日本と世界

世界の中の日本

韓国経済危機、もはや警告ではなく現実なのに誰が対処しているのか

2020-03-16 18:21:41 | 日記
記事入力 : 2020/03/13 10:25

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

【社説】韓国経済危機、もはや警告ではなく現実なのに誰が対処しているのか

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)宣言で各国の株式市場が暴落した。

2008年の金融危機よりも深刻で広範囲の危機が訪れる懸念が高い。

米国など主要国は直ちに景気浮揚策を繰り出した。米国は政策金利の大幅な引き下げに続き、トランプ大統領が一時的な「所得税ゼロ」カードまで切った。

英国は史上最低水準への利下げに踏み切り、ドイツも大規模な景気浮揚策を打ち出した。

防疫対策と同時に迅速かつ思い切った経済的先制措置に乗り出した格好だ。

 韓国経済は世界のどの国よりも新型コロナウイルスによる衝撃を大きく受けているにもかかわらず、政府による対処はほとんど見えてこない。

零細事業者が「死にそうだ」と騒ぎ立てているが、政府の政策資金執行率は10%にも満たない。

その間に零細事業者の廃業が続出している。

健全な中小企業まで一時的な資金不足で黒字倒産に危機に追い込まれている。

融資システムを非常体制に切り替えなければならないが、金融当局は後で責任を負わなくても済むようにすることばかり考えている。

 航空会社の乗客が85%減少し、造船業の船舶発注は57%、自動車販売は20%以上減少した。

内需業界の大手企業まで身売りに出され、映画館、就職あっせん分野の最大手企業の売却説も流れている。

外国人は韓国企業の株式を大挙売り浴びせる「セルコリア」に乗り出した。

12日の韓国株式市場はメーンボードで9年ぶりに一時的な取引停止措置が取られるなど暴落が続き、ウォン・ドル相場は過去7カ月で最大幅のウォン安進行となった。

危機対応の司令塔となるべき企画財政部は「マスク対応部」に転落して久しい。

追加補正予算の増額問題を協議した11日の与党・政府・青瓦台(党政青)会議は経済副首相不在で開かれた。

経済副首相の代わりに出席した企画財政部次官は発言もしなかったという。

民主党と青瓦台の関心は全て選挙に集中しており、経済官庁はその顔色ばかりうかがっている。コントロールタワーは不在だ。



 自営業、中小企業の資金支援は彼らの帳簿を熟知している銀行など金融機関を利用するのが基本だ。

金融委員会が銀行を稼働させるシステムさえ動かせば、資金支援にかかる期間を大幅に短縮し、「悔しい不渡り」を防ぐことができる。

過去の通貨危機、金融危機の際に大きな効果を上げた方式だ。

ところが、現政権はそれすらできていない。

権力は関心が他の場所に向いており、官僚は後日の責任追及を免れようとする思いが先に立っている。

過去に大きな代償を払って習得した危機管理ノウハウも生かされていない。

 こうした形態の経済危機もいつもは企業業績が回復して収拾されてきた。

現政権の反企業政策で企業の体力はあまりに低下している。結局はこれをどう反転させるのかが鍵となる。


朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

やっと気付いた韓国、最後の安全弁は日韓通貨スワップ協定、掌返しで日本へ低姿勢

2020-03-16 18:02:37 | 日記
2020-03-16 05:00:00

やっと気付いた韓国、最後の安全弁は日韓通貨スワップ協定、掌返しで日本へ低姿勢

テーマ:ブログ

勝又壽良の経済時評

株式は3ヶ月空売り禁止

中国依存の危険性を察知

08年の危機構造に類似

韓国は、新型コロナウイルスによる感染者急増で、内需が落込み窮地に立たされている。

WHO(世界保健機関)から「パンデミック」宣言が出されるに及んで、輸出依存度の高い韓国にとって、さらに大きな痛手である。

韓国経済は、内外需の両面で圧力を受けることになった。

