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テレビっ子のひとり突っ込み

『これは経費で落ちません! 経理部の森若さん』青木祐子

2023-08-19 23:47:01 | 読書案内


最新刊出たタイミングで紹介しようと思ってた作品ですが、買ったら書こう、読んだら書こう、
って思ってるうちにさらに最新刊出ちゃってタイミングどんどん逃しちゃうので、もう、何でも
ない思い立った時にえいやっと。

けっこうサクサクーっと読めるお話です。(まぁラノベなので好き好きではあるかとは思いますが。)


主人公はタイトルからだいたい分かるように、経理部勤務の森若沙名子。

で、経理部というイメージから(小説的キャラとして)想像できるように、彼女はルールに従って
生活に波風を立てないようにルーティーンをこなしていく生活を送っており、そのペースを乱され
るのが何より嫌い、といった性格。

でも、できるだけ心にも波風立てないようにするのが一番なので、意外と自分のルーティーンを
乱されることがあっても臨機応変に対応します。


そんな彼女ですが、経理部という仕事柄、いや、その真面目さ有能さ故にどの会社でもあるような
ミスや背任行為、果ては犯罪行為に近いようなものまで、経理上のささいな違和感から気付いて
しまって、穏やかな毎日を送りたいと思っている彼女にもかかわらず、色々な事件に巻き込まれて
しまうっていうようなお話です。

その事件っていうのが、大きな会社によくありそうな横領事件だったり、女子社員同士のいざこざ
だったり。


SE職の自分としては、経理って言う職業が未知の世界なので興味深く、それでいて身近によくあり
がちなワケアリで辞めていく社員。

フツウに働いていたら、あんまり深堀しないでなんとなく問題ありそうな社員や揉め事起こした
けど外からは結局なんだったのか分からずただ人が辞めちゃうっていうような出来事を正面から
向き合って、ちゃんと解決して、辞めるべき人を辞めさせ、辞めるべきでない人の問題を解決して
くれたり、そういうところに爽快感を感じます。

まー、そんないつも冷静沈着なルールに従って、自分の心にも波風立てない森若さんが、とある
営業部の若手社員、山田太陽とかかわり始めることで、彼女のルーティーンがちょっと崩れたり
穏やかに一人で生きていこうと思ってた人生が、違った方向に歩み出したり・・・。

ラブコメ要素交えつつ、あー、こういう面倒事とかいざこざとかあるよねーっていうのを見て見ぬ
振りしたり、水面下で解決してくれたり、ハラハラドキドキの会社での事件と、恋愛面では初心な
森若さんがちょっとずつ大人女子になっていくっていうのも可愛い物語です。


ちなみに、これ、多部未華子主演で2019年にNHKでドラマ化されててですね、それが原作を裏切ら
ない面白さで私的にはすっごい良かったです。



(多部未華子、「山田太郎ものがたり」の時はニノが好きすぎて嫌いだったけど、「デカワンコ」
でなかなか振り切った演技していて、それ以来好きになりました。)

特に、森若さんにちょっと危うい絡みをしてくる山田太陽の先輩で営業部のエースでイケメンの
山崎 柊一役が桐山漣だったのが特によかった。


イメージは全然違ったけど、後輩役のまだブレイク前の伊藤沙莉もよかった。

すぐに2作目製作に入りそうだったのに、このドラマの終了直後くらいに多部未華子が電撃入籍
しちゃって、そのせいなのかなんなのか、2作目製作がポシャッたみたいですごーく残念でした。

忘れた頃に、キャスト総入れ替えでもいいからまたジャストフィットするキャスティングみつけて
孤独のグルメくらいながーくやってくれないかなー・・・。

マンガ化もされてますが、こっちはまた山田太陽のビジュアルイメージがドラマ(重岡大毅)とは
真逆な感じ(同じグループ内で言うなら藤井流星に近い?)で、その他の人々もなかなか私の思い描い
てたイメージには重ならなかったけど、慣れれば面白いです。(多少原作と違ったエピソードとかも
あったような・・・。)
Cookieっていうマンガ雑誌を毎月購入してた頃(5、6年前?)に見てたものなので忘れたけど・・・。



