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勝又壽良評論 「二重苦」に苛まされる中国経済、個人消費がネックで立ち往生

2018-11-09 17:31:44 | 日記

勝又壽良 評論

「二重苦」に苛まされる中国経済、個人消費がネックで立ち往生

2018 1:36 PM

重苦」に苛まされる中国経済、個人消費がネックで立ち往生

中国経済の仕組みは

企業利益は下り坂へ

アリババの利益変調

家賃が一転下落局面

8月末に危機を認識

中国経済は、不動産バブルの崩壊と米中貿易戦争が、大きな圧力となっています。企業利益の伸び率が鈍化し、賃金の伸び率を抑え、個人消費に警戒信号が出てきました。

中国経済の仕組みは

ここで、一般的な景気の動きを少し説明します。

景気は、先行指数・一致指数・遅行指数という三つの経済指標がタイムラグを置いて、山や谷を形成しながら循環していきます。

現在の中国経済は、先行指数に当る金融や株価、商品市況などはすでに下降に向かっています。

一致指数は、小売販売額や企業の営業利益も下降局面に入っています。遅行指数は、家計消費支出が減少のシグナルが出ています。

すべての景気指標が「下向き」で、総崩れの状態となりました。

以上のような、中国経済の仕組みを見ると、中国はもはや景気が上向くことはありません。下落の一途という状況に置かれています。

間違っても楽観論など出てくる余地はないのです。

先ず、この事実を冷静に受け止めて下さい。「まだ、なんとかなるだろう」という期待感を抱くのは、中国の最高指導部だけと思われがちですが、10月末の会議は悲観論で一致しました。

10月31日の共産党政治局会議で中国経済への深刻な懸念が示されたのです。

「当面の経済状況は穏やかな中にも変化がある。下押し圧力がある程度強まり、一部企業が経営困難となる例が多く、長期間、蓄積されたリスク、隠れていた問題が暴露され始めた」という厳しいものでした。