こうした事態において誰でも想像するのは、韓国の「3回目」の通貨危機襲来リスクである。

1997年11月の通貨危機、2008年9月のリーマンショックによる金融危機を経験させられたからだ。

いずれも、韓国ウォン相場の暴落に端を発する混乱であった。

ウォンは、1ドル=1200ウォンが「マジノ線」とされている。

1200ウォンを割って下落に転じると歯止めが効かず、軽く1500ウォン程度まで暴落して最悪事態に追い込まれるのだ。



株式は3ヶ月空売り禁止

3月に入って、世界的な株価暴落で韓国株式市場もこれに飲み込まれた。

3月13日、窮余の一策として、格式市場で3ヶ月間の「空売り禁止」が発表された。

外国人投資家が、株式売却で得た資金を海外送金すれば、ウォン安を招くという道筋を遮断するものだ。

韓国当局は、口には出さないがすでに「3回目の通貨危機」を回避する動きに出てきた。

為替投機筋が、ウォンを狙って売り崩すリスクは過去最大へと膨らんでいる。

第一は、経済政策を取り仕切れるリーダーが不在である。

文政権は、まさに「極楽トンボ」と言える集団である。

労組と市民団体が支持する政権で、この関係者以外は政権運営にタッチさせない「権力独占体制」を築いている。

権力というおいしいパイは、関係者だけで分け合うスタイルである。この中には、経済専門家が一人もいないのだ。


文政権がこれまで行なった経済政策は、最低賃金の大幅引き上げと週52時間労働制である。

この理念は立派であり、誰も反対できるものでない。

ただ、性急な実行は摩擦を伴うので、十分な準備時間を必要とする。

スポーツでも必ず予備体操をするものだ。

文政権は、その予備体操しないで、「ぶっつけ本番」で競技に入ったのである。韓国経済が混乱して当然である。

文政権は、理念さへ立派であればそれですべて良し、とする理念先行政治である。

経済政策では、理念が良くても手段を誤れば逆効果になる。

医療でも過剰投薬は副作用を伴う。そういう「臨床」的配慮がゼロなのだ。これが、偽らざる文政権の実態である。

第二は、理念先行が外交政策でも顕著である。

文政権は、進歩派特有の社会主義志向である。

資本主義を悪と位置づけ、「反企業主義」を時代の先端を行く政策と判断している。

これが、労組と市民団体を支持基盤に吸い寄せた理由だ。


文政権の外交基本路線は、「親中朝:反日米」である。

これが、韓国外交を歪な形にしている。中国と北朝鮮に対しては、何を言われても「ご無理ごもっとも」であるが、日米に対しては些細なことでも「一言」してくる。

とりわけ、日本には「積年の恨みを晴らす」という仇討ち精神で対抗している。

文政権になって、日韓関係がすべて崩れ去った要因は、仇討ち精神による「過去回帰」である。未来志向は、消え去った状態であ。

以上の2要因に基づけば、韓国経済は過去最大の危機に立っている。

具体的には、内需不振(第一要因)。

通貨危機で日本の支援(日韓通貨スワップ協定)が期待できない(第二要因)点だ。

ウォン売りを仕掛ける投機筋の立場から言えば、過去2回と比べ「最大のチャンス」と判断するのかもしれない。

文政権が、ことさら日本を無視したのは、中国との関係密接化によって人民元との通貨スワップ協定を結んだという自信である。

だが、人民元には国際市場で威力があるわけでない。

資本自由化を先送りし、自由変動相場制にも移行しない人民元が、強い信頼を得られるはずがないからだ。


世界貿易に使われる通貨では、円が人民元をはるかに上回っている。円が、米国ドルに次ぐ「安全通貨」とされる理由で

文政権は、中国を後ろ盾にすれば日本を軽視しても問題ない、と踏んだのであろう。

これが、大誤算の始りである。

その中国は、新型コロナウイルス発症地になった。

世界のサプライセンターの座が揺らぎ始めている。

GDPの300%を上回る過剰債務の処理が重くのしかかっているのだ。

不動産バブルが崩壊すれば、信用不安に直結して、「人民元売り」を誘うリスクまで抱えている。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領の医療分野の参謀が「安倍晋三首相が新型肺炎に罹ればよい」と述べた。

