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人口推計 縮むニッポン~少子化対策 待ったなし

2023-05-04 17:53:10 | 日記
人口推計 縮むニッポン~少子化対策 待ったなし

2023年05月02日 (火)

竹田 忠  解説委員


すぐそこに迫る、日本の衝撃の未来。

それが、このほど公表された、新たな将来推計人口です。

2056年、日本の総人口は1億人を割り込む。

そして50年後には7割に縮む。

労働力が不足し、社会機能が維持できなくなる瀬戸際に我々は立たされている、と言って決して過言ではありません。

どうすればこの日本を、そして社会を維持し一人ひとりの暮らしを守ることができるんでしょうか?

【 人口の推移 】

まずは、ニッポンの現状です。

日本の人口がピークを打ったのは2008年、
およそ1億2800万人でした。(1億2808万人)

そこから後は、ほぼ下り坂で、

直近の2020年では、すでに200万人減少しています。(1億2615万人)

では、未来はどうなるのか?

ここからの推計は政府の研究機関、

国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度、行っているもので、
社会保障をはじめ様々な制度の土台となるものです。

日本に住む外国人も対象となります。

推計では、およそ30年後の2056年に、人口は1億人を割り込みます。(9965万人)

そして、およそ50年後の2070年には8700万人となり、総人口は7割に縮小します。

その後も、人口は減る見通しで、参考的な推計としてはおよそ100年後の2120年には5000万人を割り込むという推計も公表しています。(4973万人)

これは、明治時代の終わりごろと、ほぼ同じ人口です。

では、なぜ、減るんでしょうか?

最大の理由は1人の女性が産む子どもの数、
つまり出生率が低下して、急速に少子化が進むためです。

前回の推計では、出生率は1.44と仮定していましたが、今回は更に下がって、2070年に1.36。

人口を維持するのに必要と言われる、2.07との差は開くばかりです。

【 加速する少子高齢化 】

実は人口減少で問題なのは、単に人口が減る、というだけではありません。

問題は人口構成が大きく変わることにあります。

そのポイントを見てみます。

先ほど、触れたように、出生率が下がって、生まれてくる赤ちゃんの数が減ります。
(20年87万3000人→70年50万人)

しかし、その一方で、平均寿命が、男女共に4年余り伸びます。

男性はおよそ86歳に、女性は90歳を超えて、およそ92歳に。

まさに、人生100年時代が見えてきたわけです。

(男性が20年の81.58→85.89、女性が87.72→91.94に)

その結果高齢化率がさらに高まって

2070年には人口のおよそ4割が高齢者という超高齢社会となります。

その人口構成をわかりやすく示したのが、人口ピラミッドと呼ばれるグラフです。

人口を男女別、年齢ごとにわけて示してあります。


1965年当時は大勢の若い人達が少数の高齢者を支えるという、安定したピラミッドの形をしています。

この時期は胴上げ型とも呼ばれます。

しかし現在(2020年)では若い人が減って、ピラミッドの形が崩れています。

ほぼ現役二人で1人の高齢者を支えるという、かろうじて、騎馬戦型に近い構図です。

そして2070年、形は、ついに壺の形に変わります。

ほぼ1人が1人を支える、肩車型と呼ばれる不安定な構図になります。

【 縮むニッポン ①社会保障への打撃】

この急速な少子高齢化は、二つの大きな影響をもたらします。

一つは社会保障制度です。

医療・年金・介護、いずれも現役世代が払う保険料が
高齢者にいわば仕送りされる形で制度が成り立っています。

このため、少子高齢化が進めば進むほど、制度は厳しい影響を受けます。

今後も制度を維持していくためには、これまでのような、負担するのは現役、サービスを受けるのは高齢者といった、年齢による線引きをやめて、何歳であろうが、負担できる人が、負担できる能力に応じて保険料などを支払うという「応能負担」の原則をもっと徹底させる必要が出てきます。

