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金の貸し手は、借り手の生活に大きく関わることもある。金融業者の取り立てが社会問題化したことからもわかる。取り立てでは、担保設定された不動産を差し押さえすることもある。

2017-12-08 16:46:45 | 日記

金の貸し手は、借り手の生活に大きく関わることもある。金融業者の取り立てが社会問題化したことからもわかる。取り立てでは、担保設定された不動産を差し押さえすることもある。

元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一

 AIIBは国際金融機関であるが、借り手が返済しなければ当然取り立てを行う。それはやはり中国主導となるだろう。

 「取り囲まれちゃう」というのは、債務返済がない場合、借り手の途上国が中国の取り立てによって政治的に困窮する状況を示唆しているのだろう。

 取り立ての一環として、借り手が不動産を差し出すのは、融資の世界ではよくあることだが、国際金融の世界でAIIBが同じようなことをした場合、借り手の途上国にとっては、中国への属国化や領土分割を意味することになってしまう。

 従来の西側の国際金融機関であれば、途上国の発展を考えて債務の減免を行うなど、過酷な取り立てはしてこなかった。

しかし、中国主導の国際金融ではこうした国際基準があるのかどうか分からない。

麻生氏は、そうしたAIIBに対する懸念を表現したかったのだろう。

 筆者としては、この麻生発言にさらに追加したい。

最近AIIBが最上位の格付けを取得したと報道されているが、本コラムで指摘したように肝心なのは中国の資金調達レートだ。

AIIBの調達レートは格付けに関わらず、中国を上回るだろう。ということは、西側の国際金融機関より高金利になる可能性が高い。この点も、高利貸のイメージである。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 麻生太郎副総理兼財務相が11月29日の参院予算委員会で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の運営や融資審査について「金を借りた方も、ちゃんと計画を立てて返済しないと、サラ金に取り囲まれちゃうみたいな話になった場合、元も子もない」と発言した。

「金を貸した経験のない人が急に貸すという話だ。お手並み拝見だと思って見ている」とも述べている。

 筆者は郵政民営化の際に、民営化法案の作成や政策シミュレーションを行う民営化サイドにいたので、当時総務相だった麻生氏から目の敵にされたが、周囲の人間に対して極めて優しい政治家であるとの評判を聞いている。

政治家の話は、官僚と違って味のある答弁が多いが、麻生氏はいつも面白い話をしてくれる。

ときたま、それが政治的には失言にもなるのだが、よくいえば人間味でもある。

 麻生氏の表現は具体的にはどのようなことを指すのか、本コラムで推測してみたい。

 AIIBは、途上国などに融資する国際金融機関である。

途上国が融資を受けた資金によってインフラ整備を行うが、融資なので返済が必要になる。

国際金融機関とはいえ、その融資機能は国内の金融機関やノンバンクと同じである。

一般論として融資の返済可能性などについて審査をするわけだ。

 ただ、AIIBは国際金融機関としての経験が乏しい。それを「金を貸した経験のない人が急に貸す」と言っているのだろう。

金の貸し手は、借り手の生活に大きく関わることもある。

金融業者の取り立てが社会問題化したことからもわかる。取り立てでは、担保設定された不動産を差し押さえすることもある。

 AIIBは国際金融機関であるが、借り手が返済しなければ当然取り立てを行う。それはやはり中国主導となるだろう。

 「取り囲まれちゃう」というのは、債務返済がない場合、借り手の途上国が中国の取り立てによって政治的に困窮する状況を示唆しているのだろう。

 取り立ての一環として、借り手が不動産を差し出すのは、融資の世界ではよくあることだが、国際金融の世界でAIIBが同じようなことをした場合、借り手の途上国にとっては、中国への属国化や領土分割を意味することになってしまう。

