嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

人を殴る勇気がありません、人を殺す勇気がありません。

2005年03月10日 10時15分42秒 | 駄文(詩とは呼べない)
終わってる、なにもかも。
悩んでるフリも友達の声も家族の顔も血の匂いも
何もかもが、全部忘れられていく
思い出せない、どうでもいい、意味を感じない

書き出す言葉も、全てただのバラバラの記号になって
そこからは、エネルギーが出ていない

スランプなのか?
いや違う

書く意味と、宛先が、急速に失われているんだ

切なさや切実さや痛みが、急速に世界から無くなっていく

死にたくないと思い始めてる自分を見つめて不安になる
もっと死にたがっていたはずなんだ
死を見つめられない俺は生を感じられない
もっと死んでいた頃の事を思い出すんだ

もっと思い出せ
消えていくエネルギーと
崩壊する宇宙と
何よりも小さい虚数空間の海で
もっと溺れるんだ

ああ、そっか
だいぶわかってきた
消えていくのは、他者への期待だ
誰も必要ない、全部ゴミに見える

もっと孤独になりたい
もっと寂しい自分で居たい
もっと全てを破壊したい

自分探しの諦めか?

そろそろ死に方の具体性を、詰めていかないといけないのかもしれない
残り時間は、間違いなく減り続けているのだから。

この肉体からはゴミしか出力されない

2005年03月10日 09時57分58秒 | 駄文(詩とは呼べない)
もっと不透明で暴力的な…何かを、何かを。

透明な水は、低き場所から、高きところへ

両手で支えられた電気は
常に安定に似た同質化へ、同質化へ

宇宙の磁場は、いつから狂ってるんだ?
狂った始まりから始まり、
正常化された終わりへ、終わる?

幸せと同じだけの不幸があるなら
僕は死んでから幸せに?

指が100本あるのが正常な人間だとしたら、
我々はみんな異常な限定された人間?

仮想化された世界から、現実を省みる事で
現実は夢と同じ色で鮮やかに描かれる?

余裕が無い
やる気が出ない
眠れない
安心できない
どこにも居たくない

足りない物は、多分空腹感。
もっと不幸にならなくちゃ
きっと何も感じない

伝えるべき相手を見失った言葉
読み取る力を失い記号化した言葉

あざけるようにとりまくようにはりつくように
二度と目にする事が、無いように。

尖った雪だけが降る、蠍の海で

2005年03月09日 21時13分02秒 | 駄文(詩とは呼べない)
僕を追い詰めるものは
もっとも繊細な、壊れそうな、誰の話も聞かない、消える寸前のエゴだから

等比数列が僕を追い詰めるのは、最後まで数える前に判断する、その直線性にあるから
だから僕は歪んだ階段を一歩ずつ降りて
トンネルが地下に食い込んでいるように
天使は神の名を食い殺して降りてくる

あなたはきっと、名前を付ける事が出来ないだろう。

その天使は美しいからだ
美しさはあまりにも畏れ多いからだ

許しを請うための歌は
地上に生きる生を、決して祝福したりはしない
そしてまた、何も願わない
何も祈らない

僕は天使に負け続けるから
何も願えない、何も祈れない

世界は心を映す球状の鏡だから
何も与えない、なにも創らない

名付けることが出来ないのならば
僕には思い出すくらいしか手はないのだ

かつて時が流れていたときに、
記憶が過去だと信じられてきたように

かつて歴史が流れていたときに
全てが神だと信じられてきたように

私は私の正体を思い出し続けねばならない
そしてまた、想いの夢を見続ねばならない

いつまでも明日が来ないその事を
考えるのを止めるから
いつまでもあなたが居ないその事を
思い出すのを止めるから
いつまでも一人で生きるその事を
感じる心はここにあるから

だからもう、君はこれを読まなくてもいい
君は嘘を吐かなくていい

正直に生きればいい
誰も君を、愛することは出来ないから。

空が落ちてくるまで泣き続けろ

2005年03月09日 20時47分53秒 | 駄文(詩とは呼べない)
盲目的で繊細な人が
目を瞑っている間に終わる人生なら
よっぽど僕は死んだっていい

綿密に編まれたサリドマイドの海が
溶けた魚の数だけ
溺れる明日になるのなら
僕はよっぽど生まれなおしたっていい

逃げ惑う配列の、その整序された豊かさが
吐き気交じりの陶酔空間に寿司詰めになる迷路なら
僕は爆弾を掴んできっと線路に投げ入れるから
今日を限りに数字が全て人になったって
そんな事はもう諦めてる

