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PRESIDENT Online
現在、日韓関係は過去最悪の状況になっている。これまで、わが国は韓国の一方的な主張を大人の態度で容認してきた。
例えば慰安婦の問題、東日本大地震以降の海産物の輸入規制、さらには元徴用工への賠償問題をめぐる問題について、韓国政府は誠意ある態度を示したとはいえない。
今回、政府は、安全保障を理由に韓国への輸出管理手続きを見直した。
IT関連の部材に加えて、信頼できる国である"ホワイト国"から除外することが閣議決定された。
今後、韓国への輸出が厳格に管理されることになると、韓国産業にはかなり大きな影響が出るとみられる。
そうした状況下、韓国では"反日感情"が勢いづいている。
この状況は、経済政策の失敗と北朝鮮融和政策の行き詰まりに直面する文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、むしろ"追い風"といえるだろう。
文大統領は反日姿勢を鮮明にすることで、支持の上昇につながっているからだ。
ただ、すでに韓国経済の先行き見通しは悪化している。
それにわが国の輸出手続き見直しが加わると、韓国の景気先行き懸念は更に高まる可能性がある。
それに伴い韓国世論は、いずれ文大統領の政策の限界を再認識する可能性もあるだろう。
すでに韓国の経済界には文政権の対日政策を懸念する者が多いようだ。
わが国は、韓国内外の理解者を増やし日韓政府が本当の意味で問題解決に向けた協議の席につく状況を目指すべきだ。
足許、韓国経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズは不安定化している。
それに伴い、韓国銀行(中央銀行)は、7月18日の金融通貨委員会(金融政策を決定する会合)で予想外の利下げに踏み切った。
その背景には、韓国の経済成長を支えてきた半導体の輸出が伸び悩み、経済の先行き不安が高まっていることがある。
2017年以降、スマートフォンの需要は飽和し出荷台数は減少している。
データセンターへの投資も振るわず、世界的に半導体の生産能力には余剰感が出ている。
韓国の輸出、設備投資ともに増加する展開は想定しづらい。
4~6月期、韓国経済の実質GDP成長率は、政府支出の増加に支えられて前期比1.1%成長した。
ただ、半導体に代わる成長のけん引役が見当たらない中で、韓国経済が持続的な成長を目指すことは口で言うほど容易なことではない。
韓国銀行はわが国の対韓輸出管理の見直しが、経済の下振れリスクを高めるとの警戒感も示した。
特定3品目の輸出管理見直しに加え、わが国が韓国を"ホワイト国"から除外すると、韓国経済には無視できない影響が及ぶだろう。
なぜなら、韓国はわが国の技術力を用いて半導体の生産能力を高め、成長につなげてきた側面があるからだ。
理論上、ホワイト国からの除外が決定し、実際に輸出の手続きが変更されると、わが国から韓国に輸出される食料品や木材などを除く1000以上の品目の輸出許可が、包括許可から個別許可に切り替わる。
どの品目が対象となるかは、わが国の意思決定次第だ。
ホワイト国の認定、あるいは除外はわが国の判断であり、他国に干渉されるものではない。
以上を踏まえると、わが国の制度運用(どの品目の手続きを厳格化するか)によって、韓国企業の活動にはかなりの影響が出る恐れがある。
韓国ウォンやソウルの株式市場の動きを見る限り、市場参加者はホワイト国除外への警戒感を高めているとは言いづらい。ただ、楽観は禁物だろう。
ホワイト国からの除外は輸出規制の強化ではない。
それは韓国への輸出管理制度を、2004年以前の個別許可制度に戻すことを意味する。
個別許可制度の下、輸出手続きには2~3カ月の時間がかかるものとみられる。
それにより、従来に比べて韓国が半導体製造装置など必要なモノを、必要なタイミングで確保することは難しくなるだろう。
これは、韓国企業の生産ラインを混乱させ、経済の下押し圧力を高める恐れがある。