 従来の西側の国際金融機関であれば、途上国の発展を考えて債務の減免を行うなど、過酷な取り立てはしてこなかった。

しかし、中国主導の国際金融ではこうした国際基準があるのかどうか分からない。麻生氏は、そうしたAIIBに対する懸念を表現したかったのだろう。

 筆者としては、この麻生発言にさらに追加したい。

最近AIIBが最上位の格付けを取得したと報道されているが、本コラムで指摘したように肝心なのは中国の資金調達レートだ。AIIBの調達レートは格付けに関わらず、中国を上回るだろう。

ということは、西側の国際金融機関より高金利になる可能性が高い。

この点も、高利貸のイメージである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 


韓国経済、「屋台骨揺らぐ」半導体市況に異変「来年前半が岐路」

2017-12-08 16:05:16 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2017-12-08 05:05:00

韓国経済、「屋台骨揺らぐ」半導体市況に異変「来年前半が岐路」

景気の先行きに赤信号

曲がり角の半導体景気

 韓国銀行(中央銀行)が、12月1日に発表した10月の主要景気指標は、消費・投資・生産がともに悪かった。

韓銀は前日の11月30日、先行きの景気が明るいと太鼓判を押した翌日、この始末で赤恥をかいた。

私は、12月3日のブログで韓国経済と取り上げ、サブタイトルに「家計債務急増で重大局面、大企業の景況も19ヶ月『水没』」とつけておいた。

韓国経済が順調などあり得ないこと。10月の重要指標急落は、当たり前の話なのだ。

 韓国大企業の景況感は、12月で19ヶ月連続して好不況の分岐点(100)を下回っている。

これは、不況感を脱していない証拠だ。

それにも関わらず、7~9月期のGDPが、実質で前期比1.5%も成長したのは、「10月の秋夕連休(中秋節、9日間)」によって、企業活動が大幅な前倒しとなった結果であろう。

季節調整値では、調整しきれないほどの影響が統計に現れたのだ。前述の10日間もの超大型連休が、統計の攪乱要因になったに違いない。

 統計談義はこの程度にして、12月1日に発表となったデータは反っくり返るほど驚かされた悪い数値が出てきた。

 景気の先行きに赤信号

『朝鮮日報』(12月2日付)は「韓国経済10月の消費・投資・生産、トリプルマイナス」と題した記事を掲載した。

7~9月期の実質GDPは、前期比1.5%増で7年ぶりの高水準となった。

前年同期比の成長率は3.8%で、14四半期ぶりの大きさだ。この数字が発表されたのは11月30日である。

「韓国経済好調」という喜びは、たった1日しか持たなかった。

皮肉な話だ。翌日は「トリプルマイナス」という想像もつかないデータが飛びだした。

この背景は、私のブログ(12月3日)が取り上げている。

前記ブログを書いている段階では、データは未発表であった。

というのは、私は早めに入稿しているので、どうしても時間差が出る。ご容赦いただきたい。
 

(1)「10月の産業生産が過去21カ月で最大の落ち込みを示した。

消費と投資に続き、生産まで減少する『トリプルマイナス』の状況に陥った格好だ。

9月には『トリプルプラス』だった経済が1カ月で正反対の状況となった。

韓国統計庁が先月30日発表した10月の産業活動動向によると、産業生産は全体で前月を1.5%下回った。

減少幅は昨年1月(1.5%)以降で最大だった。10月の生産減少と同時に、消費動向を示す小売売上高は2.9%減となり、設備投資は14.4%減という急速な落ち込みを示した」

 10月のデータでは、生産全体が前月比で-1.5%、小売売上高は同-2.9%、設備投資も同-14,4%という落ち込みである。

この中で、最も気懸かりなのは設備投資の落ち込みだ。これは、雇用に大きく影響する。

文政権は、来年から最低賃金をなんと16.4%も引上げる。

この大幅引上げでは、経営的に耐えられない企業も出てくるので、「戦線縮小」という形で廃業なども噂に上がっている。

その予兆が、設備投資に現れてきたとも見えるのだ。これだけの設備投資縮小は不気味である。

 仮に、今後も設備投資が落ち込んだままという状況になると、文政権への風当たりが強くなるはずだ。

文政権は、賃金引き上げだけに関心をもっており、生産性向上という企業活動活発化には無関心である。

大企業法人税の引き上げを行なうなど、世界の潮流と逆方向に動いている。労働市場改革では全くの「逆走」だ。こういう、トンチンカンな経済政策が、総批判の的になるのは避けられまい。

