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文在寅が脅える韓国「自由右派」の正体

2020-03-09 16:57:35 | 日記
文在寅が脅える韓国「自由右派」の正体

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文在寅が脅える韓国「自由右派」の正体

文藝春秋digital

2020/03/05 08:00

日本でもベストセラーになった『反日種族主義』が作った新たな潮流は、文在寅大統領の足元を揺るがすか――。

いま韓国で巻き起こる新たな歴史観とは一体どんなものなのだろうか?/

文・久保田るり子(産経新聞編集局編集委員、國學院大學客員教授)

反文ムードが広がっている

文在寅政権の暴走が始まった。

総選挙(4月15日)を控え、南北対話は中断、米韓は不信、日韓は最悪、国内経済は低迷、国論は分裂と成果のない文政権だが、「ロウソク革命」の仕上げに焦っているようだ。

独裁色を強めてきた文政権に対抗すべく、韓国保守陣営には新しい流れが生まれている。

「保守とは名乗らない」という新しいアンチ革新、「自由右派」というグループの登場だ。

日本でもベストセラーになった「反日種族主義」(李栄薫編著)が訴えた「韓国の危機」への結集がきっかけだ。

文政権は内政で政権の政治警察になるとみられる高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の設置を決め、南北関係では米国の警告を無視して北朝鮮観光の韓国人個人旅行を解禁しようとしている。

検察改革を名目に進める公捜処の設置は、政権末期に起きる検察による現政権スキャンダル暴きを阻止して文政権の影響力を次期政権につなぐ目的があり、指導層の保守勢力徹底排除の手段だ。

文大統領は法相に秋美愛氏を指名、秋氏は大統領府(青瓦台)と対立している尹錫悦検事総長の側近グループの検事を異例の大規模な人事異動で地方や閑職に追いやった。

尹氏の力を削ごうとする露骨なやり方だけに、「虐殺人事」とか「粛清人事」などと呼ばれている。

文在寅大統領

また北朝鮮へのべた折れ政策は、まず文大統領が年頭会見で「これ以上、米朝対話だけ見守っているわけにはいかない」と4回も繰り返したうえ、韓国人の北朝鮮観光解禁の推進を宣言した。

さっそく南北問題を主管する統一省が準備を始めたため、ハリー・ハリス駐韓米大使が「この問題は米国との政策調整が必要」といさめたところ、大統領府関係者は「不適切な発言」と文句をいい、日系のハリス大使に向けて与党の有力議員が「大使は朝鮮総督か」などと述べるなど、外交非礼ぶりは驚くべき水準まで上がっている。

すでに韓国政府は「2032年の夏季五輪、ソウル・平壌共同誘致計画」を閣議決定した。

文政権は米韓関係を破たんさせてでも北朝鮮との関係改善を目指す覚悟らしい。

ハリス米大使は、韓国の独自決定はセカンダリー・サンクション(2次的制裁)の対象になると警告したが、大統領府高官は「内政干渉だ」と、もはやケンカ腰である。

文政権は、すでに「レイムダックに入った」と指摘する声もある。

青瓦台に近い学者によると、「昨秋の曺国法相スキャンダルで潮目が変わった。

官僚が青瓦台の指示を聞かなくなった。

彼らは青瓦台の指示の文書化を求めている。

この先、どうなるかわからない政権なので指示内容を活字で残しておこうという官僚の保身だ。

これで与党が選挙に負けたら、行政はもっと動かなくなる。

与党が過半数を取れなければ、国会は止まる」という。

文大統領の地盤は釜山だが、釜山で与党が負ける可能性もあるといい、趨勢を決める浮動票の多い首都圏でも「反文ムード」が広がっているとする。

 
変化の激しい韓国の選挙は、1日あれば逆転するといわれるほどで大勢は投票当日までわからない。だが、保守陣営は文政権の暴走ぶりに危機感を強めている。

韓国「自由右派」の出現

ソウル中心部の光化門周辺で、「太極旗」と名乗る勢力の反文在寅集会とデモが続いている。

文政権が2017年5月に発足して以来、毎週末行われてきた太極旗デモは、文政権の親北路線を批判し、「日本は友人」などと日韓関係進展を支持する勢力で、韓国国旗の太極旗、米国の星条旗に加え、日本の日の丸が振られることもある。

 
こうした保守勢力を背景に生まれたのが、新しい流れで「自由右派」と名乗るグループだ。

「反日種族主義」の執筆メンバーを中心に、2000年代はじめ、盧武鉉政権下で生まれた新しい保守運動「ニューライト運動」の賛同者たちが主流で、研究者、学者、ジャーナリスト、宗教指導者など有識者で構成され、彼らは自らを「保守」と呼ばずに「自由右派」と名乗っている。

