時代の変化⑥
🔹林野、私がクレディセゾンに移っても35年になりますが、
当初こういう会社にしようと考えて紙に書き出したことは、運よく実現することができていまの体制を築くことができました。
しかし、後から入ってきた人たちは、先にいる人が苦労してつくり上げたことを、自分たちがやったかのように錯覚してしまう。
新しい変化を起こす時に、それが邪魔になってしまうことを痛感しています。
私が一番成功したのは、中途採用と女性の活用でした。
セゾンカードの会員を毎月10万人ずつ増やすことができたのは、
やる気があるのに結婚を機に大組織から締め出された人たちを、リーダーに抜擢して活躍してもらったからです。
しかし、せっかくそうした改革を成し遂げたも、何年かすると当たり前になってしまいます。
当たり前になると人間は進化しないし、その当たり前という気持ちが伝染して組織を蝕んでしまう。
危機感とか競争心とか、イノベーション、何か新しいことをやろうという気概が失われ、
機を活かすことも、変に応ずることもできない組織になってしまう。
これが最大の組織の病だと思うんです。
残念ながら、かつて目覚ましい成功遂げた日本の企業の多くが、いまこの病に蝕まれています。
そこから早く脱皮できた企業が生き残ると私は思います。
🔸落合、私もいろんな改革を実施してきましたが、
そうした病に蝕まれないように、常に活性化していかなければなりません。
そのためには、やはり優れた人事制度とビジネスモデルを導入して、
それがしっかり機能する体制を運用していく必要があります。
私どものところは、支店長がいくらボーナスをもらったか、部下にも分かるようにしてありましてね。
自分の貢献度がそこに反映されるので、一体感が生まれるわけです。
見える化と公正な評価を徹底することによって、それは可能になりました。
その上で、成功体験や達成感を持たせることです。
目標を実現できたら、ちゃんと評価してあげる。
難しい変革期ですから当然失敗もしますが、故意や怠慢によるもの以外は基本的には罰さないことにして、
以前は罰が7割、賞が3割だったところが、いまは賞が7割、罰が3割になっているんです。
やればできる手応えがあり、次のステップにも進めることで、組織も活性化しているわけです。
🔹林野、そこまでできている会社は、なかなかないと思いますよ。
🔸落合、おかげさまで、毎年120人採用しているんですが、
応募が1万人〜2万人もあるんです。
時代が変わってきてますから、中途採用も積極的に実施しています。
野球のFA (フリーエージェント)のように、いまの自分たちの弱い部分を補ってくれる人を採用するんです。
求められる結果を出したら、1、2年で役付きにしたり、パッと支店長に昇格させたりさせていますから、たくさんの人が集まってくるのだと思います。
🔹林野、経営をやっていると、本当にいろんな機が次から次に津波のように押し寄せてくるものですね。
自分のこれまでの経営人生を振り返ってみても、母体であるセゾングループが崩壊して、関連会社の負債を負うことになった時期もありました。
リーマン・ショックで、子会社に約1,600億円もの引当金が必要になったり、
規制法規ができて同業他社が一気に潰れてしまうような激痛が走ったり、
会社のシステムを刷新にしたら2千億円以上もの資金が必要になったり、
とにかく次から次へと試練に見舞われてきました。
しかし考えてみれば、試練のおかげで自分はいまも第一線に立っている。
もし試練がなければとっくに退いていたとも思うんです。
私はいまも第一線に立っていられるのは、試練のおかげなんですね。
いまはこの大転換期という試練の中で、私は全く新しいファイナンスカンパニーをアジアで立ち上げようと考えています。
将来は、東南アジアに10万人、日本に1万人くらいの比率で会社を運営していくことになると思いますが、
そうなるとコンペティター(競争相手)も変わります。
カードの開拓手法も、ビジネスモデルもどんどん柔軟に変えていかなければなりませんし、
それに耐え得る人も育てなければなりません。
活機応変がやはり大事だと思いますね。
🔸落合、私どももいま、従来の地域金融機関から脱皮するために、国際部門を強化していますが、
機を活かし、変に応じて常に一歩先を進んでいかなければならないと思います。
今後ますます色の変化に直面するでしょうけれども、
後追いでは苦労ばかりで何のメリットもありません。
1歩でも半歩でも先を行くことが大事だと思って、
いまは毎日遅くまでいろんな方にお目にかかって、ビジネスネットワークを広げています。
若い職員とのネットワークもすごく重要だと考えていて、
私のメル友は若手から人生の大先輩まで幅広いんです。
そうするとたくさんの情報が集まるんですが、
それは自分の会社にどういう影響及ぼすのか、
その時に捨てるものと取り入れるものは何か、
自分たちの原点は何か、
ビジネスモデルの強みは何か、
職員にちゃんと説明できるようなストーリーにして取捨選択していかなければなりません。
職員とお客様の納得感を大事にしながら、これからも変革を重ねていきたいと思います。
🔹林野、いまは、これまでの常識では理解し難いような変化がどんどん起きていますが、
そういう変化を一つひとつきちっと見極めていかなければ、あっという間に取り残されてしまいます。
あらゆる変化をチャンスに結びつけて、道を切り開いていかなければなりませんね。
(おわり)
(「致知」2月号 落合寛司さん林野宏さん対談より)