 (2)「10月のトリプルマイナスについて、企画財政部(省に相当)関係者は『秋夕連休を控え、まるで仮払いでもしたように、9月に数字が前倒しで計上されたものだ』と説明した。

輸出業者が大型連休を控え、10月分の生産と輸出を前倒ししたため、9月の産業活動が活発になり、そのあおりで10月は相対的に数値が悪化したとの見方だ。

実際に9月は生産が0.8%増、消費が3.1%増、投資が5.3%増というトリプルプラスだった」

 普通の政策当局であれば、9月のデータが「トリプルプラス」になった段階で、警戒すべきであった。

それが、輸出の好調に目がくらみ、10月の「トリプルマイナス」への想像にまでは頭が回らなかったのだ。

IMF(国際通貨基金)まで、韓国の実質GDPを上方修正していたから、韓国当局だけを責めるわけにもいくまい。

 (3)「8月以降、生産、消費、投資は毎月増減が入れ替わるシーソー現象を示している。

企画財政部は、『10月の産業活動は前月比で相対的な調整を受けたが、全般的には回復の流れが続いている』と判断した。

これについて、専門家の見方はさまざまだ。

現代経済研究院のチュ・ウォン経済研究室長は『(政府判断のように)秋夕連休が数値に影響を与えた点を考慮し、韓国経済が回復基調にあるとはいっても、その勢いは長続きしない可能性が高い』と述べた。

景気の先行きを示す先行指数の循環変動値が8月以降、101.8、101.6、101.3と下落しているためだ。

チュ室長は『製造業の平均稼働率が8月から3カ月連続で低下し、建設受注が9月から2カ月連続で減少していることも悪材料だ』と指摘した」

 このパラグラフでは、重要な点が取り上げられている。

①  景気の先行指数の循環変動値が、8月以降、101.8、101.6、101.3と下落。

②  製造業の平均稼働率が、8月から3カ月連続で低下。

③  建設受注が、9月から2カ月連続で減少している。

これらデータの悪化は、韓国経済の先行きを占う上で、極めて気になる悪材料になってきた。

これに、注意を払わずGDPの安易な上方修正を喜んでいた点は、不注意の一語に尽きる。

 前記の3データは、いずれも設備投資の低下に結びつく要因である。

私は昔、東洋経済で景気担当記者であった。

毎週、通産省(現・経済産業省)へ通い、産業データを収集して取材した。

その時の経験から言っても、これだけの「悪材料」が重なれば、企業が設備投資を控えて当然であろう。

 先ず、先行指数の低下は、タイムラグ(時間の遅れ)を置いて、一致指数(生産・出荷など)の産業活動が落ち込みを示唆している。

製造業の平均稼働率低下は、現有設備で間に合うことを意味しているから、増産=増設の必要性は薄らぐ。

また、設備投資に結びつく建設受注が9月から具体的に減少過程に入っている。ここまで、「悪材料」がそろえば、今後の設備投資の落ち込みは避けられないと見るほかない。

 私は、12月3日のブログで、半導体景気について慎重論を述べた。過去の半導体市況の暴落の例を出して、楽観論に水をかける内容である。ほぼ、この線に沿った記事が出てきたので紹介したい。

