嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

位相数学バラバラシンメトリー

2005年03月05日 18時34分37秒 | 駄文(詩とは呼べない)
知恵の輪を壊した。

メビウスリングの曲が頭の中で鳴っていた

考えてみればこの小さな輪っかのような玩具でさえも
当たり前のように僕にルールを押し付けていると気付いたからだ。

知恵の輪を腕力でどうにかしてはいけないと決まっているわけではないが
当たり前のように僕は無駄な作業を続けすぎていた

音楽がうるさかった
スピーカーの片方を手にとって
机の上で思いっきり知恵の輪に叩きつけた
スピーカーも壊れたが、知恵の輪も壊れた

知恵の輪をがちゃがちゃと回した
回しても回しても銀色の輝きは失われず、
そしてまた、ピースは外れなかった
斜めにしたり、押したり引いたりして
何秒間もガチャガチャやったが、何も変わらなかったので
ついに僕は遥か1メートルのビルの上空から落下させて壊した
知恵の輪は見事に、バラバラになって外れた

「知恵の輪ごときが、人間様に逆らうからこうなるのだ!」
と誰かの呟きが聞こえたが
多分僕の声では無いので聞き流す事にした

僕はさっきから、知恵の輪をジッと見つめている。
頭の中でぐるぐる回して、解く方法を考える。
形状をしっかり見つめて、位相数学という言葉を思い出す。
教えてくれたのは、遠い場所に住んでる友人だったっけ。

言葉の中においてさえ、僕は知恵の輪を外す事に失敗している
その事がとても愉快だった。
僕は知恵の輪を外せない、という前提の妄想しか、さっきからしていない。
ある意味この壁こそが、僕に知恵が足りない事を暗示している。

僕はジッと見つめる事を一度やめ、
手に取る事にした。

予想していたよりも、ぬるっとした硬さで
触れた一瞬だけが、ひんやりとしていた。

牛の顔が描かれていた。
そしてその顔が彫刻のように、
あるいは版画のように、中途半端な立体感を持っていた。
もう一度、今度は牛の頭を眺めると、奇妙な形のリングは頭と耳の部分に繋がっていた

ああ、そうか。

これは角だ。
この立体的な角は、トナカイの角だ。
こいつは牛では無かったんだ。
そうやって、一つの謎が解けるから、
なるほどやはり、これは知恵の輪なのかもしれないと思った。

片方のピースには、N.O.Bと書かれていた
何の略だろうか。
僕はかちゃかちゃとリングを回しながら、
NOBについて考えた。
惜しいところで外れない、中途半端に引っかかってしまった。

そしてまた、僕は気付いた。
僕は今、東京に居る、そして今は時間もある、なのに誰とも、
僕は会おうとすらしていない。
考えてみると、この数日間、僕は東京の街で、無為に時間を過ごしているだけだ。
こんなにも人の多い街で、友達が多いと思い込んでいた街で、
僕は誰とも、会う気が無い。

その事実も、僕の思考をスッキリと混乱させた。
解けそうで解けないパズル。

携帯電話のクラムシェルを閉じる。

「いったいいつから開かれていたのか。」

知恵の輪がぐちゃぐちゃになった。
僕には行きたい場所が無い
生きたい世界も無い
ここには僕が居ない
なのにまだ、僕はここに居る
いったい何の未練なのか
一体なんの因果なのか

ふと、秋田県に行こうかと思った。
そして僕は、遠い場所に居る人に、謝らなければならないのではないかと
一瞬考えがよぎった。

何を謝るのだろうか。
僕が嘘を吐いている事について、だろうか。
何か心当たりが、あるのだろうか。

じつに奇妙だ。
僕には謝る対象が居ながら、謝る理由も心当たりも無い。

知恵の輪は、僕が知恵の輪を解けない事を知って傷つくだろうか。
僕が、最初から知恵の輪を、解こうともしていない事に、心を痛めるだろうか。

僕には理由が無い。
僕には居場所が無い。
僕には金が無い。
僕には能力が無い。

それでもたぶん、僕は僕を肯定する、屁理屈を探さねばならない宿命を背負う。
時々、記憶をどこかにぶつけて、叩き壊したくなる
時々、心をどこかにぶつけて、誰かを壊したくなる

ここには誰がいるのか?
ここには誰という言葉が当てはまるのか?
ここには、本当に誰かいるのだろうか?

