TOMO's Art Office Philosophy

作曲家・平山智の哲学 / Tomo Hirayama, a composer's philosophy

作曲とはなにか3~「構築する作曲」から「探す作曲」へ(中編)

2014年04月06日 | 作曲とはなにか
さて、皆さんはDTMという言葉をご存知だろうか?DTMとは「desktop music」の略で、パソコンを利用して音楽制作をすることを指す。1990年代から急速に一般に普及していき、現在ではDTMを利用しないミュージシャンはほぼ皆無と言ってよい状況だろう。メジャーなDTMソフトとしては「Pro Tools」や国産の「Singer Song Writer」、クラシック系の作曲でよく使われる「FINALE]や「Sibelius」があげられる。これらのソフトは音符やMIDIキーボード等で打ち込んだ音(音程、音長、音量等のデータ)を記録し、音源モジュール(シンセサイザなど)を利用して再生することができる。つまりピアノやギターがなくともパソコンとソフトウェアがあれば、「誰でも」曲を作ることができるのだ。

このDTMで可能になったことを要約すると、下記のようになるだろう。

①擬似演奏…楽器が無くとも音を出すことができる。
②Try&Error…何度でも記録した音(データ)を再生し、修正することができるのでTry&Errorで作曲ができる。
③新しい音色の作成…シンセサイザなどの波形編集で一般の楽器では作り出せないサウンドを作ることができる。

言い換えるとこれまで下記のような特殊な能力がなくとも、「誰でも」手軽に作曲が可能になったと言える。

①音楽理論の知識
②ピアノ等楽器の演奏能力

さて、あまり大きく取り上げられることは無いが、これはなかなかエポックメイキングな変化だと言える。まず、作曲の敷居が格段に下がり、作曲者の裾野が大きく広がった(その分、作曲家の市場価値が下がったとも言える)。また、作曲の理論を知らなくとも曲を作れてしまうので、今までの枠にとらわれない新しいサウンドが出てくる可能性が増した。もちろん、その分有象無象、玉石混淆の音楽で世の中が溢れる、という状況にもなっているのだが、これを善悪二元論で判断することには意味がない。そのような新しい音楽状況が生まれている、という現実認識が重要なのだ。

さて、このような状況は「作曲」の本質にどのような影響を与えているのだろう。その私なりの答えが「構築する作曲」から「探す作曲」への変化ということになるのだが、その点については「後編」でじっくり論じることにしたい。









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Composer・FrenchHorn/TOMO
Jacket Design/上杉朋嗣
Mixing Engineer/吉田俊之


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