嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

尖った雪だけが降る、蠍の海で

2005年03月09日 21時13分02秒 | 駄文(詩とは呼べない)
僕を追い詰めるものは
もっとも繊細な、壊れそうな、誰の話も聞かない、消える寸前のエゴだから

等比数列が僕を追い詰めるのは、最後まで数える前に判断する、その直線性にあるから
だから僕は歪んだ階段を一歩ずつ降りて
トンネルが地下に食い込んでいるように
天使は神の名を食い殺して降りてくる

あなたはきっと、名前を付ける事が出来ないだろう。

その天使は美しいからだ
美しさはあまりにも畏れ多いからだ

許しを請うための歌は
地上に生きる生を、決して祝福したりはしない
そしてまた、何も願わない
何も祈らない

僕は天使に負け続けるから
何も願えない、何も祈れない

世界は心を映す球状の鏡だから
何も与えない、なにも創らない

名付けることが出来ないのならば
僕には思い出すくらいしか手はないのだ

かつて時が流れていたときに、
記憶が過去だと信じられてきたように

かつて歴史が流れていたときに
全てが神だと信じられてきたように

私は私の正体を思い出し続けねばならない
そしてまた、想いの夢を見続ねばならない

いつまでも明日が来ないその事を
考えるのを止めるから
いつまでもあなたが居ないその事を
思い出すのを止めるから
いつまでも一人で生きるその事を
感じる心はここにあるから

だからもう、君はこれを読まなくてもいい
君は嘘を吐かなくていい

正直に生きればいい
誰も君を、愛することは出来ないから。

空が落ちてくるまで泣き続けろ

2005年03月09日 20時47分53秒 | 駄文(詩とは呼べない)
盲目的で繊細な人が
目を瞑っている間に終わる人生なら
よっぽど僕は死んだっていい

綿密に編まれたサリドマイドの海が
溶けた魚の数だけ
溺れる明日になるのなら
僕はよっぽど生まれなおしたっていい

逃げ惑う配列の、その整序された豊かさが
吐き気交じりの陶酔空間に寿司詰めになる迷路なら
僕は爆弾を掴んできっと線路に投げ入れるから
今日を限りに数字が全て人になったって
そんな事はもう諦めてる

ドットが壁に刻まれて
同じ同じと意識が嘘を吐く前に
科学が神のようにじんわりと振舞う前に
時代が始まる前の、あの曖昧な手ごたえは
いったいいつから失われるのか

力を取り戻さねばならない
かつて失われる前に存在すらしていなかった
あの何も無い、全く持って何も無かった
真っ暗闇の豊かさを

今、此処、私を変える事無く
世界の方を変えていかねば
満腹で退屈すぎる意識は
嘘を吐くことすらも許されなくなるから

肉体が崩壊する日が待ち遠しい
やがて解け合う事が、約束された心臓だから。

誰かのために、そして誰かのために

2005年03月09日 10時38分35秒 | 物語
「…逃げるなら今のうちだよ」

彼はこちらを斜めに見て こともなげにそう言った。
だけどどこへ逃げたらいいのだろう。

予感の色は明らかに黒ずんだどんより曇を呼び寄せていて
あたりの静けさはあとほんの少しの引き金がひかれるだけで
全てが崩壊してバラバラになるようなアンバランスさを醸し出していた。

それでも僕はそこに立ち止まって
こう一言告げるしかなかった

「僕はここにいるよ」

閉じられた空気はドアの隙間から流れ出ていく
目元や口元にかすかに窺い知ることの出来るわずかばかりのミクロな表情さえも
先入観や予感や偏見を持ってすれば
どう見たってそれは悪魔に近い微笑みだったと思う。

「…あんまり賢くないんだな」

それがどういう意味で発せられたのかは不透明なままだ
あるいは一つの断りの象徴として何かの一呼吸だったのだろうか

僕は後ずさる事も踏み込む事も許されず
ただその場に立ち尽くして寂しさに飲まれないように
強く強く立ち止まって
目の前にいるかどうかも疑わしい相手にこう言った

「僕は、、、まだわからないんだ」

彼はその言葉の輪郭をうっすらなぞるように確かめて
そして僕の眼前に、覗き込むような格好で顔を近づけてきた

「…それが君の理由?」

一瞬、キスされたのかと思った。
彼は唇の2ミリ手前の空気を切り裂いて静電気を起こしただけだった
そしてあらかじめ、何かを間違うことが無いように、吐き出すはずの何かを反芻し口をもにゃもにゃとやった。
やがて強い口調で言葉のナイフを突き刺した。

「君はいつだって何かを誤解している。だがそれは僕とて同じことだ。だけど僕は今何かを焦らず怒りながら確かめようと思う。
 それは君の態度と関係がある。そしてそれは君に一つの大きな責任という枷を嵌め込む事にもなるかもしれない、
 だが人というのはいつだって無責任である事は僕も承知している。それらを踏まえた上で、君を、君自身を確かめたいと思う。
 …話を続けても、いいかな?」

僕には選択の余地はない。
話をする以外に、いったい今の僕に何が出来ると言うのだろう。
逃げる場所も無い、進む場所も無い、そして何よりも僕には知りたい事がある。

「たぶん、いいと思う」

彼は首を振って、ため息を漏らした。

「やっぱり君はわかってない。何もわかってない。君の瞳は人に何かを期待させる。それは君の罪だ。
 その罪の源泉がどこにあるのかは僕にもわからない。だが、僕はどうしても君に聞いておきたい事がある。
 それを確かめたい。今から聞く。君の言葉は信用できない、だから君の瞳に聞くことにする。
 いいか、目線の動きだけは、嘘を吐けないぞ?」

鼓動が激しく時を刻み始めた。リズムを刻み始めた、いや、メロディーを奏で始めた。
今から死の狂想曲が始まる。命がけの追いかけっこが始まる。大運動会が始まる。
僕は捕まるのか、僕は捕まるのか、僕は捕まるのか――?

「君は本当に――が好きなのか?」

聞こえない、聴こえない、キコエナイ、何も聞かない、何も聴きたくない、ナニモキキタクナイ
僕は耳をふさいで、目を閉じて、口をつぐんで、息を止めて、じっと自分を押し殺して、そして――
――??