なお、EUは韓国への輸出優遇を行ってはいない。
韓国ではわが国の対応に関して、日本が輸出規制を強化し経済を混乱させていると、反日感情がエスカレートしている。
企業の反発にあい最低賃金の引上げ公約を撤回せざるを得なかった文大統領にとって、反日感情の高まりはまさに好機だ。
文氏は反日姿勢を鮮明にすることで、支持率を回復させている。2020年4月には韓国で総選挙が実施される。
文大統領としては、世論の反日感情の高まりに便乗して支持率をさらに高めたい。
ただ、この状況がいつまでも続くとは考えづらい。
韓国の国民性には「熱しやすく、冷めやすい」という特徴があるといわれる。
足許、韓国の世論は文政権の経済運営への"失望"から、一転して反日姿勢の"歓迎"へと急速に傾いている。
過去の日韓関係を振り返っても、こうした状況は繰り返されてきた。
短期的に韓国の反日感情は高まるだろう。
問題は、先行きの経済のリスクが高まっていると考えられることだ。
賃金や雇用環境の悪化が鮮明化すれば、韓国の社会心理は再度、文政権への批判に急転する可能性がある。
韓国政府はわが国の輸出管理手続き見直しへの対応策として半導体材料や製造装置の国産化を進めるとしているが、韓国の業界関係者さえ、その対応力に疑問を呈している。
4~6月期のサムスン電子の決算を見ても、半導体事業の落ち込みは深刻だ。
その上にホワイト国除外が重なれば、韓国経済はかなり厳しい状況を迎えるだろう。
経済環境の悪化に伴い反日感情のテンションは下がる可能性がある。
わが国が韓国の一方的な主張に対して、感情的に批判することはあってはならない。
それは、韓国の反日感情をさらに激化させ、韓国に同情する国が増えるきっかけを作ることになる恐れがある。
文政権の反日感情を勢いづかせた結果、国際世論がわが国の対応を不安視する展開は避けなければならない。
わが国は韓国の感情的な批判や主張に対して、丁寧な無視に徹するだけでよい。
安倍政権に求められることは、韓国が摯実な態度でわが国との協議に応じるよう、環境を整えることだ。
韓国にとって、わが国とスムーズに貿易取引ができる環境は、経済の安定に欠かせない。その意味で、韓国が実利を求め、わが国との協議に臨まざるを得ない環境整備が求められる。
政府は、韓国の経済界や知日派の政治家などとの関係をつなぎ、わが国が文政権下の韓国に対して輸出手続きを見直さざるを得なくなった実情を丁寧に説明することが重要だ。
特に、韓国の経済界には対日関係の冷え込みを懸念する声が増えている。
彼らが、わが国の対応がやむを得ないものであるとの認識を持てば、韓国の態度は徐々に変化に向かう可能性がある。
それと同時に、政府は迅速に国際世論を味方につけなければならない。
韓国国内から相応の認識を引き出しつつ、国際社会においては"数の論理"からわが国への賛同を増やす。
それができれば、いつまでも韓国が身勝手な主張を続け、わが国が求めてきた輸出管理に関する協議などに背を向け続けることはできないはずだ。
今後、日韓の関係が更にこじれるなど、紆余曲折が想定される。
ただ、確かなことは、対話を経ずして日韓の関係修復は進まないということだ。
日韓の関係がどうなるかは、極東情勢の安定感を左右し、周りめぐってわが国の国力にも影響を与える恐れがある。
それを避けるために安倍政権は国際世論や韓国の知日派など、あらゆる方面への働きかけを通して、日韓が冷静に向き合い、協議の席に着くことを目指すべきだ。
元徴用工訴訟や日本政府による対韓輸出規制の強化で日韓関係は極度に緊張している。トランプ米政権が日韓双方に自制を求める動きをしていたことが明らかになったばかりだ。
なぜここまで日韓は分かり合えないのか、なぜ韓国は約束を「反故」にするのか、
2019年4月に二度目のソウル勤務を終えて帰国した朝日新聞前ソウル支局長の牧野愛博さん(現・編集委員)が、
そうした疑問に答えるように書き下ろしたのが、本書『ルポ「断絶」の日韓』(朝日新書)である。
朝日新聞の韓国報道というと色眼鏡で見られがちだが、牧野さんの韓国発の記事は出色だったというのは、永田町・霞が関・マスコミでの定評だろう。
