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「ドイツは22年から電力の純輸入国になる」と分析している

2021-06-04 17:44:08 | 日記

ドイツ、22年の脱原発で電力輸入国に 石炭火力も全廃 再生エネ頼みにリスク

閉鎖されたドイツ・フランクフルト郊外の原子力発電所=3月16日(AP)
閉鎖されたドイツ・フランクフルト郊外の原子力発電所=3月16日(AP)

2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所事故後、脱原発を進めてきたドイツのエネルギー政策が揺れている。

ドイツは今年3月の政府と電力会社の合意で、22年末までの脱原発実現が決定的になった。

ただ、電源構成の1割を占める原発の脱落で、電力の輸入国への転落も確実視されている。

ドイツは石炭火力発電の全面廃止も目指しており、安定電源は少なくなる一方だ。

欧州全体が再生可能エネルギーに力を入れる中、

天候次第で欧州全域の発電量が落ち込む恐れもあり、安定的な電力調達の難易度は増している。

「ドイツ政府は原発の運転期間の延長を一切考えていない」

ドイツ政府は今年3月、脱原発の実現に強い意志を示した。

ドイツ政府はこれに先立ち、国内で原発を運転する4つの電力会社との協議に決着をつけた。

政府が電力会社に合計約24億ユーロ(3200億円)を支払うことと引き換えに、電力会社は22年末までにすべての原発を停止し、さらに政府の脱原発政策にからむすべての法的措置をとりさげる内容だ。

ドイツに原発を持つスウェーデンの国有電力会社バッテンフォールは「最終的には納得できる内容となった」とした。

ドイツが脱原発へかじを切ったのは11年3月の東電福島第1原発事故が契機だ。

メルケル政権はこの年の6月、22年までに国内にある17基の原発すべてを廃止する方針を閣議決定。

主要国の中で率先して脱原発を推し進め、原発の安全神話を揺るがした東電の原発事故が世界に与えた衝撃の大きさを示した。

ただ、ドイツは脱原発が実現に近づいた結果として、電力の輸入国になることが見込まれている。

ドイツのエネルギー当局の資料では、ドイツは20年、525億キロワット時の電力を輸出する一方、336億キロワット時の電力を輸入した。

輸出から輸入を差し引いた純輸出は189億キロワット時で、エネルギーの輸出国の地位を維持している。

一方、この電力輸出を下支えしてきたのが原子力だといえる。

ドイツのシンクタンク、アゴラ・エネルギーウィンデによると、原発は20年のドイツの総発電量の11%を占める。

残された国内の原発が22年末までに停止することになれば、ドイツ国内の電力供給が大きく揺らぐことは明らかだ。

情報会社S&Pグローバル・プラッツのアナリストは今年3月のリポートで「ドイツは22年から電力の純輸入国になる」と分析している。

原発という主要電源との決別を図るドイツが、新たな電源として期待するのが再生エネだ

風力を中心とする再生エネは20年のドイツの総発電量の45%を賄っており、ドイツはすでに再生エネ導入の優等生といえる。

気候変動問題の要因とされる二酸化炭素(CO2)排出量削減が狙いで、30年には再生エネの比率は6割を超えるとみられている。

メルケル政権は今年5月、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする時期を5年前倒しして45年にすると表明した。

ただ、気候変動対策に力を入れるドイツは、総発電量の23%を占める石炭火力発電を38年までに全廃する方針も示している。

いくら再生エネの導入を進めたとしても、安定的な電力供給を担ってきた原発と石炭火力を相次ぎ全廃する方針には危うさもはらむ。

気候条件によって再生エネによる発電量が減り、需要を満たせない場合には他国からの輸入が頼みになるが、こうしたエネルギー戦略も万全ではない。

海外電力調査会の伊勢公人調査第一部部長(欧州担当)は「ドイツ以外の欧州各国も再生エネの導入を進めている」と指摘。

欧州各地で似通った気候条件になれば、欧州全域の再生エネ発電の量が落ち込む可能性があり、「ドイツと各国の間で電力供給の相互補完がうまくいくかは分からない」と指摘する。

安全性の確保の難しさが浮き彫りになった原発や、CO2排出量が課題となる石炭火力と同様に、再生エネには気候条件で発電量が大きく左右されるという弱みがある。いずれの課題も新たな技術で解決する道は残るが、コストが高くなり、最終的には生活者の負担につながる可能性がある。

経済活動におけるリスクを回避するには、調達元や投資先を特定の分野に偏らせすぎないことが肝要だ。特定のリスクを避けるあまりに、別のリスクを大きく抱えるかのようなエネルギー政策は、安定性を欠くものだといえる。

日本は原発の主要電源としての位置づけを維持しつつ、石炭火力についてもCO2排出量を抑えた効率的な設備について活用していく方針をとっている。

他国と送電網で結ばれておらず、電力輸入が難しいという事情を考えれば、電力の安定調達がドイツよりも難しいことは明らかで、脱原発や脱石炭に関する議論には慎重さが求められる。

