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韓国、「慰安婦報告」日本を不快にさせる内容なら「紛糾」必至

2017-12-24 14:58:06 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2017-12-24 05:00:00

韓国、「慰安婦報告」日本を不快にさせる内容なら「紛糾」必至

アジアでの外交孤児の危険性

報告書次第で日韓外交が紛糾

 韓国の文在寅政権は頭を抱えている。

12月13日からの中国訪問では、冷遇されたうえ、共同発表も共同記者会見もなかった。

野党からは、「朝貢外交」と揶揄されて踏んだり蹴ったりの状況だ。

全て、文政権の外交戦略の失敗が原因である。

THAAD(超高高度ミサイル網)設置を巡って、韓国の主権に関わる問題であるから、中国が関わる事項でない。

そう言って、突っぱねるべきだった。

それを曖昧にして、「3不」という形で中国に「あめ玉」をしゃぶらせようとして、さらに問題を複雑にした。

 「3不」は、米韓軍事同盟を結ぶ韓国が恣意的に扱える問題でない。それほど微妙な内容である。

それを「自主外交」「均衡外交」という美名に酔って、米韓軍事同盟を修正するような動きをして大火傷を負った。

米国からも不信の目で見られている。

日本とは、「日米韓軍事同盟を結ばない。日韓は同盟国でない」と啖呵を切っている。

韓国は、期せずして日米中の三カ国とぎくしゃくする外交関係に陥っている。

 これだけでない。

韓国は、日韓慰安婦合意の見直し作業を行なっている。

12月27日には報告書が発表される手はずである。

この報告書が、日本を不快にさせるものになりそうだ。

今、韓国政府は大慌てである。

この上、日本を怒らせたらどうするか。途方に暮れている。最初は、日本を困らせる積もりで始めた見直し作業が、逆の結果を招いている。

 アジアでの外交孤児の危険性

『中央日報』(12月20日付)は、「慰安婦合意検証報告書、被害者排除に対する批判も」と題する記事を掲載した。

 韓国は、日本に対して「虫の良い」ことばかりを言い連ねている。

慰安婦合意の見直し作業を始めたのは文政権である。

日韓両政府が2015年12月に正式合意した協定で、日本側は10億円提供して実行済みだ。

一方、韓国は「少女像」を撤去せず、逆に協定文作成過程を検証するという、不誠実な態度である。

 これだけでも、韓国政府の態度は責められるが、慰安婦報告書の内容にかかわらず、来年2月の平昌五輪では、安倍首相に出席して欲しいという身勝手は依頼を寄こしている。

要するに、

①慰安婦合意を実行しない。

②慰安婦合意の過程を検証して問題点を日本へ突きつける。

③それでも、平昌五輪には安倍首相の出席を求めたい。この3点を並べてみると、韓国の非常識が際立つのだ。

 (1)「7月末に康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官の直属機関として設置されたタスクフォース(TF)はその間、韓日慰安婦合意関連の外交文書の検討と合意に関与した当局者のインタビューなどを実施した。

ある外交部消息筋はハンギョレ新聞を通じて

「『報告書には(合意に)慰安婦被害者との共感がなかった』

『密室合意だった』

『不可逆的という表現を合意に入れたのは主権を制限する』という内容が入るとみられる」と話した」

 韓国は、「国民感情が受け入れない」ことを理由に、慰安婦合意の見直し作業を行なってきた。その報告書の内容は、次のようなものになるという。

①  報告書には(合意に)慰安婦被害者との共感がなかった。

②  密室合意だった。

③  不可逆的という表現を合意に入れたのは主権を制限する。

 前記の3点は、全て韓国側の事情であって、日本側が強制したわけでない。日本には何らの責任もないのだ。

「密室合意」と言っても、外交交渉は全て密室で行なわれる。

交渉過程は、何十年か後に公開されることが普通である。オープンな外交交渉など存在しない。それは、討論会の類いだ。

「不可逆的」なる言葉も韓国側が挿入したものだ。

日本は、この問題が再び蒸し返されないように、「最終的」なる文言を入れたところ、韓国側が対抗して「非可逆的」と挿入した。

日韓協議で最大の問題は、韓国が協議決着間近になると、次々と新しい問題を持出すことだ。

これに辟易している日本は、慰安婦合意が「これで最後」という意味を込め「最終的」を挿入した。韓国は、これに対抗して「非可逆的」なる文言を入れてきた。

 (2)「今回の報告書は、韓国政府の立場と必ずしも一致するわけではない。

世論をまとめる過程などを経て政府の立場が発表されるとみられる。

康京和外交部長官は19日、韓日外相会談のために日本に到着した直後、羽田空港で記者からTF報告書に関する質問を受けると、『TFの結果が韓国政府の立場と必ずしも一致するわけではない』という立場を明らかにした。

