“人治主義”の韓国は梨泰院事故で内政混乱必至…経済苦境で日米中との関係はどう変わるか
11/4(金) 18:01配信
10月29日、韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で悲惨な事故が起き、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権はその対応に追われている。
日韓関係、韓国内の経済状況など、尹政権の行方はどうなるのか。
BSフジLIVE「プライムニュース」では、佐藤正久自民党前外交部会長、真田幸光氏、鈴置高史氏を迎え展望した。
梨泰院の事故の影響で、韓国内政の混乱は避けられず
新美有加キャスター:
10月29日、韓国ソウル・梨泰院で156人が死亡した事故について、現在韓国のメディアなどでは事故当日の警察による警備が不十分だったことや、違法建築によって道幅が狭くなっていたことなどが指摘されている。
事故を受け、尹大統領は「国政の最優先は事故の収拾と対応措置。
韓国社会は群衆管理に対する体系的な研究開発が不十分」と発言。
セウォル号事故では当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が対応を批判されたが、今回の事故の尹政権への影響は。
鈴置高史 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員:
案外大きい影響が出てきた。
今回は行政の責任がはっきりしており、警察もソウル市役所も明らかに手抜きだと認めている。
大統領を弾劾したい勢力は勢いづくだろう。
韓国の保守の中にも、弾劾後の選挙でもっとまともな保守政権を作ればいいというコンセンサスがある。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
本当に弾劾まで向かえば韓国の社会の安定が崩れ、もちろんマーケットにとってはマイナス材料。
ただ、今の世界の混乱の中で韓国経済・金融を叩いてマーケット全体にメリットがあるのかという議論もある。
韓国経済が崩れて、中国やロシアにいっそう寄っていってしまうリスクも金融市場は考えている。
佐藤正久 元外務副大臣 自民党前外交部会長:
韓国野党は恐らく、批判の矛先を相当に大統領の方に向けると思う。
韓国には国政監査という超党派の常任委員会による政府への監査があり、11月8日には大統領府に対して行われる。
国会では野党の数が多く、超党派とはいえ野党勢力の強い監査が大統領府に入る。
今までに野党の代表である李在明(イ・ジェミョン)氏の側近が警察に捕まるなどいろいろやられており、野党は巻き返しの絶好のチャンスと見る。
恐らく韓国の内政は混乱する。
法治ではなく人治国家の韓国は、安定した民主主義国にはならない
新美有加キャスター:
尹政権は内政でも厳しい状況。
韓国の国会では、大統領の施政方針演説を最大野党の共に民主党がボイコットするという、憲政史上初の異常事態が発生。
背景には深刻な与野党の対立がある。
9月8日、韓国検察は共に民主党の李在明代表を公職選挙法違反の罪で在宅起訴。
さらに選挙資金法違反の疑いで李代表の側近を、また徐旭(ソ・ウク)前国防相を職権乱用などの疑いで逮捕。
これに野党が猛反発した。
検察の元トップである尹大統領の指示があったか。
鈴置高史 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員:
指示に決まっている。尹大統領に敵は2人。
まず、大統領選でぎりぎりで競り勝った相手、共に民主党の李代表。
次の選挙に出る可能性が極めて高く、今つぶしておこうと。
もう1人は、もう韓国名物となった「前の大統領は必ず牢屋に送る」。
徐前国防相の逮捕の先の標的は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領。
反町理キャスター: 韓国の司法や検察は、本当に大統領の意のままに動くものなのか。
例えば、徴用工の話で前政権は「我々は大法院判決を覆すことはできないから日本は従ってくれ」とずっと言っていた。
それは嘘だということか。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
都合のいいように利用するのが彼らの得意技。
実質的にはやはり大統領権限が強く、非常に大きな力が働いて指示が実際に起こっていると思う。
ただ、国際市場の見方はちょっと変わっている。
三権分立のベースは民主主義だが、そのベースは主権在民、国民の政治参加。
例えば投票率の低い日本の評価は意外に低い。
韓国は投票率も高く、弾劾まで起こすということは国民が政治にコミットできているという見方をする連中もいる。
反町理キャスター:
だが、野党が文句を言うことは、自分たちが与党だった時に司法や検察を意のままに動かしていたという裏返しにしか見えない。
不当逮捕の嵐。この社会的な状況を韓国の皆さんは諦めている?