これまでに文藝春秋や講談社からも著書を出している。
イデオロギー的なバイアスがかかっておらず、韓国の人々の息づかいが感じられるし、何よりもシークレットなソースによる「スクープ」も目立っていた。
社会部、国際報道部(外報部・外信部)系のソウル特派員が多い中で、牧野さんは政治部出身。
各社とも明らかに韓国・朝鮮へのシンパンシーが過剰と思える記者や帰国後、鬼の首を取ったようにかの国をこき下ろし、本を粗製乱造する記者もいる中で、冷静に中庸ともいえるスタンスを貫いてきたといえるのではないか。
本書のまえがきで、牧野さんは韓国に内在するさまざまな問題にふれている。
「韓国人は皆、日本が好きだが、公の場で日本を擁護することは難しい」という韓国の知人たちの言葉を紹介する。
その理由は3つ。第二次大戦直後の李承晩政権による激烈な反日教育。
それを受けた世代がまだ影響力を持っている。
次に北朝鮮の存在。
北朝鮮の国営メディアが韓国の反日感情に火をつけ、日韓関係にひびを入れようとしている。
三番目に日韓それぞれの地位の変化。韓国もG20の一員となり、日本よりも中国とうまくやった方がいいという見方が出てきた。
そして文政権は日本に関心を持たず、持ちたくないという姿勢を続けている、と指摘する。
日本以上に大企業重視、学歴偏重という社会のゆがみが大きく、韓国の人々は怒りや不安を抱えている。
だから日本への関心も知識もない一部の集団が激しい日本批判を繰り返し、留飲を下げている、と牧野さんは見ている。
本書はレーダー照射事件、徴用工判決と慰安婦財団問題、この100年の日韓の歴史、文在寅大統領とは何者か、と叙述を進める。
特に文大統領との軋轢が興味深い。
牧野さんの報道は標的にされ、2017年の後半、大統領府への出入りを禁止される。
17年6月15日付朝刊で「米議員に冷たい?文政権 訪韓しても面会拒否や短時間対応」という記事が発端だった。
米共和党の重鎮マケイン議員への対応を報じた記事だが、「事実無根」「爪先ほども事実のない報道」と批判されたのだ。
さらに18年5月18日付朝刊の「核兵器の搬出、韓国が提案 4月、米朝の仲介目指しボルトン氏に」という記事で、史上初の「無期限立ち入り禁止」処分を受けた。
18年末をもって解除されたが、この言論弾圧を報じた内外メディアはほとんどなく、評者も初めて知った。
メディアの役割を「報道」ではなく「広報」だと勘違いしている同政権らしいエピソードだと書いている。
本書は「ルポ」と銘打っているだけに、読みどころは第5章「混乱する韓国社会」だ。
文政権の最低賃金引上げ政策により、従業員を減らしたものの値上げを迫られ客足が減った大衆食堂、中国発のPM2.5を認知しながら強い抗議も出来ず、進む環境汚染、
業務で英語を使うことはないのにTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)700点以上を求める企業に就職するために疲弊する生徒・学生。
そんな社会のひずみが活写されている。
本書では書いていないが、苦労して大学に入っても大企業に就職出来るのはほんの一握り。
将来に光を見出せず、自国を「ヘル(地獄)韓国」と呼ぶ若者たちが多い、と別の本にあった。
だから出生率は日本を下回っている。
日本を上回るスピードで少子高齢化が進むが、社会保障政策が充実していないので、高齢者の生活は苦しい。
これ以上、経済が悪化したらどうなるのか、という不安が日本製品排斥運動につながっているのかもしれない。
牧野さんは、最終章で日韓の未来にふれている。「民間交流という光明」と書いているが、この夏、相次いで民間交流の中止が報道されている。
必要以上に韓国をけなすことも、持ち上げることもない、という著者のスタンスには共鳴できる。
だが、今回の対韓輸出規制の強化を評価する気分が評者にあることも正直に書かなければならない。
韓流ドラマを見るために高いCS放送を契約するほどの韓国ファンではあるのだが、どこまで日韓関係は行ってしまうのか。まさに正念場を迎えている。