ドットが壁に刻まれて
同じ同じと意識が嘘を吐く前に
科学が神のようにじんわりと振舞う前に
時代が始まる前の、あの曖昧な手ごたえは
いったいいつから失われるのか

力を取り戻さねばならない
かつて失われる前に存在すらしていなかった
あの何も無い、全く持って何も無かった
真っ暗闇の豊かさを

今、此処、私を変える事無く
世界の方を変えていかねば
満腹で退屈すぎる意識は
嘘を吐くことすらも許されなくなるから

肉体が崩壊する日が待ち遠しい
やがて解け合う事が、約束された心臓だから。

誰かのために、そして誰かのために

2005年03月09日 10時38分35秒 | 物語
「…逃げるなら今のうちだよ」

彼はこちらを斜めに見て こともなげにそう言った。
だけどどこへ逃げたらいいのだろう。

予感の色は明らかに黒ずんだどんより曇を呼び寄せていて
あたりの静けさはあとほんの少しの引き金がひかれるだけで
全てが崩壊してバラバラになるようなアンバランスさを醸し出していた。

それでも僕はそこに立ち止まって
こう一言告げるしかなかった

「僕はここにいるよ」

閉じられた空気はドアの隙間から流れ出ていく
目元や口元にかすかに窺い知ることの出来るわずかばかりのミクロな表情さえも
先入観や予感や偏見を持ってすれば
どう見たってそれは悪魔に近い微笑みだったと思う。

「…あんまり賢くないんだな」

それがどういう意味で発せられたのかは不透明なままだ
あるいは一つの断りの象徴として何かの一呼吸だったのだろうか

僕は後ずさる事も踏み込む事も許されず
ただその場に立ち尽くして寂しさに飲まれないように
強く強く立ち止まって
目の前にいるかどうかも疑わしい相手にこう言った

「僕は、、、まだわからないんだ」

彼はその言葉の輪郭をうっすらなぞるように確かめて
そして僕の眼前に、覗き込むような格好で顔を近づけてきた

「…それが君の理由?」

一瞬、キスされたのかと思った。
彼は唇の2ミリ手前の空気を切り裂いて静電気を起こしただけだった
そしてあらかじめ、何かを間違うことが無いように、吐き出すはずの何かを反芻し口をもにゃもにゃとやった。
やがて強い口調で言葉のナイフを突き刺した。

「君はいつだって何かを誤解している。だがそれは僕とて同じことだ。だけど僕は今何かを焦らず怒りながら確かめようと思う。
 それは君の態度と関係がある。そしてそれは君に一つの大きな責任という枷を嵌め込む事にもなるかもしれない、
 だが人というのはいつだって無責任である事は僕も承知している。それらを踏まえた上で、君を、君自身を確かめたいと思う。
 …話を続けても、いいかな?」

僕には選択の余地はない。
話をする以外に、いったい今の僕に何が出来ると言うのだろう。
逃げる場所も無い、進む場所も無い、そして何よりも僕には知りたい事がある。

「たぶん、いいと思う」

彼は首を振って、ため息を漏らした。

「やっぱり君はわかってない。何もわかってない。君の瞳は人に何かを期待させる。それは君の罪だ。
 その罪の源泉がどこにあるのかは僕にもわからない。だが、僕はどうしても君に聞いておきたい事がある。
 それを確かめたい。今から聞く。君の言葉は信用できない、だから君の瞳に聞くことにする。
 いいか、目線の動きだけは、嘘を吐けないぞ?」

鼓動が激しく時を刻み始めた。リズムを刻み始めた、いや、メロディーを奏で始めた。
今から死の狂想曲が始まる。命がけの追いかけっこが始まる。大運動会が始まる。
僕は捕まるのか、僕は捕まるのか、僕は捕まるのか――?

「君は本当に――が好きなのか?」

聞こえない、聴こえない、キコエナイ、何も聞かない、何も聴きたくない、ナニモキキタクナイ
僕は耳をふさいで、目を閉じて、口をつぐんで、息を止めて、じっと自分を押し殺して、そして――
――??

