新型コロナへの過剰反応は「韓国の失敗」への道
一斉休校よりパチンコ屋の規制のほうが効果的だ
2020.3.6(金) 池田 信夫
大事なのは軽症患者の「安心」ではなく重症患者の「安全」
ダイヤモンド・プリンセスに突出して感染者が多い原因は、PCR(polymerase chain reaction)検査の数である。
日本では検査体制が整っていない上に、ダイヤモンド・プリンセスの乗客・乗員約4000人を優先して検査したため、それ以外の国内では検査対象者が少なかった。
これを「感染者を少なく見せる政府の陰謀だ」という人がいたが、国内の検査を3倍に増やした3月4日にも、検査した5690人のうち、陽性は269人と前日より16人増えただけだった。
新型コロナは、ただの風邪である。
感染力も致死率もインフルエンザとほとんど変わらず、患者の数はインフルエンザの約700万人に比べると、3万分の1以下だ。
治療薬がないのは厄介だが、99%以上の人は発症しないので気づかない。発症しても重症率は10%以下で、ほとんどの人は家で寝ていればなおる。
ところがワイドショーではコメンテーターが「希望者すべてにPCR検査を受けさせろ」と騒いでいる。
安倍首相もこれに迎合して、2月29日の記者会見で「医者が必要と考える場合は、 すべての患者が検査を受けられる十分な能力を確保する」と約束した。
すべての患者にPCR検査を受けさせるべきだという医師はいくらでもいるので、これは歯止めにならない。
患者はそういう病院に押しかけ、「安心」を求めて検査を受ける。
新型コロナは感染症法に定める「指定感染症」なので、検査で陽性になると、症状がなくても入院させなければならない。
こうして「PCR検査ラッシュ」が起こり、病院のベッドが軽症の新型コロナ患者で埋め尽くされ、
それ以外の病気の患者が死亡する――という医療崩壊が起こり、感染者5766人、死者35人という中国以外では最悪の被害を出したのが韓国である。
検査で病気はなおらない。
治療薬のない病気で陽性とわかっても、自宅で静養するしかないので、軽症患者のPCR検査には意味がないのだ。
「他人にうつさないように検査が必要だ」という人がいるが、それはインフルエンザでも同じことだ。
今の程度の感染者数なら医療が崩壊することは考えにくいが、今後まだ感染者が増える可能性もある。
特に北海道では「感染者が940人になる」という専門家会議の予測もあるので、日本国内で累計1000人程度にはなるかもしれない。
感染症対策の目的は感染者を減らすことではなく、死者を減らすことである。
軽症患者がPCR検査を求めて病院に押しかけると感染が拡大し、病院がパンクして他の患者の治療ができなくなる。
「安心」を求める人々に行政が過剰反応すると、本当に命を守るべき重症患者の「安全」が失われるのだ。
新型コロナは子供の病気ではない
WHOの報告書で注目されるのは「感染した子供は、大人の世帯での接触追跡で主に特定されていることがわかった。
特に共同チームがインタビューした人々は、子供から大人に感染したエピソードを思い出せなかった」という記述である。
季節性インフルエンザでは15歳以下の罹患率が非常に高いため、児童の10%が欠席したら学級閉鎖などの措置をとる。
記者会見で唐突に「全国の小中高校の一斉休校」を要請した安倍首相にも、そういう固定観念があったのだろうが、新型コロナはまったく違う。
WHOの報告書によれば、中国の新型コロナ感染者のうち18歳以下は2.4%。
そのほとんどは大人から子供に感染したもので、その逆は確認されていない。
死者は基礎疾患をもつ高齢者に集中し、80歳以上の致死率が21.9%と高い。
日本でも死者6人はすべて70歳以上であり、一斉休校で死者を減らす効果は期待できない。死者を減らす上で有効なのは高齢者の接触制限である。
高齢者の集まる閉鎖空間としては、パチンコ・カラオケ・劇場があるが、このうちパチンコが重要だ。
パチンコ屋は空気が悪く、感染の中心となる「ハブ」になりやすい。
2月18日には和歌山県で1人、パチンコ屋に立ち寄った人が新型コロナに感染している。
したがって優先順位としては、学校よりパチンコ屋を閉鎖したほうが死亡リスクを減らせる。
パチンコ屋は風俗営業法の対象なので、警察が入場制限を行うこともでき、経済的な影響も大きくない。
こういう規制は好ましくないが、今のようにすべての集会やイベントに法的根拠のない自粛要請を出すと、対象がわからないので過剰な自粛が起こり、経済が萎縮する。