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『図書館戦争』有川浩

2022-06-27 23:49:40 | 読書案内


コロナでテレワークになる以前は、会社帰りにただただなんとなく本屋に立ち寄るっていうのがライフワークのようなもの
だったので(本屋が開いてる時間に帰れればて感じでしたが)、よく平積みされてた有川浩さんの作品は名前は知ってはいた
けど、所詮ライトノベル的なやつだろうと思って敬遠してたもの。

けど「阪急電車」って作品が映画化されて、主演の中谷美紀がプロモーションでテレビに出て作品のことを紹介してたのに
興味を惹かれて、初めて有川浩作品を読んで虜になった。

この作品は、有川浩の3作品目くらいとして出会ったシリーズ。(もう、シリーズ推しとしてのご紹介です。)

タイトルからしてすごくめんどくさそうな作品だと思ってましたが、意外にもラブコメ要素たっぷりで、それでいて色んな
ことを考えさせられる、ちゃんと読めばすごくいい作品だと思います。


概要としては

物語の舞台となるのは、「メディア良化法」という人権を侵害する表現を規制するための法律というものが実効支配する
架空の時代。

法の施行に伴い、メディアへの監視権を持つメディア良化委員会が発足され、不適切とされたあらゆる創作物は、良化特務
機関(メディア良化隊)による検閲を受ける。

もちろん図書館もその標的となり、しばしばこの機関に勝手に不適切と認定された図書が焚書とされる。

しかし、図書館はこの弾圧に激しく抵抗。図書館法に則る公共図書館は、「図書館の自由に関する宣言」を元に「図書館の
自由法」を制定し、自主防衛のために図書隊を結成。

こうして、図書隊と良化特務機関との抗争に突入。


そんな感じのベースがあり、ヒロインであり本が大好きな主人公の笠原郁が、高3の時に立ち寄ったある本屋で、大好きな
本をメディア良化隊に奪われそうになるという危機に直面するが、その際にある図書隊員に救われたことがきっかけで、
憧れの王子様と同じように「理不尽な検閲から本を守りたい」と図書隊に入隊するところから物語が始まります。

入隊時の面接で、王子様に救われたことを熱く語る郁でしたが、その王子様がなんとその場にいた面接官で鬼教官と言わ
れる堂上篤で・・・。

堂上の周りの人たちの生暖かい気遣いにより、郁は堂上班に配属される。
そこで、色々な失敗や試練を乗り越え成長しつつ、王子様の正体が判明してラブコメ突入したりしなかったり、っていう
ようなお話です。


この作品、図書隊員たちはあくまでメディア良化隊からの検閲の防衛をする、っていうものなんですが、有川浩氏(表記
有川ひろに変わったんだっけ?)は元々自衛隊マニアなので、自衛隊の理念と「図書館の自由に関する宣言」とをすごく
うまく結びつけて作品を描いています。

なので、けっこう本格的に戦闘シーンが出てくるんですが、専守防衛とは何かっていうところから、自衛隊のこととか
結果的に日本が掲げている憲法9条っていうのを図らずもすごく考えさせられる作品になってます。


何年か前にもけっこう色々論争あった気がしますが(安倍政権になりたての頃だっけ、「集団的自衛権」の行使について
見直されたりしたの?)専守防衛について。けっこうこの言葉、色んな解釈があるなって、初めて考えさせられました。

専門家でもないし、こういうのちゃんと深く勉強してるわけではないのでほんとはあんまり言いたくないんですが、とり
あえずそ当時に考えたいくつか。


①敵に攻撃されても、盾的なもので防御するのみ。(相手を傷つけるような行為はしない。)
②敵に攻撃された際、自国の領域内で防戦する。(相手を傷つけるのはやむを得ない)
③敵に攻撃された際、領域内外に関わらず自国への被害を抑えるために戦う。
④攻撃は最大の防御。攻撃される気配を察知した場合は、自らそれを防ぐための攻撃を行う。


本気でどっかに攻撃されるなら、もうほんと結界的なシールドを国を覆う形で張り巡らせないと無理でしょう、ってこと
で①は楽観論でしかないかなと。

この作品では②の概念に基づいて防戦するんですが、それがほんともう理不尽にやられまくる・・・。そっから派生して
これもどうなの?って思っちゃう。

④もやり過ぎ感はあるけど、対北朝鮮で必要性が叫ばれてた迎撃ミサイルもちょっと進化を遂げていくうちに、近い形に
なっちゃうんじゃないかなと。

そんなようなことを時々考えながら読んでました。

ちなみに、「図書館の自由に関する宣言」っていうのは実際にあるものらしくって、作者の有川氏がそれを見て思いついて
書いた作品らしいです。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------