鈴置高史 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員:
諦めではなく、法治国家をやったことのない人には法治国家が何か分からない。
韓国はもう日本や西洋のような安定した民主主義国家にはならないと思う。
それは法治でないから。
やはり中国、韓国、北朝鮮という儒教国家は法治にならない。
民主主義国家を体験した人には、法律を守っていれば逮捕されないという民主主義の安定感がわかる。
だが、産経新聞のソウル支局長は韓国の新聞を引用しただけで突然起訴された。
韓国人には法治でないおかしさがわからない。
佐藤正久 元外務副大臣 自民党前外交部会長:
これまでの歴史を見ても、法治国家というよりも人治国家。
大統領が変われば政府の人事も変わり、政敵が捕まることの繰り返し。
いわゆる旧徴用工の問題も、政権が変わって外交部が「日本と交渉中だから待ってくれ」と意見書を出せば通った。
普通ではないが、これが現実。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
人治国家だと思う。中国もそう。
だが、アジア全体にそういう国が多いと欧州から見られている傾向が強い。
日本も「忖度」という言葉がこの5年ほど流行っているが、では日本も人治国家なんじゃないのかという見方をする人が世界にはいる。
日本も一応注意をしておく必要はある。
反町理キャスター:
かつて日本経済が大きくなっているとき、日本異質論が出た。
日本を含めたアジア異質論みたいなものが広がる危険性があると。
経済安全保障における中国との向き合いなどでも、日米で議論をするとき、結局同じだと思われていたら。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
価値観の共有ができないと見られる危険性を、日本は徹底的に払拭していかなくちゃいけない。
鈴置高史 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員:
日本は中国や韓国のような非法治国家とは違うと態度で示すべき。
それはやはり、中国やロシアに対する姿勢。
アメリカは、日本と韓国は明らかに違うとわかっている。
バイデン大統領は副大統領時代に日韓慰安婦合意の保証人をやった。
韓国がいかに約束を破る国かよくわかっている。
外務省などにはアメリカに怒られるから韓国の言うことを聞こうという人がいるが、全く現実を無視している。
経済苦境の韓国とのスワップに日米は冷淡、中国につく可能性は?
新美有加キャスター:
消費者物価指数を見ると、日本は9月の前年同月比で3.0%上昇。
対して韓国の10月の指数では前年同月比で5.7%上昇。
日本よりインフレが進んでいるが、韓国の世論の受け止めは。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
社会に貧富の格差がある中で、やっぱり不満を持つ人はかなりいるはず。
日本でいえば年収200~300万円の人たちは堪えているはずだが、韓国はその堪え方が日本よりも強く起こっており、社会問題化している。
また日本は上げていないが、韓国はアメリカの利上げに追随する形で利上げしている。
アメリカとの金利差が開くとウォン安が進展し、国家債務の返済ができなくなる危険性があり、せざるを得ない。
一方で物価に影響を与えないようにしなければならず、かなり対応に苦しんでいる。
鈴置高史 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員:
韓国のマクロエコノミストが一番恐れているのは、ドル不足でデフォルトを起こすか、それともウォン不足でデフォルトを起こすかという悪魔の2択。
将来、アメリカも利上げをどこかで止めるが、そこで韓国もウォンの利上げを止めればよいが、金利を下げることはできない。
そうした瞬間にアメリカとの金利差ができて、キャピタルフライト(投資資金の海外流出)が起きるから。
唯一解決策があるなら、アメリカか日本に通貨スワップを結んでもらうこと。
だけど、アメリカも日本もやらない。
反町理キャスター:
韓国が緊急事態に備えて中国と協定を結ぶ可能性について、マーケット的な評価は。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
可能性としてあるのは、中国が世界の覇権を握るため、自らにとって重要な国がドル建ての債務を持っている場合、それをスワップしてあげること。
反町理キャスター:
それは韓国を飲み込むためにですよね。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
韓国だけではないが、韓国が対象になればそう。
ドルの基軸を崩すために踏み込む可能性はある。
まだ今のところ兆候はないが。
反町理キャスター:
それが、マーケットが人民元を基軸通貨として認めざるをえないトリガーになるなら、アメリカにとっても困ることでは。
ならばアメリカは韓国にスワップするのでは。
真田幸光 愛知淑徳大学教授:
当然可能性はある。例えば、ロシアがこれまでのドル建て決済をルーブル建てにしたことで、ルーブルの価値は上がった。
中国も、うちから買うなら人民元で買えと言ってくるのでは。
反町理キャスター:
資源と食糧を持っている各国が、自国建ての通貨での売買を求めるようになる。
アメリカはそれが嫌だから、韓国にスワップを。
言葉は悪いが、コウモリ外交と言われる韓国のやり方が功を奏する?
鈴置高史 ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員:
韓国が人民元建てで商売せざるを得なくなることをアメリカが許すかどうか。
それより、スワップをつけないで韓国を痛い目に遭わせるという発想もある。
まさに1997年、日本がスワップをつけようとしたらアメリカに止められた。
アメリカが韓国という国をどう見るか。そこはわからない。
(BSフジLIVE「プライムニュース」11月2日放送)
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