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- 2022年11月27
- シンシアリーのブログ, 韓国情報
苦境に陥ったロシア軍、「頼みの綱」の作戦も不発に終わるか…ロシア・ウクライナ戦争の今後
本年2月のロシア・ウクライナ戦争開始以降、ロシア軍の侵攻は失敗が続き、ロシア軍は苦境に陥っている。
ロシア軍の弾薬の一部はすでに底をついているとの指摘があり、9月にはウクライナ軍が大規模な反撃に成功した。
そして11月にウクライナはヘルソン市周辺の奪回に成功した。
こうした状況において懸念されているのは、ロシアによる「冬の認知戦」である。
ロシア軍の2度の侵攻失敗
2022年2月24日、ロシア軍はウクライナの北部、東部、南部の3方向から同時に侵攻を開始した。
これに併せて、ロシア軍はウクライナの主要都市に対して、精密誘導ミサイルなどによる攻撃を行った。
しかし、ウクライナ軍の強い抵抗により、ロシア軍の侵攻は失敗し、3月下旬にウクライナ北部から撤退した。
ロシア軍の精密誘導ミサイルなどのハイテク兵器は、その多くが侵攻の初期段階に撃ち尽くされたと言われている。
ロシアは戦前、世界第2位の武器輸出大国であったが、ハイテク兵器製造のための半導体を自前で作る能力はない。
そして、ウクライナ侵攻後、経済制裁により半導体の輸入が断たれた。
このため、ロシアは冷蔵庫や食器洗い機用の半導体を兵器に転用せざるを得ないという、苦しい状況に陥っている 。
こうした状況を受け、5月以降、ロシア軍は作戦を大きく修正し、ウクライナ東部に戦力を集中した。
ここで活躍したのは、榴弾砲という従来型の兵器である。
榴弾砲は大砲の一種であり、19世紀末から陸軍の主力兵器となり、第1次、第2次世界大戦などの20世紀の戦争において最も活躍した兵器の一つである。
一般的な有効射程は20~30km程度と比較的短いが、その威力は極めて大きく、21世紀の現代においても陸上部隊の主力兵器である。
5月以降、ロシア軍は、強力な威力を持つ榴弾砲をウクライナ東部の狭い範囲に集中し、大量の弾薬をウクライナ軍に対して射撃した 。
5月から6月の戦闘においてロシア軍が射撃した砲弾の数は、1日あたり約50,000発 、あるいは70,000発 とも言われている。
ウクライナ軍が射撃した砲弾は、その約10分の1でしかなく、ロシア軍はウクライナ軍を圧倒した 。
そしてウクライナ軍には1日あたり数百人の死傷者が発生し 、ウクライナは東部の自国領土を徐々に失っていった。
この当時、米国の主要紙においては、ロシア軍の優勢とウクライナ軍の苦境を伝える論稿がほとんどを占めた。
こうした中、6月17日にウクライナ外務大臣のドミトロ・クレーバが『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿し、「ウクライナが最も緊急で必要しているのは、何百もの多連装ロケットシステムと榴弾砲」と、ウクライナへの支援を訴えた 。
こうした状況を受け、米国はウクライナに対する兵器の供与を続けてきた。
米国は、7月初め時点で155mm榴弾砲126門、ハイマース(High Mobility Artillery Rocket Systems:高機動ロケット砲システム)12基などの支援を発表し 、それらの兵器は逐次ウクライナに引き渡された 。
また、ウクライナ軍がハイマースを操作できるように、訓練の支援も行った。
ハイマースは、榴弾砲よりも射程が長く、前線から離れたロシア軍の司令部や弾薬庫を攻撃することができる。
ハイマースを供与されたウクライナ軍は反撃を開始し、7月下旬までに約50箇所のロシア軍司令部と弾薬庫を破壊した 。
こうした攻撃により、ロシア軍は後方支援能力を削がれ、戦闘能力が低下していった 。
ロシア軍が備蓄していた百万発以上の榴弾砲弾薬は、5月から8月までにほとんどが消耗したと見られる。
その結果ロシア軍は自壊し、ウクライナの反撃に対し、多くの占領地からの退却を余儀なくされたのである。
欧米諸国によるウクライナへの軍事情報の提供
こうしたウクライナ軍による反撃の成功は、欧米諸国による軍事情報の提供によるところも大きい。
数十キロ離れた攻撃目標を射撃するためには、ロシア軍の部隊、弾薬庫などの位置に関する正確な情報が必要である。
こうした情報は、欧米諸国の有人・無人の情報収集機、軍用偵察衛星が収集し、ウクライナに提供されている。
また、商業用衛星、電磁波情報、ソーシャルメディアなど、これまでの戦争にはない新しい手法が用いられている。