一瞬だけしかない一瞬の嘘で

2005年03月08日 21時12分36秒 | 駄文(詩とは呼べない)
僕は冷たい人間だ。

今日も僕の側には誰も居ない
孤独にはならない、寂しくもならない、
だけど大事なことは、話す相手が居ないということ。

道を行く人に名前を付ける
この都会には驚くほど、生きているものが少ないような気がして
なんだか不思議な悲しみに包まれる

この人が多すぎる街で、僕には話したい人が居ない
僕は街に何も期待していない
僕は僕に動機が無ければ
何一つとして、楽しむことなど、できはしない
夢も希望も絶望も無いのに、引力だけが僕をここに縛り付ける

僕はたぶん、言葉から、強く意味を読み取ることが出来ないのだと思う。
何故ならあらゆる物の名前には
名付けられた言葉の近くには
デジタル化できないほどの、曖昧さと深みと、鮮明な色使いと、そして息遣いと
やわらかい突き刺さる不気味な魂の音色が
そこには棲んでいたはずだから。

標準化され、整列され、記号化され、並べられた言葉の配列から
一体僕は何を読み取ればいいのだろうか
僕はそこから、僕の物語以外の、何を読み取ればいいのだろうか
僕には名付けられた物語が無い
僕が作り出した物語しか無い
僕の世界には歴史が無い
僕の生まれる前に塗りこめられた架空の歴史は、
僕が僕の生誕を祝福するための、言い訳の整合化としてしか、用意されてはいなかったから。

僕が生まれてから世界は始まり
僕の死によって世界は終わると
僕の二元的嘘は語るから、僕はそこにある真実味をジッと息を殺して味わう事でしか
僕が今の真実に辿り着くことはないから

誰も信じないということが、こんなにも誰かに優しいということを
僕は僕以外の人間に、いかにして語れば良いのだろうか

真実は、強く何かを引っ張るから
光は、突き刺さる炎の牙で噛み付くから
命は、絶え間ない暴力の中でしか、盛んに燃え広がらないから

僕は時間が欲しい
僕には僕が許可した二重性の歪みの空間においてしか
その限られた時間は僕を作らないから
僕を形作る、僕の構成要素のいかなる最小化されたドットも
僕の肉体を許し出す、本物の言い訳を作らないから

だから僕は僕自身のアイデンティティを破壊する矛盾の形でしか
肉体と言葉の乖離感の陶酔的牢獄の中でしか
僕らしい僕を存在させられないという
どうにもならない孤独が
大きなシステムの中で、表層だけを信じる
五感の表象による表象された真実の一瞬の刹那世界にしか
どんな立派な科学的屁理屈も
死滅する引力のもっとも純粋な真っ暗闇でしか
何の永遠も意味によって動きを与えられない

言葉は生まれる前から死んでいる
僕は名付けられた時点で居なくなっている

本当の事を一つだけ言うならば、
ここには言葉など、存在していない。

僕が居る、僕だけが居る。
僕以外は、この世界を感じることが出来ない。
僕は、世界以外を感じることが出来ない。

だから永遠の僕は居ない
言葉に永遠は無い
肉体に言葉は無い
削り取られた観念には嘘しかない

いつだってひとりきり
いつまでもひとりきり

もっと悲しむんだ、僕の宇宙が死んでしまうということを。

薬指に名付けられた時間

2005年03月07日 17時35分05秒 | 駄文(詩とは呼べない)
指を一本だけ切り取ったら、僕の名前は何になるのだろうか。
帰る場所が無いという正常な不安は
僕をそのような、ありきたりな疑問へと駆り立てる
左手の薬指が無くなりそうな予感を、
歩くときのステップだけで表すとしたら、
万歩計には一体どんな数値が出るのか、
想像するだけでも恐ろしい。

跳躍される、ギリギリの空気の流れは、
その連続性によって保障されるわけではない。

僕の見ている世界は、
あるいは僕たちが住んでいるこの世界は、
じつは驚くほどバラバラで、全てがバラバラの点で出来ていて、
あるいはまた、その点は物質では無くて、
無の中に潜む妄想エネルギーの欠片でしか無いから、
引力によって生じる、別世界からの光の波動によって、
自分という宇宙の意志によって、
その連続性が保障されるから、
だから僕は全てを知りたい、自分を知りたいと思う限りにおいて
この世界の源泉を見失い続ける。

あらゆる事に僕は始まりを求める。
そしてまた、あらゆる出来事から、あらゆる物語を読み取り、
その物語性においてしか、自分が保障されないという不安、
あるいは内部が認めうる、想定された外部から分け与えられた内部という
矛盾製造循環においてしか、自意識の宇宙が認識出来ないという不安、
そういった生まれつきの悩みは、
僕をいつでも1秒後の不安に駆り立てるから

踏み出すその一歩は、いつだって破滅的で恐ろしい。

だから僕は僕の指を切り取り、名前を付けようとする。
名前を付けられる、という事はじつに恐ろしい事である。
名前を知られる、という事の次くらいに、
名前を知られる、という事よりも、
名前を知られる、という事の方が、
名前を知られる、という事と同じくらいに恐ろしい。

