世界のニュース トトメス5世
世界・経済・歴史ほか
2019年08月24日15:00
中国はアメリカではなく不良債権に潰される
金融債務や企業債務、公的債務は3者一体で、中国は共産主義なので民間企業の利益を政府が吸い上げている。
世界・経済・歴史ほか
2019年08月24日15:00
8/19(月) 13:10配信
日韓関係が「史上最悪」とも言われているなか、韓国は経済面で苦境に立たされている。
サムスン電子の2019年4~6月期決算では、営業利益が6兆6000ウォン(約6000億円)と前年同期に比べ56%減少した。
主力の半導体部門で営業利益や71%も減少したのが主因だ。
サムスン電子といえば売上高が国内総生産(GDP)の約10%にも到達するという巨大企業。
波及効果を考えると同社の業績悪化にとどまらず、半導体市況の悪化は韓国経済全体の大きな打撃になるとの見方が強まっている。
もとより韓国は世界景気の変動に影響を受けやすい。韓国の人口は日本の約半分で、1人当たりGDPは日本の80%ぐらい。単純計算すれば韓国の国内消費は日本の4割ぐらいと考えられる。
国内経済の規模が小さい分、輸出で稼ぐ構図は日本よりも顕著というわけだ。
主力の貿易相手国は圧倒的に中国だ。17年には輸出のおよそ4分の1が対中国。輸入の相手も2割強が中国だ。
このため米中貿易摩擦の影響が、中国よりも先に顕在化したともいえそうだ。
本来ならば中国で昨年開催するはずだった中国共産党の4中全会(第4回中央委員会全体会議)は依然として日程すら示されず、経済の運営方針も明確に定まらないなかで、米中貿易摩擦の問題は結局長引くとの見方は強まっている。
そうなると、とにかく人口が巨大な中国は国内需要でなんとか経済を回すことができたとしても、問題は韓国だ。
半導体産業の立て直しや、そのための産業構造改革なしには韓国経済は立ち行かなくなるのでは、といった見方が金融市場で浮上してきた。
そんな先行き懸念を映しているのが韓国株安と、韓国の通貨ウォンの下落だ。
韓国の総合株価指数(KOSPI)は1900台前半と、約3年ぶりの安値水準に沈んで推移している。
昨年1月のピークからみると約4分の3の水準に下落した計算だ。
外国為替相場でも1ドル=1210ウォン近辺までウォン安・ドル高が進行。
さらに下落の勢いだ。2016年の春先以来ほぼ3年半ぶりの安値水準だ。
韓国の株安、通貨安は米欧の投資家が韓国からの投資資金を、急速に引き上げていることを示している。
財閥系の企業が多く、国内資本の厚みが相対的に乏しい韓国にとって、ウォン安は実に曲者なのだ。
ソウル五輪を開催した1988年以降、韓国の名目GDPはウォン建てで見れば右肩上がりになっている。
だが、これをドルに換算すると、およそ10年周期でマイナス成長局面を迎えていることがわかる(グラフ)。
1997年のアジア通貨危機と、2008年のリーマンショックだ。
これらの時、韓国は不況の震源地でないにも関わらず、落ち込んだドル建てGDPを回復するのに数年かかる深刻な経済の危機を迎えた。
それだけに、前回リーマンショックの約10年後である現在への不安感は特に高まりやすいだろう。
そうした不透明感の中で、政治家が経済への不安から視線を反らすのに「反日」を利用しやすい面はあるのだろう。
米中関係の悪化を追いかけるように日韓関係が悪化した、といえば勘ぐりすぎかもしれない。
それにしても韓国政府が「反日」の姿勢を強調している間は、政権が自国経済の苦境と真正面から向き合おうとしていないと見ることができそうだ。
もし韓国の株価指数に連動するETF(上場投資信託)などへの投資を考えるのなら、韓国政府が反日路線を転換し、しっかりと経済を見据えた政策打ち出したのを確認してからでも遅くはないだろう。
(経済ジャーナリスト・山本 学)
2017年5月10日、文在寅政府が発足してから2年が過ぎた。
文在寅政府は、所得主導成長論(1)に基づいて労働政策と社会保障政策に力を入れており、国民、特に低所得層の所得を改善するための政策が数多く施行された。
まず、労働政策から見ると、2017年に6470ウォンであった最低賃金は2019年には8350ウォンに引上げられた。
また、「週52時間勤務制」を柱とする改正勤労基準法(日本の労働基準法に当たる)を施行することにより、残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を68時間から52時間に制限した。
労働者のワーク・ライフ・バランスを実現させるとともに新しい雇用を創出するための政策である。
社会保障政策としては2018年から「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる文在寅ケアが施行された。
ポイントは医療費支出による国民生活の圧迫の主因とも言える保険外診療(健康保険が適用されず、診療を受けたときは、患者が全額を自己負担する診療科目)を大きく減らすことである。
また、2018年9月からは児童手当が導入された。対象は満6歳未満の子どもを育てる所得上位10%を除外した世帯であり、子ども一人に対して月10万ウォンが支給された。
さらに今年の4月からは所得基準が廃止され、満6歳未満の子どもはすべて児童手当の対象になった。
一方、65歳以上の高齢者のうち、所得認定額が下位70%に該当する者に支給される基礎年金の最大給付額は2018年9月から月25万ウォンに引き上げられた。
このような政策が問題なく実施・定着されると所得格差は改善され、国民はより豊かな生活ができるだろう。しかしながら、急な政策の実施により、あちこちで悲鳴が上がっている。
