ある日のこと
幼稚園見学に3歳の男の子とお母さんがやってきました。
お部屋を案内すると男の子は案の定お仕事に夢中になりました。
その教具は「砂文字板」
以前にも紹介しましたが、板の上にザラザラとした触感の文字が書かれています。
文字に興味を持ち始めた子が最初に出会う教具です。
男の子は夢中でした。
しかし、お母さんは他のお部屋やホールなども見てみたいので、子どもの活動をやめさせ片付け始めました。
勿論子どもは大騒ぎ、お母さんも困惑して手の付けようがありません。
そこで私は子どもにたずねました。
「まだやりたいんだよね。じゃぁあと何枚やったら終わりにする?」
しばらくして、その子は両手を広げました。
「そっか、10枚だね。 せっかくだから○○君のお名前の板を探してやってみようか」
男の子は自分の名前の文字を見つける度に嬉しそうにしていました。
そして最後の文字を終えると、さっと片づけて教室の出口に向かい、次のお部屋へお母さんと移動し始めました。
子どもの活動にはサイクルがあるので「自分で納得して終わるまで活動させる」ことが大切です。
そんなことをしたら、いつまでも勝手にやって、けじめのない子になってしまうと感じるかもしれませんが、実際は「納得して終わる」ことを尊重してもらった子どもは、周囲の状況が読めるようになって必要だと判断したら自分でやめることが出来るようになります。
お部屋では、「長い針が○○に来たらお片付けね。」と事前に言っておくと、子ども達はそれに合わせて活動をします。
もし、それまでに終わらなくても、「ここまできたら終わり」を子どもと相談し決めると、いつまでもダラダラとすることはありません。
(逆に終わり方を決めてあげないと、終わり方が分からなくて途中で投げ出してしまう場合もあるので先生が決めてあげる場合もあるのです。)
大人の意志で’動かされる’のではなく、自分の意志で’動く’ことが尊重された子どもは、状況を自分で判断し、責任ある行動をするようになります。
子どもは、自由選択→繰り返し→集中→完了感(満足感)という「子どものサイクル」を踏みしめて、人格ごと成長していくのだという信頼を込めて、子どもをじっくり見る人でありたいものです。
おゆうぎ会の練習や衣装合わせする合間に自主的にお仕事をする子ども達
『何したらいいの?どうすればいいの?』という声はそこにはありません。