図書館の自由に関する宣言


 図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な
任務とする。この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

この、最後の意味深な一文ですよね。きっと。



ちなみに、この作品読んでた当時、なんとなーく主人公の郁を綾瀬はるか、堂上教官を西島秀俊イメージで読んでたので
実際に映画化されたとき、岡田君(岡田准一)と榮倉奈々っていうキャスティングにすごく違和感ありましたが、映画見た
らそんな違和感もすぐに吹き飛びました。

とはいえ、「奥様は取り扱い注意」ってドラマで私の夢のキャスティングが叶って、全く関係ないドラマなんですが、
ちょっと嬉しかったです。

まー、原作にある身長差の設定がねー。そっからきっと探したんでしょうねと。

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『沈黙の町で』奥田英朗

2022-05-16 23:59:11 | 読書案内


奥田英朗もけっこう好きな作家さんです。

これは、コメディー色のない方の奥田作品。

イジメっていうのがなぜ発生するのかっていうのをかなり切り込んで描いている。

いじめ問題が取りざたされた時に、なんとなく心の中でモヤモヤしてしまう何かをくっきりとさせてくれる作品です。


いじめ問題が発生した時に、「いじめられる側にも問題がある」っていうようなことを言う人がいると非難されたりする
けど、そこ。

この件に関しては、おそらいじめ問題に直面した際客観的にその場を知ってる人たちが、心の中で思ってたとしても
言っちゃいけない雰囲気になっていること。

まぁ、そこが公に認められちゃったりすると、強者のうまい言い訳に使われる前例になってしまうことが懸念される
からなだろうけども。

とりあえず、いじめられる側に非があるかどうかではなく、何故いじめが発生したのかを毎回掘り下げてみないといけ
ないんじゃないだろうかっていうことを強く感じました。



ちなみに、これまでの人生で集団イジメをされたこともしたこともないんだけど、イジメられている人に遭遇したこと
はあります。

それは高校一年の時。

クラスの中で、同じマンガが好きな子に出会いけっこう盛り上がって友達になったK子。

で、その子に

「お昼ご飯、一緒に食べていい?」

って聞かれたので

「いいよ。」

って、軽く答えたんだけども、今まで一緒に机をくっつけてご飯食べてた10人くらいの女子達が、その日から急に
お昼休みの机が離れていった・・・。

で、その日からK子と元々K子と一緒に食べてたもう一人の子となぜか3人で昼ご飯を食べるように。

若干、なぜみんなが離れていったのか気にはなったし、K子もその輪に混ぜてって意味で一緒に、って言ったんじゃ
なかったのかなーとか思ったけど、その10人の子たちも人見知りなのかも知れないし、逆に私がその二人と少人数制で
ゴハン食べたいと思われたのかも知れないし、そもそも理由聞くほど全員が全員仲いいわけではないし、昼休み以外の
時間は元々仲良くしてた数人の女子友達の私に対する態度はこれまでと変わらずフツウだったし、大して気にも留めて
なかった。

理由を知ったのは、ある仲の良い男子Yからの忠告。
ある日の放課後、その男子が数人で遊んでる教室に荷物を取りに行くと

「おまえさー、Kなんかとつるんでるとそのうちオマエもイジメの標的になるぞ。」

と。

ハァ?なにその金八のドラマみたいなセリフ。

って思って思わず笑っちゃいました。

そもそも、このY君、私は保育園の頃から一緒なんだけど、(そもそも田舎だったので、同じ保育園行ってたら自動的に
中学まで選択肢なく一緒。ついでに高校も選択肢が5個くらいしかないので単純計算で同じ保育園行ったらその中で1/5
は高校まで一緒なので、マンガ的腐れ縁、みたいな感情は一切ない。)高校入って同じクラスになって、出席番号順で
席がたまたま隣同士になり、(しかも一番後ろ)ちょいちょい話しかけられていた。私は私で新しい女子のコミュニティ
があるので、正直こっちの会話が面倒だったけど、ちょっとキレるとコワい系でもっとめんどくさくなっちゃう人だった
ので適当に対応してたりした。