中心人物のひとり、ジャーナリストの鄭奎載氏はこういう。

「韓国の従来の政治的な保守派は、日本の問題に関して言えば反日感情を持っている人が依然として多いのです。

それは保守派の根が、実は民族主義にあるからです。

しかし、『反日種族主義』が主張したように、自由主義史観にのっとり、事実は事実として理解して評価していく必要がある。

日韓関係をよくするというより、我々の長い歴史については正確な認識がなければならないということです。

そういう意味でわれわれは『保守』という言葉は捨てて、自由主義右派という言葉を使うようになったのです」

「反日種族主義」の衝撃

鄭氏は韓国の大手新聞、韓国経済新聞の元主筆で、現在「ペン&マイク」というユーチューブで発信する保守系ニュースメディアを主宰している。

ユーザー登録60万人を超す人気メディアで、保守系ユーチューブ・ニュース登録者数では第2位だ。

「ペン&マイク」は昨秋の曺国スキャンダルも報道でリードし、曺国氏追及キャンペーンで辞任の流れを作ったメディアのひとつだ。

「反日種族主義」は昨年7月、韓国で出版されるとわずか1か月余りで12万部を超えるベストセラーになった。

徴用工問題や慰安婦問題で韓国政府が主張する強制連行や性奴隷説がいかに虚偽であるかを実証的に提示した。


韓国がこれまで日本の植民地統治を土地、食糧、女性収奪だけだったように誇大に喧伝し反日アイデンティティーを根付かせてきたことを「大韓民国の危機の根源」(韓国語版の原題)と問題視して、

その「反日」の背景にある呪術的な心性、感情を「種族主義」と名付けた。

徴用工デモ

鄭氏は自由右派の仕事について、

「韓国の李承晩政権、朴正熙政権について、近代史における位置付けを再評価する必要があります。

そのうえで対日関係についても日本統治が何を破壊し何を残したのか、という韓国の新しい歴史観の構築を目指しているのです」

「月刊朝鮮」元編集長で日本でもよく知られるジャーナリスト趙甲済氏も自由右派を支持している。

「文在寅政権は大韓民国の建国を認めていません。

大韓民国は1948年8月15日に建国したが、文政権はこの日に『韓国政府』ができたという位置づけです。

金大中政権は1998年に建国50周年、李明博政権は2008年に建国60周年を祝ったが、文政権は2018年8月15日の建国70周年を『政府樹立70周年』としました。

いま韓国は誕生日のない国になってしまったのです。

これは彼らが北朝鮮に正統性があると考えているからです。

韓国の歴史をウソで創作している。こうした国家を壊す正統性の創作に対して立ち向かっているのが自由右派、反日種族主義のグループなのです」


韓国における「保守」とは何か

韓国では、近年の左傾化の主導権をとってきた民主化勢力が、李承晩時代、朴正熙時代を「個人独裁、権力の腐敗」と指弾してきた。

李承晩大統領は建国の混乱期に、日本統治下で役人や企業人として日本に協力した「親日派」を処罰せず、建国のために採用した。

民主化勢力はこれをもって李承晩政権に「反民族」のレッテルを貼った。

日本との国交正常化を行った朴正熙政権についても民主化勢力は「親日派」として「反民族」と批判している。

「親日派」を「反民族」と位置づけた民主化勢力は、李承晩・朴正熙政権を支持した既存の保守派を「親日反民族である」と批判した。

では、保守派はこれに対しどう振る舞ったのか。保守派は民族史観に対抗することができず、結局、李承晩、朴正熙政権を「親日反民族」と決めつけた左派に同調してしまったのだという。

