日本は、いよいよスーパーコンピュータや人工知能(AI)などに使う次世代半導体を国内量産する体制作りが動き出す。
トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシアホールディングス、三菱UFJ銀行が、それぞれ10億円程度を出資する。
会社名は「ラピダス」だ。2020年代後半に向けて製造技術の確立を目指すもの。
政府も補助金を通じて支援する。世界で半導体の次世代技術を巡る競争が激しくなっており、米国企業や産官民との連携の受け皿となる環境を整える。
注目すべきは、三菱UFJ銀行が加わっていることだ。
これは、新会社を金融面でサポートするという意思表示である。
これまで、日本の半導体業界再編が行なわれてきたが、金融面がネックになっていた。
そのネックが、今回は解消されるので大きく前進することになった。
韓国が、この動きに神経を使っている。半導体で、日本にお株を奪われるというのだ。
『中央日報』(11月14日付)は、
「刀抜いた日本の半導体ドリームチーム、冬眠する韓国のKーCHIPS法」と題する社説を掲載した。
日本が刀を抜いた。
半導体産業での主導権回復のためだ。
この戦いに出た日本企業はそうそうたる顔ぶれだ。
日本の半導体ドリームチームにはトヨタ、キオクシア、ソニー、NTT、ソフトバンク、NEC、デンソー、三菱UFJの8社が参加する。
これら企業は各分野で世界1位であったり1位になったりしたことがある底力を持っている。
(1)「日本のドリームチーム「ラピダス」(新会社名)は、「速い」という意味のラテン語のように速度戦を予告した。
2027年から先端チップ量産を目標にしているのだ。
(日本は)1980年代に世界のメモリー半導体市場を掌握しただけに生産技術は持っている。
カギは先端人材だが、ラピダスは台湾や米国などから日本人エンジニアを呼び戻して回路幅2ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)製品の先端半導体を生産することにした。
2ナノメートル製品はサムスン電子、TSMC、インテルなど世界トップの企業が早ければ2025年から活用すると予想される製品だ」
日本は、背水の陣を敷いている。
過去の半導体の栄光を取り戻すべく、国家事業として発足した。政府補助金もつく。
「ビヨンド2ナノ」を合言葉に、2ナノメートル以下の超極微細な半導体によって世界の先頭に立つ計画だ。
日本は、半導体製造に関わる素材・製造装置などすべてが揃っている。
それにも関わらず、世界の流れから周回遅れになったのは、「金融」面での強力サポートがなかったからだ。
世は再び「保護主義」の時代である。「オール日本」が手を組むことで、世界から非難されることはないのだ。
(2)「要するに、日本が韓国に奪われた半導体帝国の地位を取り戻すという野心にあふれた計画だ。
こうした試みは初めてではない。
1992年、世界10大半導体企業のうち6社を占めた日本は、サムスン電子とのチキンゲームで毎回倒れた。
その後も日本企業は敗残兵のように力を集めてサムスン電子に挑戦したりもしたが、サムスン電子の果敢ながらも一歩速い投資攻勢に押され秋風落葉のように倒れいまは最初から存在感を失った」
日本では、東大、名古屋大などが研究面で協力する。
半導体学界の横のつながりを強化する狙いも込められている。
これで、将来の半導体人材を育成できる。まさに、日本半導体の起死回生策である。
(3)「半導体市場の地殻変動で、日本企業に再び機会が訪れた。
これまで半導体市場はメモリーチップが主導したが、いまは新たな技術環境が広がっている。
第4次産業革命が導火線になり多様な用途のシステム半導体を柔軟に生産する委託生産方式のファウンドリーが半導体市場の核心に浮上してだ。
自動運転車、スマートフォン用イメージセンサー、人工知能(AI)とスーパーコンピュータなど多様な用途のシステム半導体が必要になった」
日本は、量子コンピュータの製造に取りかかっている。
次世代コンピュータの花形である。
これには当然、「ビヨンド2ナノ」が必要になる。
無限の可能性をもつ半導体に向けて、日本が「緊褌一番」の大勝負に取り組むのだ。
(4)「DRAMとNAND型フラッシュなど、メモリーチップに注力してきたサムスン電子が対応できなかったこの分野でTSMCが出てきた。
この数年間に台湾は島国の特性のため水不足に陥ると、水田への水を断ち半導体工場に用水を供給して半導体崛起に全力を注いだ。
米国が半導体生産に拍車をかけており、今度は日本が半導体領土回復に袖まくりしている」
半導体製造には、大量の水を使う。
日本は、水源に恵まれている。
台湾のTSMCが現在、熊本で半導体工場を建設している。
将来、さらに増設すると外電が報じた。
(5)「ところで、国はどこへ向かっているのか。
韓国も半導体クラスター許認可手続き簡素化などを含んだK-CHIPS(半導体産業競争力強化法)を立案したが、深い冬眠に陥っている。
野党「共に民主党」が大企業への特恵として反対しているためだ。
韓国唯一の経済の柱であり安保の武器が政争に巻き込まれてさまよっている。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は野党を説得し超党派的にK-CHIPSを通過させなければならない。
日本が再び半導体帝国建設に成功すれば韓国の未来はない」
韓国は、野党「共に民主党」(前与党)が半導体育成法に反対している。
「反企業主義」を旗印にしているからだ。
韓国は、日本の動きに警戒しているが、ただそれだけ。何らの手も打てないようだ。