「長期間、蓄積されたリスク、隠れていた問題が暴露され始めた」とは、具体的に何を指しているのでしょうか。

不動産バブルが、GDPを押上げたものの過剰債務を累増させた。

その処理も事実上、未着手です。

これから、過剰債務の重圧で企業が倒産するケースも多発する。

中国最高指導部は、今回初めてそれを認めたのです。この事実が重要です。

再び、不動産バブルに火を付けて、景気回復のエンジンを吹かすことがないと見られます。

これ以上の債務依存経済は、自殺行為であるとの認識に達したと思われます。

もし、苦境に耐えきれず、バブルに点火するようなことがあれば、中国経済の未来は消えたといえるでしょう。そこまで、中国経済は追い込まれているのです

企業利益は下り坂へ

景気の一致指数の一つである企業利益は、はっきりと低落状態へ入っています。

中国上場約3500社の2018年7~9月期純利益は、前年同期比7%増でした。

4~6月期の23%増から大きく鈍化したのです。これは、日本経済新聞が10月末までに決算発表した数字を集計した結果です。

業績の悪い企業は、決算発表を遅らせる習性があります。全体の決算発表が終われば、純利益の伸び率はさらに鈍化している可能性もあります。

もう一度繰り返します。

4~6月期の純利益が前年同期比23%増。これが、7~9月期で7%増と大幅鈍化です。

米中貿易戦争の第3弾が発動されたのは9月です。

まだ、本格的な貿易戦争の影響は現れていないのです。その影響が、10~12月期の純利益に100%出ると見るべきでしょう。

となると、10~12月期の純利益の伸び率はマイナスの公算が大きくなる。中国経済に与える影響は甚大なものになるはずです。

中国では、情報管理が厳重で公表されて当然のデータが隠されています。

純利益の伸び率に激変が起れば、賃金にも影響が出るはずです。

この「筋道論」から類推すると、すでにアリババの業績に影響が認められます。

また、高騰し続けた家賃が一転、値下がり状況に入りました。「市場経済」とは、こういう形で瞬時に企業活動の停滞が小売や家賃へと波及してゆきます。

習近平氏は、この市場経済システムに背を向けています。

自分の意向通りに経済をコントロール出来ない忌ま忌ましさが、「市場経済」軽視へと追いやっています。これは、政策運営責任者として失格です。

アリババの利益変調

電子商取引大手のアリババ集団は、中国のハイテク大手として知られています。

だが、中国の消費者を相手に製品を販売する中小企業向けのプラットフォームです。

その意味でアリババは、注目のハイテク株というよりも、中国経済の先行きを占う目安となる存在と見なされています。

もうすぐ迎える「11月11日」は、中国で「独身の日」とされ、アリババは「ビッグセールス」を行なうことで有名です。その時の販売額で、中国の消費景気が占われているほどです。

今年はどうなるか。

アリババの営業利益増加率は、昨年がピークでした。昨年第2四半期からの営業利益の前年同期比を次に示します。データは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月5日付)に基づきます。

2017年4~6月期 98.7%増
     7~9月期 83.4%増
   10~12月期 25.8%増
2018年1~3月期  3.6%減
     4~6月期  9.0%増
     7~9月期 18.6%減

今年に入って、アリババの営業利益に変調が起っています。

アリババは前述の通り、中国の消費者を相手に製品を販売する中小企業向けプラットフォームです。

中国経済の末端である中小企業は、景気不振の影響を最初に受けます。

アリババは、収益の大半を中国国内で稼いでいるものの、米中の通商対立激化はリスクとなります。

経済減速による痛みが、中小企業とアリババに集中すると見るベきでしょう。アリババの業績は、中国末端景気のシグナルなのです。

アリババの10月以降の営業利益は、減益幅を拡大すると見られます。

上場企業の純利益が減益に転じると予想されるからです。

政府は、減税と財政支出拡大で対応する計画ですが、どこまで効果を上げられるか疑問です。

企業利益が悪化している中で雇用不安も起こり、賃金引き下げなどが重なれば、消費者の不安心理を高めるはずです。所詮、景況が大きく傾いている中で、財政効果は減殺されるでしょう。

家賃が一転下落局面

アリババの営業利益は、7~9月期に急ブレーキがかかった。実は、高騰していた貸家の家賃が9月以降、下降に向かうという事態を迎えていました。

中国房地産業協会(中国の不動産業協会)のデータによると、北京では8月、平均家賃が前年同月比21.16%上昇しました。

昨年同月は、同3.12%に過ぎなかったのです。中国の他の主要都市でも、同様の傾向が見られました。

前記協会によると、今夏は少なくとも19の省都で家賃が急上昇したのです。

中でも四川省成都では、8月の家賃が前年同月比32.95%と最も高い上昇率でした。

家賃急騰の裏には、投機資金が貸家市場へ殺到し、強引に家賃を引き上げたのが理由です。

都市部での生活費の上昇は、多くの人の賃金上昇ペースを上回っており、家賃の急騰で市民の不満が大きく広がりました。

「家賃の支払いは月給の3割程度を占めるほどになった」という北京市民の声もあるように、実需を無視した家賃の引上げでした。

それが9月に入ると突然の下落です。実需はなくて強引な家賃引上げが空き家を生み、大慌てで家賃を引下げたのでしょう。

中国房地産業協会は11月1日、今年10月の「中国都市賃貸価格指数」を発表しました。

それによると、1040.4ポイント(2016年1月を100ポイント)。前月から4.8ポイント(0.45%)低下しました。


これは、9月に続いて2カ月連続の下落です。9月は前月よりも0.7ポイント低下したので、10月の下落率が大きいのです。貸家需要が減っている証拠でしょう。

上がり過ぎた家賃が、その反動で下落に転じた。経済現象としてみれば、ごく自然なことに見られるのですが、中国経済を襲っている米中貿易戦争の影響が、所得の伸びを押え、家賃急騰の歯止め役になった

