日本国籍からの離脱および喪失の合計は年間7,000人程度(最近5年間)であるに対し、外国国籍から日本国籍への異動は近年その倍以上の数がある。
年間2万人が国籍を放棄…「韓国社会はこれ以上希望ない」(2)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
2023.03.20 15:37
共同体を重視する韓国社会特有の文化も自由と公正を追求する人たちには受け入れがたい部分だ。
米国移民を準備中のソン・ロイクさん(25)は「韓国社会は少々頑張ったところで生活の質を高めるのが難しい社会」とし「ストレスが多い職場生活、年齢のプレッシャー、特異な人に向けられる社会的視線など、不必要なストレスを受けて暮らしたくはない」と話した。
ヘンリさんは「会社生活をしながら創意的な接近よりも従来の方法を守ることが当然として受け止められ、成果よりも社内政治が進級に有利になることを知り、疑いを抱き始めた」とし「能力で待遇を受け、仕事と家庭を両立でき、疲れる人間関係が少ない米国社会が自分に合うことを知った」と語った。
実際、ソンさんのように韓国国内ではなく海外で就職する人も増えている。
韓国産業人力公団によると、2013年に年間1600人台だった海外就業者数は昨年5024人と、10年間に3.1倍に増加した。
しかし人口のデッドクロスを迎える韓国でこうした事態はこれ以上は放置できることではない。
移民庁まで設立して国外の人口を国内に受け入れようと努力している状況であるからだ。
しかしまだ海外に出ていく移民者に対する政府の関心は小さい。
2015年の移民政策研究院の報告書「出て行く移民統計現況および改善策」も「海外に出て行く移民者の数が国内流入移民者に比べて4倍近く多いが、政府の関心は国内に入ってくる移民者に集中している」と指摘している。
報告書を作成した移民政策研究院のイ・チャンウォン研究委員は「2017年以降、関連統計収集が一定部分改善したが、依然として出て行く移民に関する標準化した統計さえもない」とし「在外同胞庁の設立を控えた状況で『韓国出生後の海外移住者』に関する正確な集計と管理が必要だと考える」と述べた。
他国に比べて過度に排他的な国籍法に手を加えるべきという主張もある。
全北大のソル・ドンフン社会学科教授は
「外国人が韓国に入ってきて国籍を取得すれば多重国籍が可能だが、韓国人が海外で現地国籍を取得すれば韓国国籍は放棄しなければならない非対称的な状況」とし
「人口が減少する状況を考慮すると、大韓民国の国民が外国人になるよう誘導する制度をいつまで維持するのか省察が必要だ」と指摘した。
年間2万人が国籍を放棄…「韓国社会はこれ以上希望ない」(1)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版
2023.03.20 15:35
太極旗(韓国の国旗)
「欧州旅行中に外国人の友人に会った時、ショックを受けた。勉強の量も教育費も自分が最も多かったが、年俸や社会的な職位はその友人が高かった。
多様な学習の機会、幅広い職業選択、円満な老後福祉。
比較にもならなかった。投資に対するアウトプットも出ない韓国では未来がないと考えて挑戦を決心した」
(カナダ移民を準備中の28歳のパクさん、ソウル)
韓国を離れる。体だけが離れるのではない。自ら「韓国人」であることを放棄して第2の「自国」で暮らす。
韓国法務部によると、最近11年間(2012年-2022年)に26万2305人の韓国人が国籍を喪失または離脱した。
国籍放棄者は、移民などで外国国籍を取得して後天的に国籍を喪失する「国籍喪失者」と、先天的に多重国籍を取得した後、兵役などの理由で外国国籍を選択する「国籍離脱者」に分けられる。
法務部の統計によると、年平均およそ2万人の先・後天的多重国籍者が韓国国籍を放棄しているということだ。
同じ期間、韓国国籍を取得した人(14万8528人)より1.7倍も多い。
国籍放棄者はほとんどが先進国に向かった。
この5年間(2018年-22年)の韓国国籍喪失・離脱者の新たな国籍は米国(56.2%)、日本(14.8%)、カナダ(13.6%)の順に多かった。
米ボストンで居住するソン・ミンギさん(30)は「過去には永住権だけで十分に米国生活が可能だったが、最近は子どもの就職などを理由に市民権がなければ不利益にあう事例が増え、国籍を放棄する移民者が増えた」とし「米国永住権者のうち約80%は韓国国籍を放棄してでも米国市民権の取得を望むはず」と現地の状況を説明した。