「反日種族主義」の李栄薫氏はこう述べる。

「韓国の保守派とは何か、これは難しい問題です。

親米、反北(反共)だけが韓国の保守派ではありません。

親米と反北だけで、一体どのように韓国の歴史を説明できますか。

李承晩政権、朴正熙政権の時代をどのように説明するのか、その歴史観、整理された学説がまだないのです。

《我々は共産主義が嫌い》

《われわれの生命財産を守る》というぐらいの、低いレベルの保守派は確かにありました。

李承晩大統領が大韓民国を建国し戦争も戦い、朴正熙大統領の時代に高度成長を実現しました。

しかしその後の民主化運動は左派が主導したのです。

そして左派に規定されたのが右派、保守派なのです。

右派の正統性とは何であり歴史観は何なのか、それがなかった。

だから左派に李承晩、朴正熙両大統領を批判されたときに抵抗できなかったのです。

右派はむしろ李承晩大統領や朴正熙大統領を非難する側に参加しました」

だから、既存の韓国保守は「反日」なのである。

文在寅政権が破棄した慰安婦合意についても、徴用工賠償判決に関しても、韓国保守は進歩勢力に同調している。

自国の歴史をどう説明するかの学説がない。日本統治は収奪だけだったのか、なぜ韓国は併合されたのか。整理された学説はなかった。

反日デモ

ここにきて反文集会を開いている「太極旗」参加者たちが、集会の行われるソウル中心地の光化門広場を「李承晩広場」と呼ぶようになった。

反文集会の主催団体のひとつである宗教界の保守派実力者、韓国キリスト教総連合会代表会長の全光勲牧師が「光化門広場を建国の父、李承晩博士の広場と呼ぼう」と呼びかけたことに支持が集まったという。

新型肺炎で「文在寅」弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ” と保守

2020-03-09 12:26:49 | 日記
新型肺炎で「文在寅」弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ” と保守


2/28(金) 17:35配信

デイリー新潮

新型肺炎で「文在寅」弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ” と保守


2/28(金) 17:35配信

デイリー新潮

新型肺炎で「文在寅」弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ” と保守

昨年末には文在寅大統領が中国を訪問。「重大な問題における中国の立場を理解」と告げた。

新型肺炎の患者が急増する韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の弾劾運動が始まった。

スローガンは「国民の命よりも中国が大事なのか」だ。

韓国観察者の鈴置高史氏が展開を読む。
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100万人が署名した弾劾請願

鈴置:2月4日、青瓦台(大統領府)に文在寅大統領の弾劾を促す国民請願が提出されました。

同月25日にはネットを通じて署名した人が24万人を超えました。

1か月以内に20万人以上の同意を得た請願に対しては、青瓦台など政府側は回答する義務があります。

これまで、義務が発生して1か月以内には答えてきたので4月初めには何らかの回答があると見られています。

中央日報の「『文大統領弾劾』 青瓦台の国民請願が20万人超」(2月26日、日本語版)などが報じています。

青瓦台のホームページ「国民請願」を見ると、2月27日に署名者は100万人を超えました。

――政府は請願に対し、どう答えますか? 

鈴置:もちろん、文在寅政権は文在寅弾劾の請願を否定します。請願した人たち――保守派もそれは織り込み済み。

請願提出は政権打倒運動に弾みをつけ、4月15日の総選挙を有利にすることが目的です。
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新型肺炎で「文在寅」弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ” と保守

韓国国内の新型コロナウイルス感染者数

韓国ではなく中国の大統領だ

――弾劾の理由は? 

鈴置:「国民請願」のページに載っている「文在寅大統領の弾劾を求めます」のポイントを訳します。

・今回の武漢肺炎(新型肺炎)において、文在寅大統領の対処を見れば見るほど、大韓民国の大統領ではなく中国の大統領を見るようです。

・武漢地域の封鎖直前に抜け出した中国人が500万人を超えるというのに、封鎖済みの湖北省を訪問した外国人だけを制限の対象にし、それ以外の地域のすべての中国人らは引き続き韓国を訪れることを許したのは、無制限に開放したのと同然です。

・大韓民国の大統領として何よりも重く考えるべきは「自国民の保護」ではないでしょうか? 本当に自国民を考えるのなら、中国全域を入国禁止の対象にせねばなりません。

・これ以上、見過ごすわけにはいきません。文在寅大統領を我が国の大統領と考えるのは難しい。弾劾を求めます。

要は、中国の顔色を見て国民の命をないがしろにするのか、との批判です。この国民請願だけではありません。

野党第1党で保守の未来統合党もまったく同じ主張をしています。保守系紙も同様で、保守が一丸となっての弾劾運動です。

「中国全土の制限」を求めた疾病本部と医師会

最大手紙の朝鮮日報は連日、社説欄を「中国への忖度批判」で埋め尽くしています。

たとえば2月26日の社説は3本すべてが「中国と肺炎」を論じました。韓国語版を翻訳して引用します。


「疾病本部の『中国という感染源を遮断』要請を無視した青瓦台」は防疫の専門家集団で、感染症への緊急対応などを担当する疾病管理本部や大韓医師協会が「中国全土からの入国制限」を要求したのに、青瓦台が無視したと指摘しました。

――なぜ、無視したというのですか? 