例えば、

Y:「最近なんのゲームやってる?」

私:「うーん、ファイナルファンタジーとか?(何作目かは忘れた。5くらい?)」

Y:「どこまで行った?」

私:「うーん、あんま進んでない。(というか兄がゲーム本体もしくはゲーム用テレビを占有しててやるタイミングが
ないんだけども。)」

って言ったら、翌日、「FFは難しいからこっちのほうが簡単で面白いからこっちにしなよ。」ってドラクエを渡された・・。
これ以上やるゲーム増やしたくないんだけど・・。「3章だったら初期化して使っていいから。」って。
はー、うっかり1か2を消したら激怒されるんじゃないんだろうか、しかも借りた手前やらないといけないし・・・。
ってことで仕方なくドラクエやる、みたいな?


で、ある日(1年生の夏休み前)クラスのちょっと清楚系な女の子の体操着がなくなったって女子たちが騒いでいたので、
私も一緒になって探すことに。
いつからないの?とか、どこに置いたとか覚えてないの?って聞いてみたけど、彼女はブツブツ言いながらこっちを
振り向きもせず必死で歩き回って廊下に出てみたり、下駄箱のところまで行ったりして探している様子で答えてくれない。

で、結局どっかに置き忘れたか仲の良い別のクラスの友人が持って行ってたかで見つかりはしたんだけど・・・

その日の夜のこと。

私は中学の時に別の中学だったけど同じ部活でちょっとだけ交流があった子と同じクラスで隣になったのをきっかけに
すごく仲良くなって、ちょくちょく夜電話したりしていた。(注:家電(いえでん)時代です。)

そしてその日の夜の電話で言われた衝撃の一言。

「そういえば今日、Rっちゃん(体操着探してた子)misoに話しかけられてコワかったってー。」

「へ?なんで?」

「misoがY君とよく話してるから、Y君ってコワいからそのY君と仲良しだから、中学の時裏番だったんじゃないかって
みんなに言ってたよ。否定はしといたけど。」

ハァ!???

・・・・。

ちょっと、育ったところがほんとにほのぼのーっとした田舎だったので、急に"裏番"とか言われてまじでびっくりした。
なにそのマンガ(マガジン系?)でしか聞いたことのない言葉。

しかも、確証もなくそんな噂広めようとしないでよ。Rちゃんの方が私からしたら話しかけても無視するし、コワいん
ですけど・・・って感じで。


で、話を元に戻すと、Y君にK子との付き合いやめろと言われたけど、彼女がいじめられてるなんて全然気づいてなかった
し、急にそんなこと言われてもワケが分からず、、

「なにそれ?てか、私には関係ないし。それで友達やめるとかは?って感じなんだけど。」

って感じで、私的にはオマエがいつも不機嫌そうにしてるにも関わらず親しげに話しかけてくる方がイジメられるわ、
とか思ってたんですが・・・。

確かに注意してみてると、彼女に対しイジメっていうよりちょっとした嫌がらせ?みたいな行為があった。まー、その
大半は無視、だったんだけども。けどなんで彼女だけがそんな風になってたのか全く分からず、(ちょっと変わった子
だったので、彼女も気づいてないし気にしてなさげでむしろ周りの労力の方が滑稽な感じだったんだけど)その後もK子
にフツウに接してはいたんですが・・・

ある日、あることで彼女を怒らせてしまい、

「もうmisoとは一緒にゴハンたべない。」

って言われて口を聞いてくれなくなってしまった。

で、翌日からまた10人くらいの女子と何事もなかったかのようにお昼を食べるようになり、私とK子の半年くらいの友人
生活が終わったのでした。

っていう高校時代の淡い(苦い?)思い出です。
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カエル男記事訂正

2022-03-29 19:53:51 | 読書案内
興味のない方にはどうでもいいハナシですが、「連続殺人鬼カエル男」に記載した記事に訂正がありました・・・。


「連続殺人鬼カエル男」は、このミステリーがすごい!の第8回選考会で最終選考に残った作品ですが、この回の大賞は
おなじく中山七里の「さよならドビュッシー」でした。

そして、この「連続殺人鬼カエル男」は中山七里の3作目に出版された作品で、
1作目として出版されたのは、このミスで大賞取った「さよならドビュッシー」、
そしてさらにその続編の「おやすみラフマニノフ」が2作目として出版されてます。

