「バブさん、髪の毛っちゃ今でも売れるのかねぇ」
これから昼飯を食べようかという人間を捕まえて、顔を見た瞬間にする質問では無いと思うのですが?
私がランチをとろうと店に入る前、「カツラは人毛なのか?人毛だとすりゃどっからどう調達してるのか?」というどうでも良い話で盛り上がっていたんだそうで、
「かみさんがね、ウイングっていうの、アレ買ってさぁ、これは人毛だって言うから、今どき人毛なんてあんのか?てな話になってね」
とは、常連のTさん。
とりあえずは「ウイングじゃなくてウィッグだろ」という突っ込みは心にしまい
「カツラや付け毛には人毛が使われていると思いますよ」
と私。
「でも、昔ならともかく、今の世の中、髪を売って金にしたなんて話聞いたこと無いよなぁ・・・・・カツラの毛っちゃ何処から仕入れんだろ?」
「さぁ?」
偶然というか、奇遇というか、食事を取り終えて珈琲を飲んでいると、3年ほど前に某メーカーのかつらを購入したNさんが来られまして。
「ぷっ?!?!?!?!」
失礼しちゃいますよね、マスターとTさん、それに私も思わず吹き出しそうになってしまいました。
まっ、すでにカミングアウト済みで、気心知れた仲ですから、いきさつを話すと
「あ~~、カツラの髪の毛はほとんどが輸入品ですよ。シャンプーとかリンスといった合成洗剤を使ってたり、パーマとか染め毛とかしてたりした髪はカツラに使えないんですよ。だから文明に汚染されていない地域の髪を輸入して使ってるって聞きましたから。」
「さすが」(三人の声)
「そんじゃやっぱり、着物も何にも全て質に入れちゃって、後は髪をおろすだけだ、なんて話は今じゃやりたくても出来ねぇってこった。」
「そうっすねぇ、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』も今は昔ですよ」
オー・ヘンリーを思い浮かべるとは、Nさんは偉い!
「ねぇねぇ、オー・ヘンリーもいいけど『あと一合』って小咄知ってます?」とは、私。
とある長屋住まいの貧乏夫婦。
働きが悪くて酒好きというそりゃあ始末が悪い旦那(私の事じゃありませんよ)は、その日もいつものように、奥さんがなけなしの金で買っておいた酒を飲み干してさらに、
「お~い、酒が切れたぞ、すぐに行って買ってこいや」
「買ってこいったっておまえさん、買うお金がありゃしませんよ。」
「なにを言ってやがんでぃ、なけりゃ、なんでも売っ払えばいいじゃねぇか。え、そのくれぇの才覚をするってぇのが女房でぃ、行ってこい、コンチクショウめぇ」
一度言い出したら聞かないことは鼻から承知のおかみさん、黙って家を出て行きましたが、間もなく一升の酒を持って帰ってきます。
「おう、みやがれやっぱ売るもんがあったんじゃねぇかぁ、えぇ、何売っ払って買ってきたんでぃ」
「おまえさん、これがほんとに最後のお酒だからね、これを飲んだら働いておくれよ。」
「だから、何を売っ払ったのかってきいてんだよぉ」
「ほんとに最後の最後、これさぁ」
と、おかみさんがほっかむりをとりました。すると何と丸坊主、
「おっおめぇ・・・・」
さすがの旦那もこれには心痛んだんでしょうねぇ
「う~~ん、俺が悪かった、かんべんしてくれぇ・・・・・」
と涙を流し、翌日から酒をキッパリ止めて真面目に働いた・・・・・・・・
これじゃあ、オチにもなりません。
旦那はしっかり反省をしたんですよ、反省したから、その晩は夫婦仲良く布団の中へ、旦那がおかみさんの前へスーッと手を伸ばすと
「おっおい、おまえ」
「な、なんだい、おまえさぁぁぁん」
「ここに、あと一合残ってる・・・」
おあとがよろしいようで。
さて、今日の一枚は、アル・ヘイグです。
昨日のコルトレーンからは飛びすぎだろうってですか?まぁまぁ。
バップ期を代表する白人ピアニストですが、同じ白人バップ・ピアニスト、ジョージ・ウォーリントンと比べるといくぶん知名度は低いんでしょうか?
一方、音楽に対するストイック取り組み姿勢にたいし、一部熱狂的なファンがいるのも確かです。
考えてみれば、我がブログでも彼のリーダー盤は初の紹介かもしれません。
このアルバムは、ギターを入れた変則カルテットによる演奏です。
アドリブをバンバン聴かせるというスタイルではありませんし、ギターが入ることでストイックな部分がいくぶん和らいでいる演奏でもありますが、彼の良さは充分に聴き取れる一枚だと思います。
AL HAIG QUARTET
1954年録音
AL HAIG(p) BENNY WEEKS(g) PHIL BROWN(ds) TEDDY KOTICK(b)
1.SWEET LORRAINE
2.TEA FOR TWO
3.YOU GO TO MY HEAD
4.YOU STEPPED OUT OF A DREAM
5.UNDECIDED
6.MAN I LOVE
7.WOODY 'N YOU
8.STELLA BY STARLIGHT
9.SOMEONE TO WATCH OVER ME