(経済本部 小雲規生)


ETF買い入れ縮小でも見えない「出口」、日銀が抱える難題

2021-06-04 16:36:06 | 日記

ETF買い入れ縮小でも見えない「出口」、日銀が抱える難題

【DOL特選記事】

 
 
井出真吾
 
 
 
Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン 提供 Photo:PIXTA

 

ETF買い入れ額を大幅縮小

4月、5月買い入れは一回

 今年3月、日本銀行は「金融緩和の点検」を受けETF(上場投資信託)の年間買い入れ額のメドとしてきた「原則6兆円」を削除し、買い入れ対象から日経平均型ETFなどを除外した。

 ETF買い入れを続けてきた中、日銀が日本株の最大の株主という異例の状況になり、株式市場の“官製相場”化などの批判が強まったことを受けたものだ。

 黒田東彦総裁は、「ETFの買い入れを縮小する意図は一切ない」考えを強調する一方で「メリハリを付けて買う」と説明しているが、市場が買い入れ額の大幅減少を予想した通り、4月のETF買い入れは1回(701億円)だけで、5月は28日までに一度も買っていない。

 日銀は明確に買い入れペースを落としているが、今後、保有ETFをどのように減らしていくのか、「出口」は見えず、最大の株主であり続ける状況で、ETF買い入れの政策コストやリスクをマネジメントするという経験のない課題が残っている。

時価50兆円、最大の日本株保有者として

残る未経験の課題

 日銀は4月以降、明確に買い入れペースを落としており、コロナショックやリーマンショックのように市場が大きく混乱しなければ買い入れを今の調子で極小化できるかもしれない(図表1)。

 これまで日銀は2010年12月の買い入れ開始から累計で36兆円超のETFを購入した(図表2)。

 白川方明総裁時代にデフレ脱却のための「異例の措置」として始めた当初は0.45兆円が買い入れ額の上限だったが、黒田東彦総裁が就任すると「異次元緩和」策の一環として“年間1兆円”として継続的に買う方式に変更(13年4月)された。

 その後も同3兆円(14年10月)、同6兆円(16年7月)と段階的に買い入れ枠を増やし、コロナショックに見舞われた20年3月には「上限12兆円」を付け加え、買い入れ枠を実質的に拡大した。

 今年3月の政策見直しで、年間「6兆円」のメドはなくしたものの、年間買い入れ額の「上限12兆円」は残したので、TOPIX型ETFのみを年間0~12兆円の範囲で買うことになった。

 しかしこれまで保有するETFを売却したことがなく、ETF保有額を最終的にゼロにする「出口」にたどりつくのは、相当先のことになりそうだ。

 昨年後半からの株価上昇で日本株保有額は時価ベースでは50.2兆円に膨らんだ(4月末時点の推定値)。昨年11月にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の保有額を超え、世界最大の日本株保有者になったとみられる。

 保有するETFを売却できる状況には程遠い中で、今後も“日本株の最大株主”であり続けることは変わらないだろう。残された課題は未経験のものばかりだ。

株価買い支えを求める声に

忍耐強く買い入れ縮小を続けられるか

 その中で最も重要なのは、今後も買い入れ額をできるだけ少なく抑えることだ。

 日銀のETF買い入れに対しては、「経済の新陳代謝を促す本来の市場機能をゆがめる」「投資家の投資機会を奪っている」などの弊害が指摘されてきた。

 だがフローの買い入れ額を減らさない限り「出口」も遠のくばかりだからだ。

 さらに実は他にも、ETF保有額の増加を抑制すべき事情がある。

 日銀は毎年度の利益(剰余金)の一定割合を国の一般会計に納めるが(準備金や配当への充当分を除く)、決算期末にETFが含み損を抱えていれば引当金を計上する。引当金を積んだ分、国庫納付金が減り新たな国民負担が生じる。

 筆者の試算では、コロナショックで株価が急落した20年3月、ETFの含み損が一時約3.5兆円に膨らんだ。2010年以降に日銀が得たETFの分配金(累計約1.7兆円)を吹き飛ばす状況だった。

 幸い株価が反転し、20年3月末は辛うじて約0.3兆円の含み益となったが、今後も株価下落で含み損が生じる可能性は否定できない。当然、その場合はETF保有額が大きいほど国民負担も大きくなる。

 この観点からは保有するETFの損益分岐点が防衛ラインとなる。4月末時点の損益分岐点は、日経平均換算で2万700円程度と推定される(図表3)。

 これより高い株価水準でETFを買うと損益分岐点が上昇する。株価下落への耐性が弱まり国民にとってもリスクが大きくなる。

 それでも株価が大きく下落することがあれば、日銀は「上限12兆円」を根拠にETF買い入れに動くかもしれないし、市場でも日銀に“催促”する声が増えるだろう。

 しかし、筆者はここに大きな誤りがあると考えている。

 株価下落時に“下値メド”とされるPBR(株価純資産倍率)1倍相当の日経平均は2万3400円程度であり(5月28日時点)、仮に日経平均が2万円まで下落することがあっても一時的で済むはずだ。