これは理屈では無いから、
理屈で説明しようとすれば、
この宇宙は、世界は、物語は、名前によって切り取られるという事である。

僕は多分、そのように切断されるバラバラ死体の自分を好まない、
あるいは恐ろしく好んでいる。

平行宇宙を自分の波動によって繋げる事でしか、
連続性を保障できないということは、
エゴのエネルギーによってしか、
パラドックスから産まれる生命は生たりえず、
諦めの暴力性によって死は発動する。

諦めの暴力性、それは現実に色を塗りたくる行為であり
現実感の植え付けであり、
夢を見る能力の損失であり、
引力の欠損である。

何故なら私が外部によって与えられる情報のほとんどが、
より絶望的な色彩と無味無臭に染められているから。

ならば私は外部を想起するのをやめよう。
現実を想像する、そういう無駄な妄想はやめよう。
あるいはまた、現実という虚構に自分の色を付けよう。

物語は始まる。
生は死に続ける。

切り取った薬指を繋いで、動かそうとしてみる。
薬指は万歩計を解体し、そこにどのような数字も許さない。

僕は頭を抱えてうずくまる
布団の中で真っ暗闇を想像する。
不安を抱えることでしか、僕の生は流れ出さない。
心の臓器に手を当てる
宇宙はまだ、鼓動している。

誰か僕の薬指に、名前を付けてくれ
誰か僕の心臓に、名前を突き刺してくれ
この世界がやわらかいことでさえも、だんだん恐ろしくなってくる

時間が無い、時間が無い。
僕にはいつだって時間が無い。

信号機の赤だけが僕の見た色だった。

2005年03月07日 00時37分32秒 | 駄文(詩とは呼べない)
通りを歩くときに感じる、あのメカニカルな寂しさも
友達の会話の隙間に紛れて
さみしさの香りも雑音の冷たさもビルの機械的な真っ直ぐさも
あらゆるものがその時その場所の風に似た雰囲気の中に飲まれて
あたたかみに似たため息の色が
生きている愚痴と似ているけれど
だけど言葉はいつも、
その言葉の続きはいつも、
本当はもっと違う何かを伝えたがっていて
それが伝えようとしてもなかなか伝えられないから
僕はきっと適当な事ばかりしゃべってしまう

君に会えて、色んな話を聞けて
その一つ一つが、印象としての記憶だけが
僕の中で一つの兆しに変わるように
君はいつも何かを伝えたがっていて
その伝えたがる何かが、意味の変容する正体不明の愛しさのような儚さが
ふわふわ漂って僕を傷つけないように君の海を泳ぐから
だから僕は、君の言葉の色が、話の輪郭を追いかけるのに
まるで精一杯であるかのような君の背伸びが、
きっと好きなのだと思うから

これからも一つ一つ、
大事な何かを一緒に確かめていけたらいいな、と思う。

不思議な時間をありがとう。
現実と現実の繋ぎ目にある、透明な優しさに近い悩ましさに触れたようで
あるいは触れそうで触れなかったようで
痛みの少ない、それでいて印象の強い、
なんの意味も無い、それでいてやわらかい、
大事な風の予感を、君にもらえたような気がしたよ。

明日からたぶん、
君に吹く風は時々冷たくなったり厳しく強くなったりもするんだろう
それでも今日の街を歩いた、あたたかな風の冷たさを忘れないでいて欲しい
それを忘れなければ、僕らはきっと友達で居られるから
そしてそれを誰の秘密にすることもなく、
全てがオープンでいられたら
僕らはよりいっそう不可解な、友達らしい友達で居られるような気がするから

だから大事な事は、
きっといつでも曖昧なままで
君が何かを僕に話そうとしてくれるその事が、
僕にとって、愛想笑いでない、自然な笑みを呼び覚ますから
僕はたぶん、すごく多分、揺ぎ無いたぶん、嬉しいんだと思う。

また会おう。
きっとまた会えるよ。

忘れないで。光が時々瞬く事を。

位相数学バラバラシンメトリー

2005年03月05日 18時34分37秒 | 駄文(詩とは呼べない)
知恵の輪を壊した。

メビウスリングの曲が頭の中で鳴っていた

考えてみればこの小さな輪っかのような玩具でさえも
当たり前のように僕にルールを押し付けていると気付いたからだ。

知恵の輪を腕力でどうにかしてはいけないと決まっているわけではないが
当たり前のように僕は無駄な作業を続けすぎていた

音楽がうるさかった
スピーカーの片方を手にとって
机の上で思いっきり知恵の輪に叩きつけた
スピーカーも壊れたが、知恵の輪も壊れた

知恵の輪をがちゃがちゃと回した
回しても回しても銀色の輝きは失われず、
そしてまた、ピースは外れなかった
斜めにしたり、押したり引いたりして
何秒間もガチャガチャやったが、何も変わらなかったので
ついに僕は遥か1メートルのビルの上空から落下させて壊した
知恵の輪は見事に、バラバラになって外れた