一方、外交部関係者などによると、韓日慰安婦合意に対する韓国政府の立場と対応は来年2月の平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(五輪)以降に先送りされる可能性が高いという見方が出ている。

日本側は『TFの結果が否定的に出れば安倍首相の平昌冬季五輪出席は不可能だ』という立場を明らかにしていて、政府の措置を先に発表するのは政治的な負担が大きいからだ」

 慰安婦問題がこじれているのは、全て韓国側の事情によるものだ。

外国公館付近の少女像撤去は、国際法の取り決めである。

「国民感情」と関係がなく、韓国政府が撤去する義務を負っている。

その義務履行責任を果たさず、「合意見直し作業」の場に逃げているに過ぎない。

「卑怯」な振る舞いと批判されても抗弁できないであろう。

国家間の取り決めとは、それだけ厳粛なものである。

 安倍首相が、平昌五輪に出席しなければ、韓国も東京五輪に大統領が欠席すればいいのだ。

「祝意」がなくて出席するのも相手国に失礼になろう。

ところで、韓国は日韓関係が悪化した場合、どうするのだろうか。

中韓関係も米韓関係も冷却化している。

こうなると、韓国はまさに外交孤児に陥る。

いったん解決した日韓慰安婦問題が、文政権の登場で振り出しに戻ることはあり得ない。

文氏は、韓国国民を説得するしかないのだ。

 報告書次第で日韓外交が紛糾

『中央日報』(12月20日付)は、「2018年韓日関係のゆくえ、1週間後の慰安婦TF報告書にかかっている」と題する記事を掲載した。

 韓国メディアは、韓国が日米中との外交関係において孤立する危機感をひしひしと感じている。

12月18日に発表された米国の「国家安保戦略」では、「日米豪印」4ヶ国のアジア太平洋同盟構想が含まれている。

韓国は、この構想から除外されているのだ。

自由陣営に属する韓国が、米韓同盟から外れて中国へ接近し、不条理な条件をつけられて失敗するという、「ごてごて」の関係に陥っている。

この裏には、「86世代」という「反米・親中朝」派が、国益を無視した動きをしているからだ。

文大統領が、それを抑えられないという統帥力のなさを露呈している。

「日米豪印」から外されて当然であろう。

 (3)「2015年、韓日政府の間で行われた旧日本軍慰安婦問題の交渉過程および、合意内容に対する韓国外交部長官直属のタスクフォース(TF)の検討報告書が27日に発表される。

日本は合意遵守を主張しており、今回の報告書の発表が来年の韓日関係を予想する物差しになるものとみられる。

康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は19日、東京で開かれた韓日外相会談でTFの進行状況などを説明したが、河野太郎外相は「慰安婦合意の着実な履行が重要だ」という立場を再度表明した」

