政権揺るがす“対日批判の急先鋒”のスキャンダル
なぜ、韓国は予想外の決断に至ったのか。その背景には、内政、外交面で“爆弾”を抱えた文在寅大統領の状況が関係しているという。
まず、内政面では、最低賃金引き上げなどで引き起こされた経済の低迷。
外交面では、北朝鮮から「再び対座する考えはない」などと宣言され、また日本とも輸出管理をめぐる対立が続くなど、進む孤立化の問題があった。
こうした“爆弾”に加え、現在、韓国国内では文大統領の最側近であるチョ・グク前民情首席秘書官をめぐり、政権を揺るがす大スキャンダルが起こっているのだという。
加藤綾子キャスター: 文大統領の側近であるチョ・グク氏に数々の疑惑が出てきたということですが、この人物はどういった人物なのでしょうか?
鴨下ひろみ国際取材部長: チョ・グク氏はソウル大の教授なんですけど、文在寅大統領のブレーン中のブレーンといった方で、非常に頼りにされています。
この人を法務大臣に起用して、検察改革を任せようということで、今回、韓国が予定している内閣改造の目玉中の目玉だったんですね。
その人物のスキャンダル、色々ありますが中でも韓国の世論が最も反発しているのが、娘さんが大学不正入学をしていたんじゃないか、息子さんが兵役で不正をしていたんじゃないかという疑惑が持たれていて、ここに非常に反発が大きく出ているんです。
この疑惑が噴出してから、世論調査で文在寅大統領の支持率が支持と不支持が逆転してしまうといったような現象も出ていて、非常に大きなダメージが出ているとみられています
加藤綾子キャスター: スキャンダルの火消しのために今回、GSOMIA破棄っていう大きな決断をしたと考えられるんですか?
鴨下ひろみ国際取材部長: 韓国の野党や保守系のメディアからはまさに「火消しのため、チョ・グクさんの疑惑を隠すためにGSOMIAを破棄したんじゃないか」という指摘が出て、批判の渦中にあります
宮家邦彦氏: だけどGSOMIAを仮に破棄しても、これだけ(疑惑が)あれば相当尾を引くんじゃないですか?
鴨下ひろみ国際取材部長: これから聴聞会というところで検証を行うわけですが、チョ・グクさんはそこを正面突破するということで、「説明をきちんとして理解を得ます」という姿勢を示しているんですけど、韓国の世論がどう判断するか非常に注目されるところだと思います
加藤綾子キャスター: もちろん、破棄には反対の意見もあったわけですよね?
鴨下ひろみ国際取材部長: 政権の中には「これは維持したほうがいい」という意見もありました。
決める前に何を一番気にしたかというと国民の世論です。
毎日世論調査をやって、反日をどう扱うか、GSOMIAをどう扱うかという意見を見ていました。
それと文政権はもうひとつ、アメリカがどう対応するか、受け止めるかという点を非常に気にしていたんですが、やはり、最後は国民感情。
「日本に侮辱された」という国民感情を回復するというところに主眼を置いて決定をしたというふうに見るしかないかなと思います
加藤綾子キャスター: 日韓関係だけではなくて、日米韓の安全保障に対する問題っていうことになってくるので、アメリカを気にして、破棄ということにはならないかなと私は思っていたんですけど
宮家邦彦氏: 普通だったらそうですよね。各国には外交安全保障の専門家がちゃんといて、恐らく外相も含めて
「そんなことをやったら大変になる」
「韓国にとってはよくない」ってことは分かってると思うんですよ。
分かってると思うけど、先ほど鴨下さんがおっしゃったように、国内の圧力、もしくは国内の利益を考えて対外関係を犠牲にしたという意味では非常に悪い前例になると思いますね
国民の意見も真っ二つ「愚かなこと」VS「最善のカード」
一方、韓国国内でもGSOMIA破棄に対し、国民の意見は真っ二つに。
破棄反対派男性A: 間違っている。一人で生きているのか、韓国は。他の国と国防や経済で協力しなければいけない
破棄反対派男性B: 愚かなことだ、とても愚かなことだと思う
破棄賛成派女性: 日本政府が先に“ホワイト国”から除外したので、我が国の立場では最善の選択をしたと考えています。韓国政府もアメリカの同意なしでGSOMIA破棄を決定しないだろうし、アメリカ側も私たちの政治的立場を尊重し、私たちができる最善のカードを出したと…
木村拓也キャスター: 22日を振り返ってみますと、韓国の大統領府の関係者は「アメリカはこの破棄に関して理解をしている」というような発表をしたんです。
ただ、アメリカ政府関係者は理解しているというのは事実ではないと抗議、
23日の会見で韓国は「実は、アメリカはGSOMIA延長を希望したのが事実です」と。
つじつまが合わない、むしろ反対のことを言っている感じがしますよね。