2019-08-07 05:00:00
勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
韓国、「対日恐怖症」口先強気でも株価・ウォン急落「論より証拠」
テーマ:ブログ
韓国は、国中が「反日」に燃えている。地方自治体が、「不買運動」の旗を振っているのだ。その意味で、「官製反日」が実態と言える。
具体的には、地方政府が購入・賃貸している品目のうち日本産製品に対する取引全面中断、民間部門の日本製品不買と日本旅行ボイコットに対する参加、日本でのすべての公務上の訪問と日本との姉妹提携活動中止などだ。
この運動に、すでに100の自治体が参加しているという。与党が首長の自治体が積極的である。
こういう「ボイコット・ジャパン運動」は、対日恐怖症の現れでもある。
昨日(5日)の株価とウォン相場の急落は、韓国市場が他国市場よりも大幅であったことが判明。この「プラス・α」分は、日韓関係懸念を示している。
『中央日報』(8月6日付)は、「ブラックマンデー、国民の不安感減らす政策が必要」と題する社説を掲載した。
(1)
「きのうKOSDAQ指数が7.5%の暴落を記録した。
KOSPI指数は2.6%下落し、ウォンの価値もやはり大きく下落した。
日本日経指数が1.7%、中国上海指数が1.6%落ちるなど米中貿易戦争の余波で世界の株式市場が同時下落してはいる。
しかし韓国の株式市場はとりわけ大きく揺れた。原因は日本の経済報復に対する不安感だ。
日本からの素材部品供給に影響が出て韓国の産業と経済がぐらつくという懸念が市場と投資家の心を奪った」
昨日は、人民元相場が1ドル=7元割れとなった影響で、日経平均指数が1.7%、中国上海総合指数が1.6%下落した。
だが、KOSDAQ指数が7.5%の暴落。KOSPI指数は2.6%の下落というように日中の株価下落を上回るものだった。
日韓経済摩擦が、重石になっている証明だ。
(2)
「この日朝、日本の報復に対する対応策として韓国政府が発表した「素材・部品・装備競争力強化案」も特に効果はなかった。
骨子は「100品目の核心素材部品技術開発などに年間1兆ウォンを投じ早期に素材部品供給を安定化させる」ということだ。
前日の政府与党協議で「来年1兆ウォン以上を素材部品産業に投じる」とした延長線だ。
きのう午後には文在寅(ムン・ジェイン)大統領がメッセージを送った。
首席秘書官・補佐官会議の冒頭発言で「南北間の経済協力により平和経済が実現するならわれわれは一気に日本経済の優位に追いつくことができる」とした。
「日本は決して韓国経済の跳躍を防ぐことはできない」ともした。しかし市場は落ち込んだまま動かなかった」
韓国政府が発表した「素材・部品・装備競争力強化案」や、「南北経済協力により一気に日本経済の優位に追いつく」との大統領発言も株価を押し止める力はなかった。
「対日恐怖症」が深刻であることを窺わせている。
(3)
「金融側でも不安感が生じている。
円建て貸付問題だ。
金融危機の際にウォンが暴落し円を借りた多くの企業・個人の負債が座して2倍に増えた記憶は鮮明だ。
当時ほどの状況は繰り返されないだろうが兆しは尋常でない。
日本がホワイト国除外措置を発表してわずか2日でウォンの価値は円に対し5%以上急落した。
それでも点検と準備はない。金融監督院は円建て融資総額がいくらなのか把握さえしなくなっている」
長らく、ウォン・円相場は安定した動きであった。
1ウォン=約0.1円程度。
それが、今日の終値は0.0875円となり、ウォン安が進んでいる。
日本による韓国の「ホワイト国除外」決定以来、5%以上の急落である。
日本に対する韓国の総合的な弱さは、こうしたウォン安に表れている。
文大統領が言うような「日本打倒」は、不可能であることを為替相場が示唆している。
韓国、株価・ウォンが急落「理由?」
文在寅大統領は8月2日以来、「怒髪天を衝く」勢いだ。
日本の韓国に対する「ホワイト国除外」決定にショックを受け、日本に勝つと宣言。
国民を不買運動へ駆り立てている。
熱病のように「日本討つべし」という姿勢だが、客観的な評価が5日の株価とウォン相場急落となって現れてきた。
注目のウォン相場は、一挙に1ドル=1200ウォンを割り込んでおり、警戒信号が灯った感じだ。
こうなると、文氏の「大言壮語」が痛々しく映る。日本を討つ前に、韓国が「こけて」しまいそうである。