まず、最低賃金が2年間で29.1%も引き上げられたことにより、企業の人件費負担は2年前に比べて約1.3倍も増加することになった。
その結果、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアを中心に無人店舗が増加し、一部の企業では労働者の数や労働時間を減らすことで人件費に対する負担増加を緩和しようとしている。
「週52時間勤務制」の実施は、労働者の「夕方のある暮らし」を可能にするものの、その代わりに労働者の賃金総額は減ることになる。
特に、基本給が低く設定されており、残業により生活水準を維持する製造業で働く労働者が受ける影響は大きい。
韓国中部に位置する世宗特別自治市と忠清南道地域の自動車労組は、週52時間勤務制の実施により賃金が減少した問題に着目しながら、2018年10月1日に早急の対策を求めた。
自動車労組は賃金の減少分が補填されないと、10月5日から総ストライキに突入すると発表した。
幸いに、減少した賃金の一部を補填する等の妥協案が出され、ストライキまでは至らなかったものの、全国各地で労働時間短縮による賃金減少の問題をめぐる労使間の葛藤は恒常的に起きている。
一方、社会保障政策は今後も拡大路線が鮮明である。
2018年9月に導入した児童手当は、その支給対象を拡大し2019年10月からは対象年齢が満7歳未満に拡大される。
また、満65歳以上の高齢者に支給される基礎年金の給付額も引き上げられる。
2019年4月からは所得下位20%の高齢者の基礎年金の給付額を既存の月25万ウォンから月30万ウォンに引き上げ、その後は所得下位70%の高齢者まで段階的に引き上げる予定である。
基礎年金の給付額を日本円に換算すると3万円程度で、高齢者が生活するためには十分ではない金額かも知れない。
しかしながら、保険料を納めることにより受給権が発生する日本の国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額が、2016年度末現在で5万5千円(基礎のみ・旧国年の受給者の場合は5万1千円)であることを考慮すると、保険料という収入なしで年金を支出せざるを得ない韓国政府の財政的な負担はかなり大きいだろう。
韓国政府は社会保障拡大政策を実施することに伴い、来年度予算を大きく増やした。
2019年度予算案の一般会計総額は470.5兆ウォンで、2018年度の428.8ウォンに比べて9.7%も増加した。
2019年度予算案の一般会計総額の対GDP比は24.8%で、日本の18.5%より高い。
その中で、保健・福祉・雇用関連予算額は2018年度の144.6兆ウォンから2019年度には162.2兆ウォンに12.2%も増加しており、一般会計予算の34.5%を占めることになった。
福祉部門だけをみると72.4兆ウォンで、前年に比べて14.6%も増加しており、日本の一般会計予算の社会保障費増加率3.3%を大きく上回っている。
韓国における2017年の高齢化率は14.2%で、日本の高齢化率27.7%を大きく下回っているものの、一般会計総額や福祉関連予算の増加率は日本を大きく上回っている。
日本に比べて公的社会保険が給付面において成熟しておらず、公的社会保険の保障率が低いことがその理由ではないかと思われる。
つまり、公的社会保険により保護されていない人々を国が国の財源により保護しようとしていることや、
所得主導成長を目指し、社会保障政策を拡大したことが日本より一般会計総額や福祉関連予算の増加率が高い理由であるだろう。
韓国政府は予算を増やしてでも、貧困や格差、若者の就職難、出生率の低下という社会問題を解決したいところであるものの、その効果がなかなか出ないことに非常に苦慮している。
しかしながら、政府予算が無駄に使われたケースも少なくない。最近、韓国で起きた私立幼稚園と老人療養施設の会計不正などがそのいい例である。
従って、今後は予算の拡大のみならず、予算使用の監視体制を強化する必要がある。
また、政府予算が短期的な効果を生み出す短期的な政策だけではなく、より長期的で持続可能な制度の実施に使われ、韓国社会の根本的な問題が解決できるように知恵を絞るべきである。
さらに、増え続ける予算を確保するための議論も慎重に行わなければならない。
韓国政府は2018年時点で39.5%である債務残高の対GDP比を今後も40%水準で維持することを計画しているものの、急速な少子高齢化の進展や所得主導政策の実施は今後より多くの財源を必要とするに違いない。
従って、今後安定的な税収の増加を確保しないと、財政赤字やそれを埋め合わせるための国債発行額は増え続け、所得主導政策の実施を妨げる要因になるだろう。
今こそが、社会保障や税の一体改革が必要な時期であることを忘れてはならない。韓国より先に社会保障や税の一体改革を実施した日本の事例は韓国政府に大きな参考になるだろう。
------------------------------------- (1)所得主導成長論は、家計の賃金と所得を増やし消費増加をもたらし、経済成長につなげるという理論で、ポスト・ケインズ学派のマル・ラヴォア教授(カナダ・オタワ大)とエンゲルベルト・シュトックハマー教授(英キングストン大)教授の「賃金主導型成長」に基づいている。文在寅政府は韓国に零細自営業者が多い点を考慮し、賃金の代わりに所得という言葉を使い、最低賃金の引き上げや社会保障政策の強化による所得増加と格差解消を推進している。
金 明中(きむ みょんじゅん) ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任