「知恵の輪ごときが、人間様に逆らうからこうなるのだ!」
と誰かの呟きが聞こえたが
多分僕の声では無いので聞き流す事にした

僕はさっきから、知恵の輪をジッと見つめている。
頭の中でぐるぐる回して、解く方法を考える。
形状をしっかり見つめて、位相数学という言葉を思い出す。
教えてくれたのは、遠い場所に住んでる友人だったっけ。

言葉の中においてさえ、僕は知恵の輪を外す事に失敗している
その事がとても愉快だった。
僕は知恵の輪を外せない、という前提の妄想しか、さっきからしていない。
ある意味この壁こそが、僕に知恵が足りない事を暗示している。

僕はジッと見つめる事を一度やめ、
手に取る事にした。

予想していたよりも、ぬるっとした硬さで
触れた一瞬だけが、ひんやりとしていた。

牛の顔が描かれていた。
そしてその顔が彫刻のように、
あるいは版画のように、中途半端な立体感を持っていた。
もう一度、今度は牛の頭を眺めると、奇妙な形のリングは頭と耳の部分に繋がっていた

ああ、そうか。

これは角だ。
この立体的な角は、トナカイの角だ。
こいつは牛では無かったんだ。
そうやって、一つの謎が解けるから、
なるほどやはり、これは知恵の輪なのかもしれないと思った。

片方のピースには、N.O.Bと書かれていた
何の略だろうか。
僕はかちゃかちゃとリングを回しながら、
NOBについて考えた。
惜しいところで外れない、中途半端に引っかかってしまった。

そしてまた、僕は気付いた。
僕は今、東京に居る、そして今は時間もある、なのに誰とも、
僕は会おうとすらしていない。
考えてみると、この数日間、僕は東京の街で、無為に時間を過ごしているだけだ。
こんなにも人の多い街で、友達が多いと思い込んでいた街で、
僕は誰とも、会う気が無い。

その事実も、僕の思考をスッキリと混乱させた。
解けそうで解けないパズル。

携帯電話のクラムシェルを閉じる。

「いったいいつから開かれていたのか。」

知恵の輪がぐちゃぐちゃになった。
僕には行きたい場所が無い
生きたい世界も無い
ここには僕が居ない
なのにまだ、僕はここに居る
いったい何の未練なのか
一体なんの因果なのか

ふと、秋田県に行こうかと思った。
そして僕は、遠い場所に居る人に、謝らなければならないのではないかと
一瞬考えがよぎった。

何を謝るのだろうか。
僕が嘘を吐いている事について、だろうか。
何か心当たりが、あるのだろうか。

じつに奇妙だ。
僕には謝る対象が居ながら、謝る理由も心当たりも無い。

知恵の輪は、僕が知恵の輪を解けない事を知って傷つくだろうか。
僕が、最初から知恵の輪を、解こうともしていない事に、心を痛めるだろうか。

僕には理由が無い。
僕には居場所が無い。
僕には金が無い。
僕には能力が無い。

それでもたぶん、僕は僕を肯定する、屁理屈を探さねばならない宿命を背負う。
時々、記憶をどこかにぶつけて、叩き壊したくなる
時々、心をどこかにぶつけて、誰かを壊したくなる

ここには誰がいるのか?
ここには誰という言葉が当てはまるのか?
ここには、本当に誰かいるのだろうか?

僕は忘れてしまっている
僕が生まれた時の記憶を、失い続けている
思い出さなくちゃいけない
世界の始まりについて。

そして確かめねばならない
世界の終わりについて。

精密に、確実に、正確に、ゆっくりと、無我夢中で、記憶をなぞるように、
もっと一生懸命死んでいかねばならない
もっと死について、真実をみつけねばならない

僕は携帯を手にとって
充電ケーブルを、そっと引き千切った。

そしてまた、知恵の輪を壊す、そんな事を考えた。

君はどこへいったのか

2005年03月05日 15時56分12秒 | 駄文(詩とは呼べない)
僕は物語においてさえ
大事な何かを失いつつある
もんどりうって転んだときに得られるはずの、あの痛みでさえも
僕の中からは失われつつある
そのように僕の物語はより空白的な方向へ進行していくものだから
だからやはり僕の詩的空間、あるいは心象風景においてさえも
君という代名詞は失われつつある

