<全国高校ラグビー>御所実、地獄から天国 きょう準々決勝、VS国学院久我山 /奈良
第94回全国高校ラグビーフットボール大会(毎日新聞社など主催)第4日の1日、県代表の御所実は後半ロスタイムに逆転のトライを決め、慶応(神奈川、4年ぶり34回)を19-14で降し、ベスト8入りした。準々決勝は、3日午後1時20分に近鉄花園ラグビー場第1グラウンドでキックオフ予定。優勝5回の国学院久我山(東京第1、2年ぶり39回目)と対戦する。【塩路佳子】
ロスタイムに入り、花園のグラウンドには雪が舞い始めた。御所実は後半30分、慶応にトライとゴールを決められ12-14と逆転された。限られたチャンスを確実にものにしようと、御所実の選手たちは「ノーペナルティー」と声をかけ合いながら集中力を高める。
同32分過ぎには、SH吉川浩貴主将(3年)が、パスをつなぐ慶応の一瞬の隙をついてボールを奪い、ターンオーバー(攻守逆転)。一気に攻め込む御所実の選手たちの姿に、スタンドの観客も次々に立ち上がり、「押せ押せ、御所高」と地鳴りのような声援を送った。
同35分、相手ゴール前5メートルのモールから吉川主将が、素早く右へボールを持ち出した。モール後方からチャンスを狙っていたWTB竹山晃暉選手(同)には、空いているスペースが見えた。「ヨシコウ」と吉川主将を呼びながら右へ飛び出し、パスを受ける。走り込み、ボールを持つ右手と、左手を頭上に高く上げて一瞬万歳をし、そのままトライ。CTB今里慧選手(同)がキックも決めて、ノーサイドの笛が鳴った。
スタンドの観客も抱き合って喜んだ。御所実ラグビー部OBの男性(41)は「ロスタイムで慶応に逆転された時は涙が出た。正に地獄から天国の大逆転で、感動した。いい試合だった」と興奮気味に話した。同じくOBの中川将弥さん(18)は周囲とハイタッチをして喜び、「ターンオーバーで『チャンスはある、行ける』と信じて応援した」と話していた。
◇「あきらめない気持ち」が呼んだ逆転トライ--竹山晃暉選手(3年)
「最後まで、あきらめる気持ちはなかった」。慶応との接戦を制したロスタイムのトライ。広い視野と、相手の盲点を突く冷静な判断力が光った。
初めての花園出場は1年生だった。スタンドの大歓声の中で緊張してしまい、余裕がなかった。「ボールを受けるとすぐに走り、一人よがりのプレーをしていた」と振り返る。
転機は国際試合での経験だ。今夏は7人制ユース日本代表に選ばれ、世界の強豪と戦った。一流の選手は基本に忠実で、味方のカバーをしていた。自分もパスを受ける手を準備しておくなど、基本に立ち返ってミスを減らすうちに、心に余裕が生まれた。
「自分が起点となってチャンスを作る。成長した姿を見てほしい」と臨んだ今大会。最後のワンプレーでは、ゴール前5メートルのモールから、右にパスを受け、万歳をしてトライ。ノーサイドで吉川主将ら選手と次々抱き合い、スタンド前に駆け寄って大歓声を浴び、竹田監督と抱き合った。