勝又壽良のワールドビュー
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国、「震撼」株価は8年5ヶ月ぶりの安値、空売り規制が逆効果「素人政権」
2020年03月18日
韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
. .
韓国は、株価やウォン相場の急落に見舞われている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、経済対策のトップに座るという背水の陣を敷くことになった。
経済で素人の文氏が、経済対策の采配を振るうのでは、最低賃金の大幅引上げ同様の大間違いを犯すのでないか、と懸念されるのだ。
文大統領は17日の閣議で、新型コロナウイルスに対応する大統領主宰の非常経済会議を設置する方針を示し、「経済の中央災難(災害)安全対策本部」と位置づけた。韓国経済の先行き不安は、株価下落に表れている。先ず、これをどのように落ち着かせるかだ。
17日の韓国株式市場は、総合株価指数(KOSPI)が5営業日連続で下落した。
終値は前日比42.42ポイント(2.47%)安の1672.44である。2011年10月5日以来、約8年5カ月ぶりの安値である。
韓国では、3ヶ月間の株式「空売り規制」を実施している。常識的に言えば、信用取引の「売り」が規制されれば、株価は上昇すると考えるもの。
だが、それは大間違いである。過去の例でもすべて失敗している。投資家の不安心理を煽って、現物売りを誘うのである。こういう市場の心理状態を読めなかったのである。
『フィナンシャル・タイムズ』(3月16日付)は、「空売り禁止や取引停止はパニックを増幅」と題する記事を掲載した。
(1)
「韓国が9年ぶりにとった半年間(注:正しくは3ヶ月)の空売り禁止措置は、市場の沈静化にほとんど役に立たなかった。
韓国株式市場の総合株価指数(KOSPI)は16日、3%以上下落した。インドネシアと台湾の主要株価指数は4%以上値下がりした。台湾はまだ空売り制限を検討しているにすぎない」
次のパラグラフで指摘するように、短兵急な「空売り規制」は、公正な株価形成を阻害する。
それゆえ、成功しないのが普通だ。
信用取引では、相場観に見合った売りと買いが交錯するから、正しい相場が形成される。
これが、市場経済原則である。
株価が急落しても、「空売り規制」をしなければ、売りの累積が自律的な買いを呼込み、早い相場回復となる。これが、信用取引の効果と呼ぶべきものである。
(2)
「空売り禁止の歴史は、短期的にも長期的にもこれが機能しないことを示している。
2008年の金融危機当時に2週間余り続いた米国の禁止措置は、下落に歯止めをかけることができなかった。
1920年代末のウォール街大暴落後、32年の50%を超える株価急落は、空売り禁止が導入された直後に始まった」
ここでは、過去の空売り規制がことごとく失敗した歴史を取り上げている。歴史に学ばなければならないのは、株価の空売り規制失敗も同じこと。
韓国では、「空売り」による株価の潜在的上昇テコがなくなったので、自律回復の期待が持てなくなった。
(3)
「空売り禁止や売買高制限など市場メカニズムの制限は、必ずと言っていいほど金融ストレスの軽減ではなく増幅につながる。
流動性が低くなると、取引コストが上昇する。
米連邦準備理事会(FRB)は、2008年の米国の空売り禁止による追加の取引コストを10億ドル(約1000億円)以上と推計する。
市場の取引制限は、現実主義ではなく、政治の産物だ。批判派は空売り筋を人の苦しみにつけ込み、暴利をむさぼる者たちとみなす。だが、その投資行動は、価格形成のより幅広いプロセスの一部にすぎない。
いま問題なのは、新型コロナウイルスとそれが経済への信頼感に及ぼすマイナスの影響だ」
市場の取引制限は、現実主義ではなく政治の産物と指摘している。その通りである。文政権は、やたらと正義論を振りかざす政権である。だから、「空売り」による株価下落が、投資家の損害を利用して利益を上げる、「空き巣」同様な行為と見ているに違いない。
実は、それが間違いである。
早く相場の調整が済めば、それだけ早い回復が可能になるもの。
信用取引である以上、「売り」は将来の「買い」要因である。このメカニズムを見誤ると、相場底入れ時期が遅れて、いつまでも「ダラダラ相場」が続くに違いない。
文大統領が、非常経済会議のトップになるのならばこの際、思い切って「空売り規制」を撤廃してみてはどうか。
そうすれば、現実経済のメカニズムが理解できはすだ。まさに、一皮むけて経済政策の醍醐味を知ることになろう。
ただ、政権の支持母体である労組や市民団体には、この「空売り」論理について理解を迫っても無理であろう。
