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徴用工判決:韓国資産差し押さえも 日本が対抗措置検討

2018-11-30 10:16:13 | 日記
徴用工判決:韓国資産差し押さえも 日本が対抗措置検討

毎日新聞 2018/11/30 06:00


 日本政府は、元徴用工らへの賠償命令を受けた日本企業の資産が韓国で差し押さえられた場合、日本国内の韓国側の資産を差し押さえる対抗措置の検討に入った。

この措置は相手国の国際法違反行為に対して国連が条件付きで認めている。

実現のハードルは高いが、強硬手段をちらつかせて韓国政府に賠償判決への対応を迫る思惑もありそうだ。

 日本政府は、日韓請求権協定(1965年)により「賠償問題は解決済み」との立場で、韓国政府に賠償の肩代わりなどを求めている。

菅義偉官房長官は29日の記者会見で「韓国に国際法違反の是正を含め、適切な措置を講じるよう強く求める。

国際裁判や対抗措置も含めて対応する」と強調した。

外務省の秋葉剛男事務次官は李洙勲(イスフン)駐日大使を呼び出し、判決に強く抗議した。

 日本側は韓国政府の動きを当面見極める方針だが、原告が資産差し押さえの手続きに入れば、日本として阻止する手段はない。

請求権協定に基づく仲裁や国際司法裁判所への付託も、韓国側の同意がないと審理に入れないのが現状だ。

 一方、国連国際法委員会は2001年、国際法違反行為に対し「損害と均衡する措置」の是認を明文化した。

日本政府関係者は「差し押さえを国際法違反と位置づければ、対抗措置がとれる」と説明する。

ただ、日韓による報復の応酬になりかねず、日本にある韓国政府の資産を差し押さえる法整備も必要なため、あくまで韓国による対応を基本路線としつつ韓国側を揺さぶる狙いだ。

【秋山信一】

中国空軍「弱点」克服へ本腰、国産エンジンが課題

2018-11-30 09:50:18 | 日記
中国空軍「弱点」克服へ本腰、国産エンジンが課題

政治 中国・台湾 2018/11/30 6:30日本経済新聞 電子版

中国空軍が航空エンジンの自主開発に力を入れている。習近平(シー・ジンピン)国家主席の肝煎りで設立された国営企業の主導でロシア製エンジンへの依存から脱却を目指す。

11月上旬の航空ショーでは国産エンジンを搭載した戦闘機が俊敏な動きを披露したが、最新鋭ステルス機はロシア製エンジンのまま。空軍強国への道のりは険しい。


 中国広東省珠海で、国際航空宇宙博覧会に登場した中国軍機(ロイター=共同)


11月6日、広東省珠海で開かれた中国国際航空宇宙博覧会。轟音(ごうおん)で空に目を向けると戦闘機が急上昇していた。

機首を垂直に持ち上げて急減速。空中で静止したように見せるとゆっくり機首を水平に戻して飛び去った。

曲芸のような飛び方は「コブラ機動」と呼ばれ、機動性が高い機体にしかできない。


 
中国広東省珠海で行われた国際航空宇宙博覧会の開幕式=11月6日(共同)


披露したのは中国軍の主力戦闘機「殲(J)10B」のテスト機。製造元の中国航空工業集団は前日、エンジンをロシア製から国産の新型に切り替えた機体を飛ばすと予告していた。

