新型コロナショック、韓国からの「資金引き上げ」が止まらない…
真壁 昭夫(信州大学経済学部教授)
3/23(月) 6:31配信
現代ビジネス
新型コロナショック、韓国からの「資金引き上げ」が止まらない…
足元、新型コロナウイルスによる世界的な経済・金融市場の混乱によって、投資家が株式や債券など価格変動リスクのある金融資産を投げ売りしている。
その中でも、韓国から激しい勢いで資金が流出している。
アジアの通貨市場では韓国ウォンの下落が突出している。
マレーシアやインドネシアなどの新興国よりも韓国ウォンへの売り圧力は強い。
また、世界的に見て韓国の株価下落率も大きい。
いかに投資家が韓国から資金を引き揚げているのがわかる。
投資家が金融資産を投げ売りする背景には、新型肺炎の収束の目途がつかないことがある。
先行きが読めないことが、投資家の恐怖心理を大きく増幅している。
先行きの目途が付かないため、リスクを取れない市場参加者が日に日に増えている。
新型肺炎が世界全体で人の動線を寸断する中、韓国のように輸出入を通して世界経済に深く組み込まれてきた経済には、かなりの影響があることは間違いない。
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新型コロナショック、韓国からの「資金引き上げ」が止まらない…
高まる文政権への不信
韓国メディアの論説などを見ていると、これまでにないほど文在寅大統領への批判が高まっているようだ。
一つの要因として、文政権のコロナウイルスの感染対策の遅れがある。
韓国では新たにソウル近郊の教会で集団感染が発生した。
文大統領は中国を重視するあまり、入国制限などの初動動作が遅れた。
さらに、国内での感染対策も不十分と言わざるを得ない。
それは、市場参加者にとって軽視できないリスク要因だ。
新型コロナウイルスが経済に与える影響を考える上で最も重要なポイントは、収束にどれだけの時間がかかるかだ。
感染の食い止めに時間がかかればかかるほど、経済活動は停滞するだろう。
韓国国外の状況に目を向けると、世界的に感染対策から国境封鎖などに踏み切る国が増えている。
この状況は、韓国経済にとってかなり厳しい。
過去の保守派政権は、財閥企業を優遇してきた。
サムスン電子などは海外からヒト・モノ・カネを調達し、国内で汎用品を大量生産し、輸出することで業績を拡大した。
それが第2次世界大戦後の韓国経済の成長を支えた。
つまり、韓国経済の運営にはグローバルな人の移動などが欠かせない。
しかし、文政権は労働組合などに配慮した政策を進め、最低賃金を大幅に引き上げるなどした。それが中小企業などの経営を圧迫した。
また、中国経済の成長の限界などを受け韓国の輸出も減少した。
それは、韓国経済が縮小均衡に向かい始めたことを示唆する。
その上に新型コロナウイルスが発生し、文政権は窮地に立たされているといえる。
さらなる韓国経済混乱への懸念
韓国からの資金流出の背景には、グローバル経済の需給が寸断され、韓国経済の混乱リスクの上昇と、文政権の政策行き詰まり懸念がある。
韓国の文政権は金融・財政政策を総動員して景気を支えようとしているが、問題の大元の原因は人々の動線の寸断にある。
それをどの程度の期間で終息させることができるか、それが韓国経済の先行きを左右するはずだ。
足許、価格変動リスクへの忌避感の高まりや海外投資家による投資資金の回収から、韓国の国債流通利回りが上昇している。
景気が減速、更には後退する中での金利上昇は、国家の資金繰りひっ迫懸念を高め、急速に企業や家計の経済的体力を奪うだろう。
韓国の家計債務残高は可処分所得の186%に達しており事態は深刻だ。
現在、韓国の民主主義の実力が問われている。
1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマンショックの際、韓国は主要国からの資金支援を受けることで経済の混乱を克服した。
すでに与党・共に民主党内では、自国経済が非常事態に突入しており、主要国との通貨スワップ協定の締結を急がなければならないとの危機感が高まっている。
韓国経済が底割れというべき展開を回避するために、主要先進国からの協力の取り付けは大きな役割を果たすだろう。
ただ、いずれの国も自国の感染対策に必死だ。
また、文氏は日米との安全保障連携に背を向け、南北統一を夢見てきた。
そうした政策がむしろ、米国やわが国などの同盟国との関係をこじらせている。
韓国がこれまでの政策を改め、国力の安定に必要な政策運営の発想を早期に取り戻せるか否か、文政権の見識が問われている。
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真壁 昭夫(信州大学経済学部教授)