僕は忘れてしまっている
僕が生まれた時の記憶を、失い続けている
思い出さなくちゃいけない
世界の始まりについて。

そして確かめねばならない
世界の終わりについて。

精密に、確実に、正確に、ゆっくりと、無我夢中で、記憶をなぞるように、
もっと一生懸命死んでいかねばならない
もっと死について、真実をみつけねばならない

僕は携帯を手にとって
充電ケーブルを、そっと引き千切った。

そしてまた、知恵の輪を壊す、そんな事を考えた。

君はどこへいったのか

2005年03月05日 15時56分12秒 | 駄文(詩とは呼べない)
僕は物語においてさえ
大事な何かを失いつつある
もんどりうって転んだときに得られるはずの、あの痛みでさえも
僕の中からは失われつつある
そのように僕の物語はより空白的な方向へ進行していくものだから
だからやはり僕の詩的空間、あるいは心象風景においてさえも
君という代名詞は失われつつある

そしてまた、またまたまた。
灰色の人工物が雄雄しく立ち並ぶ奇妙な時空においてさえも
僕の物語は地球の魅力に拘束されたりするから
僕は誰とも会話しないように気をつけて
四角い建物の中に入る
僕は鍵穴に小さな嘘を差し込んで
カチンとひねる
牢獄の入り口は開かれる
四角い小さな部屋の小さな扉が開いて、
僕を上空へと引っ張る
けれども決して、四角い部屋は丸い上空へは連れて行ってくれはしない
途中で止まり、途中で扉が開く、おそらくは降りろと箱が言っているのだろう。

そしてそのようにして
四角い流れに導かれて従う限りにおいて
僕の中にある君という象徴は、次々に失われていく
やがて声も全く聞こえなくなるのだろうか
やがて音楽は鳴り止むのだろうか
その時が来たら、あたりは静寂に包まれて
静けさの歌さえも、誰も歌わなくなるのだろうか

おそろしくなる
おそろしくなっていく
おそろしく病んでいく
あの不思議で切実な声が、僕に聞こえなくなっていくということに
僕は泣きそうになる

こうやって何かを諦めるようにして
僕は自分を失っていくから
だから僕は人間が嫌いなんだろう

強く求めるほどに遠ざかる人ごみの海で
僕が誰も求めることのないように溺れ続けても
この世界は決して、僕の生も死も、許してはくれないということ
人前で生きることも、人前で死ぬことも、決して誰も本質的には祝福されないということ
そのような孤独の陶酔さえも許されないほどに、
この世界は暴力的な人で溢れているということ。

誰も信じてはいけない
そしてまた、誰も利用してはいけない
誰かを好きになってはいけない
誰も嫌いになってはいけない
誰かを殺してはいけない
そしてまた、誰かを生かそうとしてはいけない
作りこまれ、深層に潜り込んでいく不確かなルールだけが
僕の中に不安定な牢獄を許し、
そしてまた、外部にあるどうしようもないルールだけが
内部に強い境界線を強いるのだろう。

うようよと蠢く動物の皮に包まれて
アレルギーに怯えながら毒と共に寄生して
地球の鼓動を感じれば
この地球は驚くほど自閉的な生命体だ
それでも運動はやめない
太陽に近づきたいのだろうか
太陽を眺めたいのだろうか
ぐるぐるまわって踊りを続けるキチガイなだけだろうか

夢想を続けて夢遊病のように生活する今日でさえも
僕は明日に怯え続けている
はやく時間を逆転させたい。
過去から未来へ流れる妄想の宗教家ばかりが多くて
ほんとうに僕はうんざりしている
明日と昨日は同じくらい曖昧なものなのに
明日は昨日と同じくらい明確なものなのに
本当にわからないのは今という一瞬だけなのに
いまもまだ、瞬いて迷い続ける僕なのに
それでもまだ、確定し、証明する事は怖いのか。

ふいに気付いた。
僕はまた、言葉に騙されている。

ここには誰も居ないという真実味、その事を忘れていた。

探さねばならない。
誰も知らない、誰も見つけられない僕の中心を。

僕と僕を融合させ、僕を消滅させる魂の引力を探さねばならない。

「死にたくない」
ふいに、そんな嘘を思いついた。

みんな、この嘘に騙されて…?
「死にたい人、手を挙げて!」
「シーン。」
というゲームだろうか?

耳を澄ませて、急に現実感が無くなった。
また、あの声が聞こえるようになった。
耳鳴りの中で優しく微笑む幻聴があるように
この世界はまだ、優しい嘘に包まれている気がする。