勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-11-08 05:00:00
韓国、「就職難」今年第4四半期から半年間は就業者ゼロの「恐怖」
韓国は、未曾有の就職難時代がやってきた。大幅な最低賃金引き上げが、就職戦線を凍り付かせている。
まさに人災だが、政府与党にはその認識がゼロという悲劇的な状況だ。
一方、日本での就職を希望する韓国の大学生は、募集枠700人に対して6200人も応募するという状況である。
『中央日報』(11月7日付)は、「韓国開発研究院、『来年第1四半期の就業者増加率0%になるかも』」と題する記事を掲載した。
(1)
「韓国開発研究院(KDI)は7日、来年第1四半期の就業者数の増加幅がゼロ人台の水準となるものと予想している。
KDIの展望値通りに来年第1四半期の就業者増加率が0%台となれば、2009年第1四半期(-14万人)以降10年ぶりに最低水準になる。
KDIのキム・ヒョンウク・マクロ経済研究部長は、『来年第1四半期の就業者数の増加幅も今年第4四半期のようにゼロ人前後になるものとみられ、大きく改善されないだろう』とし『雇用状況が少なくとも来年第1四半期から長い目で見れば上半期まで振るわない可能性が大きい』と話した」
実に、恐ろしい内容である。
今年10~12月の就業者増加率はゼロ%が予想され、長い目で見れば来年4~6月期まで、この状態が続くというのだ。
9ヶ月もの間、就業者増加率ゼロ%とは、文政権の政治責任を問われる問題である。
「雇用政権」という前触れで登場した政権が、「雇用破壊政権」になってしまった。
こうした事態を招くのは、雇用の実態を無視した最低賃金大幅引き上げにある。
この間違いを絶対に認めず、この責任を前政権に押しつけるという破廉恥な言動を続けている。
「革新政権」の欺瞞性をこれほどまでに表わした政権も珍しい。
必ず、誰かを悪者にしてそこへ責任を転嫁する。
呆れたほど、子どもじみた振る舞いを平気で行なう政権である。慰安婦問題、徴用工問題。すべて悪いのは日本というパターンである。
こういう無責任な政府の被害者は、韓国国民である。どんなに非常識な政権でも堪え忍ばなければならない。韓国大学生は、日本への就職口探しで難を免れようとしている。
『朝鮮日報』(11月7日付)は、「日本企業の就職博覧会に殺到した韓国の若者たち」と題する社説を掲載した。
(2)
「日本の110社以上の企業が参加して釜山で行われた就職博覧会に、韓国の若者たちが殺到した。
700人余りの採用に6200人が志望し、書類審査に合格した2500人のうち1000人以上が面接を受けた。
残りの1500人は7日にソウルで開催される就職博覧会の際に面接を受ける予定だ。
これまで韓国からは例年100人ほどが日本で就職してきたが、今年は採用予定人数が7倍以上にまで増えた。
この就職博覧会には日産やANAといった日本を代表する大手企業も参加しているが、それだけ日本では求人難が深刻ということが分かる。
今回の博覧会は雇用労働部(省に相当)が主催して行われた。
「雇用政府」を自負する今の政権は国内では雇用を確保できず、他国の企業に韓国の若者の採用を呼び掛けているわけだが、これは見ていて非常に歯がゆいものだ」
日本企業の700人余りの採用に、韓国学生の6200人が応募した。書類審査に合格した2500人が面接を受ける。
この就職説明会は、韓国政府主催である。
本来ならば、韓国国内で就職させるべき「義務」があろう。その責任を放棄して「雇用斡旋役」になっている。
この矛楯を何とも感じないとしたなら、政権担当の資格はない。
(3)
「若い人材は国にとっても大切な資産だ。
若者が海外に進出することも必要だが、それは国内での就職市場が安定してからの話だ。
これまで教育を与え育ててきた若者を韓国で生かすことができず、日本企業に渡すという状況がわれわれの目の前で進んでいる。
労働改革や規制緩和といった必要な対策から顔を背け、政治ポピュリズムが今後も続けば、東南アジアや南米で起こっているような雇用の大脱出も起こりかねないだろう。
韓国政府系シンクタンクの韓国開発研究院(KDI)は「今年の10-12月期は就業者数の増加幅がゼロになる可能性が高い」との見通しを示している。あまりにも深刻な事態だ」
韓国の大学生初任給は、30~40万円である。日本と大きな格差がある。
韓国財閥企業は、戦闘的な労働組合の賃金攻勢で、ここまで高い賃金を払わされている。国際競争力を失って当然だ。
日本の大卒初任給はせいぜい25万円程度であろう。これだけの賃金格差があっても、日本企業へ就職したがる理由は何か。
韓国では、寮もなく下宿すれば給料の半分は飛ぶという。
こういう実質面を計算すると、「実入り」は変わらないのだ。
しかも、入社後3~4年も経てば、名目額の給料差はかなり埋められる。
日本企業は、こういうメリットを韓国学生に説明して、長期勤務になるよう動機付をしているようだ。
韓国は、国民の税金で育てた学生を、韓国で雇用できずに日本へ渡している。
この矛楯を何とも思わない文政権は、経済無策のツケを国民に押しつけていると同じだ。
文政権の任期中は、これが繰り返される。革新政権といってもこの程度の能力である。