鈴置:この社説は習近平主席の訪韓を実現するためだ、と断じました。

中国からの入国を全面的に禁止し続ければ、習近平主席の入国も拒否せざるを得なくなるからです。

証拠として、2月20日に文在寅大統領が習近平主席に電話して「中国の困難は我々の困難だ」と語ったうえ、青瓦台が「両首脳は習近平主席の今年上半期の訪韓を推進する」と発表したことを挙げました。

そして「訪韓が重要だから、防疫当局の口をふさいだのと同じだ」と痛烈に非難したのです。

もう1本の社説「中国は防がない政府・与党、会議後に『大邱封鎖』に言及」は2月25日に政府与党協議会が「大邱地域を封鎖する」と発表して問題化した事件を論じました。

武漢や湖北省のように、一切の交通を遮断して出入り禁止にするのかと一時は大騒ぎになりました。

文在寅大統領は「感染の伝播を遮断する」意味だったと後で修正しています。

「封鎖」を発表した与党「共に民主党」の報道官は軽率な物言いを理由に辞任に追い込まれました。

朝鮮日報はこの社説で政府・与党を攻撃する際、「中国の全面封鎖はできないくせに」と当てこすったのです。

3本目は「今や中国が韓国を強制隔離、どうしてこんなことが起きるのか」です。

2月25日、山東省の威海市は韓国からの航空便の乗客全員の14日間隔離に乗り出しました。

これに対し、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が中国の王毅外相に電話で抗議した、と韓国政府は発表しています。

しかし、朝鮮日報はこの社説で「防疫はこう(中国のように)せねばならない。

中国という感染源を封じない韓国政府の方がおかしいのだ」と主張、重ねて「中国からの入国の全面禁止」を訴えたのです。

社説はすべて「中国への忖度」批判

――ありとあらゆる角度からの政権攻撃ですね。

鈴置:翌2月27日の社説もそうでした。まず、「政府が『国民のせい』『自画自賛』と詭弁を続ければ、国民の憤怒が爆発するだろう」。

「国民のせい」とは日本の厚生労働相に相当する保険福祉部長官が2月26日、新型肺炎の感染拡大に関し「もっとも大きな原因は中国から戻った韓国人だった」と国会で答弁した件を指します。

中国からの旅行者の全面遮断は意味がないと説明する中での発言でしたが、感染経路も分かっていないのに「韓国人だけが悪いと決めつけるのか」と強い反発を呼んだのです。

「自画自賛」とは同じ日に与党幹部が、韓国の感染者数が多いのは検査体制が充実していて患者の発見能力が高いからだ、との趣旨で語ったことへの批判です。

この社説は「発生後の1カ月で1200人もが病院に運ばれている。早期に中国という感染源を遮断すればこんなことになっていなかった」と指摘、

政府・与党の責任を回避する姿勢を糾弾したのです。

もう1本の社説「『一度も経験したことのない国』に放り込まれた国民の当惑」は主に経済面からの批判です。

中国との国境を開け続けたために新型肺炎が流行し、文在寅政権の失政でただでさえ苦境に追い込まれていた経済をさらに悪化させた、との主張です。

見出しの「一度も経験したことのない国」とは文在寅大統領がしばしば語る言葉で「素晴らしい国を作ってみせる」との意気込みを示します。

この社説は「大統領のあの約束が、このような形で実現したわけだ」と皮肉ったのです。

この日の社説は2本でしたが、いずれも「中国への忖度」を批判したものでした。

2月28日も社説「韓国人隔離の中国は『外交よりも防疫が重要』、韓国は『防疫よりも中国』」で中国の顔色ばかりを見る韓国の情けなさを嘆きました。残りの2本も「新型肺炎下で無能・無策ぶりを露呈する文在寅政権」を批判するものでした。

患者が急増するのは日韓だけ

――朝鮮日報の政権叩きはすざましいですね。

鈴置:韓国の保守は青瓦台による蔚山(ウルサン)市長選挙への介入事件を掲げ、政権を攻撃をしてきました。

ただ、これは爆発力に欠けました。ほとんどの国民にとって身近な話ではないからです。

一方、突然に降ってわいた新型肺炎。自分の命にかかわる問題ですから、国民の関心は当然に高い。

感染者数はウナギ登りだし、死者は2月28日午前現在で13人を記録しました。

ことにこの問題で「文在寅の失策」を突けば賛同を得やすい。

「門を開け続けた韓国と日本では感染者が増え続けるが、完全に門を閉じた豪州、ニュージーランド、台湾、香港、マカオでは感染は広がっていない」との解説は耳にしっかりと届くからです。

