抗がん剤について、今更ながら、自分の考えをまとめておきたい。
自分が抗がん剤を受けるだろう、というのは、手術を言われた時から予感はしており、またとても恐れてもいた。
転移がなければしなくていい、ということにすがっていた。術前検査ではリンパへの転移はない、と言われてもいたし。
でも、予感はあった。リンパへの転移はあるだろうと。何故かは分からない。
術後、リンパへの転移があったことを聞かされた。転移は三つ。
リンパへの転移があれば、手術は温存で済んだが、抗がん剤はしなければならない。
これが怖かった。
ドラマやドキュメンタリーで色々見てきただけに、怖くてならなかった。
抗がん剤予定、となると、お医者さんも看護師さんも、みんな激励してくれるので、ありがたいけど、なお怖かった。
おまけに、最近のインフォームド・コンセントとやらで、「○○の可能性が数%」まで、きっちり教えてもらえてしまうので、さらに怖かった。
幸いに、うちの主治医の先生は、明るくもはっきりものを言う方で、「ごめんなさい、髪は抜けます。でもかならず生えてきます」とさらっと言われた。
なので、髪が抜けるショックを軽くしたくて、長かった髪を、抗がん剤を受ける直前でばっさり切った。
…抗がん剤が怖いのは、髪が抜けることでも、吐き気がすることでもない。
白血球が減って、その時期に風邪を引いたりしたら、それだけでも命にかかわってしまうこと。
でも、それだけの強い薬で叩かなければ、効果がない。
だって、癌細胞は、自分の細胞が変質したものだから。
細胞分裂の素早いところを叩くように、抗がん剤はできている。
だから、髪の毛が抜ける。睫も眉毛も、鼻毛も、体毛の全てはなくなる。
うがいをよくしておかないと、口内炎だってできる。
でも。
実は、抗がん剤にかかわらず。全ての薬は、怖いものなのだと思う。
自分の体に入れてみなければ、自分の体がどう反応するか、誰も知らない。お医者様だって知らない。
神様だけがご存じだ。
そして、病院では、8割の人に効くことをする。
効かなければやらない。その代わり、効くと分かれば、何故効くのか解明できなくても、それを使う(これを知った時は驚いた)。
副作用も、誰もが出るとは限らない。
出ない人は出ない。
私の場合、吐き気はあったが、重度の車酔いのようなもので、吐きはしなかった。
投与後数日は味が薄くなったが、味がないとか水が飲めないとか、そういうのはなかった。
…確か、最初の投与では、吐き気以外の副作用はなかったと思う。
抗がん剤は、回を重ねると、症状が蓄積したり、前出なかった副作用が出たりする。
それでも重篤な副作用(命にかかわるようなもの)は、初回に出なければその後は出ないので大丈夫。
こればかりは、誰が出て、誰が出ないか分からないのが困ったところ。
でも、怖いのは抗がん剤じゃない。
再発することだ。
術後の抗がん剤は、体に残っているかも知れない癌細胞を叩くこと。予備的な治療。
最大の検査にして根治治療は、手術。
そして、術後三年は、再発の可能性が高いので、より注意。
もちろん、乳がんは経過観察終了後も再発の可能性がなくなった訳ではない(とくにホルモン治療が有効なタイプ)から、個人的に気をつけることはとても大事。
抗がん剤は、体力を奪う。きつい薬なのは確かだ。
だが、必要以上に怖がって、受けるべきものを受けない、というのも、かえって怖いことだと思う。
将来、もっといい治療法ができるかもしれない。
でも、それまでは、現在の最善を尽くすしかない。
抗がん剤で体力をなくしても、抗がん剤投与が終われば、ちゃんとまた体力は戻ってくる。
髪も体毛も生えてくる。
放射線治療で、もう生えてこないかと思った体毛だって、結構ちゃんと生えてくる(これは個体差があるらしいが)。
強い薬なので、いろいろ言われがちだが、ちゃんと使えばちゃんと効果はある。
決して無駄ではない、と、受けた自分としては思う。
抗がん剤を受けても治りきらない、と言われたら悩むだろうが、治る可能性が高まるなら、受ける方がよい、と思う。
ちなみに、抗がん剤を受けたから、といって痩せない。痩せるのは、食べられないから。
実際、吐かないように、うっと来たら食べない、とやっていた私は、投与後すぐの三日くらいで1㎏落ちたこともあるが、投与後5日めにはずんと楽になり、7日目にはさらに症状が軽くなるので、このころになるとお腹が空いて、四食くらい(苦笑)食べたこともある。それで体重は戻ってしまっていた。
…体調さえ戻れば、体はちゃんとものを食べたがるし、食べていれば別段痩せない(再発していて、癌細胞に栄養をとられていなければ)。
抗がん剤、最近は悪者にされることが多くて、それで助かった身としてはちょっと悲しい。
まぁ自分も、我が身に降りかかるまではひたすら怖がっていたので、仕方ないけど。
(追記)
あ、私の場合ですが、四年前に手術を受けた時、温存で臨むが切除した断面にがんがあれば結局は全摘になる、と言われていました。
生存率はがんの大きさ(2.2㎝)と転移していた細胞数で考えて87%くらい。ただし情報がちょっと古いので、今なら90%を越えてると思います、と言われました(それでも、再発するかしないかは、お医者様だって分からないから、怖かった。今でもまったく怖くない、と言ったら嘘です)。
でもですねぇ、切ってみないと、お医者様にも実は分からないんですよね。
切って、癌細胞を検査しないと。顔つきがどんなか、どんな抗がん剤が効くか、ホルモン剤治療は有効か、とか。
私だって、転移はない、と言われたのに(エコーにはうつらなかった)、開けてみたら転移があって、リンパ切除になったのだから。
退院時には、だいたい方針は決まっていたようです(抗がん剤あり、ホルモン剤治療あり)。それ以上の詳しい検査は、その後ゆっくり、ではないかと。切った本人の体力回復もあるんでしょうね。
癌。こればっかりは、神様しかご存じないです。怖いことに、本当にそう。他の人の話は、参考程度にしかならない。近い人はいるけど、誰も自分と同じではないから。
でも、癌でなくても、明日自分が本当に生きているか、誰も保証はないんです。あるつもりでいるだけ。
保証がないことに気づいてしまったというか、気づかされてしまった…ということでしょうね。