「連続殺人鬼カエル男」が処女作!って書こうとしたけど、書かなくてよかったー。

そもそも、第8回で大賞となった「さよならドビュッシー」が出版1作目だけど、第6回の最終選考に残った「魔女は甦る」も
第4作目として出版されてるので、処女作って言ったら定義的にどれが当てはまるのか微妙だし・・・。
(まぁ、カエル男ではないのは確か。)


ちなみにですが、中山七里作品、誉田哲也の作品と同様に(ってこっちはまだ一作も紹介できてませんが・・)登場人物が
同じ世界にいるっていう設定で、それぞれどこにスポットが当たるかで誰がどの作品に登場するか変わってくるみたいです。

カエル男に出てくる埼玉県捜査一課の古手川刑事は、他の作品にもちょいちょい出てきますが、主役としてはまだ登場
してないような気がします。

ちなみに、この作品工藤阿須加主演(?)でドラマ化されてるみたいなんですが、見ようかどうか悩み中。

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『連続殺人鬼カエル男』中山七里

2022-03-28 23:54:30 | 読書案内


「連続殺人鬼カエル男ふたたび」を読み始めたので、とりあえずシリーズ(?)1作目の感想をアップしときます。

中山七里作品を手に取ったのはこの本が初めてでした。



なかなかのグロい表現の入ったミステリー小説です。


まず、埼玉県飯能市にあるマンションの13階で、フックでぶら下げられた女性の全裸死体が発見されます。そばには
「きょう、かえるをつかまえたよ。」
という一文で始まる、死体の惨たらしさとは対照的な、まるで幼児が書いたかのような稚拙な犯行声明文。

マスコミはこのセンセーショナルな事件の犯人を「カエル男」と名付け、世間を煽っていく。
それとは裏腹に、犯人は捕まらずさらに第二、第三の事件が起き・・・


物語は警察側、犯人、そして謎の人物と何人かの視点で描かれていき、読者にとっては少し混乱を招く描かれ方を
していますが、まさにそれが狙いだったり・・・。

殺害方法や現場の描写にも目を覆いたくなるような凄惨な状況が描かれますが、それと合わせて貧困家庭の子供や
DV、性暴力など、けっこう見ていてツライ状況がたくさん出てきます。
(後で中山七里作品を色々読んでわかったのですが、作者はけっこう社会問題やその時点で世間を騒がすニュースを
かなり作品に取り入れてる方みたいです。)


けど、それでもやっぱり続きが読みたくなっちゃうこの小説は、いろんな推理小説の手法も紛れていて、読み進める
につれ、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、見事に予想を覆されたりして、ストーリーの内容からするとちょっと
そぐわない表現ですがそれがほんと爽快。


最初に刑法39条について触れる部分があるため、それを中心に展開していくのかなと思いきや、そうでもなく・・・・

ちょい、ネタバレ入っちゃうと、私が一番、そうだったのかー、と感心してしまったところは、
筒井康隆氏の「ロートレック荘事件」の手口が入った作者の手法。
うーん、まんまとダマされました。

ものすごく精巧に作られた迷路みたいな小説。

読み進める間に「ん?」とちょっと気になりつつ、先が読みたくてスルーした箇所を最終的にスッキリ解決してくれる。

内容的にはけっこう精神的にキツイ話ではありますが、ストーリー全体の構成部分で読んだ後にすごく感嘆しちゃいます。

話が2転3転、4転するんだけど、全体としてちゃんとまとめてる。
まー、実際そんなこと起こりえないんじゃ?
って思うこともあるけど、そんなけちなんてつけたくなくなる。


この作品は、私が中山七里に出会った最初の作品でもありますが、彼の世に出た最初の作品でもあります。
(訂正:すみません、これ、3作目でした・・・。)

今ハマってよく見てるドラマなんかと一緒で、この作品読んですごいテンションが上がって作者自身をめっちゃ検索
したりしました。

この作品は、第8回の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品最終選考ノミネートなんですが、この作品をきっかけに、このミスファン
にもなりました。

で、実は、第8回の最終選考に残ったのが本作カエル男ともう1作がなんと同じく中山七里の「さよならドビュッシー」。

全く毛色の違うこの二つの作品がなぜ最終選考に残ったのかっていうと、実は第6回のこのミス選考で中山七里は
「魔女は甦る」(応募時は確か「災厄の季節」ってタイトルだっけ?)を応募していて、それが最終選考で落とされる
っていうことになり、だったら、てことで第8回大会に毛色の違った2作品を応募したんだとか。