韓国では、従来の「反日」という感情論から離れ、日本が慰安婦検討報告書の内容如何で、どのような態度を取るのか。

固唾をのんで見守っている。

少女像撤去が、韓国の責任であることをよく知っているからである。

また、韓国外交が日米中三カ国との関係において、四面楚歌状態に追い込まれている結果だ。

これまで韓国の「反日」姿勢では、米中との関係が良好という背景において、日本へ強硬姿勢を取ってきた。

現在は、対米中関係で隙間風が吹いている。

その上、対日関係が悪化すれば、頼れる先がなくなるという恐怖感に苛まされている。

大袈裟に言えば、韓国外交は最悪事態に落ち込んでいるのだ。

 (4)「慰安婦合意そのものに対する韓国政府の最終的な立場は報告書の内容に基づいて後ほど別途発表される。

報告書が、韓国政府の立場決定に大きな影響を及ぼすことから、内容によっては来年の韓日関係の方向が決まるものとみられる」。

 文政権は、慰安婦問題というもっとも国民感情に訴えやすいテーマで、大統領選を勝ち抜いたと言える。

それだけに、この問題で対応を誤れば、国民の支持率低下は必至であろう。

一方、日本へ強硬姿勢を取れば、外交孤児は避けられない。いずれにしても厳しい立場に追い込まれた。

 文大統領は、一連の外交政策で失敗した最大の原因がどこにあるか。

それを模索することだ。私は、外交問題で素人同然の「86世代」を登用したことにあると見る。

彼らには、外交の見識があるわけでない。

学生運動家上がりで、火焔瓶を投げつけて権力に立ち向かった武闘派である。

韓国外交部の外交専門家を全て排除した「素人集団」が、感情の赴くままに外交を行なってきた。

そのツケが、文政権に重くのしかかっている。

この際、「86世代」を大統領府から追放することである。「餅は餅屋」の喩え通り、外交専門家に委ねる以外に道はあるまい。

 『中央日報』(12月20日付)は、「慰安婦合意の破棄、北の核開発を助ける」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

 このコラムでは、韓国が慰安婦合意を破棄することで生じる日韓関係の悪化は、安保政策で多大の損害をもたらすこと。

それ故、部分的な手直しをせよ、と主張している。

だが、日本はこういう韓国の身勝手な要求を受け入れるはずがない。

日本には何らの瑕疵もないのだ。

ただ、韓国の政権が変わったから見直す、という不条理な要求である。

国際法では、いったん締結された協定を遵守する義務がある。日本は、それを韓国政府に教えることだ。

 (5)「現政権が執権後に優先的に推進した作業の一つが慰安婦合意の見直しだった。

政府は7月末、締結の経緯などを点検する慰安婦タスクフォース(TF)を設置した。

今までの雰囲気では『合意の過程にいくつかの問題がある』という結論が出る可能性が高い 。

韓国政府が、調査結果を根拠に慰安婦合意を破棄すれば、これは韓日関係を火の中に投げ入れる格好となる。

北朝鮮の核の脅威に共に向き合う韓国と日本としては、少なくとも生存のために力を合わせるのが当然だ。

慰安婦合意を破棄することで両国間の信頼に大きな亀裂が生じれば安保協力にも打撃を与える。

今回の文在寅大統領の中国国賓訪問で目の当たりにしたはずだ。

中国を安保パートナーと見なすことがどれほど不安なことか。したがって、慰安婦合意を破棄する代わりにこれを補完する方向を進むのが正しい」

 文大統領の中国訪問によって得た経験では、中国が安保のパートナーではない、としている。

こういう文言に出遭うと、本当に驚かされる。

朝鮮戦争で韓国を侵略した中国が、政治体制も価値観の異なっているにもかかわらず、「安保のパートナー」とは信じがたいのだ。

ならば、米韓軍事同盟は、どういう位置づけなのか。

 韓国メディアの認識がこの程度とすれば、大統領府の「86世代」もこのレベルの安保観であろう。

余りにも低俗過ぎて、米国側も手を焼いているに違いない。

儒教文化圏という同一価値観の世界では、こういう破天荒な見方が出てくるのだろうか。理解し難い話だ。

 (6)「慰安婦合意のうち我々が憤りを感じる点が少なくないのは事実だ。

日本側の謝罪も十分でなく、慰安婦被害者の意見を聞かなかった点も問題だ。

それでも合意を破棄するより、日本首相の謝罪の手紙を駐韓日本大使が被害者に直接伝える形などの補完策で解決するのが望ましい。

日本の戦略的価値を無視してお互いが完全に背を向けることになれば、我々の安保に大きな穴が生じることを忘れてはならない」

 日本は、慰安婦合意における義務は全て果たしたのだ。

それにも関わらず、安倍首相に「謝罪文」を書けとの主張は、外交常識を超えている。

韓国メディアは、今回の文氏訪中で冷遇されたことで、中国を非難している。その理由は、国賓としての歓待ルールに外れているからだろう。

 外交にはルールがある。

慰安婦合意は、朴槿恵政権において行なわれた。

これは、外交ルールに則って行なわれた。

これを無視して、韓国の政権が変わったから、「交渉の仕切り直し」など国際的にあり得ない。

韓国は政権が変わるたびに過去に締結した交渉結果を見直すのか。

これこそ外交ルールに逸脱した要求である。韓国メディアも大人になるべきだ。

  

(2017年12月24日)