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2018-11-08 05:00:00
韓国、「就職難」今年第4四半期から半年間は就業者ゼロの「恐怖」
韓国は、未曾有の就職難時代がやってきた。大幅な最低賃金引き上げが、就職戦線を凍り付かせている。
まさに人災だが、政府与党にはその認識がゼロという悲劇的な状況だ。
一方、日本での就職を希望する韓国の大学生は、募集枠700人に対して6200人も応募するという状況である。
『中央日報』(11月7日付)は、「韓国開発研究院、『来年第1四半期の就業者増加率0%になるかも』」と題する記事を掲載した。
(1)
「韓国開発研究院(KDI)は7日、来年第1四半期の就業者数の増加幅がゼロ人台の水準となるものと予想している。
KDIの展望値通りに来年第1四半期の就業者増加率が0%台となれば、2009年第1四半期(-14万人)以降10年ぶりに最低水準になる。
KDIのキム・ヒョンウク・マクロ経済研究部長は、『来年第1四半期の就業者数の増加幅も今年第4四半期のようにゼロ人前後になるものとみられ、大きく改善されないだろう』とし『雇用状況が少なくとも来年第1四半期から長い目で見れば上半期まで振るわない可能性が大きい』と話した」
実に、恐ろしい内容である。
今年10~12月の就業者増加率はゼロ%が予想され、長い目で見れば来年4~6月期まで、この状態が続くというのだ。
9ヶ月もの間、就業者増加率ゼロ%とは、文政権の政治責任を問われる問題である。
「雇用政権」という前触れで登場した政権が、「雇用破壊政権」になってしまった。
こうした事態を招くのは、雇用の実態を無視した最低賃金大幅引き上げにある。
この間違いを絶対に認めず、この責任を前政権に押しつけるという破廉恥な言動を続けている。
「革新政権」の欺瞞性をこれほどまでに表わした政権も珍しい。
必ず、誰かを悪者にしてそこへ責任を転嫁する。
呆れたほど、子どもじみた振る舞いを平気で行なう政権である。慰安婦問題、徴用工問題。すべて悪いのは日本というパターンである。
こういう無責任な政府の被害者は、韓国国民である。どんなに非常識な政権でも堪え忍ばなければならない。韓国大学生は、日本への就職口探しで難を免れようとしている。
『朝鮮日報』(11月7日付)は、「日本企業の就職博覧会に殺到した韓国の若者たち」と題する社説を掲載した。
(2)
「日本の110社以上の企業が参加して釜山で行われた就職博覧会に、韓国の若者たちが殺到した。
700人余りの採用に6200人が志望し、書類審査に合格した2500人のうち1000人以上が面接を受けた。
残りの1500人は7日にソウルで開催される就職博覧会の際に面接を受ける予定だ。
これまで韓国からは例年100人ほどが日本で就職してきたが、今年は採用予定人数が7倍以上にまで増えた。
この就職博覧会には日産やANAといった日本を代表する大手企業も参加しているが、それだけ日本では求人難が深刻ということが分かる。
今回の博覧会は雇用労働部(省に相当)が主催して行われた。
「雇用政府」を自負する今の政権は国内では雇用を確保できず、他国の企業に韓国の若者の採用を呼び掛けているわけだが、これは見ていて非常に歯がゆいものだ」
日本企業の700人余りの採用に、韓国学生の6200人が応募した。書類審査に合格した2500人が面接を受ける。
この就職説明会は、韓国政府主催である。
本来ならば、韓国国内で就職させるべき「義務」があろう。その責任を放棄して「雇用斡旋役」になっている。
この矛楯を何とも感じないとしたなら、政権担当の資格はない。
(3)
「若い人材は国にとっても大切な資産だ。
若者が海外に進出することも必要だが、それは国内での就職市場が安定してからの話だ。
これまで教育を与え育ててきた若者を韓国で生かすことができず、日本企業に渡すという状況がわれわれの目の前で進んでいる。
労働改革や規制緩和といった必要な対策から顔を背け、政治ポピュリズムが今後も続けば、東南アジアや南米で起こっているような雇用の大脱出も起こりかねないだろう。
韓国政府系シンクタンクの韓国開発研究院(KDI)は「今年の10-12月期は就業者数の増加幅がゼロになる可能性が高い」との見通しを示している。あまりにも深刻な事態だ」
韓国の大学生初任給は、30~40万円である。日本と大きな格差がある。
韓国財閥企業は、戦闘的な労働組合の賃金攻勢で、ここまで高い賃金を払わされている。国際競争力を失って当然だ。
日本の大卒初任給はせいぜい25万円程度であろう。これだけの賃金格差があっても、日本企業へ就職したがる理由は何か。
韓国では、寮もなく下宿すれば給料の半分は飛ぶという。
こういう実質面を計算すると、「実入り」は変わらないのだ。
しかも、入社後3~4年も経てば、名目額の給料差はかなり埋められる。
日本企業は、こういうメリットを韓国学生に説明して、長期勤務になるよう動機付をしているようだ。
韓国は、国民の税金で育てた学生を、韓国で雇用できずに日本へ渡している。
この矛楯を何とも思わない文政権は、経済無策のツケを国民に押しつけていると同じだ。
文政権の任期中は、これが繰り返される。革新政権といってもこの程度の能力である。