書いて良かった 伊藤忠商事会長CEO 岡藤正広
2021年6月28日
年初から毎週月曜を担当した本コラムの連載もこれが最終回。
「読者の皆さんの関心があるかな」と、マーケット・インの発想で自問自答しながら書いてきた。
そのかいがあってか、多くの反響をいただいた。
批判を覚悟で持論を綴(つづ)ったこともある。
「社長の決め方」と題した回では、指名委員会等設置会社によるトップ人事に疑問を呈した。
やはり仕事で苦楽をともにしないとリーダーの資質があるかは分からないと思うからだ。
反論もあったが、ある財界の大物から電話をいただき「全く同感。表だって言いにくいことをよく指摘してくれた」と言われ、大いに勇気づけられた。
がんで亡くなった社員について書いた時のこと。
記事を読んだ奥さんから連絡をいただいた。
葬儀で会った二人のお子さんも立派に育ったという。
奇術が得意だった彼は会社でも人気者だったが、奥さんの文面から本当にご家族に愛されていたことが伝わり、私まで温かい気持ちになれた。
キッズデーという社内イベントで、ある社員のお子さんから手紙をもらった話も書いた。
5年前のことだ。当時小学生のこの子は、大きくなったら大好きなお父さんが働く伊藤忠に入りたいと書かれていた。
中学生になった彼から手紙が届いた。
残念ながら第1志望校は不合格だったという。
ただ私が大学受験に失敗した際に夜型から朝型に変えたというコラムを読んだそうで、高校受験で実践するという。
彼には声を大にして言いたい。「君なら大丈夫!」
不安もあったが書いて良かった。最後に、皆さんにお礼を述べて筆を置きたい。
ありがとうございました。