 曲がり角の半導体景気

『朝鮮日報』(12月2日付)は、「韓国経済を支える半導体の景気見通しに悲観論」と題する記事を掲載した。

 現在、韓国経済を支える唯一の柱は、半導体産業しかない。自動車は不振だ。

これまでは、「サムスンと現代自」が韓国経済の二枚看板であった。

それが、サムスンの一枚看板となり、それを裏で支えた半導体市況が頭打ち状況を見せている。

これまでのような半導体市況の「奔騰」はあり得ない。「山高ければ谷深し」である。

市況産業の怖さはここにある。

(4)「韓国経済を支えている半導体産業の景気見通しに悲観論が流れている。

市場専門家の多くは来年までは半導体の好況が続くと予想しているが、

今年10月以降、サムスン証券、世界的な市場調査会社のIHSマークイット、米投資銀行モルガン・スタンレーなどが相次いで半導体市場に警告を発している。

サムスン電子、SKハイニックスなど世界的な半導体メーカーが攻撃的に設備拡充を行ったことで、これまで半導体好況の要因となっていた供給不足が近く解消されるとの見方だ。

韓国科学技術院(KAIST)の李炳泰(イ・ビョンテ)経営学部教授は「サムスン電子、SKハイニックスが半導体生産量を増やしたことで結局は半導体価格が下がり、景気後退につながる可能性はある」と指摘した」

 昨年6月に1.31ドルだったDRAM価格(4Gb)の固定取引価格は、今年7月末に3.25ドルまで上昇した。

それ以降は上昇ペースが鈍り、3.5ドル前後で推移している。NAND型フラッシュメモリー(128Gb)も昨年6月の3.60ドルから今年8月には5.78ドルまで上昇した後、9月は5.60ドルで取引され、下落に転じている。

以上は、『朝鮮日報』記事による。市況産業はいったん、頭を打ち先行き弱気論が出てくると、さすがの高騰相場も冷やされて様子見が始まるもの。

通常は、これを契機に下落基調を辿るケースが圧倒的だ。

 こうした微妙な空気を反映して、韓国のサムスン証券は11月、「来年半ば以降、メモリー半導体の景気サイクルが後退局面に転換する」とし、

IHSマークイットは「DRAM価格が今年、1Gb(ギガビット)当たり0.77ドルでピークに達した後、来年は0.67ドル、19年は0.45ドル、20年には0.34ドルに下落する」との予測を出している。

いずれも『朝鮮日報』記事だが、こうした記事が出てきたこと自体、半導体市況の曲がり角を証明している。

 (5)「モルガン・スタンレーは11月26日、メモリー半導体の景気が近くピークを迎えるとするリポートを発表し、韓国株式市場に衝撃が走った。

モルガン・スタンレーは『NAND型フラッシュメモリー価格の値下がりは既に始まっており、DRAMも来年1-3月以降は供給不足が解消する見通しだ』とし、2019年以降はメモリー半導体の供給が需要を上回るとの見方を示した。

モルガン・スタンレーはサムスン電子についても、『サムスン電子のこれまでの業績を支えてきたスマートフォン市場は停滞期に入り、これ以上営業利益を期待することが難しい。

テレビの出荷台数は減り続けており、生活家電の営業利益率も3%前後にとどまる見通しだ』と評価した」

 モルガン・スタンレーは、悲観的な見通しを発表している。

NAND型フラッシュメモリー価格の値下がりは既に始まっており、DRAMも来年1~3月以降は供給不足が解消する見通しだ、という。

確かに、先のパラグラフで説明したように、NAND型フラッシュメモリーもDRAMも、さらに市況が跳ね上がる雰囲気ではない。逆に、値下がりの公算が高くなっている。

半導体の最大需要先であるスマートフォン市場は、停滞期に入った。世界最大の中国市場のスマホ出荷台数が、今年3月から前年比マイナスが続いている。

 (6)「需要面では人工知能(AI)による自動走行車やモノのインターネット(IoT)など新たな市場が登場したことがプラス要素だが、これまでメモリー半導体の主な用途だったパソコンは5年連続で世界市場の規模が縮小しており、スマートフォンも成長停滞期に入った。

一方、来年にはDRAMの生産量が前年比22%、NAND型フラッシュメモリーは39.9%増える見通しだ。

半導体業界関係者は、『来年前半から中国メーカーの半導体量産が本格化するため、市況がどう変化するか予測が難しい』と話した」

 

