*韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)が、アメリカ・アカデミー賞で英語以外の外国語映画で初の作品賞を受賞、さらに国際映画賞(旧・外国語映画賞)、脚本賞、監督賞も獲得しました。
韓国の「半地下生活」、格差社会をリポートした記事(2020年1月17日配信)をあらためて配信します。(編集部)
韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演)が世界中で話題になっている。
日本でも先日、公開されたようで、早速あちこちから「見たよー」という知らせがくる。
「知らせ」というより、時候の挨拶のような感じだ。「お世話になっております。『パラサイト……』見ました」みたいな。そういえば、2019年は「『82年生まれ……』読みました」だったっけ。
私自身は昨年、韓国で公開と同時にこの映画を見た。
その時から人に話したくてウズウズしていたが、韓国での公開中も「絶対ネタバレは無しで」という注意が出回っていたので我慢していた。
映画『パラサイト 半地下の家族』
確かに、この映画はあらかじめ内容を知らない方が絶対に面白い。
なので内容にはふれないが、私には書きたいことがある。
おそらく映画評論家の皆さんには書けないだろうこと。それは韓国の「半地下暮らし」のことだ。
この映画で「半地下」という居住環境は「貧困の象徴」となっているが、私は「半地下」はもちろん、「全地下」で暮らした経験もある。
しかもそこは、映画に出てくる家よりさらに悲惨なことになった。
不動産階級社会の最下層
私がソウル市内の半地下で暮らしたのは1990年秋、全地下で暮らしたのは1992年春のことだ。
多くの日本人と同じく、私はそれまで地下室で暮らしたことなどなかった。
だから「半地下」と聞いた時は少し「ときめいた」。
『地下室の手記』とか『地下水道』とか、なにか文学的なイメージが想起された。
私はそこで暮らしはじめて、早速「地下室の酒気」というエッセイの執筆を始めた(原稿紛失中)。
この映画『パラサイト』が2019年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した時に、
前年度の『万引き家族』(是枝裕和監督)とその前々年度の『わたしは、ダニエル・ブレイク』(ケン・ローチ監督)と合わせて、
「格差3部作」みたいな言い方もされていた。
イギリス、日本、韓国、それぞれの格差社会の厳しい現実。
それを象徴するのがイギリスの場合は「フードチケット」(福祉)であり、
韓国の場合は「半地下」(住居)というのは実にわかりやすい。
というのは、韓国は「不動産階級社会」と言われるほど、住居において階層差が顕在化する社会だからだ(日本の場合は何だろう?
もっとも、この3作を「格差」で読み解くのは、映画鑑賞の方法としてはつまらないかもしれない)。
韓国で『不動産階級社会』という本が出版されたのは2008年のことだ。
人々が薄々気づいていたことが活字になった衝撃は大きかった。そこには住居によって6つの階級が区分されていた。
1、多住宅所有世帯
2、住宅所有世帯
3、所有住宅はあるがローン等のために賃貸に住む世帯
4、保証金5000万w(約500万円)以上の賃貸で暮らす世帯
5、保証金5000万w以下の賃貸で暮らす世帯
6、地下室、ビニールハウス等で暮らす最貧困層
これが出された10年前と現在とでは韓国社会の変化ははげしく、さらに日本と韓国は賃貸システムが違うために、これだけで現在の韓国社会を理解するには無理がある。とはいえ、第1階級が複数の不動産を所有する人々であり、最下層である第6階級に「地下室」があるのは現在も同じだ。
韓国の「半地下生活」、格差社会をリポートした記事(2020年1月17日配信)をあらためて配信します。(編集部)
韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演)が世界中で話題になっている。
日本でも先日、公開されたようで、早速あちこちから「見たよー」という知らせがくる。
「知らせ」というより、時候の挨拶のような感じだ。「お世話になっております。『パラサイト……』見ました」みたいな。そういえば、2019年は「『82年生まれ……』読みました」だったっけ。
私自身は昨年、韓国で公開と同時にこの映画を見た。
その時から人に話したくてウズウズしていたが、韓国での公開中も「絶対ネタバレは無しで」という注意が出回っていたので我慢していた。
映画『パラサイト 半地下の家族』
確かに、この映画はあらかじめ内容を知らない方が絶対に面白い。
なので内容にはふれないが、私には書きたいことがある。
おそらく映画評論家の皆さんには書けないだろうこと。それは韓国の「半地下暮らし」のことだ。
この映画で「半地下」という居住環境は「貧困の象徴」となっているが、私は「半地下」はもちろん、「全地下」で暮らした経験もある。
しかもそこは、映画に出てくる家よりさらに悲惨なことになった。
不動産階級社会の最下層
私がソウル市内の半地下で暮らしたのは1990年秋、全地下で暮らしたのは1992年春のことだ。
多くの日本人と同じく、私はそれまで地下室で暮らしたことなどなかった。
だから「半地下」と聞いた時は少し「ときめいた」。
『地下室の手記』とか『地下水道』とか、なにか文学的なイメージが想起された。
私はそこで暮らしはじめて、早速「地下室の酒気」というエッセイの執筆を始めた(原稿紛失中)。
この映画『パラサイト』が2019年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した時に、
前年度の『万引き家族』(是枝裕和監督)とその前々年度の『わたしは、ダニエル・ブレイク』(ケン・ローチ監督)と合わせて、
「格差3部作」みたいな言い方もされていた。
イギリス、日本、韓国、それぞれの格差社会の厳しい現実。
それを象徴するのがイギリスの場合は「フードチケット」(福祉)であり、
韓国の場合は「半地下」(住居)というのは実にわかりやすい。
というのは、韓国は「不動産階級社会」と言われるほど、住居において階層差が顕在化する社会だからだ(日本の場合は何だろう?
もっとも、この3作を「格差」で読み解くのは、映画鑑賞の方法としてはつまらないかもしれない)。
韓国で『不動産階級社会』という本が出版されたのは2008年のことだ。
人々が薄々気づいていたことが活字になった衝撃は大きかった。そこには住居によって6つの階級が区分されていた。
1、多住宅所有世帯
2、住宅所有世帯
3、所有住宅はあるがローン等のために賃貸に住む世帯
4、保証金5000万w(約500万円)以上の賃貸で暮らす世帯
5、保証金5000万w以下の賃貸で暮らす世帯
6、地下室、ビニールハウス等で暮らす最貧困層
これが出された10年前と現在とでは韓国社会の変化ははげしく、さらに日本と韓国は賃貸システムが違うために、これだけで現在の韓国社会を理解するには無理がある。とはいえ、第1階級が複数の不動産を所有する人々であり、最下層である第6階級に「地下室」があるのは現在も同じだ。