2020-03-16 17:25:20 | 日記
「安倍が新型肺炎に罹ればいい」 文在寅“医学参謀”の品性なき発言のウラ

週刊新潮WEB取材班編集

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年3月9日掲載

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の医療分野の参謀が「安倍晋三首相が新型肺炎に罹ればよい」と述べた。

弾劾の危機に直面する左派政権のあがきだ。発言を韓国観察者の鈴置高史氏が読み解く。

日本が隠ぺい工作

鈴置:韓国の国民健康保険公団の金容益(キム・ヨンイク)理事長が3月3日、左派の政治家が主宰するYouTubeチャネルに出演し、「今日の日本の国会で安倍が答弁しながら咳をかなりしていたらしい」と振られ、以下のように答えました。

・それもいいですね。その方(かた)がちょっと(新型肺炎に)罹れば(日本の患者数の隠ぺい工作が)変わるのではないか。

 聯合ニュースの「金容益『日本が五輪控え新型肺炎を隠ぺい…あまりに政治的な判断』」(3月3日、韓国語版)や、中央日報の「『日本、新型肺炎を隠蔽…韓国よりもより感染者数多い可能性』 韓国の国民健康保険公団理事長が発言」(3月4日、日本語版)が報じています。

 金容益理事長はソウル大学で予防医学の博士号を取得し、韓国の保険行政学会会長を務めるなど、医療行政の専門家です。

 ソウル大学・医療管理学研究所の所長を歴任後には、左派政党の国会議員も務めました。文在寅大統領の医療に関する参謀陣の大御所と報じられています。

安倍は東京五輪に配慮

――医学者がなぜ、隣国の首相の病気を望むのでしょうか。

鈴置:韓国では、特に政権側の人々は「日本政府は新型肺炎の感染者数数を抑えるために、敢えて積極的に検査をしないのだ」と言い出しています。金容益理事長の「安倍は病気に罹れ」発言も、その文脈の中で語られたのです。

 聯合ニュースの「金容益『日本が五輪控え新型肺炎を隠ぺい…あまりに政治的な判断』」(3月3日、韓国語版)の発言部分を翻訳します。

・(日本の感染者数は)韓国よりも格段に多い可能性が高いが、極めて政治的判断を下している。夏に(東京)五輪があるので診断しようとはしないのだ。

・平素なら日本も(感染症を)積極的に管理する国だが、今回は捕捉しようと考えない。五輪という政治的な動員があるためだし、新型肺炎は我が国の人が考えるよりも相当に弱い病気だからだ。

・診断しなければただの風邪で終わる。重症になれば肺炎の治療をすれば済む。日本も老人が多いので死ぬ人は死ぬ――という態度なのであろう。これが本当に良い政治なのであろうか。

・安倍晋三総理の作戦が成功し、隠ぺいが成功すればよいが、(感染が)爆発すればどうするのか、と考えるのだが。暴発しても診断しなければ捕捉できないわけで……。

 以上のような発言の後に、「安倍が新型肺炎に罹ればよい」――つまり、病気に罹って死ぬか退陣すれば、隠ぺい工作が止んで日本もまともになる、との趣旨の発言が展開されたのです。

医療崩壊に陥った韓国

韓国の新型肺炎の累計感染者数(0309)


――何を根拠に隠ぺい工作と決めつけるのでしょうか?

鈴置:根拠は何もありません。韓国では議論は事実に基づかなくてもいいのです。自分に有利になるよう、適当に事実をねつ造するのが常道です。

――「自分が有利」になるのですか?

鈴置:文在寅政権は新型肺炎で窮地に立ちました。

保守派は「中国全土からの入国を禁止しなかったため感染が韓国で拡大した」と主張、大統領の弾劾に動いています(「新型肺炎で『文在寅』弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ”と保守」参照)。

 文在寅政権は国内の防疫戦術の選択にも失敗しました。

軽症者も陰圧室の完備した病院に入院させた。

その結果、病院が軽症者で埋まってしまい、重症の患者が自宅で待機するうちに死亡するケースが急増したのです。一種の医療崩壊です。

 
朝鮮日報の医学専門記者であるキム・チョルチュン氏らが「患者は20倍多いというのに…MERS規定に縛られた政府の対応」(3月2日、韓国語版)で以下のように指摘しています。