なお、韓国は日本の後を追う形で、湖北省だけを入国禁止地域に指定しています(「韓国で新型肺炎の患者が急増 保守派は『文在寅政権の無能、無策』と総攻撃」参照)。

保守側にとって「中国の顔色を見る政権が我々を死に至らしめる」との主張ほど、有効な武器はない。縦横無尽に使うのは当たり前です。
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保守の次の手は大衆集会

――でも、「弾劾は不可」と請願を政府に蹴り返されたら……。

鈴置:保守は「居直った!」と非難し、それをテコに大衆運動を盛り上げる作戦でしょう。韓国ではデモや集会が国の進路を定めます。

朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾を思い出して下さい。

当時の与党、自由韓国党は過半数の議席を持っていたので、普通なら弾劾訴追案は国会を通らないはずだった。

しかし多数の国民がデモや集会に繰り出すのを見て、造反者が続出して可決されてしまった。

憲法裁判所が弾劾訴追案を受け入れ大統領を罷免するかに関しても、疑問符が付いていました。

なぜなら、弾劾の理由となった職権乱用が成立するかは、専門家の間でも議論が割れていたからです。

しかし憲法裁判所は弾劾訴追案にはなかった「憲法を守る意思がない」ことも合わせ技にして、裁判官8人全員の合意で罷免を決めてしまったのです(『米韓同盟消滅』第4章第1節を参照)。

憲法裁判所も大規模なデモと集会に忖度したのです。

今、保守派は「今度はこちらの番だ」とばかりに、大衆を動員しての弾劾を狙っているわけです。

 
大衆集会やデモといえば、左派の独占的な手法。保守派は苦手でした。

ところが2019年秋、不正の塊とみなされた曺国(チョ・グッ)氏の法務部長官就任に反対する大集会で、保守は初と言ってよい「成功体験」を味わったのです。

曺国氏の権力を利用したインサイダー取引疑惑や、娘の不正入学疑惑などに怒った普通の人も参加し、保守が主催した集会は1987年の民主化闘争以来とされる数十万人の規模に膨れ上がりました(「『反文在寅』数十万人デモに“普通の人”が参加 『米国に見捨てられる』恐怖が後押し」参照)。

この勢いに押された政権側は曺国氏を罷免せざるを得ませんでした(「曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター、戒厳令の可能性」参照)。

「習近平3月訪韓」で日本に勝つ

――そもそもの質問ですがなぜ、韓国は「中国全域から入国禁止」としなかったのでしょうか。

鈴置:やはり世間体を気にする中国を怒らせ、習近平・国家主席の訪韓が不可能になる、と考えたからです。

日本と異なり韓国では、保守も含めほとんどの人が訪韓に賛成。

文在寅政権は3月訪韓を実現し、4月15日の総選挙の追い風に利用するつもりでした。

――3月でなくとも、選挙直前の4月上旬でもよいのでは? 

鈴置: 確かにその手もあります。が、習近平主席の日本への国賓訪問が同じころに予定されています。4月上旬の訪韓だと「訪日のついでに訪韓した」というイメージが強くなってしまう。

「東京訪問の後、北京に戻らずにそのままソウル訪問」というスケジュールになれば、選挙対策としては完全に逆効果です。

「ソウル→東京」という順番は日本が許さないでしょうし。そこで文在寅政権は「日本よりも早い3月」を強力に望んだのです。

いずれにせよ、習近平訪韓を実現するために、中国を怒らせる「中国全域からの入国禁止」なんて、とてもできないのです。保守派もこれを分かっていて「中国全域からの禁止」を求めているわけです。

――でも、中国も韓国からの訪問客を隔離し始めました。

鈴置:ええ、そこもポイントです。丁世均(チョン・ セギュン)首相は「相互主義」を懸念していました。「中国全域からの入国を禁止すると、中国が報復措置として韓国からの入国禁止を発動する」との懸念です。

今となれば「相互主義」を掲げて「中国全域からの禁止」に出るやり方も浮上してきました。が、それでも2つ問題があります。

日本より先に「中国全域からの禁止」を実行すれば、やはり中国の怒りを買いかねない。中国は韓国を属国とみなしているからです。

日中両国は4月上旬の国賓訪問をまだあきらめていませんから、日本はなかなか「中国全域からの禁止」に踏み切れない。だから韓国政府は習近平訪日の行く末を異様に熱心に見守っています。

