第48話・なぜ韓国は必ず破滅するのか?(後編) ←政府の運営資本を外債に頼っているから
政府予算さえ外債に頼る韓国において最悪な事態は、『もしも外国人保有者が撤退し始めたらどうするか?』という局面にぶち当たった時だ。
政府(年次)予算は、その年の国家の運営費だ。車で言えばガソリンに当たる。これがショートするということは、車がエンストするに等しい。
韓国の場合、政府を動かす予算そのものが無くなることを意味する。つまりデフォルトだ。政府機能が死滅する。これが一番悪い。
明日、突然、政府機関(もしくは政府の機能・サービス)が停止するからだ。
対韓外国人投資家が韓国から資本を引き上げる時、韓国は政府財源が消滅する事を意味するが、この状況は特にアメリカで利上げされた時に起こりやすいとされている。
米国金利が上昇するというのは、大抵はアメリカ国内が好景気でFRBがインフレ懸念から金利を上げにかかるためだ。
つまり『強い経済力』の裏返しでもあるのだ。
この『良い』状態の時に金利が上がれば、アメリカで投資すれば利払いが大きく儲かるし、たとえ景気が利上げのせいで少々減速したとしても、なお強い経済力がGDPを押し上げる。儲けのチャンスはまだ十分に残っている。
一方、米国内民間企業には投資家などからの資本流入があり、これが米国経済の下支えとなる資金元にもなる。
失速の心配が少なくなるし、FRBが更なる利上げに踏み切れば、その分だけ利払いも増えてくれる。
さらに国内投資なら、ウォン=ドルの為替差損の心配もなくなる(米ドル扱いの米国金融投資家は特に)。韓国から投資を引き上げる理由は揃(そろ)った。
あとはタイミングだけとなり、米国金利の上昇分による利回り期待がウォンの利回り期待より上回り、かつウォンとの為替リスクヘッジの負担増額よってウォンを保有する価値がなくなった時だ。
この段階で投資家は米国債にシフトし、同時に韓国政府から運用資金が失くなり、デフォルトを起こす・・・これがアジア通貨危機の時、韓国に起きたことだった。
ここは日本とは決定的に違うところだ。何が違うかといえば『時間的余裕』だ。
日本の場合も政府予算を国債で賄(まかな)っている点では同じだが、国債で賄えなくなる前に、例えば財政均衡策や増税等によってプライマリーバランスの改善を図る時間的余裕がある。韓国はこの余裕がないのだ。
また日本の場合、日本政府が主体的に財政均衡策や金融緩和策などを採れるが、韓国の場合、米国FRBや海外での景気動向に左右され、自国の影響力に乏しい。
前章で述べた『国家の金融体力』がないためだ。負担を担う官民金融機関が無いことを意味する。
これは実に恐ろしい話しで、自国政府の運営が外乱によって決定されるということだからだ。政策能力の欠如に等しい。外国任せ・運任せになっているからだ。
無論、韓国が外国人投資家を抱え込むためには韓国国債の金利を上げるのがてっとり早いが、それは利払い負担の上昇を意味する。
この利払いが政府予算を更に圧迫し、しかも一度でも支払えなくなれば即デフォルトになる。
日本の赤字は、国内需要の喚起のために使われる(国富のための)投資であるのに対し、韓国の赤字は政府予算の直接的な補完。
よって資金不足が即、政府がショートするという構造になっている。これが韓国必滅の致命傷だった。
この時、「韓国は経常収支で黒字だから大丈夫」という話しをしたがる馬鹿者もいるが、前述のように経常収支の黒字はなんの保障にもならない。
特に韓国国内市場が小さい(←ということは国税収入も小さい)ために、海外に輸出している結果の『黒字』であれば危ない。
この場合、要は『必要な時に税収入が確保できるか?』だけが問題となる。外国人投資家による政策財源の引き抜き分を埋めることが出来るのか? だ。
なにより税収のアップは翌年の政策予算の話しであって、今日、引き抜かれた政府予算の穴埋めには間に合わない。この理屈が韓国人には判っていない。サムソンやら現代やらが「売上が過去最高」はどうでもいいのだ。より肝心なことは・・・
「緊急時の政府の臨時予算を組むための財源を政府が確保してるのか?」
「無いのなら、国民に大増税を強要できる政治的な強さを政権が持っているのか?」・・・だ。
そして、「どちら出来ません」なら、サムソンや現代やらの貿易黒字を出している企業が韓国政府予算の不足分15兆円以上のカネを拠出出来るのか? という話になる。
無論、出来ないだろう。
いや、強力な銀行が複数あればこの程度の『少額』、一瞬で賄(まかな)える。国家の臨時国債を引き受け、後に増税して穴埋すればよいだけの話だからだ。
ところが韓国は愚かなことに金融業ではなく、製造業へと無駄に投資をしているのだ。
つまり10大財閥に対する有形無形の補助金の支出のことだ。