・(こうした失敗は)2015年に発生し186人が感染したMERS(中東呼吸器症候群)の規定にこだわった政府の防疫対策が原因だとの指摘が出ている。

・致死率は高いが感染力は弱いMERSへの対処方法を、MERSとは正反対の致死率は低いが感染力が強く、患者数が(3月1日時点で)4000人近い武漢肺炎(新型肺炎)への対処に機械的に適用したのだ。

 韓国政府は3月1日に方針変更を表明、生活治療センターを設置し、軽症患者を病院から移し始めました。

 ただ、死亡者は増え続け、3月9日0時時点で51人にのぼります。日本の7人と比べれば明らかに多い。後に検証した際「方針転換が遅かった」との批判が起きると思われます。


検査数で日本に勝った!

――韓国の失敗は分かりました。なぜ、それが「安倍よ、肺炎に罹れ」発言になるのですか?


鈴置:韓国人は何事につけ「日本よりも上手くやっているか」を気にします。2月半ばまでは、韓国の感染者数が頭打ちになるかに見える一方、日本はクルーズ船の処理にあたふたとしていました。

 当時、韓国紙や韓国人のSNSは、日本の無能を見下し韓国人の優秀さを誇る言説であふれました(「韓国で新型肺炎の患者が急増 保守派は『文在寅政権の「無能、無策」と総攻撃』」参照)。

 しかし、2月下旬に入ると韓国で患者数が急増し、たちまち中国に次ぐ世界2位に躍り出てしまった。

心の拠り所が崩れた韓国人は「検査件数が多いから感染者も多いのだ」「日本には検査能力で勝っている!」と言い始めました。

 
感染者が増えるにつれ、韓国からの入国禁止・制限を宣言する国が増えました。3月9日現在、入国禁止・制限国は100カ国を超えています。

「世界から除け者にされた」とショックを受けた韓国人は、今度は「入国制限国数で日本に負けたのは、日本がインチキをしているためだ」と言い出したのです。

 感染者数は本当は日本のほうが多い。しかし敢えて検査をせずにそれを隠ぺいしている。それは東京五輪を守るためだ――というロジックです。

 ことに、弾劾の対象となった文在寅政権としては「日本に負けた」と認めるわけにはいきません。

そこで大統領の医学参謀が「日本は感染者を隠している」とYouTubeで叫んだのです。

反日VS従中の戦い

――日本を貶めて、効果はあるのですか?

鈴置:政権支持者の間ではあると思われます。でも、アンチ文在寅の人々には逆効果でしょう。

先ほど引用した中央日報の韓国語版の記事。掲載130時間後の読者の書き込み欄を見ると、24本中22本が発言に批判的でした。

 
ほとんどが

「我々が大変な時に、日本の感染者数が本当はもっと多いと言いだして、それにどんな意味があるのか」

「人の国よりもまず、自分の国の心配をしろ」といった、政権の論点ずらしを攻撃するものでした。

 韓国では政権が「反日」という「パンとサーカス」を投げてやれば大衆はそれに飛びつきます。

でも今は新型肺炎を抑えきれるかどうかに自分の命がかかっている時です。

「パンとサーカス」どころではない。さすがに韓国人も踊らされません。

 そもそも、4月15日の総選挙を前に、政権は反日を武器に票稼ぎに出るぞ、との警戒感が保守の間では広がっていたのです。

 選挙直前に日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を再び宣言。

この賛否を立候補者に問い、米韓関係の悪化を恐れて破棄に逡巡する保守系を「親日派」と決めつける作戦です。

 これに対し、保守派が繰り出したのが「文在寅政権は習近平主席に忖度して中国からの入国を完全に止めず、国民の生命を危険にさらしている」との従中キャンペーンです。

 朝鮮日報の「総選挙は『韓日戦』か『韓中戦』か、フレーム戦争」(2月23日、韓国語版)は保守と左派が「親日」「従中」と決めつけ合いながら総選挙を戦う構図だ、と評していました。

畳の上で死ねない歴代大統領

韓国歴代大統領の末路(0228)