この作品読んでかつ、このエピソードを知っちゃったらもう中山七里を好きになっちゃうしかなくない?
もう、才能が凄すぎるでしょ。


ってことで、めっちゃおススメです。




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『むかし僕が死んだ家』東野圭吾

2022-03-23 23:53:26 | 読書案内


以前、東野圭吾を読み漁っていた時期に何冊目かで出会った本。

読み漁っていたっていうのちょっとは語弊があるかも知れない。
要は、本を1冊読み終わった際に、さて次に何を読むかなって考えるのが面倒で、東野圭吾にたどりついた。
東野圭吾なら作品数がけっこう無限にあって(まぁ無限ではないけど)本を一冊読み終わったら、特に何も考えずに
東野圭吾のまだ読んでない本をまた選んで読めばいいから。

本当は、売れっ子作家の作品てあんまり好きじゃない。
中学生くらいの時、赤川次郎を片っ端から読んでたこともあったけど、なんか読んでる時は面白いって思ってるん
だけど、ハリソンフォードが出てるような映画と一緒で読み終わってしばらくすると、内容が思い出せなくなって
しまう。

ひどいときはタイトルさえも忘れた上に、タイトルを見ても、それを読んだか読んでないかすら覚えてない時がある。

特に、"ミステリーファン"っていう訳でもないので、どんな意外な人が犯人で、どんなトリックを使って読者の目を
欺くか、ってことには興味はなくて、読書をするときは、作中人物の心情を追って共感を得ようとするんだけど、
東野圭吾とかのミステリー作品はそういう読み方をしているとどうもしっくりこない。
(それが「加賀恭一郎シリーズ」くらいから変わってきた気もするけど、その話はまた今度。)

たしかに、続きが気になってページは進むが、心を打たれる、ってことが少ない。

まぁ、ほんと暇つぶしに読むっていう感じ。
(なので韓国・中国ドラマにハマってる最近は、かなり気に入ってる作家さんの本しか読まなくなっちゃったけど。)

「白夜行」にしても「幻夜」にしても、世の中、こんな恐ろしい人がいるのか、って常人には思いつかないような
人の話ですごいなとは思うけれども、心には響かない。

ただ、そんな中、これもまた登場人物の誰にも感情移入できないけどもけっこう衝撃を受ける作品です。
コワイ。。
まさにミステリー。

ちょいオススメ。
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『君の膵臓をたべたい』 住野よる

2022-03-21 21:01:08 | 読書案内


2年前くらいに読んだ本です。

この本は確か、アメトーークの読書芸人だったか、王様のブランチで紹介されてて読みたいなって思って購入した本。

買ったはいいけど、実写映画の紹介だったかで、主人公が余命1年のクラスメイトの女の子と出会う、という情報をうっかり
入れてしまったために「あー、病気で死んじゃう話なんだなー、せかちゅー的なやつだなー」なんて思っててちょっと敬遠
してしまって、購入してから読み始めるまでけっこう時間がかかった。


結局、職場の年の離れた後輩が、"キミスイ"めっちゃ好きです、って言ってたのを聞いたのがきっかけで読み始めた。

端的に言うと、高校生の主人公がクラスメイトの女子と病院だったか図書館だったかどっかでばったり会って、彼女が余命
1年であることを知ってしまうんだけども、特にその子に特別興味のなかった主人公にとってはその時は特に何も感じなかった
ものの、女の子となんとなく交流が深まっていき、同時に彼女の病気も深刻化していくにつれて気持ちがだんだんと変化して
いく。最後に彼女は亡くなってしまうんだけども、その彼女との出会いから死後までの間の主人公の心の成長を描いた作品、
っていう感じです。

正直、物語序盤の、主人公と病気をかかえた女の子の皮肉を含んだ憎まれ口の言い合い。ここがちょっと大人になった私には
読んでいて苦痛だった。

でも、話が進むにつれ(女の子と主人公の交流が深まるにつれ)、主人公が少しずつ、少しずつ成長することによって、単なる
憎まれ口ではなく、心の交流、心の読み合い、つまりは相手を思いやる心が育っていく。