こう見ますと、中国経済は大きな曲がり角に立っていると言えましょう。

8月末に危機を認識

実は、中国政府は8月末の時点で、中国経済の変調に警戒していました。ここで、それを見ておきましょう。

『ロイター』(8月28日付)は、「中国、安定的で健全な経済発展の達成で困難に直面」と題する記事を掲載していました。

(1)「中国国家発展改革委員会(NDRC)の何立峰主任は28日、安定的で健全な経済発展の達成で外的困難さが増しているとの認識を示した。

主任は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の常務委員会で、『経済成長、雇用、インフレ、輸出入の目標は努力によって達成が可能』としつつ、

『ただ消費、社会融資総量、可処分所得の伸びの目標達成に向けて一段の努力が必要だ』と述べた。

困難さが増している原因については、経済の長期的な構造上の課題と外的環境によるリスクを指摘した」

NDRCが、「消費、社会融資総量、可処分所得の伸びの目標達成に向けて一段の努力が必要」と強調している点が重要です。社会融資総量とは、中国独特の概念でマネーサプライ(M2)のほかに、影の銀行の融資まで含みます。

これら項目は、政策当局が直接指示して動かせないのです。インフラ投資であれば、政府の指示でいかようにも増減できます。

だが、前記3項目は国民や企業の意思に従うもので政府のコントロールを外れます。

まさに、ミクロ経済の分野です。経済活動の基底は、このミクロ経済の活動に待つほかないのです。ここは、中国のような統制経済の泣き所です。市場機能を軽視してきた経済運営の国家では、手に負えない事態になっています。

中国経済は、GDPの項目を見ても分るように、総資本形成へ極端に依存した経済です。

例えば、このメルマガ(11月1日号)で明らかにしましたが、2016年の対名目GDP総資本形成比は44.1%、対名目GDP民間最終消費支出比は39.3%に過ぎません。この歪な経済構造において、緊急事態だから民間最終消費支出比率を一挙に押上げることは不可能です。「

消費、社会融資総量、可処分所得」はワンセットになって、家計支出と関わっています。

(2)

「ここ数カ月間の経済指標によると、中国では投資の伸びが鈍化。小売売上高や可処分所得の伸びも引き続き低調で、経済全体が冷え込み始めている。

一方では、相次ぐ景気刺激策や金融の緩和により、債務リスクの削減に向けた中国政府の取り組みが後退しているのではないか。何主任は、中国が経済のデレバレッジを続けていくが、その取り組みのペースと度合いはコントロールしていくとし、『中国は不動産市場の問題を解決し、不動産価格の上昇を断固抑制しようと決意している』と強調した」

中国では、投資(高すぎる総資本形成比率)の落ち込み分を、消費(低すぎる民間最終消費支出比率)でカバーすることは不可能です。
こういうアンバランスな経済構造をつくり出した目的は、経済成長率を比較的短期間に引き上げるという戦略に基づいていました。

今になって、その弊害に足をすくわれ、「消費、社会融資総量、可処分所得」がネックになってもどうにもなりません。過去の経済政策の失敗を嘆くほかないでしょう。中国経済が危機であるのは真実です。

