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肥宝館 -貧すれば丼する-

【茨城 下館】 筑波軒「わんたんめん(500円)」

下館ラーメンの元祖「筑波軒」

茨城県筑西市の中心・下館。明治大正期は結城紬や真岡木綿を扱う商人で賑わい「関東の大阪」と称される商都であった。交通の便も昔から良く、東西に走るJR水戸線、北へ行く真岡鐵道真岡線、南へ伸びる関東鉄道常総線が下館駅で接続する。しかし筑西市の人口は2020年に10万人を割り、現在は駅前も少し寂しい雰囲気だ。

そして、この町に昭和20年代から根付くラーメンがある。それが今回の目当て「下館ラーメン」で、濃い醤油スープに、当時は高価だった豚肉の代わりに鶏肉をチャーシューに使っている事が条件だ。これは有志による「下館ラーメン学会」が定めたもので、2021年現在は12店舗を公認。その殆どが下館駅近くにあり巡り易い。

今回は、下館ラーメンの礎を築き『元祖』と言われる「筑波軒」へ。下館駅北口から徒歩5分。稲荷町通りの一本西を走る小道で1949年から営業している。暖簾はなく、軒先のガラスケースは物置に。恐る恐る店内を覗くと、厨房では白髪のご主人がひとり瞑想中。営業中の札を信じ踏み込むと、ご主人が「どうぞ」と席を立つ。

店内はカウンターとテーブル席で、合わせて30席弱だろうか。壁には日焼けして剥がれかけたメニューの紙短冊。厨房は油で黒ずみ、割箸は茶筒にイン。これは重要文化財クラスだ。メニューは中華そば、わんたん、わんたんめんの3種で、麺モノは大盛り可能という。今回は「わんたんめん」を注文することに。お値段はなんと500円。

頑固そうに見えるご主人、実はかなりの話好き。日本各地の歴史や産業、下館の近況、最近のビジネスなど話題は多方面に。時おり真剣に木杓で壺から丼にカエシを注いだり、チャーシューを盛りつけたり。程なくして小ぶりな丼に麺と具材がたっぷり盛られた一杯が到着。ほぼ茶一色でシンプルながら旨そうなビジュアルである。

スープは鶏ガラと野菜を炊き、濃口醤油のカエシを重ねたもの。甘さ控えめだが「甘めが好きなら調整してあげるよ」とご主人。いえいえ、スッキリした飲み口でベストバランスです。そこに合わせるのは、やや加水率低めの中太縮れ麺。コシがあり旨い。商人の町・下館では出前文化が発達したため、延びにくい麺が主流なのだ。

そして、ひと口サイズの鶏チャーシューがコロコロと。甘辛い醤油ダレの味はクセになる。ワンタンは小粒だが餡の味付けがしっかりなので抜群の存在感に。ほか、コリコリのメンマ、ナルト、海苔、刻みネギ。あっという間に完食した。下館ラーメンの代表格「盛昭軒」創業者も修業した筑波軒。無くなる前にぜひ一度訪れて欲しい。

<店舗データ>

【店名】 筑波軒
【住所】 茨城県筑西市丙219
【最寄】 JR水戸線「下館駅」北口徒歩5分

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