【 縮むニッポン ②社会・経済への打撃】

そして、少子高齢化がもたらすもう一つの影響が社会や経済のあり方そのものへの影響です。

たとえば有識者らで作る日本創成会議は、

かつて、2040年までに全国の地方自治体の半数が消滅の危機に瀕する恐れがあると指摘し、大きな波紋を広げました。

こうした地域では鉄道やバス、道路、水道、などのインフラの維持が難しくなったり、空き家が増えたり、買い物難民が増えたりして、

人が住める居住地域が減っていきます。

また、リクルートワークス研究所は2040年には、全国で1,100万人の労働力が不足すると予測しています。

この結果、介護サービスが受けられない
・地場産業が減る
・警察や消防署の維持さえ難しくなる、といった懸念があると警鐘を鳴らしています。

こうした深刻な労働力不足の中で社会を維持するためには高齢者も、主婦も、もっと多くの人がもっと長く働くという努力を迫られることになります。

【 増える外国人 】

この労働力の問題に関して実は今回の推計には、注目すべきポイントがあります。

それは外国人の割合です。

推計では、今後、日本で働く外国人が増えて現在2%程度(2.2%)の外国人の割合が2070年には5倍の10.8%まで拡大し、日本に住む9人に1人が外国人になるとしています。

現在、政府は、外国人労働者にもっと安定して働いてもらおうと、かねてから批判の強い技能実習制度を廃止して制度を作り直す検討を進めています。

しかし、そういう対策をとっても本当に日本にそれだけ多くの労働者が安定して来てくれるのか?

そして、受け入れる我々の側にチャンと受け入れて共生する覚悟はできているのか、

ここはしっかりと議論するする必要があると思います。

【 必要な“異次元”とは】

今回の推計は縮むニッポンが避けられないことを改めて突き付けています。

そうであれば、その避けられない少子化を少しでも和らげて、深刻な影響を減らすためのギリギリの努力が必要になってきます。

岸田政権は今、政権の最重要政策として次元の異なる少子化対策に取り組もうとしています。

そのためには今度こそ、しっかりとした財源を確保し、効果のある対策を打たなければいけません。

財源としては税、社会保険料、そして借金である国債、などが考えられますが、消費税の引き上げが難しい中で政府・与党が有力な案として検討しているのが医療、年金、介護など、様々な社会保険から拠出してもらい、子育て支援にあてるという案です。

ただ、社会保険料というのは基本的に企業と労働者が折半で負担しています。

このため、経団連や連合は現役で働いている人に負担が偏り、賃上げの効果も薄れてしまう、などとして、慎重な姿勢を見せていて、議論は進んでいません。

これに対し、社会保険料を活用する案の発案者である慶應義塾大学の権丈善一教授が先週、日本記者クラブで会見しました。

この中で権丈教授は、現役制度の医療保険だけでなく高齢者のための後期高齢者医療制度や企業からも拠出を受けることで社会全体で広く子育てをし、そのコストを負担する仕組みができる。

そして少しでも少子化が和らげば社会保障で受ける給付やサービスも充実し、国民全体にメリットが及ぶと意義を強調しました。

政府は来月までに財源を含めたこども予算倍増の大枠を示すことにしています。

厳しいニッポンの未来と向き合って対策に必要なお金を誰がどう負担するのか、真正面から議論することが必要です。

少子化対策は待ったなしです。



高金利の長期化が懸念される韓国経済

2023-05-04 16:55:24 | 日記
高金利の長期化が懸念される韓国経済

2023年03月28日 立石宗一郎

韓国では、前政権による労働組合への支援が賃金上昇につながっており、インフレが長期化する懸念がある。インフレの長期化で高金利が続く場合、家計負担の増大を通じて、景気を下押しする恐れがある。

■急速な利上げが続いた韓国

韓国銀行(中央銀行)は、過去1年半にわたり利上げを続けてきた。本年2月末には政策金利と長期金利はそれぞれ2019年末の水準から約2%上昇し、アジア主要国のなかでは上昇幅が最も大きい国となった。