噴流の向きを変えられるエンジンで機敏さが増す。同社幹部は「大きなブレークスルー」と胸を張った。

急速に近代化する中国空軍もこれまで戦闘機のエンジンはロシア製に頼ってきた。

国産は出力不足や安定性の欠如が指摘されてきたからだ。

ただ生命線をいつまでもロシアに握られれば安全保障上のリスクだ。軍関係者は「中ソ対立のような事態になったらどうするのか」と話す。

2012年に軍トップの中央軍事委員会主席に就いた習氏は「空軍強国」の目標を掲げた。

要となるエンジンの自主開発に向けて16年には関係企業を統合して従業員10万人に上る中国航空発動機集団を設立。

習氏は「航空大国への布石」と祝電も送った。今回の国産エンジン機の「コブラ機動」はこの2年の成果だ。

中国メディアは「祖国は諸君に感謝する」と書き立てた。

ただ順風満帆とまではいえない。テスト機の挙動を見た軍事専門家は「ロシアの最新鋭戦闘機のエンジンには及ばない。

新エンジンはロシア製のコピーにすぎないとの見方が多い」と話す。

航空博では最新鋭ステルス戦闘機「殲(J)20」も5分ほど飛行した。アジアのある国の空軍幹部は「初公開の2年前はゆっくり1分間飛んだだけ。

実戦配備の自信が見えた」と話したが「性能に大きな変化は見られない」と指摘した。

注目されたのはJ20のエンジンだ。

中国製が搭載される観測があったが2年前と同様、ロシア製のまま。香港紙は「試験に失敗」とも報道した。

真相は不明だが量産化はまだ先との見方が多い。


航空博では戦闘機用の国産エンジン「太行」も展示された


エンジンは海軍の戦略にも影響する。

中国航空工業集団の担当者は「空母には双発エンジンの飛行機しか載せられない」と明かす。

エンジンが一つの単発機は故障時のリスクが大きく、中国の虎の子の空母に使いにくい、との判断だ。

米国の空母艦載機F35は単発だ。中国国内でも国産エンジンの信頼度は低い。

10月、一人の中国系技術者がベルギーから米国に移送された。

米航空エンジン大手、ゼネラル・エレクトリック(GE)グループから機密の入手を企てた容疑だ。

米国では航空関連産業で中国系技術者の逮捕が相次ぐ。中国外務省はスパイ容疑を否定するが、各国の警戒度は高い。

米国はいま中国の技術振興政策「中国製造2025」を注視している。

中国は米国の技術を盗んで軍事転用し、安全保障上の脅威になるとみているためだ。

なかでも戦闘機エンジンは最も高い警戒レベルにあると言われている。

■中国製無人機、世界で増殖

広東省珠海での航空博の展示場の一番奥に人だかりができていた。

のぞくと目に飛び込んだのは巨大な平たいダークグレーの三角形。

偵察と攻撃を1機でこなす最新鋭ステルス無人機「彩虹(CH)7」の実物大模型だった。



珠海の航空博に登場した偵察攻撃一体型のステルス無人機「彩虹(CH)7」の実物大模型


製造元の中国航天科技集団の資料では最高速度はマッハ0.75。対地・対艦ミサイルを搭載でき高い攻撃力を誇る。

尾翼がないためレーダーに探知されにくくステルス性が非常に高いという。

中国メディアの試算では最長飛行距離は1万キロ超。中国からグアムの米軍基地を攻撃して戻れる。

来年にも初飛行の予定だ。実戦配備されれば米軍や周辺国の大きな脅威になる。

中国航天科技集団は「CH4」「CH5」など複数の無人機をつくる。

同社によれば輸出実績は既に10カ国以上。相手は非公表だが中東やアフリカ、アジアが多いようだ。

中国メディアによるとイラクは過激派組織「イスラム国」(IS)への攻撃にCH4を260回使った。

イエメン内戦でもアラブ首長国連邦がシーア派側を中国製無人機で狙ったとされる。

軍用無人機は中国航空工業集団も製造する。

国営新華社通信は2月、同社の最新機「翼竜2」について「海外から過去最大の発注があった」と伝えた。

中国製は安価な上、米国のような輸出規制もない。近未来の空は中国製無人機ばかりになるかもしれない。

■日本の備えは十分か

2年ほど前、中国国防省系列の新聞につぎはぎだらけのみすぼらしい戦闘機のイラストが掲載された。

尾翼に描かれた日の丸マークから航空自衛隊の主力機「F15」だと分かった。

中国軍機とF15がニアミスした事件が騒がれた時期だ。1972年に初飛行したF15は老朽化が進む。

中国が空自の戦闘機を見下し始めたと感じた。

日本の防衛関係者と話すと「中国軍は統制がとれていない」「運用がいいかげん」という。

中国軍は元制服組トップが腐敗で摘発されたように確かに問題は多い。

指示が末端まで届きにくいのは中国組織の特徴でもある。

ただ、中国は変化し始めると早い。

最新技術を積んだステルス機が日本周辺に頻繁に飛行するようになれば、自衛隊はどこまで対処できるのか。見たくない現実が近づいている。

(北京=永井央紀)