またも訃報が飛び込んできました。ジョーンズ三兄弟の長男、ハンク・ジョーンズが5月16日にお亡くなりになったそうです。
兄弟最後に残ったハンクがすでに亡くなった二人の弟の元へ静かに旅立たれた、91歳、人生をまっとうされての御出立ではなかったでしょうか。
ハンクといえば、次男、末っ子と比較するとじつに地味なイメージがあります。それはいかにも長男らしく、堅実で気配りのある演奏に彼の個性があったからに違い有りません。
ある意味、自己主張のない、時代に順応しすぎるよい子ちゃんとも言えますが、他のジャズメンの魅力を最大限引き出す存在は、どんな時代にもぜったいに必要なものなのです。
今になって思えば、ベニー・グッドマンのバンドへ参加して以降、一時ジャズメンというよりはポピュラー・ミュージシャンといった活動やスタジオ・ミュージシャンとして活躍した時期があったことも、いかにもハンクらしい確かな技術と熱心な研究心が成せる技であったとも言えるわけで、
ゆえに、美しいタッチと堅実さ溢れる彼のピアノは、ザ・グレイト・ジャズ・トリオでの明確なジャズ界復帰以降も、長く親しまれるものであったのだろうと・・・
とか言いながら、私はザ・グレイト・ジャズ・トリオ以降のハンクをあまり聴いていません。
っと、そのお話しは、後のアルバム紹介にまわして
昨日の夜中、2008年の『東京JAZZ』でのハンクの演奏を聴いて(?見て?)おりました。
始めて見たときにも思いましたが、いかにも良いおじいちゃんって感じですよねぇ(笑)
でも、普通に良いおじいちゃんはそこそこまわりにいますが、こんだけピアノを弾けるおじいちゃんなんてそりゃいませんからねぇ、こんなジジイが隣に住んでたらビックリすんだろうなぁ(笑)
ともかく、あらためてお顔を拝見すると「堅実で気配りのある人」らしさが、演奏だけでなくシワの一つ一つに表れているような気がしてきます。
天国で再会した三兄弟は、それぞれの人生を語り合いながら、久しぶりのセッションを行っているかもしれませんね。そしてそこには名だたるジャズメンが顔を揃えているかもしれない・・・・
心よりご冥福をお祈りいたします。
さて、ということで今日の一枚は、ハンク・ジョーンズです。
ザ・グレイト・ジャズ・トリオ発足以降の同トリオ以外のアルバムということになります。
じつに個人的趣味ですが、大人で美しく出来上がったザ・グレイト・ジャズ・トリオのハンクよりも、ビバップに主点を置いたこのアルバムのハンクの方が私は好きです。
一時、ピアノトリオが日本でおおいにもて囃された時がありました。あの頃ハンクはもちろんケニー・ドリューなんかにしてもお行儀が良くなりすぎた所があって、これがザ・グレイト・ジャズ・トリオ以降のハンクを私はあまり聴かなくなった大きな要因であるように思います。(なんども言いますが、それがハンクの良さでもあるんですけどね。)
その点、今日のこのアルバムでは、ハンクが始めてニューヨークへやって来て、生涯で最も衝撃を受けたであろうビバップとの出会い、それを「今だからこう解釈している」的、ザ・グレイト・ジャズ・トリオとは違った大人のハンクが聴けるような気がするんです。
共演者に最大の気遣いをするハンク、ここでは逆にジョージ・デュヴィヴィエとベン・ライリーが、ハンクのピアノの魅力を引き出しているように感じます。
たとえモンクの曲であろうと、ハンクがこなせばこれほどに分かりやすくなる、まさにハンクの魅力はそこにあるのでしょうね。
'BOP REDUX / HANK JONES
1977年1月18,19日録音
HANK JONES(p) GEORGE DUVIVIER(b) BEN RILEY(ds)
1.YARDBIRD SUITE
2.CONFIRMATION
3.RUBY, MY DEAR
4.RELAXIN' WITH LEE
5.BLOOMDIDO
6.'ROUND MIDNIGHT
7.MOOSE THE MOOCHE
8.MONK'S MOOD