日韓戦争100年、徴用工裁判が招く韓国の凋落 勝又壽良 評論

2018-11-09 17:15:18 | 日記

日韓戦争100年、徴用工裁判が招く韓国の凋落

韓国大法院判決の狙いは戦勝国の座

日本は韓国の国家予算3年分を支払う

実態は徴用工でなく「募集」への応募

韓国司法は時の大統領に迎合する傾向

「親中朝・反日米」旗印の「86世代」

大法院で判決に反対した2人の裁判官


韓国大法院(最高裁判所)は10月30日、戦時中の日本で働いた徴用工(実際は普通の労働者)による賠償請求権を100%認める判決を下しました。

1人1000万円、時効なしで遺族が永久に補償請求可能という内容でした。この判決内容は、次の点で世界を驚かせたのです。

1965年に締結した日韓請求権協定で、「個人の損害賠償請求権」は解決されなかったと判断したこと。

その根拠は、協定に日本植民支配の不法性が明示されなかったことを上げました。

過去において、植民地支配の不法性と法的責任を認めた判決はなかったのです。

その意味では、今回の韓国大法院の判決は、世界で初めての事例と指摘されています。

韓国の国民大日本学科の李元徳(イ・ウォンドク)教授が、次のように指摘しています。

「過去には、英国とオランダが植民地で働いた反人道的な虐殺行為について、ケニアとインドネシアに賠償金を支払う判決が下ったことがあった。

それ以外で、植民支配の不法性とそれに伴う法的責任を認めたケースはない」『朝鮮日報 電子版』(10月31日付)。

韓国大法院判決の狙いは戦勝国の座

戦後73年経った現在、改めて日韓併合時代の日本の不法性を糾弾する意味があるのでしょうか。

これは、韓国が日本に対して戦勝国になれなかったという事情が影響しています。

この点は後で詳細に触れますが、戦勝国であれば「賠償金」を取り立てられた。それが認められず「経済協力金」である。

個人賠償請求権が、経済協力金の中に取り込まれたのが違法である、という論理のように思われます。要するに、メンツの問題に帰着します。

韓国大法院はまた、次のような点も指摘しています。

韓国が、日本から受け取った無償3億ドルは、韓国の要求した金額とるかに食い違っているため、慰謝料請求権として受け取ったとは考えがたい、としています。

日韓基本条約(1965年)で日本が韓国に支払った金額は、「経済協力金」という名目でした。

日本が戦後に支払った賠償金は、太平洋戦争で被害を与えた国家が対象だったのです。

その点、韓国は日本統治下にあり、交戦状態にはなかったので、「賠償金」名目に該当しない、というのが日本の主張でした。

韓国は執拗に「賠償金」にこだわりました。「経済協力金」でなく「賠償金」であったならば、今回の大法院判決にならなかったのでしょう。韓国は戦後、日本に対して戦勝国として臨みたかったのです。戦勝国=賠償金になるのです。日本の対日講話条約で韓国は、「戦勝国」として出席することを米国に要求し拒否されています。

韓国が戦勝国を主張した背景は、1919年に中国上海に大韓民国臨時政府が設立されたことを上げています。

だが、日韓併合で大韓帝国が消えたのは1910年です。

この間の空白9年間によって大韓民国臨時政府が、大韓帝国との継続性を否定された理由です。

こうして韓国は日本に対して戦勝国になり損ねた。その恨みが、今回の大法院判決に出たと見られるのです。

今回の判決で、韓国の受けたダメージは極めて大きいのです。日本が、「条約を守らない韓国」というキャンペーンを始めれば、韓国は抗弁できません。

日本は韓国の国家予算3年分を支払う
日本の支払った「経済協力金」は、次のようなものでした。
1 無償3億ドル(個人保障を含む)
2 有償2億ドル
3 民間借款3億ドル以上

以上で、約11億ドルにものぼったのです。当時の韓国の国家予算は3.5億ドル、日本の外貨準備額は18億ドル程度でした。

この状況を見れば、韓国は国家予算の3年分のドルを手に入れたのです。日本の外貨準備高18億ドル程度で、その6割も支払うことがどれだけ大変であったか。韓国も分るはずです。

しかも、日本が韓国に残した資産は、51億ドル強と試算されていましたが、すべて放棄したのです。

日本が韓国に対して、「謝罪の誠意がない」という批判は、余りにも一方的と言えるでしょう。あるいは、言葉の上で幾重にも謝罪し金銭の支払いを拒む。どちらが本当の「誠意がある」と言えるのでしょうか。