『聯合ニュース』(8月5日付)は、「韓国株式市場が急落、時価総額約5兆円を喪失」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国総合株価指数(KOSPI)と新興企業向け市場のコスダックが5日急落し、韓国株式市場の時価総額が約50兆ウォン(約4兆3547億円)減少した」
この記事ではKOSPIとコスダックが、なぜ急落したか。
その理由については、全く触れていない。
考えられる点は、米中貿易戦争の悪化による韓国の輸出減。それに加え、日韓紛争が嫌気されたと見るほかない。
韓国で「3度目の通貨危機」が起これば、もはや日本の金融支援は受けられない。
それどころか、日韓対立がマイナスに作用する懸念の方が大きい。
韓国はあれだけいきり立たず、日本との交渉余地を残しておくべきであった。
現状は、「日本征伐」という雰囲気であり、株価やウォン相場にプラスになるはずがない。
(2)「この日の終値を基準にしたKOSPIの時価総額は1298兆2000億ウォンで、前営業日比で33兆5000億ウォン減った。
コスダックの時価総額は197兆9000億ウォンで、同15兆7000億ウォン減少した。
この日KOSPIは前営業日より51.15ポイント(2.56%)安の1946.98で取引を終えた。これは2016年6月28日(1936.22)以来の安値」
KOSPIは、2016年6月以来の安値になった。
上期の大企業の営業利益が、前年比約40%の減益となったことが嫌気されたのであろう。
今後の輸出は、日韓対立もからみ不透明な部分もある。政府自身が、日本を批判して警戒観を打ち出しているので、株価の下がるのは当然であろう。
(3)「コスダックは前営業日比45.91ポイント(7.46%)下落した569.79で取引を終えた。
コスダック指数が600を割り込んだのは17年3月10日以来、約2年5カ月ぶり。
この日の終値は15年1月8日(566.43)以来の安値だった。
コスダックではこの日、指数が6%以上急落したため取引が一時制限された。
韓国取引所は同日午後2時9分に、指数急落を受けコスダック市場のプログラム売り呼び値の効力を5分間停止する「サイドカー」を発動したと伝えた。
サイドカーはコスダック150先物指数が6%以上、上昇または下落し、コスダック150指数が3%以上、上昇または下落する状態が1分間続いた場合に発動される。
指数の急落により売りの効力が停止されたのは2016年6月24日以来、約3年1カ月ぶり」
コスダックは、6%以上の値下がりで「サイドカー」措置と呼ばれる取引停止(5分間)が行われた。
2016年6月以来である。KOSPIも2016年6月以来の安値に落込んでいるので、「連れ安」相場という印象である。
ウォン・ドル相場は5日、1ドル17.3ウォン安となり、1215.3ウォンで取引を終えた。
これまで1200ウォンが「マジノ線」と見られてきたが、簡単にこの線を割ったことは「為替不安」を呼ぶリスクを抱えている。
5日の株価とウォン相場の急落に影響を与えたのは、世界3大信用格付け会社のフィッチのレポートの影響もあろう。
米中の貿易紛争が激化する場合、韓国の来年のGDP成長率が0.24ポイント低下する可能性があると明らかにしたもの。
『朝鮮日報』(8月5日付)は、「米中紛争激化なら、韓国のGDP成長率0.24ポイント下落」と題する記事を掲載した。
(4)「8月1日にトランプ米大統領は、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆円)相当に来月から10%の関税を課すと発表した。これに中国が真っ向から反発して報復に出ると仮定すれば、韓国の成長率が低下するという状況に陥るわけだ。
これに先立ちフィッチは韓国の経済成長率の見通しを今年2%、来年は2.66%と予想している。
フィッチが分析した主要20か国のうち、わが国の成長率見通しの下落幅はメキシコ(-0.25ポイント)に次いで大きい。米国(-0.11ポイント)と中国(-0.23ポイント)よりも大きな打撃を受けることを意味する」。
フィッチは、韓国の来年のGDP成長率を0.24ポイント低下すると予測している。
これは、米中貿易戦争の当事国よりも大きい低下幅だ。韓国の輸出相手国の1位は中国、2位が米国のマイナス影響を両方から受ける結果であろう。
韓国にとっては「泣き面に蜂」という状況だ。