勝又壽良のワールドビュー
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国は、宗族社会の流れを守っている。それは、苗字の数が限定されていることに現れている。
約280の名字がある。そのうち、約5割が「金(キム)・李(イ)・朴(パク)・崔(チェ)・鄭(チョン)」氏である。
特に、金氏だけで全人口の約20%を占めているという。
上記のように280の宗族が、韓国社会を形成しているわけで、根底には「既得権益を守る」という意識が極めて強い。
そうでなければ、一族の繁栄はあり得ないからだ。日本政府が、半導体の主要3素材の輸入手続きを一括処理(ホワイト国扱い)から個別処理へ変えたとき、韓国が烈火のごとく怒ったのは、「ホワイト国扱い」を既得権益と錯覚していたからだ。
この既得権益意識が、韓国経済のガンになっている。
規制改革をさせないからだ。
韓国では、未だに公営企業数がOECD(経済協力開発機構)中で最多である。絶対に民営化を認めないのだ。
それは、韓国では公務員であることが最大のステータスである。当然のことだが、民営化されれば公務員でなくなる。それを拒否しているのだ。
公務員は、朝鮮李朝で言えば「ヤンバン」(両班)である。
ヤンバンは、絶対的権力を握っていた。韓国国民が公務員に憧れるのは、「ヤンバン」崇拝に繋がっている。
このヤンバンを事実上追放したのは、日本の植民地政策である。
ヤンバンの血筋を引く韓国民は、反日チャンピオンになっていると見てよかろう。
韓国の規制改革が極めて困難であるのは、宗族社会やヤンバンの伝統が今なお残っている結果である。自己浄化能力がないのだ。
『WOWKOREA』(11月26日付)は、「潜在力を下回る低成長の突破口は『規制改革』のみ」と題する記事を掲載した。
11月24日に発表された韓国銀行の修正経済展望のうち、断然注目されたのは「来年の成長率」である。
「1.7%」という来年の成長率予想は、国内外の機関たちの展望値のうち最も低い。保守的な韓国銀行が最も極端な展望値を発表したこと自体が驚きだ。
(1)「ことしに入り機関たちの経済展望は下落し、より悲観的な数値を伝えている。
ADB(アジア開発銀行)の2.3%、IMF(国際通貨基金)の2.0%、OECD(経済協力開発機構)の1.8%などがそうであり、今月に入り発表された韓国金融研究院の展望も1.7%である。
それほど、経済の暗雲がだんだんと立ち込めているということだ。
その結果「来年の韓国経済は2%ほどと予想されていた経済の潜在成長率を下回る成績となるだろう」というのが、ほとんど既成事実となっている」
韓国の潜在成長率は、ほぼ2%とされている。
来年の成長率が1.7%となれば、潜在成長率を下回る。これを克服するには、規制改革が必要としている。ただ、具体策には触れていない。片手落ちな提言である。
(2)「短期的なショックにより、経済が沈滞に陥る恐れがある。
グローバル経済は、疾病と戦争が入り混じった特殊な状況である。
重要なのは「固着化されてはならない」ということだ。
そうでなくても前政府の時から「低成長は世界的な現象であり、わが経済もそのような流れから抜け出すことは困難だ」という認識が拡散されてきた。
1人あたりの国民所得が3万ドルを超え先進国の隊列に並んだ国は、3~4%台の高速成長を続けるのは難しいということも事実だ」
規制改革とは、市場経済の原則にそって経済政策を行なうことだ。
だが、韓国左派は市場競争を「新自由主義」として忌避している。
これは、新自由主義の意味を間違えている結果だ。
韓国では、こういう中身を知らない反対論が横行している。
「反日論」もその一つである。不勉強なのだ。
「労働貴族」は、反市場的存在であり競争原理から逸脱している。
左派は、「労働貴族」の存在を認めており、さらに権利を拡大させようと狙っている。規制改革とは逆行している。
(3)「潜在成長率以下の低成長は警戒すべきだ。
そのような事例が、オイルショック・為替危機・金融危機など特殊な状況に表れたのは極めて深刻なことだ。
しかも2%以下の成長と4%以上の物価は、インフレよりもっとおそろしいスタグフレーション現象をもたらす恐れもある。
いくら警戒し対応しても、し過ぎることはない。
もちろん多くの機関は、潜在成長率以下の低成長が来年で終わるものとみている。韓国銀行も2024年は「成長2.3%・物価2.5%」を提示した。「1年あれば、離脱した軌道から正常へと戻ってくるだろう」と予想している」
ここでは、安易な経済見通しを示している。
私は、再来年の韓国経済が「一陽来復」にならないと見る。理由は簡単である。規制改革と逆行しているからだ。
(4)「すみやかに突破口を見出すことが、経済ショックを和らげる近道だ。現在としては「規制改革」が唯一の答えだ。現状の経済的難関は、外部による変数という点で克服が困難といえる面もある。だが、生産性を高めて経済に活力を吹き込む道が不可欠だ。その意味で、規制改革は「選択」でなく「必須」である」
韓国では、労働規制を撤廃することだ。
終身雇用制と年功序列賃金制は、大企業の労組を庇うだけで、中小企業の賃上げを妨害している。
まさに大企業労組が、既得権益を守って離さないのだ。
満足な転職市場も存在しない国に、労働の流動化などあり得ない。韓国は、大企業労組の天国である。