そしてまた、またまたまた。
灰色の人工物が雄雄しく立ち並ぶ奇妙な時空においてさえも
僕の物語は地球の魅力に拘束されたりするから
僕は誰とも会話しないように気をつけて
四角い建物の中に入る
僕は鍵穴に小さな嘘を差し込んで
カチンとひねる
牢獄の入り口は開かれる
四角い小さな部屋の小さな扉が開いて、
僕を上空へと引っ張る
けれども決して、四角い部屋は丸い上空へは連れて行ってくれはしない
途中で止まり、途中で扉が開く、おそらくは降りろと箱が言っているのだろう。

そしてそのようにして
四角い流れに導かれて従う限りにおいて
僕の中にある君という象徴は、次々に失われていく
やがて声も全く聞こえなくなるのだろうか
やがて音楽は鳴り止むのだろうか
その時が来たら、あたりは静寂に包まれて
静けさの歌さえも、誰も歌わなくなるのだろうか

おそろしくなる
おそろしくなっていく
おそろしく病んでいく
あの不思議で切実な声が、僕に聞こえなくなっていくということに
僕は泣きそうになる

こうやって何かを諦めるようにして
僕は自分を失っていくから
だから僕は人間が嫌いなんだろう

強く求めるほどに遠ざかる人ごみの海で
僕が誰も求めることのないように溺れ続けても
この世界は決して、僕の生も死も、許してはくれないということ
人前で生きることも、人前で死ぬことも、決して誰も本質的には祝福されないということ
そのような孤独の陶酔さえも許されないほどに、
この世界は暴力的な人で溢れているということ。

誰も信じてはいけない
そしてまた、誰も利用してはいけない
誰かを好きになってはいけない
誰も嫌いになってはいけない
誰かを殺してはいけない
そしてまた、誰かを生かそうとしてはいけない
作りこまれ、深層に潜り込んでいく不確かなルールだけが
僕の中に不安定な牢獄を許し、
そしてまた、外部にあるどうしようもないルールだけが
内部に強い境界線を強いるのだろう。

うようよと蠢く動物の皮に包まれて
アレルギーに怯えながら毒と共に寄生して
地球の鼓動を感じれば
この地球は驚くほど自閉的な生命体だ
それでも運動はやめない
太陽に近づきたいのだろうか
太陽を眺めたいのだろうか
ぐるぐるまわって踊りを続けるキチガイなだけだろうか

夢想を続けて夢遊病のように生活する今日でさえも
僕は明日に怯え続けている
はやく時間を逆転させたい。
過去から未来へ流れる妄想の宗教家ばかりが多くて
ほんとうに僕はうんざりしている
明日と昨日は同じくらい曖昧なものなのに
明日は昨日と同じくらい明確なものなのに
本当にわからないのは今という一瞬だけなのに
いまもまだ、瞬いて迷い続ける僕なのに
それでもまだ、確定し、証明する事は怖いのか。

ふいに気付いた。
僕はまた、言葉に騙されている。

ここには誰も居ないという真実味、その事を忘れていた。

探さねばならない。
誰も知らない、誰も見つけられない僕の中心を。

僕と僕を融合させ、僕を消滅させる魂の引力を探さねばならない。

「死にたくない」
ふいに、そんな嘘を思いついた。

みんな、この嘘に騙されて…?
「死にたい人、手を挙げて!」
「シーン。」
というゲームだろうか?

耳を澄ませて、急に現実感が無くなった。
また、あの声が聞こえるようになった。
耳鳴りの中で優しく微笑む幻聴があるように
この世界はまだ、優しい嘘に包まれている気がする。


死なない限り革命はできないのか?

2005年03月04日 10時25分59秒 | 駄文(詩とは呼べない)
優しい言葉は要らない。
誰にも何も期待しない。
だけど触れるものの全てには、刃向かうための牙を。

あなたたちは昔からそうだ
まるで僕を救い出そうとする暴力のように
何の魅力も持たないくせに
僕をその無意味な世界に引き込んで励まそうとする
それ自体が僕にとって圧力であると、わかっているのかわかっていないのか。

僕を知りたいのか、
僕の世界を知りたいのか、
僕の言葉を通して自分を知りたいのか、
そのようにあなたたちに迫るなら、
あなたがたは僕の言葉に秘められた圧力を知るだろう。