真壁 昭夫(信州大学経済学部教授)
3/23(月) 6:31配信
現代ビジネス
新型コロナショック、韓国からの「資金引き上げ」が止まらない…
足元、新型コロナウイルスによる世界的な経済・金融市場の混乱によって、投資家が株式や債券など価格変動リスクのある金融資産を投げ売りしている。
その中でも、韓国から激しい勢いで資金が流出している。
アジアの通貨市場では韓国ウォンの下落が突出している。
マレーシアやインドネシアなどの新興国よりも韓国ウォンへの売り圧力は強い。
また、世界的に見て韓国の株価下落率も大きい。
いかに投資家が韓国から資金を引き揚げているのがわかる。
投資家が金融資産を投げ売りする背景には、新型肺炎の収束の目途がつかないことがある。
先行きが読めないことが、投資家の恐怖心理を大きく増幅している。
先行きの目途が付かないため、リスクを取れない市場参加者が日に日に増えている。
新型肺炎が世界全体で人の動線を寸断する中、韓国のように輸出入を通して世界経済に深く組み込まれてきた経済には、かなりの影響があることは間違いない。
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新型コロナショック、韓国からの「資金引き上げ」が止まらない…
高まる文政権への不信
韓国メディアの論説などを見ていると、これまでにないほど文在寅大統領への批判が高まっているようだ。
一つの要因として、文政権のコロナウイルスの感染対策の遅れがある。
韓国では新たにソウル近郊の教会で集団感染が発生した。
文大統領は中国を重視するあまり、入国制限などの初動動作が遅れた。
さらに、国内での感染対策も不十分と言わざるを得ない。
それは、市場参加者にとって軽視できないリスク要因だ。
新型コロナウイルスが経済に与える影響を考える上で最も重要なポイントは、収束にどれだけの時間がかかるかだ。
感染の食い止めに時間がかかればかかるほど、経済活動は停滞するだろう。
韓国国外の状況に目を向けると、世界的に感染対策から国境封鎖などに踏み切る国が増えている。
この状況は、韓国経済にとってかなり厳しい。
過去の保守派政権は、財閥企業を優遇してきた。
サムスン電子などは海外からヒト・モノ・カネを調達し、国内で汎用品を大量生産し、輸出することで業績を拡大した。
それが第2次世界大戦後の韓国経済の成長を支えた。
つまり、韓国経済の運営にはグローバルな人の移動などが欠かせない。
しかし、文政権は労働組合などに配慮した政策を進め、最低賃金を大幅に引き上げるなどした。それが中小企業などの経営を圧迫した。
また、中国経済の成長の限界などを受け韓国の輸出も減少した。
それは、韓国経済が縮小均衡に向かい始めたことを示唆する。
その上に新型コロナウイルスが発生し、文政権は窮地に立たされているといえる。
さらなる韓国経済混乱への懸念
韓国からの資金流出の背景には、グローバル経済の需給が寸断され、韓国経済の混乱リスクの上昇と、文政権の政策行き詰まり懸念がある。
韓国の文政権は金融・財政政策を総動員して景気を支えようとしているが、問題の大元の原因は人々の動線の寸断にある。
それをどの程度の期間で終息させることができるか、それが韓国経済の先行きを左右するはずだ。
足許、価格変動リスクへの忌避感の高まりや海外投資家による投資資金の回収から、韓国の国債流通利回りが上昇している。
景気が減速、更には後退する中での金利上昇は、国家の資金繰りひっ迫懸念を高め、急速に企業や家計の経済的体力を奪うだろう。
韓国の家計債務残高は可処分所得の186%に達しており事態は深刻だ。
現在、韓国の民主主義の実力が問われている。
1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマンショックの際、韓国は主要国からの資金支援を受けることで経済の混乱を克服した。
すでに与党・共に民主党内では、自国経済が非常事態に突入しており、主要国との通貨スワップ協定の締結を急がなければならないとの危機感が高まっている。
韓国経済が底割れというべき展開を回避するために、主要先進国からの協力の取り付けは大きな役割を果たすだろう。
ただ、いずれの国も自国の感染対策に必死だ。
また、文氏は日米との安全保障連携に背を向け、南北統一を夢見てきた。
そうした政策がむしろ、米国やわが国などの同盟国との関係をこじらせている。
韓国がこれまでの政策を改め、国力の安定に必要な政策運営の発想を早期に取り戻せるか否か、文政権の見識が問われている。
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真壁 昭夫(信州大学経済学部教授)