日本が韓国に対し、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目について貿易管理上の優遇措置を撤廃したことへの韓国の対応は、
昨年のレーダー照射問題の時と同じように、問題をすり替え、すぐ誤りとわかる言い訳をするというものであり、これでは問題の解決にはならない。
韓国政府の言い訳がいかにその場しのぎのものか検証し、韓国にとって、より効果的な対応は何か考えてもらうべく、提言したい。
この措置は、あくまでも安全保障上の理由から取る国内運用方法の見直しであり、「徴用工問題」への報復ではない。
「元徴用工」問題に関連する報復措置であるならば、全面禁輸措置を取っていたであろうし、韓国経済への直接的影響は、はるかに深刻なものになっていただろう。
日本が戦略物資についてしっかり輸出管理を行うことは国際的な義務である。
これまで日本から韓国に輸出されたものについて、韓国での取り扱いに不適切な事例が多く見つかったため、これを是正せざるを得なくなったということである。
韓国政府は、国会の野党議員からの資料要求で、戦略物質の不正輸出事例が2015年から19年3月までの間に156件摘発されたとの情報を開示している。
これが日本政府の言う不適切事例とどう関連するかは確認されていないが、疑わしいケースが多数あることは間違いなさそうだ。
加えて、これまで輸出管理を包括的許可とすることに伴い、2年ごとに運用実態をチェックする協議が行われることになっていたが、文在寅政権発足後、まだ一度も行われていない。
こうしたことから、これら3品目について包括許可を与えることは困難と判断したのだ。
しかし、韓国は政府・国民をあげて、日本の輸出管理の運用方法の見直しを報復措置であると反発しており、WTO違反であるため協議と撤回を求めると主張している。
韓国政府にとって、これが輸出管理上の日本の国内問題であると認めることは、日本への対抗措置を取りづらくすると判断したのかもしれない。
輸出管理上の国内運用問題だと認めてしまえば、韓国政府は対抗手段がなくなり、自らの手足を縛ることになってしまう。
WTOで争うことはより困難となり、米国に助けを求めることもできなくなるだろう。
また、北朝鮮との関連で自ら制約要因を課すことになりかねない。
自分の主張だけを正当化しても、そこに客観性が伴わなければ誰も説得できない。
韓国の主張通りならば、日本が全面禁輸措置を取っていたかもしれないと考えたことはあるのだろうか。
自分の都合だけで判断しないで、客観的に状況判断すべきではないのか。
日本が包括許可を個別許可に切り替えた要因の一つが、輸出管理に関する協議が3年間行われていないことである。
韓国は、協議を行う時期に、日本の担当局長が欠員であったことを上げていた。
しかし、日本政府は2日後に、局長は在職であったことを明らかにした。
仮に当時欠員であっても、新局長が就任してすぐ開催すればいいことであり、3年間も開かない理由はない。
そもそも、この協議は通常課長レベルで行っているものだ。
これらを勘案すると、韓国の主張がいかに根拠のないものか一目瞭然である。
5月17日付けの朝鮮日報は、保守系野党議員の要請を受け、産業通商資源部が情報開示した「戦略物質 無許可輸出摘発現況」に関し報じている。
その156品目の内訳は、生物・化学兵器関連物質71件、通常兵器関連物質53件、核兵器関連物質29件などとなっている。
この不正輸出先には、中国、ロシア、シリア、イラン、パキスタン、アラブ首長国連邦など、北朝鮮と関係の深い国が含まれており、こうした品目がこれらの国々を経由して北朝鮮に流れていたとしても不思議はない。
また、状況証拠的に見ても、文在寅政権は金正恩委員長の機嫌を損なわないよう、北朝鮮の嫌がることは何もしたがらない。
北朝鮮に戦略物資が送られたとしても、これを差し止めるだろうかとの疑念を持つことは決して不自然ではない。
それだからこそ、であろうが、韓国は日本の一部で北朝鮮との関係を疑っているとの報道を受け、日本を痛烈に批判している。