もう1つの問題は、清水の舞台から飛び降りるつもりで「中国全域からの禁止」に踏み切ったとしても、保守からの攻撃は収まらないことです。

むしろ、「なんで今ごろになって」「やるなら早くすればよかったではないか」と、政権批判の火に油を注ぐ可能性が強い。これは安倍晋三政権にとっても、同じ悩みでしょうけれど。


反政府運動を主導する牧師を逮捕

――文在寅政権は八方ふさがりですね。

鈴置:政権側には逆境をひっくり返す手があります。政権打倒運動の武器である大衆集会・デモをつぶせばいいのです。

「文在寅下野汎国民闘争本部」を率いてソウルの中心部、光化門広場で大型の反政府集会を主宰していた有名な全光焄( チョン・ガンフン )牧師が2月24日に逮捕されました。

容疑は選挙法違反――総選挙の公示前に大衆の前で特定の政党への支援を訴えた――です。

韓国保守の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏は、自身が主宰するサイトで「逮捕は表現の自由を保障した憲法に違反する」「チョン・ガンフン牧師の口封じだ」と強く抗議しています。
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大集会に冷ややかな朝鮮日報社会部

――かえって政権への反発を呼びますね。

鈴置:確かに保守からは。でも、普通の人がどちらについていくかは微妙です。新型肺炎が流行するというのに、感染症を加速しかねない大型集会を開く保守に対し、冷めた目も向けられているからです。

チョン・ガンフン牧師主催の2月22日の光化門での集会を報じた朝鮮日報の記事の見出しは「『武漢肺炎よりも愛国』とソウル市の勧告にも拘わらず集会を強行…市民らは『冷やか』」(2月22日、韓国語版)でした。

感染拡大を防ぐため、としてソウル市は集会を中止するよう勧告しました。一方、チョン・ガンフン牧師は「屋外では感染しない」と反発しました。

この記事は双方の主張を報じながら、「このご時世にこんな大型集会を開くのは非常識」との市民の声を取り上げ、見出しにも「冷ややか」をとったのです。

朝鮮日報の論説委員会は保守の立場を強力に打ち出し、プレーヤーとして政争に加わっている感があります。

しかし、街の声を拾う社会部は「こんなご時世に政争か」と政界を突き放して報じたのです。

そもそも「4月15日の総選挙ができるのか」という声があがるほどに韓国は新型肺炎で混乱しています。そんな中での政争を後の世がどう見るのか、知りたい気がします。



鈴置高史(すずおき・たかぶみ)

韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集


市場が混乱すると円高になるのは「円が安全資産」だからではない理由

2020-03-09 12:05:20 | 日記
市場が混乱すると円高になるのは「円が安全資産」だからではない理由


塚崎公義:久留米大学商学部教授

政治・経済 重要ニュース解説「今を読む」

2019.1.11 5:00

円が安全だから
買われるというわけではない

昨年12月から年初にかけて、世界的に株価が暴落したが、同時に円高となった。

世界的な株安と円高の同時進行は今回に限ったことではなく、世界の金融市場が動揺すると「投資家のリスク回避のために、安全資産である円が買われた」という報道とともに円高になることが多い。

 
しかし、円が安全資産だという説明には、違和感を持たざるを得ない。

世界最強の軍事力を持つ米国に守られている国であり、政府の借金が巨額で財政破綻を心配している人もいるという国の通貨が、ドルやユーロより安全だとは到底思えないからだ。

リーマンショックのときには円高となり、「安全通貨の円が買われた」と説明されても、違和感はなかった。

当時は、米国と欧州が金融危機に苦しんでいる一方、日本の銀行は相対的に健全で、日本は金融危機には陥らなかったからだ。

恐らくそのときの「成功体験」を引きずった人々が、同じ表現をその後も使い続けているのだろう。

そうした人の中には、金融危機などで円高になる本当の理由を知らない人も、知っているけれども説明が長くなるのを避けたい人も、両方いると思われる。

輸出企業の持ち帰った

ドルを買うのは誰か

日本は、数十年にわたって経常収支の黒字が(若干の例外を除けば)続いてきた。

その間、輸出企業などが持ち帰ったドルを銀行に売りに行ったが、それを買ったのは誰だろう。

一部は輸入企業などが買ったが、経常収支が黒字だということは、それだけでは買い手が足りないということだからだ。

典型的なのは、「米国債の方が、日本国債より金利が高い。

米国債を買うためには円をドルに替える必要があり、そうすると為替リスクを抱えることになるから、うれしくはないが、リスクを取ってでも高い金利を受け取ろう」という投資家だ。

