韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、23日の東京五輪開会式に合わせて訪日する計画で、菅義偉首相との首脳会談も調整されている。
いわゆる徴用工訴訟や慰安婦問題などで厳しく追及されるのが確実な中で、文氏が訪日を目指す背景の一つに韓国の金融市場の問題があるようだ。
不動産価格の高騰と家計債務の膨張が止まらず、利上げなどを引き金に資金が逆流し始めると「2つの時限爆弾」が炸裂(さくれつ)する恐れがあるというのだ。
韓国外務省当局者は11日、文氏の東京五輪開会式出席と菅首相との首脳会談開催を検討していることを認めた。
韓国は文氏の訪日に合わせた本格的な首脳会談開催を求めているが、菅首相は「訪日される場合は外交上、丁寧に対応することは当然」としながらも、徴用工や慰安婦訴訟の国際法違反などについて「引き続き韓国側に適切な対応を強く求めていく立場に変わりはない」と強調している。
歓迎ムードではない訪日に文氏が前のめりなのはなぜか。
韓国メディアは、「バイデン米政権が日米韓の同盟を強調しているため、日本との関係改善が緊急の事案となった」と解説している。
日本との関係改善は韓国経済にとって死活問題との見方もある。
韓国銀行(中央銀行)によると、
3月末時点の家計債務は過去最高の1765兆ウォン(約171兆円)で、韓国の国内総生産1924兆ウォンに匹敵する水準まで増大した。
韓国経済に詳しい愛知淑徳大ビジネス学部の真田幸光教授は
「個人の借金が増える背景として、コロナ禍に伴う経済的な打撃による借入金の増加があることは間違いない。
しかしこれに加えて、バブル化した資産を担保に借金を重ね投機をする動きがあることにも留意しておきたい。
不動産を実利ではなく投機として運用している」と解説する。
KB国民銀行によると、首都ソウルの4月のマンション平均売買価格は約11億1100万ウォン(約1億954万円)で過去最高を記録した。
市民団体の調査では、2017年からの4年間でほぼ倍増したという。
韓国ではあらゆる手段で借金し、資金を調達する「ヤンクル」と呼ばれる人々の存在も指摘されている。
就職難を背景に不動産や株式、仮想通貨(暗号資産)への投資にのめり込む若者も多いというのだが、コロナ禍の経済対策として韓銀が政策金利を引き下げ、低金利でお金を調達できるようになったこともバブルを過熱させている。
韓国が外国人投資家を抱え込むためには韓国国債の金利を上げるのがてっとり早いが、それは利払い負担の上昇を意味する。
この利払いが政府予算を更に圧迫し、しかも一度でも支払えなくなればデフォルトとなる。
外債もしくは外国人保有の場合、韓国経済が失速するか、韓国国内に多額の債務により韓国の経済に不安があるか、FRBが金利を上げ韓国国債を売却し始めた時、金利は上がるし資本は抜かれるという致命的な状態に陥る。
急激なウォン安ドル高を受け、韓国は昨年3月に米連邦準備理事会(FRB)と通貨交換(スワップ)協定を結んだ。
外貨準備高が積み増されているため国家破産寸前だった1997年のような通貨危機は起こりにくいとの見方が多が、専門家からは資金流出に備えて日本とも協定を締結すべきだとの声があがる。
為替スワップでは、為替相場のウォンの暴落は抑えられない。だがドル建ての返済資金や借換資金の工面は可能だ。