韓国政府は、「最近日本から輸入したフッ化水素が北朝鮮に流出したといういかなる証拠も見つかっていない」と指摘。
また、朝鮮日報も「露骨に北朝鮮と関連づけようとしている」「日本は隣国に対する経済報復を合理化しようとフェイクニュースまで動員する国に成り下がったのか」と報じている。
しかし、こうした不適切事例が北朝鮮にこれらの物品が輸出されたものではないとするならば、
韓国政府自身がこの事例について、どの企業が関与して不正輸出されたものか、その最終目的地はどこかを調査して、公表すべきである。
こうしたフォローアップを行っているのかどうかは、公表された資料からは明らかになっていないが、日本を批判するのであれば、しっかりとした根拠を示して批判すべきである。
もしフォローアップを行っていないのであれば、韓国の物品管理がいかにいい加減か、あきれ返るばかりである。
今のような状況で、韓国が日本に引き続き包括許可を求めることなどできない。
韓国の野党「正しい未来党」の議員は、日本安全保障貿易情報センターの調査の結果明らかになったとして、1996~2003年の間に日本から北朝鮮に30件以上の不正輸出が摘発され、これには核開発や生物・化学兵器関連の物質も含まれると指摘している。
しかし、韓国と日本の不適切事例の根本的な違いは、日本は輸出される前に摘発しているのに対し、韓国は輸出された後に摘発したに過ぎないことである。
その違いを考えもしないで日本を韓国と同列に扱ってほしくないものである。
日本政府は韓国と協議し、この措置を撤回することは考えていない。
しかし、韓国政府は、この問題の韓国経済への影響を最小限にとどめるためには、この問題と正面から向き合う以外にない。
それには文大統領の決断が鍵になり、経済官庁にできることではない。
文大統領は10日になって財界トップと会談したが、1人3分の発言時間では財界の抱える困難は理解できないだろう。
それは、あくまでもこの問題に取り組んでいるという、国内向けの宣伝に過ぎない。
輸出管理の問題は、全面禁輸の措置とは違い、不正な流用がなく適正に使用されているのであれば許可される。
加えて、その許可に要する時間も、通常90日といわれるよりもはるかに短期間であるとの話も聞く。
いずれにせよ、今回の措置に伴う直接的な影響は、韓国政府が懸念するよりも小さいものとみられる。
したがって、韓国政府・国民は日本に対し感情的に反発するのではなく、理路整然と不正輸出の事例をきちんと説明し、今後の不正を極小化する努力をしていくことが、現在取り得る最善の道ではないだろうか。
WTOに提訴しても、判断が示されるまでには長い時間がかかる。
それに、安全保障に関連した輸出管理の問題であるため、韓国の立場に同調する国も上級委員もいないのではないだろうか。
老婆心ながら、より現実的な努力をする方が得策ではないかと思う。
文政権の経済運営のせいもあり、昨年の韓国企業の海外投資は、一昨年と比べ倍増し、逆に外国からの韓国への投資は、本年上半期に半減しているという。
そうした中で、韓国の不正輸出が疑われ、日本との経済摩擦が深刻化すれば、韓国国内への投資意欲はいっそう減退するだろう。
さらに、日本製品不買運動までやれば、韓国の消費市場はいっそう縮小し、韓国経済の足かせとなることは間違いない。
そうした韓国経済全体を見渡してみた場合、日本の措置による直接的なマイナス効果は大きくなくても、韓国経済がいっそう萎縮していくことは避けられないかもしれない。
文政権のこれまでの経済運営の結果、世界の格付け機関、韓国の民間経済研究所ばかりでなく政府系の研究所も、今年の韓国経済の見通しを下方修正している。
直近の韓国経済の現実には悲観的にならざるを得ない。文政権は日本の対応をいいことに、韓国経済の失速は日本のせいだと言うだろう。
しかし正確に言えば、文政権の経済運営が主たる要因だ。
下手な言い訳をしても日韓関係も韓国経済も良くならない。大統領の政治は結果責任でもある。現実を直視し、国益を考えた責任ある政治を行ってほしいものだ。
(元・在韓国特命全権大使 武藤正敏)