ソンさんは「現在、国内法上、満65歳以上である場合、条件付き二重国籍や国籍回復が可能であり、多くの移民者はそれほど悩まず国籍を放棄している」と伝えた。
国籍は依然として韓国だが、生活の拠点を海外に移す人も多い。
結婚、養子縁組、就職、事業などで長期滞在ビザを取得し、心身を外国に置く人(海外移住者)も毎年増加傾向にある。
1980年代、海外移住申告者数は年間3万人を上回った。
米国に行けば成功するという「アメリカンドリーム」が注目された時期だった。
しかし韓国が先進国に近づくにつれ、移住申告者数は2000年に1万5000人台に減少し、2014年には249人にまで減った。
しかしセウォル号惨事、景気沈滞などが続き、地獄のような韓国社会を表す「ヘル朝鮮」という言葉が登場した。
この時から第2の「アメリカンドリーム」を夢見ながら韓国社会を離れる人たちが増え始めた。
2017年に海外移住法が改正された後、2019年の海外移住者数は4000人台となった。
2020-21年には新型コロナ拡大で停滞したが、昨年から海外移住がまた増えている。
なぜ「脱朝鮮(韓国を離れて他国へ移住)」を夢見るようになったのか。
移民を準備中または実行した人たちは「韓国ほど暮らしやすい国はない」と言いながらも「韓国社会はもう希望がない」と口をそろえる。
こうした発言は韓国社会の矛盾から派生したものと考えられる。
この数十年間、韓国社会は量的には成長したが、成長の過程で依然として改善しない弊害があるということだ。
ソン・ミンギさんは「親の世代までは『今は厳しくても、より良い明日がある』という希望があったが、今は自分の能力、努力に適切な見返りを受けるのが難しい時代」とし「それで『ヘル朝鮮』という言葉が誕生し、言語と能力を備えている人たちを中心に努力が認められる海外に出かけようという雰囲気が広まったようだ」と話した。
韓国が「ヘル朝鮮」という認識は統計でも確認できる。
統計庁によると、過去3年間の韓国の主観的生活満足度は10点満点で5.9点であり、OECD加盟国のうち最下位圏だった。
韓国人が感じる生活満足度は過去10年間高まったが、他国と比較して生活の質が低いという認識が広まった。
韓国ギャラップのアンケート調査によると、回答者3人のうち1人(34%)、中でも社会生活が最も活発な30代の回答者は半分近い人(46%)が「要件が満たされれば他国で暮らしたい」と答えた。
韓国社会が妊娠・出産、養育するのに適していないという認識は、さらに海外への移住を増やした。
少子化問題が移民の主な理由だと話したヘンリさん(32)は韓国の未来の世代に確信がなく、子どもに米国の市民権を準備したいと話した。
ヘンリさんは「競争をしながら激しく生きてきたが、今のMZ世代は生涯働いても家も買えない生活を送っている」とし「20年後に自分の子どもが高齢人口を扶養するための税金などを負担することを考えると、後退する韓国ではなく成長する米国を選択するのがよいと考える」と不満を吐露した。
カナダ永住権者として居住し、2年前に逆移民した30代のパクさんは「家族がいる韓国で生活したいと思って帰ってきたが、子どもの教育のためにまた海外に移民することを考えている」とし「韓国では数百万ウォンの費用がかかる英語の幼稚園に通わせなければ子どもが後れを取りそうで、周囲を気にせず自由な環境で教育できる海外がよいという気がした」と話した。
韓国「年間2万人が国籍放棄」の衝撃、若者が絶望する“ヘル朝鮮”の悲惨な現状
田中美蘭:韓国在住ライター国際・中国
2023.5.4 4
少子化問題が深刻なのは日本も韓国も同じだが、韓国では近年、さらに大きな問題が起きている。
これからの韓国の中核を担う若い世代が、韓国社会に絶望して海外に出て行き、さらには毎年2万人以上韓国国籍を放棄してしまうのだ。
なぜこのようなことが起こるのか?そこには根深い問題があった。(韓国在住ライター 田中美蘭)
2022年の日本の乳児の出生人口が80万人を下回った。過去最低の数字であり、「少子化対策」は日本社会の最重要課題となっている。
しかし韓国の状況はさらに深刻で、昨年の合計特殊出生率は韓国が過去最低の0.78、日本が1.08だった。
合計特殊出生率とは1人の女性が一生涯に出産するであろう子どもの数を示したもので、人口を維持できる水準(2.07)を大きく下回っている。