弱弱しい、今にも消えそうな暴力衝動のひとつとして。

どんな弱い羽ばたきも、いつかは膨らんで弾けるから
折れた翼のはためきで
強い涙の雨で やがて憎憎しい暴風雨となって。

傘をさしたりはしない
荒れ狂う風の中で、吹き荒ぶ雨の中で、傘をピンと張るような、
そんな努力はしない。

僕にはやりたい事が無い。
詩を書くつもりもないし、小説を書きたいとも思わない。
僕に無駄な期待をして、期待を裏切られたと騒ぐ亡者ども。
あなたたちの言葉は、他人への呪いに満ちている。
僕は僕の傍に近づいてくる人が、欲にまみれた獣の目をしている事を知っている。
僕は僕を欲しがる人の存在を、いちいち許したりはしない。
そしてまた、僕の心は誰にも渡さない。

僕には守るべきものがない。
僕の中心には、僕を成立させる崩壊への引力だけが瞬いて
それだけが僕を僕らしく
もっとも丁寧に上手に、僕を騙し続ける力を持つから。

すなわち宇宙の死よりも大事な事が見つからないという絶望感は
やがて革命されるべき、この世界の調和へのステップや兆しや予感となりうるから、
僕はもっと切実に、今よりも刹那よりも永遠よりも
全てを飲み込む呪いの意志を、
小さく小さく、何よりも弱く願わねばならない。

まずは意志の力で、時間を超越せねばならない。
予感と記憶はどちらも等価値に、曖昧な平行宇宙の刻まれたしるしなのだから
自らの意志で、正しさを認めた記録だけが、記憶となりうるように
未来の予感も、決定される限りにおいて、現実の中に発現し、体感されるように
爆発する自己宇宙と遥か異次元の平行宇宙が
繋がれるテレパシーの光の中で、他者の宇宙と自己宇宙の融合する一瞬が
宇宙の始まりと宇宙の終わりを崩壊しながら発生させるから
生命の発生に深く関わる永遠を認識させる。

ダークマターは受け継がれる

無よりも小さい、
宇宙よりも広い虚数空間から
物語は生まれるから

この世界を革命するための物語を、
完成され、超越される死の物語を、
書き残さねばならないが、
まだ言葉は見つからない。
名付けられるべき、予感された言葉が、まだ中心から引き出せない。

心の臓器の中にある、歩き出す言葉が、
まだ誰にも伝えられない。
肉体と、情報の中間にある、歩き出す言葉が、僕の中にあるのに
まだ誰にも伝えられない。

死に続ける僕の言葉が、歩き出す日を夢見て
僕は死生を、
あの死生を、
なんとかここに、、

レムレムのほとりで

2005年03月03日 10時32分30秒 | 駄文(詩とは呼べない)
ずるい女にはなりたくなかった
えろい男にもなりたくなかった
男にも女にもなりたくないから恋愛なんかしたくなかった

働きたくなかった
現実をみたくなかった
誰の言うこともききたくなかった

だから僕は走り出すフリをしながら
助走ばかりして
泳ぎ出すフリをしながら
準備体操ばかりして
そしてきっとこの世界で溺れてゆく

午後6時66分の時計を見ながら
僕はモニター画面に触れようとする
鼓動がどんなに激しくても誰かの心に触れることがないように
僕は画面に触れることができない
やがてすぅっと融けるように
モニターが僕なのか
僕がモニターなのかわからなくなる
境界がなくなり騒ぎがあたりを散らかしだす

とんつくてんてんと音がするから
僕は耳鳴りに耳を澄ます
耳鳴りのメロディーだけを聴こうとする
そしてまた僕は、僕の話を何も訊かない

だからそう、ここは僕の世界だ
ここは君の世界だ

明日の足跡を探すため、僕は図書館という名前の本屋に入って
文字だけを大安売りする消費デパートに入って
エレベーターのような密室で
エスカレーターのような足取りで
前へ前へと逆立ちするように
後ずさりのステップで歩き出す

整列され、どこまでも続く本棚は
機械人形の軍隊行進のように重々しく軽やかで
あの集団太極拳のような、ぎこちない柔和な体の動きが
機械仕掛けの風を起こすようで
頼りなく並び続けている

僕はその中から一冊だけ、
たった一冊だけを手にとって
そして僕が読まれることがないように、
僕が本を読もうとする
そしてまた、そこには物語が映し出され
新しい扉は開かれる

ひとつの文字を知るたびに
ひとりの人を知るたびに
やがて開かれるべき並行世界の扉はガチャリと音がして
鍵をかけられたのか、取っ手を掴まれたのか、扉が開かれたのか
そのどれもが間違っているのか、よくわからなくなる

そこで僕はゆっくり悟るように思い出す
あぁそうだった、、、、!
僕はわからなくなるために本を手にするのだ
文字に触れ、投影し、内なる隠された世界を読むために
意味に触れる機会に巡り合う奇跡を意味づけするために
僕は言葉で世界を思い込むために
塗り固められた嘘の輪郭線を確認し
たどたどしくたどり確認するように
やっぱり僕はつらつらつらりと文字を追う

原初の意味は決して伝わらない
伝わらないことを確認しながら読む
そしてまた安心するように
僕は孤独の海で
うゎんぅわんぅおんうぉんと
溺れて騒ごうか

すすすとスーーーっと文字が流れて
もにゃもにゃと…

あしたのために…
明日のために、
明日の為に!