この問題について、前記の韓国の国民大日本学科の李元徳教授は、次のように指摘しています。

「(当時の韓国は)経済的に国民所得100ドルにもならない最貧国であった上、南北関係でも劣勢だった。

韓国の立場としては、対日外交を突破口として経済と安全保障問題を解決するために、外交的選択をしたわけだ。

(日韓)協定が対日過去清算という問題を完璧に解決することが出来なかったということは、誰もが知っている。そうするしかない状況だった。判決を下した大法官(最高裁判事)らが当時の交渉に当たったとしても、それ以上の結果を導くことはできなかったはずだ」

実態は徴用工でなく「募集」への応募


韓国では、「強制徴用工」という言葉を使って、日本が無理矢理、朝鮮半島から日本本土へ連行してきたというイメージですが、今回の韓国大法院での原告は「強制徴用工」でなかったのです。自由意志に基づく「募集」でした。

安倍首相が国会で、このように答弁しています。

「11月1日、衆議院予算委員会に出席した安倍首相は先に「政府としては『徴用工』という表現でない、『旧朝鮮半島出身労働者問題』と言っている」と強調した。

また「これは当時、国家総動員法上、国家動員令には『募集』と『官斡旋』『徴用』があったが、実際、今回の裁判の原告は(徴用でなく)全部『募集』に応じたため、『朝鮮半島出身労働者問題』と言いたい」と説明した」(『中央日報』11月1日付)。

日本の国家総動員法(1938~45)は、日中戦争に端を発して人員や資源の一元的な運用を図るために施行されました。人的面では、募集・官斡旋・徴用の三種があったのです。今回の原告は自由意志の「募集」です。

朝鮮半島では、日本で働く「募集」は、厚遇であるので大変高い競争率であったという記録があります。

韓国では、「食事も十分に与えられず地獄であった」と言っています。だが,当時の朝鮮半島は日本領であり、同じ「日本人」であったのです。

日本人が、日本人を虐待したのでしょうか。にわかに信じがたい話です。

「募集」で賠償を求めるのも不思議な話です。韓国大法院は、こうした事実関係を調べずに原告の訴えをすべて認めたのです。一大汚点を残した判決と言えます。

韓国司法は時の大統領に迎合する傾向


韓国の司法は、時の政権の影響を受けやすいと言われています。検察も裁判所も行政から独立せず、迎合した動きをするのです。

一昨年から始った朴槿惠・前大統領の弾劾捜査は、それが明らかでした。

検察は、朴氏を最初から被疑者扱いで捜査しました。

また、現在の文在寅政権になって、その政権迎合性は一層、激しくなっています。

保守党は、朴失脚でミソをつけたので、政権から長期に遠ざかったという思惑も手伝い、革新政権へ媚びを売っています。

与党「共に民主党」のインターネットによる世論操作事件では、告発を受けてから2ヶ月ほど捜査に着手せず放置。

その間、被疑者の証拠隠滅を許したと韓国メディアは批判しました。

今回の韓国大法院の判決には、文大統領の発言が影響を与えたと思います。

韓国の文在寅大統領は昨年8月、韓国人徴用工の個人請求権が日韓請求権協定でも消えていないとの認識を示しました。

現職大統領が、係争中の問題である徴用工問題に言及したことは、司法への「政治不介入」という原則を逸脱したものです。

文氏が一員であった盧武鉉政権(2003~08)では、日韓請求権協定に徴用工問題が含まれているとの政府見解を発表しました。文氏はこの見解とりまとめにかかわったのです。