そして、先入観としての予想の裏切りが50%、冒頭の予想通りの結末が25%、伏線回収の予想的中率50%って感じで、最後だけ
めちゃめちゃ号泣して終わった。

余命○○っていうのに惑わされすぎだったり、誰しも明日事故に遭って死んじゃうかもしれない、っていうのもよく聞くけど
まさか!って感じでやられたーって思いました。

そこだけはほんと、固くなった頭を柔らかくしてくれるいいきっかけになる本だとは思ったけども・・・

きっと、職場の後輩君のように、言い方悪いけど友達の少ない(もしくは、女子とあまり接触のなかった)学生時代を過ごした
男子、それでいてちょっと変わりたいと思ってる子にはすごく感慨深いバイブルみたいな作品なんだろう。


この作品を純粋に楽しむには、私はちょっと歳をとりすぎたかなー・・・って思えた作品でした。

すごーく客観的かつ冷静な感じで感想書いてますけど、そうは言ってもほんとに、ハナミズ止まんなくなるくらいめっちゃ
泣いたんだけどね。
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『ミステリークロック』貴志祐介

2021-10-05 23:49:21 | 読書案内


私がフォローさせていただいているbookookさんのブログで、「防犯探偵・榎本シリーズ」の続編が出ていたことを初めて知って、最近購入して読んだ本です。
(bookookさんありがとうございます。いつも楽しくブログ拝見させていただいています。コメント欄ないので、ここでお伝えさせていただきます。)

いやー、嵐の大野君が無期限休業を発表したことで一番残念に思ったのは、それに引きづられて嵐が活動休止になったこととかではなく、「鍵のかかった部屋」のドラマの
続編が制作されなくなってしまうじゃないか!ってことでした。そのくらい、好きなシリーズです。まぁ、これ以外に貴志祐介作品でシリーズ物はないんだけれども。

ちょっと韓国ドラマにハマってから、電車移動中も家にいる時間もずーっとドラマの動画ばっか見てたので、小説読むのめっちゃ久しぶりでした。
(「これは経費で落ちません!」以来かも。多分、ドラマ化される前に読んでたハズなので少なくとも2年ちょっとぶり・・・。)


ミステリークロックは、単行本(て何?親書サイズの本?ハードカバーっていうにはちょっと表紙が薄い感じのハードカバーっぽい本?)では、

・ゆるやかな自殺
・ミステリークロック
・鏡の国の殺人
・コロッサスの鉤爪

の4話が収録された1冊の本だったみたいですが、文庫化された際になぜか2冊に分冊され、しかも上下巻でもなく、「ミステリークロック」と「コロッサスの鉤爪」の
2つの本になっています。

なんでなんでしょうね。実際、1冊1冊薄いって感じる薄さ。確かに、2冊を1冊にすると多少分厚くはなりますが、「硝子のハンマー」と比べてみても2冊であまり厚さ
変わらない。表紙とあとがきとか1冊分にしたらちょうど同じくらいな気がする。



まだ「ミステリークロック」の方しか読んでないんですが、あとがき見たら、コロナのことと、ドラマが再放送されたことが書いてありました。あと、単行本から加筆修正
のうえ、文庫化したと。あーなるほど、じゃー、加筆修正するのにちょっと時間がかかってとりあえずドラマ再放送で思い出した人たちに一早く買ってもらいたいから
先にできた方から文庫化して売り出したのかなー、とか思ったけど、2冊とも同じ発売日でした・・・。

だとしたら、分厚い本を読むのに抵抗がある系の人々にも手に取ってもらうためかなと。
うーん、でもこの活字離れそして紙媒体の本離れしているご時世、そんな層の人々に買わせるのもう無理じゃない?もう最初から本好きな人々をターゲットに発行して
欲しいわ。なんて勝手なことを思っちゃったりしました。


で、文庫の「ミステリークロック」ですが、「ゆるやかな自殺」っていう短編のお話と「ミステリークロック」っていう中編?くらいのお話が収録されています。

「ゆるやかな自殺」は、物語の主人公の一人榎本怪が暴力団事務所に呼ばれて中から6重のロックがされた組事務所の入り口ドアを解錠し、その密室だった事務所で起きた
誰にも公表されない殺人事件を解決するっていうお話です。このお話には青砥純子が出てこないので、なんとなくスピンオフ感のある作品です。