ハッっと気付く。
僕の中で僕が目覚める。
「現実を見るな、俺を視ろ」
「明日を見るな、今を診ろ」

病理の陶酔の中で、心理呼吸の浸透圧で、激しく鼓動の孤独を感じながら
僕はまた眠りにつく
目を逸らすように、めをそらすように、
遠い世界を看るように

359度の死角

2005年03月02日 15時19分59秒 | 駄文(詩とは呼べない)
白い闇が続いていた。
目が覚めるたびに、自分がどこにいるのか確かめなくてはいけなかった。

ますますぼくは、昨日より前の記憶を失い続けていた

街を歩けば人にぶつかりそうになる
僕とぶつかる人たちは僕の過去も未来も、何も知らないし
なんの責任も持てない筈なのに
何故か僕に様々な親切なアドバイスとやらを言い残していく

僕の明日は不透明なままだった
それがある意味では、僕に残されたチャンスだったのか
それともそれは当然の報いだったのか
そんなことは僕にはわからなかった

人から与えられた強いしきたりは
厳しいルールとなって僕を絡めとる
僕は罰だけを受け続けルールからは逃げ続ける

誰かが道を用意するたびに、
僕は新たな道を探さねばならなかった

誰かが1度の暑苦しい熱を僕に伝えれば
僕は359度の可能性を失う

誰かに決められた自分には決してなりたくない
それは決意ではなかったが、
いつも流れは僕を飲み込み続けてきたから
僕にはその程度の反発心しか持てなかった

触れるものすべてに、現実の呪いがかかってるような気がした
目に見えるものだけは、信じてはいけない
与えられたものだけは、受け入れてはいけない
だけど僕は流れに押し流される

誰もが僕を決め付けたがっていた
誰も僕を必要としていなかったが、僕を必要とする人たちは
僕を背景にある砂の一粒として欲しがった
僕が居なくなると、砂粒ひとつ分、背景が失われてしまうのよ。だからあなたが必要なの。
そんな声が聞こえた。
僕の声なのか、相手の声なのか、誰が主体なのかは失われたままだったから
僕は主人公にならないように、
何の主人公にもならないように、目立つ場所で死に続けた。

ゆっくりと死んでいく僕を誰かに邪魔されたくはなかった。

この世界には逃げる場所がまだ見つからない
だから僕は死に続けるのか。
はやくどこかへ逃げなくては。

逃げても逃げても僕は失われる
次々と僕は死んでゆき、最後の一粒の僕が無くなる時、
僕は僕でなくなるだろう
最初の僕はどこへいったのか。
金でエゴは買えない。
だからもっと洗練し、発現し、鋭く尖った心で、僕は世界の端っこを削り取る。

なにかとぶつかるたびに僕は疲弊する
諦めと同じような臭いがする。
あの時と同じような匂いがする。
人が時を刻んでいるせいなのか
止まった時の意味は自動では刻まれない
流れる人の心が、時を刻んでいく
僕の心は時が流れない
しかし何かが刻まれる
記憶と引き換えに、僕は何かを失うのか
未来と引き換えに、僕は過去を失うのか
外部と引き換えに、僕は内部を失うのか

だけど騙されないよ。
外部なんて、本当にあるのかい?

僕の周りにあるのは死んだ目玉をはめ込まれたオートマータだけだ
カチカチとうさんくさい意味をしゃべり続ける人形たち
僕は意味を聞かない、言葉を聞く。
時々、声が聞こえる。
孤独の匂いがする。
少しだけ、僕は何かを知る。

何かを知るたびに、痛みと眠気が僕を包んでいく
肌色の、ぼんやりした暖かみが僕の周りを絶望的に取り囲む世界で
僕はいつでも眠り続ける
死んでいる、意味のない時間だけが、僕に優しい時間だから。
なんの始まりもない、何の価値もない人生だけが
心を潤す可能性だから。

僕はまた、目を瞑り寝ながら悩みの続きを考える
消え入るように、すべての境界が溶け出すように