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国、「震撼」株価は8年5ヶ月ぶりの安値、空売り規制が逆効果「素人政権」
2020年03月18日
韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
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韓国は、株価やウォン相場の急落に見舞われている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、経済対策のトップに座るという背水の陣を敷くことになった。
経済で素人の文氏が、経済対策の采配を振るうのでは、最低賃金の大幅引上げ同様の大間違いを犯すのでないか、と懸念されるのだ。
文大統領は17日の閣議で、新型コロナウイルスに対応する大統領主宰の非常経済会議を設置する方針を示し、「経済の中央災難(災害)安全対策本部」と位置づけた。韓国経済の先行き不安は、株価下落に表れている。先ず、これをどのように落ち着かせるかだ。
17日の韓国株式市場は、総合株価指数(KOSPI)が5営業日連続で下落した。
終値は前日比42.42ポイント(2.47%)安の1672.44である。2011年10月5日以来、約8年5カ月ぶりの安値である。
韓国では、3ヶ月間の株式「空売り規制」を実施している。常識的に言えば、信用取引の「売り」が規制されれば、株価は上昇すると考えるもの。
だが、それは大間違いである。過去の例でもすべて失敗している。投資家の不安心理を煽って、現物売りを誘うのである。こういう市場の心理状態を読めなかったのである。
『フィナンシャル・タイムズ』(3月16日付)は、「空売り禁止や取引停止はパニックを増幅」と題する記事を掲載した。
(1)
「韓国が9年ぶりにとった半年間(注:正しくは3ヶ月)の空売り禁止措置は、市場の沈静化にほとんど役に立たなかった。
韓国株式市場の総合株価指数(KOSPI)は16日、3%以上下落した。インドネシアと台湾の主要株価指数は4%以上値下がりした。台湾はまだ空売り制限を検討しているにすぎない」
次のパラグラフで指摘するように、短兵急な「空売り規制」は、公正な株価形成を阻害する。
それゆえ、成功しないのが普通だ。
信用取引では、相場観に見合った売りと買いが交錯するから、正しい相場が形成される。
これが、市場経済原則である。
株価が急落しても、「空売り規制」をしなければ、売りの累積が自律的な買いを呼込み、早い相場回復となる。これが、信用取引の効果と呼ぶべきものである。
(2)
「空売り禁止の歴史は、短期的にも長期的にもこれが機能しないことを示している。
2008年の金融危機当時に2週間余り続いた米国の禁止措置は、下落に歯止めをかけることができなかった。
1920年代末のウォール街大暴落後、32年の50%を超える株価急落は、空売り禁止が導入された直後に始まった」
ここでは、過去の空売り規制がことごとく失敗した歴史を取り上げている。歴史に学ばなければならないのは、株価の空売り規制失敗も同じこと。
韓国では、「空売り」による株価の潜在的上昇テコがなくなったので、自律回復の期待が持てなくなった。
(3)
「空売り禁止や売買高制限など市場メカニズムの制限は、必ずと言っていいほど金融ストレスの軽減ではなく増幅につながる。
流動性が低くなると、取引コストが上昇する。
米連邦準備理事会(FRB)は、2008年の米国の空売り禁止による追加の取引コストを10億ドル(約1000億円)以上と推計する。
市場の取引制限は、現実主義ではなく、政治の産物だ。批判派は空売り筋を人の苦しみにつけ込み、暴利をむさぼる者たちとみなす。だが、その投資行動は、価格形成のより幅広いプロセスの一部にすぎない。
いま問題なのは、新型コロナウイルスとそれが経済への信頼感に及ぼすマイナスの影響だ」
市場の取引制限は、現実主義ではなく政治の産物と指摘している。その通りである。文政権は、やたらと正義論を振りかざす政権である。だから、「空売り」による株価下落が、投資家の損害を利用して利益を上げる、「空き巣」同様な行為と見ているに違いない。
実は、それが間違いである。
早く相場の調整が済めば、それだけ早い回復が可能になるもの。
信用取引である以上、「売り」は将来の「買い」要因である。このメカニズムを見誤ると、相場底入れ時期が遅れて、いつまでも「ダラダラ相場」が続くに違いない。
文大統領が、非常経済会議のトップになるのならばこの際、思い切って「空売り規制」を撤廃してみてはどうか。
そうすれば、現実経済のメカニズムが理解できはすだ。まさに、一皮むけて経済政策の醍醐味を知ることになろう。
ただ、政権の支持母体である労組や市民団体には、この「空売り」論理について理解を迫っても無理であろう。