「親中朝・反日米」を旗印の「86世代」

こういう経緯を考えると、文大統領の前記発言は、盧政権の方針を否定するものであったのです。文氏は、なぜここまで変わったのか。

それは、文政権が「86世代」と言われる「親中朝・反日米」という政治思潮に染まった集団の後押しを受けているからです。

「86世代」とは、1960年代生まれ・1980年代に学生生活を送り、光州事件(1980年)で火焔瓶闘争をした学生運動家の集団です。

彼らは、北朝鮮の金日成思想に深く傾倒していたので、北朝鮮は聖地と言っても良いでしょう。

現在、韓国政府が南北交流に大変な熱意を込め、米国から「先走り」という警戒を呼んでいるほどです。




文大統領は10月に欧州を歴訪しましたが、「北朝鮮への制裁緩和」を訴え続けて、各国から拒否されました。

ここまで、米国と異なり「制裁緩和」に傾斜するのは、韓国大統領府が「86世代」に占められた結果でしょう。

この「86世代」は、司法関係にもネットワークを広げているのです。

日本の徴用工裁判は、彼らが長年抱いてきた日韓併合と日韓基本条約に共通する「日本帝国主義」の悪を叩く。

まさに念願の判決であったと思われます。だから、「強制徴用工」が「強制」か「志望」であったのか調べる必要はなかった。ただ、日本という存在を叩けば、それで目的を達成したのです。

大法院で判決に反対した2人の裁判官


問題は、これで終わったのではありません。

日本の最高裁判所は、すでに韓国からの個人賠償責任に関わる提訴を却下しています。

日韓基本条約の「無償3億ドル」に含まれているのが理由です。

となると、韓国大法院で勝訴した韓国の元徴用工(日本政府は今後、「半島出身労働者」と呼ぶ)と、その子孫は、韓国で日本企業の資産差し押さえをしなければなりません。

気の遠くなるような作業です。

韓国の徴用工は、14万7000人余もいるといわれます。日本政府は、日本企業に請求に応じて支払わないように説得しています。

韓国政府が、日韓基本協定で得た3億ドルから支払うべきだという立場です。

実は、韓国大法院の裁判官13人中、2人の裁判官は次の理由によって今回の判決に反対しました。



「請求権協定が憲法や国際法に違反しており、無効だと見るのではければ、その内容の良し悪しに関係なく、文言と内容に応じて守らなければならない」

「国は、請求権協定により個人の請求権を行使できなくなって被害を受けた国民に対し、公正な補償をしなければならない」(『朝鮮日報』10月31日付)と述べました。

韓国大法院は、韓国の外交政策へ干渉できないはずです。

外交は政府の権限です。前記の2人の裁判官が指摘するように、「(日韓)請求権協定が憲法や国際法に違反しており、無効だと見るのではければ」大法院といえども介入すべきでないのです。

韓国外交は、今回の大法院判決によって信頼を大きく傷つけました。

韓国と結んだ条約や協定が、韓国大法院から否定されれば無効とされかねない信頼感の欠如です。韓国政府が、日本に迷惑を及ぼさないためには、自国の責任で処理することでしょう。