しかし、韓国の少子化の問題は「子どもが生まれない」ことだけはない。
若年層を中心に「社会の中堅」となり得る世代が、韓国籍を放棄して海外に移住していることが、より深刻な事態を招いている。
「年間2万人が韓国籍を放棄」の衝撃
先日、韓国の主要紙である中央日報の記事を読んで衝撃を受けた。
それは「年間2万人が韓国籍を放棄している」というものだ。
韓国法務部の発表によれば、2012~22年の11年間で、26万2305人が韓国籍を喪失もしくは離脱している。
また記事では、2018年~22年の間に韓国籍を喪失、離脱した者が取得した国籍は、米国(56.2%)、日本(14.8%)、カナダ(13.6%)ということも伝えていた。
韓国の若者たちが自国の現状を「ヘル(地獄)朝鮮」と嘆き、海外へ出る動きがあることは認知していた。
しかし海外に移住するだけではなく、韓国籍そのものを放棄する者がそこまで多いとは初耳だったので驚いた。
韓国では日本よりも早く、保育園、幼稚園、高等学校など義務教育外での無償化教育を導入したり、「多子女家庭」(子どもが3人以上いる家庭)には支援を強化したりと、一見、少子化対策に積極的に取り組んできたようにもみえる。
しかし実際には、限定的な援助をもらっても中長期的に見れば焼け石に水な上に、最近の物価高騰や不動産高騰が子育て世代を直撃している。
こうした理由で韓国社会に見切りをつけ、海外へ出て行く若者が増えているのだ。
さらに、若い韓国人が国籍を捨てる理由として大きいのが「兵役」である。
若者が夢も希望も見いだせず、国を出て行く現実
筆者は20年近く韓国に住んでいる。
その間、確かに生活水準は大きく向上し便利になった面もたくさんある。
半面、社会全体に余裕がなく閉塞感が強まっていること、社会の中心となるべき若年層が明るい未来を描くことができずにいることがあると感じる。
一つは就職だ。
若者の就活は想像以上に厳しい。例えばアルバイトに応募する場合、「学歴、年齢、性別は関係なし」となっていても、実際には学歴や外見などで甲乙を付けられる傾向があるのは否めない。
また、特に男性の場合は、若くて仕事を選ばなければ引く手あまたのように思えるが、実際には前述の「学歴」に加え「兵役」も条件に加えられていることがある。
採用後に兵役でいなくなる社員の籍を約2年も会社に置いておく、兵役前に辞められるといったことを防ぎたい、と雇用側が考えるからである。
二つ目は物価高や教育コストである。
近年の世界的な物価高騰の波は、韓国をも直撃しており、これがさまざまな面で韓国社会に影響を及ぼしていることを感じる。
少子化のニュースが出ると、コメント欄にはさまざまな意見が書かれるが、特に子育て世代からの声は切実だ。「教育にかかる負担を何とかしない限り、問題は解決しない」という意見が多い。
日本では近年、首都圏を中心に中学受験が過熱し、「課金ゲーム」などと例えられているが、韓国でも子どもが小さい頃から教育費がかかる。
韓国には中学、高校受験がないが、大学受験を視野に入れ、小学生の頃から複数の学院(塾)に子どもを通わせるからだ。
以前の記事にも書いた通り、少子化による学生の減少で、既に地方では毎年のように大学の定員割れが問題化し、この先、廃校となる大学が続出する懸念もある。
「選ばなければどこでも入れる」という「全入」状態なのに、それでも教育熱が下がらない理由は、学生たちの多くはソウル圏にある大学を目指すので、より競争が激化しているという背景があるのだ。
そうやって苦労して入ったのに、「入学すること」「大卒という学歴を手に入れること」が目的となってしまっている人は多い。
特に近年はコロナ禍の影響もあり、入学したはいいが、思い描いていた学生生活と違う、学ぶことの意味を見いだせない……などの理由で、休学や中退をしてしまう。
卒業しても、学歴のプライドがあって就職先にこだわり、社会に出て働く機会を逃す……などなど、フラストレーションがたまり、社会に期待できないと感じる若者が増えているようだ。
こうした韓国の状況を見ていると、心配になるのは母国である日本の将来だ。
金銭的な支援も大切だが、それだけではその場しのぎにしかならない。
結婚、出産、育児の根本的な環境を整え、若者が明るい未来を期待できる国にならない限り、少子化問題は解決しないのではないだろうか。
もう何十年も前に少子化になると分かっていながら、中長期的な対策を怠っていた国の責任は重い。