――それにしても、医学界の大物が「あいつは病気になればいい」と堂々と語るとは……。

鈴置:韓国はそんなものです。発言を報じた中央日報の書き込みでは、90%以上の読者がこの発言に批判的でした。

が、「他人が病気になることを望む品性の低さ」を指摘する読者は皆無でした。

「軽率な発言だ」との批判は1本ありましたが。

「どんな下品な言葉を使おうが、感情がすっとすればいい」

「嘘だろうと相手を罵倒し、言い負かせばいい」というのがこの国の風土なのです。

 それに、政権側も必死なのです。

何が何でも4月15日の総選挙に勝たなくてはいけない。

もし、保守が3分の2の議席を獲得すれば、文在寅弾劾訴追案が国会を通過します。

 それを憲法裁判所が認めれば罷免が成立。

次の大統領選挙で保守が勝てば文在寅氏はもちろん、現政権の中核人物は牢屋に送られる可能性が極めて高い。

実質的な権力を持たなかった第2代と第4代の大統領は別にして、他のすべてが亡命するか、暗殺されるか、監獄に送られるか、子供が逮捕されるか、捜査の手が伸びて自殺するか――という悲惨な最期を遂げてきたのです。

 畳の上で――韓国には畳はありませんから――オンドルの上で死んだ大統領はいないのです。

それに今回は人の命がかかった問題です。収賄罪で起訴された大統領でも懲役10数年の宣告が出ます。

それ以上の重い判決が出ることでしょう。

「師団長」に極刑を

――くどいようですが、医者が「あいつが病気になればいい」と言う神経が分かりません。

鈴置:左派政権が倒れたら、この医者――金容益理事長こそが主犯として訴えられる可能性が高いからと思われます。

 
発言が報じられた日の中央日報に興味深い記事が載りました。

新型肺炎まん延の医学界の責任者は誰か、を追及した「医療社会主義の金容益師団、この中で新型肺炎の実力者は青瓦台のイ・ジンソク」(3月3日、韓国語版)です。こんな1文があります。

・匿名を要求した医療系の消息筋は「ソウル大学教授出身の金容益・国民健康保険公団理事長を頂点とする『医療社会主義者』らが大統領周辺に布陣し、新型肺炎への対応過程でも巨大な影響力を行使した」と語った。

 見出しの「師団」。

韓国では強力な派閥を例えるときにも使います。

金容益理事長こそは、文在寅大統領の防疫政策に最も影響力を持つ派閥のボス、と名指ししたわけです。

 この記事が本当かどうかは別として、これだけ明確に非難された以上、保守政権が成立したら世論は「新型肺炎の流行を助長した師団長」の極刑を要求することでしょう。

 それを防ぐには、安倍政権の防疫政策が間違ったと決めつけ、我々のやり方が正しかった、と主張しておくしかないのです。

ウイルスではなく国民同士が戦う

――結局、韓国が内輪もめする中から「日本が劣っている」「安倍は病気になれ」との発言が飛び出しているのですね。

鈴置:その通りです。世界中の国が新型肺炎と戦っている時に、韓国だけは国民同士が戦っているのです。感染者と死亡者数が増えるほどに、政権側の旗色はどんどん悪くなっているのですが。

 追い詰められた文在寅政権は、キリスト教系新興宗教の新天地イエス教会が諸悪の根源だ、とキャンペーンを張る作戦に出ました。

 どこまで本当かは分かりませんが、政府は「新天地イエス教会の信者が中国・武漢でウイルスに感染して帰国、狭い空間に密集して座ってミサを行ったため感染が一気に広まった。