ロシア軍の侵攻の数日後、ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍に高解像度の画像をリアルタイムで提供するよう、欧米の大手民間通信会社に訴えた。
商業衛星画像は、ウクライナ軍の作戦にとって必要不可欠な情報となり、またロシアが発信する偽情報に対抗するのにも役立っている 。
例えば、ロシアが侵攻開始直前の2月中旬、部隊をウクライナ国境から引き揚げ始めたと発表すると、NATO事務総長は商業衛星画像を引用し、それを強く否定した。
また、ロシア軍のブチャにおける残虐行為に関し、欧米の報道各社は商業衛星画像を分析し、ロシア軍の撤退前に人体が路上にあり、集団墓地が存在していたことを立証した 。
ロシア軍の情報を収集するにあたり、ウクライナと欧米諸国は電磁波情報を有効に活用している。
ロシア軍は、最新の暗号通信機に不具合が発生し 、通信を民間の携帯電話に依存していた 。
このため、ロシア軍の通信内容は米国の諜報機関に傍受されロシア軍部隊の動きや位置、作戦計画の内容などが米国を経由してウクライナ軍に提供された。
米国は、こうした情報を得てから30分から1時間以内にウクライナ軍に提供しているという 。
さらにウクライナ政府は、政府の公式アプリを用いてウクライナ国民が政府に情報提供する仕組みを作り上げた 。
ウクライナ国民は、このアプリを使ってロシア軍の動きや不法行為の証拠を政府に提供してきた。
ウクライナ政府は、この情報をウクライナ軍の作戦に使うとともに、ロシア軍の残虐行為の証拠をホームページに公表するなど、効果的に用いている。
このように、ロシア・ウクライナ戦争においては、商業衛星画像、電磁波情報、ソーシャルメディアなど、戦争史上前例のない方法でロシア軍の活動やその正確な位置が明らかになったと言われている 。
今後のロシアによる「冬の認知戦」
このようにロシアによる攻撃は手詰まりとなっているが、それを挽回するため、ロシアが今後「冬の認知戦」を行うことが懸念されている 。
「認知戦」とは、人間の脳の「認知」に影響を与え、相手の「意志」に影響を及ぼすことにより、戦略的に有利な環境を作り、あるいは戦うことなく相手を屈服させるような戦い方を指す。
これまでのウクライナ軍による反撃の成功は、欧米諸国によるハイマースなどの兵器の供与、軍事情報の提供など、様々な支援によるところが大きい。
ロシアは、こうした欧米諸国の支援を、この冬のエネルギー価格の上昇を利用して崩そうとしているのである。
6月5日、米国に本社を置くサイバーセキュリティ企業が、ロシア連邦保安局のメモを傍受した 。
そのメモは、欧州諸国の一般市民をターゲットにした「認知戦」を提案するものだった。
具体的な手法は、欧州諸国における生活水準悪化の原因をウクライナへの支援と結び付け、ウクライナ支援に対する一般市民の支持を低下させるというものである。
そのメモは、「欧州の納税者の負担でウクライナを武装している」といったナラティブ(物語)を広め、一般市民にウクライナ支援に対する疑念を抱かせるという具体的手法を提案していた。
アフリカ諸国において成功
こうしたロシアの計画が、この冬を前にして現実になろうとしている。
ロシア産天然ガスの供給が断たれた欧州諸国はエネルギー価格が高騰しており、この冬がどれだけ寒くなるかによって政治、経済、社会的状況が大きく変わると言われている 。
ロシアは、こうした状況を利用し、ロシア政府の支援を受けたメディアによるキャンペーンなどを行い、ウクライナに対する欧米諸国の軍事支援、経済援助を崩そうとしているのである 。
こうしたロシアの「認知戦」は、すでにアフリカ諸国において成功を収めている。
戦争初期、ウクライナに留学していたアフリカ人留学生の苦境を伝えるニュースが話題となり、ツイッターでは#AfricansInUkraineというハッシュタグがトレンド入りした。
ロシアはこうした状況を利用して偽の情報を流し、アフリカ諸国におけるウクライナに対する評判を悪化させた。
例えば、実際はロシア軍の包囲によりアフリカ人留学生が避難できなくなったにもかかわらず、ロシア外務省のツイッターアカウントが「ウクライナがアフリカ人学生を人質にしている」という誤った情報を流した。
また、ロシアは「アフリカに小麦が届かず食糧危機に直面しているのはウクライナのせいである」という誤った情報をアフリカ諸国に浸透させた。
このような偽の情報により、アフリカ諸国の世論においては、ロシアを支持しウクライナを非難する意見が多いという。