🔹林野、私がクレディセゾンに移っても35年になりますが、
当初こういう会社にしようと考えて紙に書き出したことは、運よく実現することができていまの体制を築くことができました。
しかし、後から入ってきた人たちは、先にいる人が苦労してつくり上げたことを、自分たちがやったかのように錯覚してしまう。
新しい変化を起こす時に、それが邪魔になってしまうことを痛感しています。
私が一番成功したのは、中途採用と女性の活用でした。
セゾンカードの会員を毎月10万人ずつ増やすことができたのは、
やる気があるのに結婚を機に大組織から締め出された人たちを、リーダーに抜擢して活躍してもらったからです。
しかし、せっかくそうした改革を成し遂げたも、何年かすると当たり前になってしまいます。
当たり前になると人間は進化しないし、その当たり前という気持ちが伝染して組織を蝕んでしまう。
危機感とか競争心とか、イノベーション、何か新しいことをやろうという気概が失われ、
機を活かすことも、変に応ずることもできない組織になってしまう。
これが最大の組織の病だと思うんです。
残念ながら、かつて目覚ましい成功遂げた日本の企業の多くが、いまこの病に蝕まれています。
そこから早く脱皮できた企業が生き残ると私は思います。
🔸落合、私もいろんな改革を実施してきましたが、
そうした病に蝕まれないように、常に活性化していかなければなりません。
そのためには、やはり優れた人事制度とビジネスモデルを導入して、
それがしっかり機能する体制を運用していく必要があります。
私どものところは、支店長がいくらボーナスをもらったか、部下にも分かるようにしてありましてね。
自分の貢献度がそこに反映されるので、一体感が生まれるわけです。
見える化と公正な評価を徹底することによって、それは可能になりました。
その上で、成功体験や達成感を持たせることです。
目標を実現できたら、ちゃんと評価してあげる。
難しい変革期ですから当然失敗もしますが、故意や怠慢によるもの以外は基本的には罰さないことにして、
以前は罰が7割、賞が3割だったところが、いまは賞が7割、罰が3割になっているんです。
やればできる手応えがあり、次のステップにも進めることで、組織も活性化しているわけです。
🔹林野、そこまでできている会社は、なかなかないと思いますよ。
🔸落合、おかげさまで、毎年120人採用しているんですが、
応募が1万人〜2万人もあるんです。
時代が変わってきてますから、中途採用も積極的に実施しています。
野球のFA (フリーエージェント)のように、いまの自分たちの弱い部分を補ってくれる人を採用するんです。
求められる結果を出したら、1、2年で役付きにしたり、パッと支店長に昇格させたりさせていますから、たくさんの人が集まってくるのだと思います。
🔹林野、経営をやっていると、本当にいろんな機が次から次に津波のように押し寄せてくるものですね。
自分のこれまでの経営人生を振り返ってみても、母体であるセゾングループが崩壊して、関連会社の負債を負うことになった時期もありました。
リーマン・ショックで、子会社に約1,600億円もの引当金が必要になったり、
規制法規ができて同業他社が一気に潰れてしまうような激痛が走ったり、
会社のシステムを刷新にしたら2千億円以上もの資金が必要になったり、
とにかく次から次へと試練に見舞われてきました。
しかし考えてみれば、試練のおかげで自分はいまも第一線に立っている。
もし試練がなければとっくに退いていたとも思うんです。
私はいまも第一線に立っていられるのは、試練のおかげなんですね。
いまはこの大転換期という試練の中で、私は全く新しいファイナンスカンパニーをアジアで立ち上げようと考えています。
将来は、東南アジアに10万人、日本に1万人くらいの比率で会社を運営していくことになると思いますが、
そうなるとコンペティター(競争相手)も変わります。
カードの開拓手法も、ビジネスモデルもどんどん柔軟に変えていかなければなりませんし、
それに耐え得る人も育てなければなりません。
活機応変がやはり大事だと思いますね。
🔸落合、私どももいま、従来の地域金融機関から脱皮するために、国際部門を強化していますが、
機を活かし、変に応じて常に一歩先を進んでいかなければならないと思います。
今後ますます色の変化に直面するでしょうけれども、
後追いでは苦労ばかりで何のメリットもありません。
1歩でも半歩でも先を行くことが大事だと思って、
いまは毎日遅くまでいろんな方にお目にかかって、ビジネスネットワークを広げています。
若い職員とのネットワークもすごく重要だと考えていて、
私のメル友は若手から人生の大先輩まで幅広いんです。
そうするとたくさんの情報が集まるんですが、
それは自分の会社にどういう影響及ぼすのか、
その時に捨てるものと取り入れるものは何か、
自分たちの原点は何か、
ビジネスモデルの強みは何か、
職員にちゃんと説明できるようなストーリーにして取捨選択していかなければなりません。
職員とお客様の納得感を大事にしながら、これからも変革を重ねていきたいと思います。
🔹林野、いまは、これまでの常識では理解し難いような変化がどんどん起きていますが、
そういう変化を一つひとつきちっと見極めていかなければ、あっという間に取り残されてしまいます。
あらゆる変化をチャンスに結びつけて、道を切り開いていかなければなりませんね。
(おわり)
(「致知」2月号 落合寛司さん林野宏さん対談より)