ドイツ、22年の脱原発で電力輸入国に 石炭火力も全廃 再生エネ頼みにリスク

2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所事故後、脱原発を進めてきたドイツのエネルギー政策が揺れている。
ドイツは今年3月の政府と電力会社の合意で、22年末までの脱原発実現が決定的になった。
ただ、電源構成の1割を占める原発の脱落で、電力の輸入国への転落も確実視されている。
ドイツは石炭火力発電の全面廃止も目指しており、安定電源は少なくなる一方だ。
欧州全体が再生可能エネルギーに力を入れる中、
天候次第で欧州全域の発電量が落ち込む恐れもあり、安定的な電力調達の難易度は増している。
「ドイツ政府は原発の運転期間の延長を一切考えていない」
ドイツ政府は今年3月、脱原発の実現に強い意志を示した。
ドイツ政府はこれに先立ち、国内で原発を運転する4つの電力会社との協議に決着をつけた。
政府が電力会社に合計約24億ユーロ(3200億円)を支払うことと引き換えに、電力会社は22年末までにすべての原発を停止し、さらに政府の脱原発政策にからむすべての法的措置をとりさげる内容だ。
ドイツに原発を持つスウェーデンの国有電力会社バッテンフォールは「最終的には納得できる内容となった」とした。
ドイツが脱原発へかじを切ったのは11年3月の東電福島第1原発事故が契機だ。
メルケル政権はこの年の6月、22年までに国内にある17基の原発すべてを廃止する方針を閣議決定。
主要国の中で率先して脱原発を推し進め、原発の安全神話を揺るがした東電の原発事故が世界に与えた衝撃の大きさを示した。
◇
ただ、ドイツは脱原発が実現に近づいた結果として、電力の輸入国になることが見込まれている。
ドイツのエネルギー当局の資料では、ドイツは20年、525億キロワット時の電力を輸出する一方、336億キロワット時の電力を輸入した。
輸出から輸入を差し引いた純輸出は189億キロワット時で、エネルギーの輸出国の地位を維持している。
一方、この電力輸出を下支えしてきたのが原子力だといえる。
ドイツのシンクタンク、アゴラ・エネルギーウィンデによると、原発は20年のドイツの総発電量の11%を占める。
残された国内の原発が22年末までに停止することになれば、ドイツ国内の電力供給が大きく揺らぐことは明らかだ。
情報会社S&Pグローバル・プラッツのアナリストは今年3月のリポートで「ドイツは22年から電力の純輸入国になる」と分析している。
◇
原発という主要電源との決別を図るドイツが、新たな電源として期待するのが再生エネだ。
風力を中心とする再生エネは20年のドイツの総発電量の45%を賄っており、ドイツはすでに再生エネ導入の優等生といえる。
気候変動問題の要因とされる二酸化炭素(CO2)排出量削減が狙いで、30年には再生エネの比率は6割を超えるとみられている。
メルケル政権は今年5月、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする時期を5年前倒しして45年にすると表明した。
ただ、気候変動対策に力を入れるドイツは、総発電量の23%を占める石炭火力発電を38年までに全廃する方針も示している。
いくら再生エネの導入を進めたとしても、安定的な電力供給を担ってきた原発と石炭火力を相次ぎ全廃する方針には危うさもはらむ。
気候条件によって再生エネによる発電量が減り、需要を満たせない場合には他国からの輸入が頼みになるが、こうしたエネルギー戦略も万全ではない。
海外電力調査会の伊勢公人調査第一部部長(欧州担当)は「ドイツ以外の欧州各国も再生エネの導入を進めている」と指摘。
欧州各地で似通った気候条件になれば、欧州全域の再生エネ発電の量が落ち込む可能性があり、「ドイツと各国の間で電力供給の相互補完がうまくいくかは分からない」と指摘する。
◇
安全性の確保の難しさが浮き彫りになった原発や、CO2排出量が課題となる石炭火力と同様に、再生エネには気候条件で発電量が大きく左右されるという弱みがある。いずれの課題も新たな技術で解決する道は残るが、コストが高くなり、最終的には生活者の負担につながる可能性がある。
経済活動におけるリスクを回避するには、調達元や投資先を特定の分野に偏らせすぎないことが肝要だ。特定のリスクを避けるあまりに、別のリスクを大きく抱えるかのようなエネルギー政策は、安定性を欠くものだといえる。
日本は原発の主要電源としての位置づけを維持しつつ、石炭火力についてもCO2排出量を抑えた効率的な設備について活用していく方針をとっている。
他国と送電網で結ばれておらず、電力輸入が難しいという事情を考えれば、電力の安定調達がドイツよりも難しいことは明らかで、脱原発や脱石炭に関する議論には慎重さが求められる。
(経済本部 小雲規生)