そうした投資家たちは、気分によって「多少のリスクはあっても儲けを狙いたい」と考えるときと、「儲からなくてもいいからリスクを避けたい」と考えるときがある。

前者は「リスクオン」と呼ばれ、特に心配事がないときに多く出現する。

前者は「リスクオフ」と呼ばれ、何か悪いことが起きそうな予感のするときに多く出現する。

リスクオフになると、過去に円をドルに替えて米国債を購入していた日本人投資家たちが米国債を売却し、ドルを売却して資金を日本に持ち帰り、じっと静かに嵐が通り過ぎるのを待つ。

この過程におけるドル売りが円高の主因なのだ。


米国の銀行からドルを借りて米国株式に投資している投資家が、邦銀から円を借りた方が金利が安いので、邦銀から円を借りてドルに替えて米国株式を購入することがある。これを「キャリートレード」と呼ぶが、原理としては同じことだ。

「円高になると、邦銀に返済するときの負担が重くなる(多くのドルを円に替えないといけない)のでリスクはあるが、低い金利で借りられるメリットを享受しよう」ということだからだ。

こうした投資家は、リスクオンのときは増加し、リスクオフのときは減少するので、市場全体がリスクオフになると円高が進むのだ。

経常収支黒字国の

金利が低い理由を考える

ここからは余談だが、日本政府は巨額の財政赤字を続けていて、将来は破産するかもしれないと考えている人も多いようだ。

だが、極めて低い金利で国債が発行できている(借金することができている)。なぜだろうか。

それは、もしも日本国債の利回りが、米国債と同じだった場合に何が起きるかを考えてみれば理解できよう。

日本人投資家は、日本国債を買っても米国債を買っても同じ利回りが得られるので、米国債を買うインセンティブがない。

米国債を買うためにドルを買うと、為替リスクを負うからだ。

日本政府が破産する可能性は、長期的には否定できないが、短期的にはその可能性は極めて低いから、投資家はドルを買うことによる為替リスクの方を嫌う。

そうなると、輸出企業などが持ち帰ったドルが売れ残ってしまうので、結局は「投資家たちが米国債を買いたくなるまでドルが値下がりし、日本国債の利回りは、米国債の利回りを下回る」のだ。

将来、日本国債の利回りが、米国債の利回りを上回る可能性としてはいくつかのケースが考えられる。

「日本の経常収支赤字が続き、日本政府が外国から借金をしなければならなくなった場合」

「日本政府が近日中に破産するかもしれないと多くの投資家が真剣に考えた場合」

「資本逃避が本格化して、投資家たちが円をドルに替えて資金を外国に持ち出そうとした場合」などだ。

もっとも、いずれも近いうちには決して起きないと思われる。

「南海トラフ大地震が起きます」という警報が出た場合はこの限りではなかろうが。

本稿は以上である。

なお、金融取引には上記の他にもさまざまなものがあるが、金融関係者ではない一般読者におかれては、「いろいろあるようだが、本質的には同じものだ」と考えて大きな問題はないといえる。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)


韓国を代表する観光名所、景福宮前に掲げられた「中国人入国禁止」の垂れ幕

2020-03-09 11:36:29 | 日記
文政権揺らす「嫌中ウイルス」 新型肺炎対応正念場に

ソウル支局長 鈴木壮太郎

朝鮮半島ファイル 2020/2/7 0:00日本経済新聞 電子版

韓国を代表する観光名所、景福宮前に掲げられた「中国人入国禁止」の垂れ幕

新型コロナウイルスの感染拡大防止に追われる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、もうひとつの敵に直面している。

韓国社会で頭をもたげる中国人への嫌悪感情だ。「嫌中ウイルス」のまん延を放置すれば、政権基盤をも揺るがしかねない。


「中国人の密集地域への配達禁止を」――。

韓国で5割のシェアを握る出前アプリ「配達の民族」の配達員でつくる労働組合が1月28日、会社側にこんな要求を突きつけた。

新型肺炎の感染拡大で「多くの人々と接触せざるを得ない配達労働者の不安感と危険度は高まっている」として、配達禁止または危険手当の支給を求めたのだ。

■恐怖感と不信感が連鎖

韓国で暮らす中国人は100万人を超える。その多くが豊かな暮らしを求めて移住してきた朝鮮族(朝鮮系中国人)だ。

ソウルには中国人が寄り添って暮らす地域がある。


韓国を訪れる外国人観光客も中国人が最多で、2019年は約600万人が訪れた。日本人の2倍だ。

新型肺炎厳戒のソウルでは観光地の職員もマスクを着用(ソウル中心部の徳寿宮)