急ピッチな利上げの背景には、
①資源高、②通貨安、③住宅価格高騰を背景としたインフレ率の急加速が挙げられる。

世界的な資源高の影響により、電気・ガスやガソリンなどのエネルギー価格が上昇した。

原油などの資源を輸入に依存する韓国では、輸入品目のなかで鉱物性燃料が最も高い割合を占めているため、資源高は輸入総額を大幅に増加させた。

これにより2022年3月以降、貿易収支の赤字が定着したことから、韓国ウォンの対ドルレートは大きく下落し、幅広い輸入品の価格を押し上げた。

この間、住宅価格は2022年4月まで前年同月比+10%超の高い伸びが続き、賃料の押し上げ要因となった。

もっとも、上記三つのインフレ圧力は徐々に低下しており、消費者物価指数は2022年7月の前年同月比+6.3%をピークに鈍化傾向にある。

世界景気が減速するとともに資源価格の騰勢は弱まりつつあるほか、米国の利上げペースも鈍化しており、韓国ウォンに対する下落圧力は低下している。

加えて、利上げを受けた住宅ローン金利の上昇で住宅需要は冷え込み、住宅価格も昨年7月をピークに下落に転じている。

先行きのインフレに対する懸念が低下したことを受けて、韓国銀行は本年2月の会合で政策金利を3.5%と、8会合ぶりに据え置いた。市場関係者の間では、今後も政策金利は据え置かれるとの見方が強まっている。

■賃金上昇により高インフレ長期化の懸念

ただし、韓国のインフレが沈静化に向かうかどうか不透明感が強い。エネルギー価格の落ち着きを背景にインフレ率は低下しているものの、食料やエネルギーを除いたコアインフレ率は+4%前後で高止まりしている。コアインフレ率が高い背景には、賃金の上昇が挙げられる。

韓国の尹政権は賃金設定を年功序列から業績主義への移行を呼び掛けるなど労働市場改革を進め、文前政権による極端な労働者寄りの政策を転換している。

最低賃金は2023年に前年比+5.0%と前年(同+5.1%)と同程度の伸びに抑制された。

しかし、前政権による労働組合への支援策の影響で、組合の交渉力が強まっており、賃金全体を押し上げている。

労働者1人当たりの平均月給は、最低賃金引き上げの影響が小さい2021年と2022年でもそれぞれ同+4.6%、同+4.9%と続伸している。

前政権は、①非公認であった公務員の労働組合を承認、②失業者や解雇者の労働組合加入を認める改正労働組合法の施行などの政策を実施した。

これを受け、労働組合の組織率は2010年代後半から上昇しており、現在では日本やドイツなどの先進国と遜色ない水準に達している。

トラック運転手による全国規模のストライキが昨年2度も発生するなど、大規模なストライキが頻発している。

労働組合組織率の高まりとともに、労使交渉の激しさは増しており、組合による賃上げ要求の力も高まっているとみられる。

労働組合の賃上げ要求は、高インフレで家計が苦しくなっていることを背景としているが、生産性の上昇を伴わない大幅賃上げは一段のインフレにつながる恐れがある。

このような賃金・物価のスパイラル的な上昇が生じると、インフレの沈静化は容易ではなくなる。

■高金利が長期化する懸念

賃金上昇により高インフレが長引けば、政策金利の引き上げが再開される可能性がある。

韓国銀行の李昌鏞総裁は、「政策金利引き下げのタイミングは、消費者物価上昇率が2%台へ低下する目途が立ったときに議論することが望ましい」との見解を示している。

韓国銀行は、年末まで3%台のインフレが続くと予測しており、年内に利下げが実施される可能性は低い。米国でも利上げが継続される可能性がくすぶっていることもあり、韓国の高金利は来年以降も継続する懸念が浮上している。

これまでの急速な金利上昇で、住宅市場は大きな影響を受けている。

1月の住宅取引件数は前年同月比▲42.8%と大幅に減少した。

2月の住宅価格も同▲4.4%と低下しており、1999年8月以来となる23年ぶりの大幅な下落率となった。

韓国の家計債務は2021年にGDP比99%と、OECD平均(63.7%)と比べても高い水準にある。

その約6割を占める住宅ローンは、変動金利型が7割強を占めており、これまでの金利上昇に伴い家計の利払い負担は増大し、個人消費を押し下げる要因となっている。

高金利が長期化すると、利払い負担が一段と増大することに加えて、住宅価格が大きく押し下げ、保有資産価値の下落で消費が手控えられる逆資産効果が生じる可能性もある。

高金利の長期化が、韓国景気を大きく悪化させる可能性には注意が必要である。