平昌五輪のノルディックスキー複合個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得した渡部暁斗(29)=北野建設=が24日、羽田空港着の航空機で帰国した。大会前に左の肋骨(ろっこつ)を骨折したが、そのことは明かさずに3種目に出場したのはなぜか。五輪を終え、三つの理由を明かした。
「本当は言うつもりはなかったんですけどね……」
報道陣から骨折のことについて問われると、渡部暁は照れくさそうに笑った。
渡部によると、2月2日に長野県白馬村であったワールドカップ(W杯)の公式練習で転倒し、負傷。痛みはそれほどなかったが、平昌入りしてから骨にひびが入っていることがわかったという。「平昌に入って3日間は、ストックワークの練習はできなかった」
スタッフやチームメート、ドクターにはけがをしていたことを伝えていたが、報道陣の前で話すことはなかった。
「痛み止めを飲んでいたので、痛みはほとんどなかった。悔やんだって、骨がくっつくわけではない。骨の1本くらい、くれてやるっていう気持ちでした」
実際に、骨折した直後の白馬でのW杯は優勝。過去にもけがを抱えながら勝ったこともあり、「けがは言い訳にはならない。自分はそれでも勝ってきたんだから」と思った。報道陣に「けがをしなければ金メダルをとれたと思うか」と問われても「それはないです。自分の実力ですね」と即答した。
もう一つ、15年ぶりにW杯を開いてくれた地元・白馬村への思いも口にした。けがをしたW杯は平昌五輪直前の大会。それだけに、「白馬大会がネガティブに伝わるのが嫌で、関係者も大会を開いたせいで、と思ってほしくなかった。僕は白馬で大会ができたことがうれしかったし、前向きにとらえたかった」。
そして、言わなかった理由はもう一つ。「若い選手が無理して試合に出るのを懸念している。自分は五輪で、特別な舞台だからやったことで、イレギュラーなケース。よい子にまねして欲しくない」と話した。
現在W杯個人総合1位で、初の総合優勝を目指す。今も寝返りを打ったり、大笑いをすると痛みが出たりするというが、3月の大会も当然出る予定だ。