谷美玲、須賀貴匡、濱田マリ、大杉漣、西村雅彦、片瀬那奈、風吹ジュン、浅丘ルリ子

「友川カズキ 花々の過失」

2011年02月05日 | 映画
本作を観るまで、友川カズキというフォーク歌手の存在を、実は知らなかった。
70年代のフォーク・ブームを過ぎて、いわゆる「ニューミュージック」というジャンルが台頭してきた頃、音楽に興味を持ち始めたというような世代であり、「ポプ・コン」でメジャー・デビューしてきたミュージシャンは、けっこう“マイナーどころ”も知っていたりする。
しかしフォークソング歌手となると、そのブームの頃は少々幼すぎた。
そのため、フォークソング歌手といえば、吉田拓郎やかぐやひめ、グレープ、山本コータローとウィークエンド、杉田二郎、フォーク・クルセーダーズやシューベルツといったところが思い浮かぶばかりで、“メジャーどころ”しか印象にない。
そしてそんな彼らが歌う曲の中で、自分も知っているものとなると自ずと数は限られ、ヒット作がほとんど。
その曲のほとんどは、耳に心地よい音楽である。
多くの人々に支持されてヒットするのだから当然だろう。

翻って友川カズキ。
彼の息子がカラオケで、代表作でもある「生きてるって言ってみろ」を歌うのだが、まずこの曲の持つ独特のメロディーラインとリズムが、妙に不安感を湧き上がらせる。
彼のライブシーンにおいては、奏でられる伴奏のメロディーが、また自分の中に不安感を煽り立てる。
そして彼の叫ぶような、言葉を我々に叩きつけてくるような歌い方に圧倒され、唖然・呆然としてしまう。
なんなんだ!?この人の心を不安にさせる音楽は…!
子供の頃、あがた森魚の「赤色エレジー」を聞くと、何となく恐いような、何とも言えない不安感に襲われたものだが、あの感覚が蘇ってきた。

しかし普段の彼は、ごくフツウのオッサンだ。
大好きな競輪のテレビ中継に興奮する姿など、どこにでもいるオヤジそのものだったりする。
そんな彼がひとたびギターを持てば、正に「絶叫する哲学者」の顔を見せ、観客の心をざわつかせる歌をぶつけてくる。
詩人であり画家でありエッセイストであり俳優でありフォーク歌手であり、そして競輪ファンの酒豪である表現者という多彩な面の一旦をのぞかせる。

REMやモグワイなど、数多くのミュージシャンから絶賛を浴びているフランス人映像作家ヴィンセント・ムーンの、デジタルビデオカメラで撮りながらも昔ながらのフィルムを観ているような、心地よい質感を持った画面に、友川カズキが実によく映える。
いやこれは、ムーンが友川カズキのムードに合わせて作り上げた映像だからこそなのだろう。


心にさざなみを起こさせる独特の雰囲気が心地よい、上質のドキュメンタリー。


友川カズキ 花々の過失
2009年/日本  監督:ヴィンセント・ムーン
出演:友川かずき、及位鋭門、大関直樹、生悦住英夫、加藤正人

神前興行

2011年02月03日 | ニュースから
再生誓ったばかりなのに…相撲界また激震 八百長問題(朝日新聞) - goo ニュース


「またも!」と言うべきか、「とうとう」と言うべきか、相撲界に八百長疑惑がまたも流れている。
個人的には、純粋に“スポーツ”として楽しむものではなく、もともと神前興行として起こったものなのだから、「まぁ八百長もあるかもな」くらいに思っていたのだが。


戦力はある…

2011年02月02日 | よもやま
12球団監督が意気込みを語る(スポーツニッポン) - goo ニュース


真弓監督曰く、
「ケガ人が出ないで、シーズンを乗り切れば、必ず優勝するだけの戦力はあると思っている。」
その通り。

しかし、ファンは思っている。
「戦力は整っているのだから、采配さえ誤らなければ優勝できる。」

今年こそ、納得のいく采配を、勝つ!という強い思いの伝わってくる采配をお願いしたい…


まぢで頼みます!

2011年02月01日 | 野球
阪神・真弓監督、ザックV采配に学ぶ(サンケイスポーツ) - goo ニュース


選手起用の妙はもちろんのことだが、ザッケローニ監督の選手掌握術を見習ってもらいたいもの。
毎朝食事の際に監督は、控え選手に必ず声をかけ続け、目をかけていることを意識付けていたという。
この細やかな気配りがあってこそ、途中出場した控え選手がすぐに活躍できるモチベーションが持てたのではないだろうか。

そうして選手達のモチベーションを維持したうえで、最適な選手起用により、チームは一丸となって力を発揮するというもの。
ザッケローニ監督の采配に刺激を受けたという真弓監督は、
「去年戦って、反省というか足りない部分がちゃんと解消されている」
と言うが、果たしてどう“解消”されているのだろう?
楽しみにしていいのだろうか、一抹の不安がよぎる。

いよいよキャンプイン。
絶妙の采配とは程遠い選手起用を、イヤというほど見せてもらった昨年のような試合は、もう勘弁願いたい…