 つまり何らかのショックで必要以上に(経済のファンダメンタルズに見合う水準よりも)株価が下がれば、国内外の投資家が買うので、日銀が出動する必要はない。

 そもそも市場とはそういうものだ。

 今後、株価が下がることがあっても、政治などからの“株価買い支え”を求める声にも毅然とした姿勢で、忍耐強く買い入れ縮小を続けられるかだ。

運用機関に任せっぱなしでいいのか

ESG・SDGsへの配慮を明確化する

 日銀は実質的に世界最大の日本株保有者であるにもかかわらず、ETF買い入れで、環境や公正な社会実現、持続可能な開発など、ESGやSDGsを考慮してこなかった点は改善の余地がある。

 一部には「現行の金融政策の柱は2%物価目標であり、ESGは関係がない」との考え方もあるが、「金融政策ならESGに配慮しなくてよいのか」との指摘には反論の余地はない。

 現実に、GPIFもそうだが、世界の大手機関投資家だけでなく、欧米の主要な中央銀行も金融政策でESGなどを考慮している。

 現在、日銀が保有するTOPIXや日経平均などのETFはESGやSDGsをうたっていない。

 例えば、TOPIXは東証1部上場の全銘柄を組み入れた株価指数だ。温暖化ガスや海洋汚染物質を大量に発生させる企業、人権問題に抵触する恐れのある企業、不祥事などガバナンスに問題がある企業も機械的に買い入れ・保有し続ける。

 もっとも、ESG関連の日本株を組み入れたETFは市場規模が小さい一方、巨額の日銀の買い入れに耐え得るTOPIX等がESGを考慮する仕組みになっていない。こうした事情から「仕方ない」と日銀を擁護することもできる。

 しかし問題の本質は、株主になっている企業への議決権行使が運用機関任せになっていることだろう。

 中央銀行が個別企業の企業経営に介入する形になるのはまずいという考え方からだろうし、その判断は妥当だ。

 実際、運用機関は「投資家の責任原則(スチュワードシップ・コード)」に則して議決権を行使し、その内容を個別に公表している。

 日銀などETFの受益者(保有者)は意見表明の直接的な機会は与えられていないし、中央銀行が民間に直接的に立ち入るべきではない。

 とはいえ、せめて運用機関の議決権行使結果をESGの観点からチェックし、必要があれば運用機関に対して意見を表明することは必要ではないか。

 それは最大株主としての責任を全うすることにもつながるはずだ。

国民負担を引き下げる必要

信託報酬支払累計で2100億円

 ETF買い入れの政策コストの問題も改善が必要だ。

 ETFの保有者は信託報酬というランニングコストを負担する。日銀はこれまでに推定2100億円超の信託報酬を負担してきた(実質的に国民負担)。

 だがこの負担は、「年間○%」という形で各ETFの純資産から差し引かれるため、日銀の決算書には記載されない。

 国民には見えないものになっている。

 信託報酬率はETFによってバラツキがあり、日銀の保有額が大きいETFは信託報酬率が高いものも目立つ(図表4)。

 ポイントは、TOPIXや日経平均連動型のETFは運用機関が違っても運用成果にはほとんど差がないことだ。

 品質が同じならコストが安いETFを選ぶのが一般的だろう。要は費用対効果の問題だ。

 例えば、TOPIX連動型など、同じカテゴリー内で信託報酬率が低いETFへ乗り換える方法が考えられる。

 筆者の試算では現在の保有構成だと1年間の信託報酬は592億円だが、各カテゴリー内で最も安いETFに乗り換えると399億円で済む。

 これは極端な方法だが、約33%のコスト削減だ。

 国民負担を軽減するためにも、信託報酬率の引き下げ交渉も含めて検討は必要だろう。

買い入れの是非や効果

外部機関による検証を

 日銀のETF買い入れは、当初、50メートル走のつもりで走り始めたが、いつの間にかフルマラソンになり、今やゴールがあるのかも分からない。

 その結果、世界最大の日本株保有額となり、弊害が目立つようになった。

 もちろん、やむを得ない事情もあり全否定されるものではないし、買い入れ割合の変更などの工夫もされてはきた。

 だが、規模拡大を繰り返した政策の是非や効果については、今後、外部機関による検証が必要だろう。

(ニッセイ基礎研究所上席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾)

訂正 記事初出時より以下の通り訂正します。

 

19段落目:21年3月末は辛うじて約0.3兆円の含み益となったが→20年3月末は辛うじて約0.3兆円の含み益となったが

(2021年6月4日 12:46 ダイヤモンド編集部)