また、多くのアフリカ諸国が国連においてロシアを非難する決議案に反対又は棄権したが、その背景にはロシアの「認知戦」の影響もあったという分析もある 。
ただし、欧州諸国はアフリカ諸国とは異なり、こうしたロシアの「認知戦」に影響される可能性は少なく、この冬も結束してウクライナを支援することができるという見方もある 。
ロシアの「冬の認知戦」は、ロシアが流す偽の情報と、欧米諸国の結束との戦いとなることが予想されている。
ウクライナ国民の「認知」を標的とした「上からのテロリズム」
各種の弾薬が枯渇して苦境に陥ったロシアは、北朝鮮からの弾薬の購入を開始したとされ、ホワイトハウスは、北朝鮮がかなりの数の砲弾をロシアに密かに供給していると非難している。
ホワイトハウスのジョン・カービー国家安全保障報道官は11月2日、「我々の情報では、北朝鮮は、中東や北アフリカの国々を経由してロシアに弾薬を供給することにより、供給方法を曖昧にしようとしている」と非難した。
しかし、ロシア軍の戦力は大きく低下しており、こうした砲弾の供給が行われたとしても、今後の戦局を大きく変えることはないという見方が一般的である 。
ロシアは、こうした苦境を脱するため、イランからドローンやミサイルを購入し、新たな航空攻撃を開始した 。
10月、ロシア軍はウクライナ全土の都市と電気インフラに対するミサイル、ドローンによる攻撃を実施した。
この攻撃により、ウクライナの発電能力の約40%が停止した 。
さらに、送電・変電施設も被害を受けており、周辺国からの電力の輸入も困難となっている 。このため、ウクライナ国民はこれから迎える冬の寒さの中、厳しい生活を余儀なくされる。
このような航空攻撃は、歴史的に「上からのテロリズム」と呼ばれている。
これは、テロリストが市民を標的として攻撃を行う「下からのテロリズム」と同様に、空を経由して行われるテロリズムの一種である。
テロリズムの本質は「恐怖」であり、物理的な効果ではなく、相手に心理的なダメージを与えることが目的である。
ロシアは、ウクライナ国民の心理面を標的とし、ウクライナにとって不利な和平合意に追い込もうとしているのである 。
このような市民を標的とした航空攻撃には、100年の歴史がある。
1903年のライト兄弟の初飛行以降、航空機の軍事利用に注目が集まった。1920年代には、航空機により敵国市民を爆撃すれば、恐怖に駆られた市民が降伏を主張し、容易に戦争に勝利できるという理論に注目が集まった。
しかし、市民を標的とした爆撃には効果がなく、むしろ逆効果であることは、歴史が証明している。
第二次世界大戦において、ドイツ軍の爆撃機がロンドンなどのイギリスの都市を爆撃した。
しかし当時のイギリス国民は、降伏を主張するどころか、チャーチル首相のもとに結束しドイツに対する反撃を決意した。
米軍は朝鮮戦争で北朝鮮の発電所の90%を破壊し、ベトナム戦争で北ベトナムの発電所のほぼ全てを破壊し、湾岸戦争ではイラクの発電所の90%を破壊したが、こうした爆撃は戦争終結に大きな影響を与えなかったと言われている 。
このように、市民を標的とした航空攻撃は、「上からのテロリズム」と呼ばれ、非道かつ非倫理的である上に、軍事的にも効果がないことが歴史上証明されているのである。
ロシア軍によるウクライナに対する攻撃は、2度にわたり失敗に終わっている。
5月から6月頃、ロシア軍の榴弾砲の集中射撃による攻撃が成功し、ウクライナ軍の苦境が伝えられた。
しかし、ウクライナ軍は、欧米から供与されたハイマースなどの兵器と軍事情報を活用し、反撃に成功した。
苦境に陥ったロシア軍が頼みの綱としているのは「冬の認知戦」である。
ロシアは、エネルギー価格が高騰している欧州諸国を標的とし、ウクライナに対する支援を崩すために様々な偽の情報を流そうとしている。
また、ウクライナの発電施設を攻撃し、ウクライナ国民の「認知」を標的とした「上からのテロリズム」を行っている。
しかし、このような「テロリズム」によって戦争に勝利できないことは、歴史が証明している。
また、欧州諸国の政府と市民は、ロシアの「認知戦」よる影響を簡単には受けないであろう。
この冬のロシア・ウクライナ戦争は、ウクライナとウクライナを支援する国際社会の結束にかかっているのである。
(本稿は、筆者個人の見解であり、筆者の所属する組織の見解を示すものではない。)
働くことを希望する高齢者が多いが、良い職場がない。
65歳以上の高齢者の人口のうち所得が中位所得の50%(相対貧困線)以下の比率は43.4%にのぼる。
不幸中の幸いか。状況は悪い点ばかりではない。
問題は二極化だ。