政府が感染の拡大を防ぐために信者のリストを要求したが、新天地イエス教会は応じていない」との情報をメディアに流し続けています。

 これは一定程度、効果があると思います。

新天地イエス教会は正統派のキリスト教――カトリックともプロテスタントとも激しく対立し、もともと強い警戒感を持たれていたからです。

 それに新天地イエス教会の指導者はキャラ立ちした人で、3月2日に実施したお詫びの会見で傲慢な態度も見せました。メディアは国民の反感を掻き立てる方向で報じました。

 ただ、保守系紙は同時に「政府の責任転嫁」も指摘しています。

最大手紙、朝鮮日報は3月3日、社説「国民は新天地の責任、政府の責任すべてを知っている 防疫に集中せよ」

(韓国語版)の結論部分で「国民は馬鹿ではない」と書きました。「つまらぬ世論操作などするな」とクギを刺したのです。

中国には報復しない韓国

――では、やはり「反日」でごまかすしかない……。

鈴置:ええ、そうなるかもしれません。ことに安倍政権が文在寅政権をさらなる窮地に追いやったからです。「票稼ぎの反日」ではなく、「本気の反日」となるでしょう。

 3月5日夜、日本政府は3月9日以降の中国と韓国からの入国者に、2週間の自己隔離を求める方針を発表しました。

ビザ発給も制限しますから、中国人と韓国人に対する事実上の入国禁止措置です。

「発表前、日本は中国には知らせたが、韓国には何の事前通告もしなかった」と韓国では報じられました。日本に軽く見られたと感じた韓国人の怒りは文在寅政権に向かいました。

 この政権がもっと困惑したことは、日本が中国人も同時に事実上の入国禁止にしたことです。

韓国政府は日本に対しては直ちに6日夜、報復措置として日本人の事実上の入国禁止を打ち出しました。

 しかし、中国人に対してはそうはできない。

その結果、「中国の顔色ばかり見る文在寅」とのイメージがより鮮明になってしまった。

 
韓国経済新聞は社説「相次ぐ奇襲入国制限…どうして韓国はこんな国になったのか」(3月6日、韓国語版)で、そこを突きました。翻訳します。

・(日本の入国規制に対し)即刻、青瓦台(大統領府)は「相互主義に立脚して日本に対応する」としたが、相互主義というなら(先に韓国からの入国規制を敷いていた)中国にまず、適応すべきだ。

 朝鮮日報の社説「日本は遅ればせの中国遮断、世界から孤立した我が国は日本にだけ憤怒」(3月7日、韓国語版)の最後の段落の書き出しが以下でした。

・中国経由の外国人を防げない国は今や、世界の重要国の中で韓国だけとなったと言って過言ではない。

日本の仕掛けた「落とし穴」にはまった

――韓国も中国人の入国を阻止すればいいだけでは……。

鈴置:今になって中国人を阻止すると、「やるんだったらもっと早くすべきだった」との厳しい批判が巻き起こるのは確実です。朝鮮日報の社説は先回りしてそれを指摘しています。末尾を翻訳します。

・すでに感染者が6000人を超え、防いでも意味はない、との声も出る。いったいどうなっているのか。

 中国への門を開け続けても、今になってあわてて閉めても、文在寅政権に対する怒りは燃え上がります。この政権は「日本が掘った落とし穴にはめられた」と感じているでしょう。

――安倍政権はそこまで考えて「中韓からの入国制限」に動いたのでしょうか。

鈴置:そんな深い意図はないと思います。韓国で感染者が急増しているから韓国との門を閉めた。習近平国賓訪問が延期となったから中国との門を閉めた――に過ぎないでしょう。

 ただ、韓国人の受け止め方は異なります。思い出してください。

今、この国では保守と左派が死闘を繰り広げているのです。窮地に追い詰められた左派政権の目には、日本が文在寅攻撃の材料を保守に送ったと映ります。


手負いの文在寅は何をするか分からない

「日本の入国禁止」を受け、3月6日朝に韓国外交部が記者クラブの記者にSNSで送ったコメントには「日本の措置には防疫以外の意図があると疑わざるをえない」とありました。

 聯合ニュースの「政府、日本の『入国拒否』に『底意』と疑う…日本人の訪韓を制限するか」(3月6日、韓国語版)などは、それを「日本の底意」と表現しました。

 韓国人が考える「日本の底意」にはいろいろな意味があるのでしょうが、「保守派と手を組んでの文在寅政権打倒」も含まれると思います。

 反日だけではありません。

韓国の保守の間では、手負いの文在寅政権が何をしだすか分からない、との危惧が広がっています。

それはいずれお話しますが、とにかく今、韓国から目を離してはいけないのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)

韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集