韓国の対日「歴史戦」に対応せよ モラロジー研究所教授 麗澤大学客員教授・西岡力

2018-11-09 16:44:47 | 日記

韓国の対日「歴史戦」に対応せよ モラロジー研究所教授 麗澤大学客員教授・西岡力

正論

2018.112018.11.1

10月30日、韓国の最高裁判所が新日鉄住金(旧日本製鉄)に対して戦時中に同社で働いた4人の元工員に1人1億ウォン(約1千万円)の損害賠償を支払うよう命じた。

すでに私は8月8日付本欄などでこの事態を予想して2つの提言をしてきた。

第1に、政府が積極的に介入して民間企業の財産を守ること。

第2に官民が協力して国際社会に、戦時労働動員と日韓戦後処理の真実を広報することだ。


≪原告は「元徴用工」ではない≫

日本では4人の原告を「元徴用工」と呼び、裁判を「元徴用工裁判」と表現している。

しかし、4人の経歴を調べてみて、その呼び方はふさわしくないことが分かった。

彼らは「徴用」で渡日したのではない。

1人は1941年に、3人は43年に徴用ではなく「募集」「官斡旋(あっせん)」で渡日している。

なんと2人は平壌で日本製鉄の工員募集の広告を見て、担当者の面接を受けて合格し、その引率で渡日したという。

国家総動員法に基づく朝鮮での戦時労働動員は、判決のいうような「日本企業の反人道的不法行為」ではなかった。

戦時における合法的な民間企業での期限契約賃労働だった。

39年から41年に民間企業が朝鮮に渡って実施した「募集」、

42年から44年9月まで朝鮮総督府が各市、郡などに動員数を割り当てて民間企業に引き渡した「官斡旋」、

44年9月から45年3月頃までの徴用令に基づく「徴用」の3つのタイプがあった。

どれも動員先は民間企業で、通常2年の期限契約だった。

軍隊という国家組織に動員された軍人・軍属などとの大きな違いだ。待遇は総体的に良かった。44年に広島の軍需工場に徴用された労働者は月給140円をもらっていた。

当時、日本人男性の多くが徴兵のため不在で、日本本土は極度の労働者不足となり賃金が高騰していた。

だから「募集」の時期には出稼ぎ目的の「個別渡航」が並行して多数あった。「募集」15万人、「個別渡航」など44万人でむしろ後者が多かった。

≪動員対象者になりすます事例も≫

また、同じ時期、渡航許可なしに不正に渡日して送り返された者が1万6千人いた。

驚くべきことに不正渡航者の中には動員対象者になりすましたケースがあった。日本での賃金が高かったからこそ起きた現象だ。

「官斡旋」「徴用」の時期は「個別渡航」はほぼなくなった。

無秩序に渡航する出稼ぎ者の流れを戦争遂行に必要な産業に送り込もうとして統制を強めたのだ。

しかし動員先から約4割が逃走し、より待遇の良い別の職場に転職した。

逃亡の多さを待遇の悪さの例とする論が一部にあるが、それなら逃亡した者らは朝鮮に帰ったはずだ。

実際は帰らずに別の職場に移動した。中には渡日した直後に、事前に連絡を取っていたブローカーの助けで別の職場に移るケースもあった。

原告は「賃金の大部分は強制貯金させられ受け取れなかった。

逃亡したかったが警備が厳しくできなかった。募集広告に出ていた内容と実際の仕事が違った。

憲兵に理由もなく殴られた」などと主張している。

民事裁判だから被告が法廷で争わない部分については原告の言い分が認められてしまう。

日本企業は過去の記録や先輩社員らの証言を早急に集めておく必要がある。過去に元慰安婦が2年半でためた2万6千円の貯金記録が見つかっている。

韓国は65年の日韓協定で3億ドルを受け取り、75年と2008年に2回、未払い賃金や貯金があった者への清算を行った。原告もそのとき清算を受けられたはずだ。

≪公的な研究広報組織をつくれ≫

原告は日本の支援団体の励ましでここまで来られたと述べている。

戦時動員の裁判は1990年代、まず日本の運動家や弁護士が韓国などで原告を捜し、費用を日本側が負担して始まった。

それが全部敗訴してから、やはり日本の運動家らの勧めで韓国での訴訟が提起されたという。

2005年、盧武鉉大統領は「強制徴用」「慰安婦」に対する賠償を求める演説をして対日外交戦争を宣布し、東北アジア歴史財団をつくって研究と広報の体制を整えた。

また、首相傘下の「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」をつくり、「動員被害者」として22万人(労働者15万人、軍人軍属7万人)を認定した。

この盧政権から始まった対日歴史戦に、日本の学者・運動家らは「強制動員真相究明ネットワーク」(内海愛子共同代表)を結成して全面的に協力した。

釜山にある「国立日帝強制動員歴史館」では「良心の声」の持ち主として、内海氏ら18人の写真が飾られている。

このままでは22万人から1人1千万円、合計2兆2千億円の賠償を求められるかもしれない。

わが国が10年以上、韓国政府の歴史戦に政府レベルで対応してこなかったつけだ。


日本の立場からの徹底した調査研究と国際広報を行うため、わが国も公的な研究広報組織をつくるべきときが来ている。(にしおか つとむ)