既得権益層によって締め出された若者たち

労働組合という既得権益層の影響力が強いため、韓国の労働市場では新規参入者である若年層の雇用創出が難しい。それに加えて、左派の政治家として労働組合などの支持を得てきた文大統領の政権下、労働争議は激化している。また、文政権は労働組合に有利に働く法律の制定を重視してきた。

 

そうした要素を基に考えると、若年層の失業率は上昇、あるいは高止まりする恐れがある。労働争議から逃れるために生産拠点などを海外に移す企業は増え、韓国全体で就業機会がさらに減少する可能性は軽視できない。また、新型コロナウイルスの感染再拡大によって飲食や交通をはじめ内需も縮小している。その一方で、労働組合は既得権益の維持と強化を目指して経営者に賃上げなどを求め労働争議が激化することも考えられる。

その結果、韓国では所得を手に入れ、自己実現を目指すことは難しいと感じる若者が増える恐れがある。韓国からの留学生や30代の人と話をすると、「日本で就職しできるだけ長く住みたい」との考えを聞くことがある。それは、韓国よりも、わが国の方がより多くの選択肢を手に入れる公正な環境が整っているとの見方があるからだろう。

太陽を浴びる女性
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支持率低下が止まらない

一般論として、住宅価格の高騰によってより良い生活を目指すことが困難になったり、借り入れが増えたりすると、人々の不安心理は強まる。それに加えて、若年層の失業率が高止まりすると、社会全体での活力も停滞する。韓国ではそうした状況が鮮明化し、文大統領の支持率が低迷している。

言い換えれば、文氏の経済政策はうまくいっていない。多くの国民が不動産価格の高騰や厳しさを増す雇用環境に直面する一方で、政府の高官が複数の住宅を所有して蓄財に努めていることが明らかになった。また、財閥企業の創業家などの富裕層は、カネ余りの環境下で株式や不動産への投資などによって富を増やしている。

それに加えて、検察改革を重視する文政権の秋美愛(チュ・ミエ)前法相と尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の対立も表面化し、人々の心が文氏から離れているとの印象を強くする。