露骨な中国人差別に批判の声が上がると、上部組織の民主労総サービス連盟は同日、「少数者に対する非常に不適切な嫌悪表現があった。

重大な責任を感じ、傷ついた方々に謝罪する」との声明をフェイスブックに掲載した。

会社側も同日、「いま重要なのは個人レベルの衛生管理を支援することだ。配達禁止地域の設定や危険手当の支給は考えていない」と発表した。

韓国での感染者は6日時点で23人。現時点では大流行とはいえない。だが、38人の死者が出た15年の中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)流行の記憶は生々しく、感染症への警戒感は日本以上に強い。

中国・武漢発の新型肺炎への恐怖感と、韓国社会にくすぶる中国への不信感が結びついた今の社会の雰囲気を、韓国メディアは「嫌中ウイルス」と命名した。

韓国には米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を受け、中国から「経済報復」を受けた「恨」(ハン)がなお残る。

中国は団体観光客を一斉に引き揚げ、韓国の観光地は閑古鳥が鳴いた。

米軍に土地を提供したロッテは徹底的にいじめ抜かれた。

中国にあるスーパーは消防法違反を理由に営業停止処分が下され、ついには中国撤退に追い込まれた。

■「中国人の入国禁止を」68万人が賛同

「中国は恐怖の殺人肺炎について、全世界が納得する情報を公開せよ!」――。

2月4日。ソウルの繁華街、明洞にある中国大使館前では保守系の市民団体がシュプレヒコールを上げた。

すぐにはがされたが、ソウルのある食堂では一時「中国人立ち入り禁止」の張り紙が掲げられた。

中国大使館前で抗議する市民団体。垂れ幕には「中国は恐怖の殺人武漢肺炎の情報公開を」と書かれている

「北朝鮮でさえ中国人の入国を禁止している。中国人の入国禁止を要請する」――。

大統領府ホームページの「国民請願」では、この意見への賛同者が68万人を超えた

。20万人を超える請願には大統領府が回答する決まりだが、まだ回答はない。

韓国のネットメディア、デイリーアンの世論調査では76.9%が「中国人の入国は全面禁止すべきだ」と回答した。

■野党は政権攻撃材料に

野党は「嫌中ウイルス」を文政権への攻撃材料に使っている。

保守系野党の自由韓国党スポークスマンは5日「中国はいまだにTHAAD報復を解いていない」と、苦い記憶を想起させた上で「政府がよもや国民の命と安全を担保に中国の顔色をうかがっているのではないことを祈る。

断固たる措置を取るべきだ」と、中国人の入国禁止を要求した。

韓国も嫌中一辺倒ではない。中国人が集う観光地、明洞の食堂では「武漢加油」(頑張れ武漢)の立て看板も

文政権は難しいかじ取りを迫られている。

韓国政府は4日から、最近2週間に湖北省を訪問または滞在した外国人の入国を拒否している。

新型肺炎の致死率が武漢市を除けば低く重症化の事例もないことから、現時点ではこれ以上の入国禁止措置の拡大はしない方針だ。

中国人の入国禁止に踏み切れば中国との関係悪化は避けられない。

中国とは習近平(シー・ジンピン)国家主席の上半期の訪韓を調整しており、むやみに中国を刺激したくない事情もある。

韓国は中国への経済依存度が高く、韓中間のヒト・モノの往来が途絶えれば経済への影響も大きい。

■朴前大統領の二の舞いリスク

とはいえ、中国人の入国禁止を求める国民の請願を聞き入れず、仮に韓国内での感染が急増するような事態になれば、政治的には致命傷を負いかねないリスクもある。

国民の生命より中国との関係を優先したとのそしりだ。

韓国の政権にとっては国民の安全は最優先課題だ。304人が死亡した14年の旅客船セウォル号沈没事件で初動を誤った朴槿恵(パク・クネ)大統領は弾劾され、政権与党だったセヌリ党(現・自由韓国党)の支持率も地に落ちた。

「中国の困難は私たちの困難につながる。中国と力を合わせて緊急事態を共に克服する」。文氏は3日の会議でこう強調した。

文氏は連日、黄色い防災服を着て登場し現場も視察する。それは今回の対応を誤れば朴前大統領の二の舞いになりかねないという強い危機感にほかならない。

鈴木壮太郎(すずき・そうたろう)
1993年日本経済新聞社入社。産業記者として機械、自動車、鉄鋼、情報技術(IT)などの分野を担当。2005年から4年間、ソウルに駐在し韓国経済と産業界を取材した。国際アジア部次長を経て、2018年からソウル支局長。