業種を限定して、法にもとづく規制を行うべきだ。
一斉休校よりパチンコ屋の規制のほうが効果的だ
2020.3.6(金) 池田 信夫
大事なのは軽症患者の「安心」ではなく重症患者の「安全」
ダイヤモンド・プリンセスに突出して感染者が多い原因は、PCR(polymerase chain reaction)検査の数である。
日本では検査体制が整っていない上に、ダイヤモンド・プリンセスの乗客・乗員約4000人を優先して検査したため、それ以外の国内では検査対象者が少なかった。
これを「感染者を少なく見せる政府の陰謀だ」という人がいたが、国内の検査を3倍に増やした3月4日にも、検査した5690人のうち、陽性は269人と前日より16人増えただけだった。
新型コロナは、ただの風邪である。
感染力も致死率もインフルエンザとほとんど変わらず、患者の数はインフルエンザの約700万人に比べると、3万分の1以下だ。
治療薬がないのは厄介だが、99%以上の人は発症しないので気づかない。発症しても重症率は10%以下で、ほとんどの人は家で寝ていればなおる。
ところがワイドショーではコメンテーターが「希望者すべてにPCR検査を受けさせろ」と騒いでいる。
安倍首相もこれに迎合して、2月29日の記者会見で「医者が必要と考える場合は、 すべての患者が検査を受けられる十分な能力を確保する」と約束した。
すべての患者にPCR検査を受けさせるべきだという医師はいくらでもいるので、これは歯止めにならない。
患者はそういう病院に押しかけ、「安心」を求めて検査を受ける。
新型コロナは感染症法に定める「指定感染症」なので、検査で陽性になると、症状がなくても入院させなければならない。
こうして「PCR検査ラッシュ」が起こり、病院のベッドが軽症の新型コロナ患者で埋め尽くされ、
それ以外の病気の患者が死亡する――という医療崩壊が起こり、感染者5766人、死者35人という中国以外では最悪の被害を出したのが韓国である。
検査で病気はなおらない。
治療薬のない病気で陽性とわかっても、自宅で静養するしかないので、軽症患者のPCR検査には意味がないのだ。
「他人にうつさないように検査が必要だ」という人がいるが、それはインフルエンザでも同じことだ。
今の程度の感染者数なら医療が崩壊することは考えにくいが、今後まだ感染者が増える可能性もある。
特に北海道では「感染者が940人になる」という専門家会議の予測もあるので、日本国内で累計1000人程度にはなるかもしれない。
感染症対策の目的は感染者を減らすことではなく、死者を減らすことである。
軽症患者がPCR検査を求めて病院に押しかけると感染が拡大し、病院がパンクして他の患者の治療ができなくなる。
「安心」を求める人々に行政が過剰反応すると、本当に命を守るべき重症患者の「安全」が失われるのだ。
新型コロナは子供の病気ではない
WHOの報告書で注目されるのは「感染した子供は、大人の世帯での接触追跡で主に特定されていることがわかった。
特に共同チームがインタビューした人々は、子供から大人に感染したエピソードを思い出せなかった」という記述である。
季節性インフルエンザでは15歳以下の罹患率が非常に高いため、児童の10%が欠席したら学級閉鎖などの措置をとる。
記者会見で唐突に「全国の小中高校の一斉休校」を要請した安倍首相にも、そういう固定観念があったのだろうが、新型コロナはまったく違う。
WHOの報告書によれば、中国の新型コロナ感染者のうち18歳以下は2.4%。
そのほとんどは大人から子供に感染したもので、その逆は確認されていない。
死者は基礎疾患をもつ高齢者に集中し、80歳以上の致死率が21.9%と高い。
日本でも死者6人はすべて70歳以上であり、一斉休校で死者を減らす効果は期待できない。死者を減らす上で有効なのは高齢者の接触制限である。
高齢者の集まる閉鎖空間としては、パチンコ・カラオケ・劇場があるが、このうちパチンコが重要だ。
パチンコ屋は空気が悪く、感染の中心となる「ハブ」になりやすい。
2月18日には和歌山県で1人、パチンコ屋に立ち寄った人が新型コロナに感染している。
したがって優先順位としては、学校よりパチンコ屋を閉鎖したほうが死亡リスクを減らせる。
パチンコ屋は風俗営業法の対象なので、警察が入場制限を行うこともでき、経済的な影響も大きくない。
こういう規制は好ましくないが、今のようにすべての集会やイベントに法的根拠のない自粛要請を出すと、対象がわからないので過剰な自粛が起こり、経済が萎縮する。
業種を限定して、法にもとづく規制を行うべきだ。