貧乏なくせに莫大な補助金を政府予算から毎年支出してサムソンやら現代やらの財閥企業だけを助ける(と同時に癒着の温床にもなっている)韓国政府および、そのことを何も知らない韓国国民と、あとはサムソンに1兆円ものカネを貸しこんでいる日本のみずほ銀行などのような海外債権団の愚行といえる。
たしかにフランスは似たようなことをしている。たとえばルノーなどの主要企業の株式の保有者は政府だ。
また日本でも近年、日銀ETFによりユニクロなどの民間企業の株式を中央銀行が大量に保有し、事実上の筆頭株主になったりもしている。
しかしこれらは『株式』の形を通じて取得してるので、少なくとも株式市場の下支え要因にはなる(良し悪しはともかくとしても、だ)。
だが韓国の場合、政府から産業支援金の形で拠出されるために、もし企業の売上が伸びなかった場合には拠出金そのものが焦げ付いてしまう。
株式市場の場合、最悪、ジャンクに下がってもジャンク債を取り扱う専門業者や個人などが多数存在していて、市場の論理で上昇が可能だ。
『将来性が見込めればジャンク債は資産。見込めなければ殺すだけ』これだけだ。
しかし政府の補助金の場合、返せなくなれば政府・国家の債務となる。これが『民間企業に補助金を出すべきでない』というマネタリストたちの言う『極端な民営化論』の一つの根拠でもあるのだ。
筆者とて同じだ。みずほが焦げ付くと考えて、預金を避けているのは筆者だけではないはずだ。
ATMの使用料が上がるだけでも不愉快だからだ。政府の補助金制度はいずれ必ず破綻する。企業の寿命を考えれば不滅も無敵も有り得ない。なら、市場の原理に従うほうが、より良いのだし、補助金に回すカネで金融資本の充実を図るほうがよいという結論に達する。
なにより経常収支の黒字や貿易黒字が意味がないというのは、まさにこういうことだった。
政府予算が突然消滅するという事態は、どうしても避けたい最悪の事例だ。政策予算不足に陥ってしまうと、貿易黒字やら経常収支の黒字など全く意味がなくなるだけでなく、逆にサービス収支の赤字などが全て『悪材料』としてクローズアップされてしまうという悪循環に陥る。
日本のデフォルト不安は、巨額の国債利払いがショートした時に発生するという不安で、一方の韓国のデフォルトは、政策予算がショートした時に発生するという不安だ。利払い不足を補う時だけなら臨時予算を組むことが出来るし、そのための潤沢な資産を日本は保有している。
一方韓国はショート時の金額が、対韓国GDPに対して巨額すぎるだけでなく、潤沢な資産を政府がリザーブしていない。貿易黒字が韓国国内需要の小ささによって生じているのならば、国家の経済余力もまた小さいということだ。
日本のショートの理由となる負担は、日本国に対して少額で、現在の保有資産の取崩や国民への臨時増税などで補える。この余力のために、ショート対策のための時間的なマージンもある。韓国はこの逆なのだ。彼等は総じて余裕がない。
たしかに韓国が米国債をかなり保有しているのも事実だが、大抵の国では米国債を国家が保有する意味は『自国通貨の発行のための担保金』として使うためであり(これは第七章・第79-以降の一章で述べる)、よって安易に取り崩せるものでもない。ウォンという紙くずに価値を与えるためにドル資産(米国債)が必要なのだ。
また通貨スワップの話しも出てくるが、韓国は2009年に米国とのスワップ協定に基づき、すでに実施している。これは民間企業であれば『一回目のデフォルト』に相当する。つまり二度目など、あるはず無いのだ。次は韓国がデフォルトして消えて失くなるのが順当だ。
更にいえば、日本が結んでいる通貨スワップは日本国の防衛のためではなく、世界経済を安定化させるためのバックボーンであって、もし国際主要通貨のどれかが激しく毀損(きそん)したら、他の通貨でこれを支え、世界の破滅を防ぐための最後の塞として用いることを意図している。志の高さが違うのだ。
この韓国の恐るべき脆弱性は、全て韓国国内の金融業の脆弱さからくるもので、構造的な致命的欠陥だ。
我々が一緒に検討してきた『国家にとってエネルギーと金融は特別』という実例でもある。韓国は金融が弱いので、危機に弱く、常に国家破綻の不安から逃れられない。
しかも韓国の場合、今更、金融国家へと移行させる起動力も見つからない。
敢えて言えば財閥が金融業務に乗り出さなかったこと・多国籍金融機関として成長できなかったことが韓国必滅の理由となるだろう。
拙文の第29話における『鈴木商店』がサムソンの行く末ということなるのだ。韓国政府がサムソンに10兆円を超える補助金を出し続け、これを出し続けることができなくなった場合には、だ。まるで台湾銀行からの融資を打ち切られた鈴木商店のように、だ・・・。
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