ここで気を付けるべきは、世界の「安売り王」という価格破壊者の中国が、来年前半から半導体の量産化に入ることだ。

これまでも鉄鋼やアルミの過剰生産によって、世界市場を攪乱してきた。

そういう悪名を持つ中国が、半導体市場へ参入すれば大きなリスクをはらむはずだ。

半導体主要マーケットのパソコンやスマホは、すでに成熟市場と化している。

既存大手の半導体メーカーは、中国を迎え撃つために増産体制に入っている。

半導体産業が、収益的に有望産業であり続ける条件を失いはじめたようだ。


韓国、利上げは実態見誤った? 半島有事勃発を見越して資本流出未然に防ぐ思惑も

2017-12-08 15:48:31 | 日記

韓国、利上げは実態見誤った? 半島有事勃発を見越して資本流出未然に防ぐ思惑も

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

高橋洋一 日本の解き方

韓国銀行は6年5カ月ぶりの利上げを決めた。

家計の負債が急増する副作用が出ているためとの解説もあるが、どのような背景や影響があるのか。

そして朝鮮半島有事が起きた場合、韓国経済はどうなるのだろうか。

 韓国もインフレ目標政策を採用しており、2016~18年の目標は2%である。

10月のインフレ率は、全品目の消費者物価対前年同月比で1・8%、価格変動の激しい農産物と石油を除いた指数で1・6%だった。

そこで11月30日の金融政策決定会合で政策金利を0・25ポイント引き上げ。1・5%とした。

 全品目のインフレ率の推移をみると、7月が2・2%、8月が2・6%、9月が2・1%とインフレ目標を上回っていた。

しかし、農産物と石油を除いたものでは、それぞれ1・5%、1・4%、1・4%で、農産物と石油の変動によって全品目の指数が上振れしていたことがわかる。

はっきりいって、インフレ目標の運営として、利上げするような状況ではなかった。

 それを裏付けるかのように、12月に入って公表された11月のインフレ率は、全品目のインフレ率で1・3%、農産物と石油を除いたもので1・4%だった。

 これは、インフレ率の基調を見誤った金融政策の変更ではないかと筆者は思っている。

 思い返せば、日本でも同じことがあった。06年3月の量的緩和解除である。

その当時に公表されたインフレ率が0・5%程度であったが、実はこれは物価統計の上方バイアス(実際よりも高めになること)に基づくものであった。

当時、総務省にいた筆者は竹中平蔵総務相を通じて、上方バイアスによって見かけ上はプラスだが、実際はマイナスの可能性もあることを指摘した。

ところが、何が何でも金融引き締めに転じたい日銀は、量的緩和の解除に方向転換した。

 当時、政府・与党内でこの方向転換を誤りだというのは、竹中氏と中川秀直政調会長しかいなかった。

政府内では与謝野馨経済財政担当相ら大勢は金融引き締め容認派だったので、日銀に対して政府から議決延期請求権の行使もできなかった。 

その結果、筆者らの予想通りに、半年後から景気が悪くなった。

しかも、上方バイアスが改訂された後、当時のインフレ率もマイナスだったことが判明した。

 こうした時には、経済指標ではなく、別の思惑があるものだ。

当時の日銀は何が何でも量的緩和を脱するという実績が欲しかったのだろう。

 今回の韓国銀行の金融引き締めにもその匂いを感じる。

経済データを虚心坦懐(たんかい)にみれば、金融引き締めのタイミングではない。

しかし、朝鮮半島の緊張が高まる中で、もし有事になれば、韓国からの資本移動が怖い。

これは、1997年のアジア通貨危機で韓国が国際通貨基金(IMF)管理になったことを彷彿(ほうふつ)させる。

 特に、今の日韓関係を考えると、当時のような日本からの支援融資も期待できない。

となると、今の時期に利上げして韓国からの資本移動を未然に防ぎたい欲求にかられても不思議ではないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)