「ミステリークロック」の方は、有名なミステリー女流作家の別荘に招かれた人々の中で繰り広げられる殺人事件のお話。
読み手の誰もが、犯人が誰かって事と時間がキーになるんだろうなってことは分かってるんだけど、トリックは分からないっていう中で話が進んでいきます。しかも、
主人公二人があわや殺されるんじゃないかっていうヒヤヒヤ感もあるのがちょっと新しい。

読み始めてすぐ、ドラマの佐藤浩市がやってる弁護士先生が出てこないことに違和感感じたけど、よく考えたらその方ドラマオリジナルの登場人物でした。
よく、ドラマって女の人が追加されるっていうのはよくあるけど、特に東野圭吾作品とか映像化された際にヒロイン不在になっちゃうので登場人物の性別が変わったり、
ヒロインが追加されちゃったりしますが(ガリレオとかね)、男の登場人物が追加されて映像作品に厚みが出るってけっこう珍しい気がします。(そんなことないかな?)

とにかく、原作の方はあまりに久しぶりに読んだので、ドラマの芹沢先生がちょっと恋しくなりました。

てか、今回榎本が珍しく裏のお仕事してないような・・・。それはやっぱ2冊で1冊だから、コロッサスの方に出てくるのかなー・・・・。
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『絡新婦の理』(じょろうぐものことわり) 京極夏彦

2021-09-02 23:43:43 | 読書案内


(今日は、読書案内です。)

京極夏彦の百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ?)の第5作目。

京極夏彦の本は、分厚くて持ち歩きや満員電車で片手で指を挟みながら読むには不向きなのでちょっと敬遠してたんですが、
分冊文庫が出たタイミングで買って読みました。背表紙の黒や、カバーの艶消しっぽい加工が気に入ったのもあって。
(けっこう割高ではありますが。)

百鬼夜行シリーズは、小説の中に、半分作者の趣味というか京極堂という登場人物を使っての作者の知識を語りたいだけ
なんじゃないかって言う、神道や民俗学的な蘊蓄を延々と語るシーンがあって、かなり本腰淹れないと途中で挫折しそうに
なるんですが、なかなか興味深いところも多々あります。



私的には、この5作目の「絡新婦の理」の中の一説がかなり印象深く心に残ってます。


それは、日本に昔からある風習、「夜這い」制度のお話。
地方では、未だにそういう風習が残っているところがあるらしいですが、もうちょっとポピュラーなところでいうと、
源氏物語なんかに出てくるやつが有名ですかね。
まぁ、あれが夜這いなのかは分からないけど、男が女のところに通う通い婚制度的なやつ。

で、「夜這い」って言葉と、何をするものかも知ってはいるけど、その意味までは知らなかった。

「夜這い」制度って言うのは、もともと女が家の跡取りとされてる地方で生まれた風習で、男が女の元に通うルール的なもの
も何かしらあるらしいんですが、とにかく私が衝撃を受けて妙に納得したのがその理由。

「夜這い」では、男側の誰の子供なのかっていうのはそれほど重要ではなく、重要なのは、とにかくその家系の血を絶やさ
ないっていうこと。
女が家系を受け継げば、その女が産んだ子供は当然その家の血を継ぐものであり、そうすれば、カッコウの子供みたいに、
自分の息子の子(自分の家系の血を継いだ子供)だと思って育ててたら、他の男が自分ちの嫁に産ませた全く別の血の子だった、
なんてことがない、っていう。実に合理的な制度っていうね。

ここがちょっと目からウロコで、すごく印象に残ってます。

日本のマニアックな歴史と蘊蓄好きな人には是非オススメなシリーズです。



余談ですが、京極夏彦で思い出した、何年か前に本社で何か月か仕事してた時のお話。

中途採用で、若い女子社員が入社してきたんですが、その子がすごくなんていうか、"きゃぴきゃぴ"してるっていう表現がしっくりくるちょい八方美人な
女の子で・・・。

まぁ、色んな人と仲良くなろうとする姿勢はいいんですが・・・。



仕事中に急に私の席の横に来て、

「misoさんって、趣味ってなんですか?」

唐突だな・・・と思いつつも、真面目に答える私。

「うーん、読書かな。」

「え?そうなんですかぁ?私もめっちゃ読書するんですよー。何読むんですかぁー?
あ、でも私わぁ、恋愛小説とかは全然読まなくてぇー・・・」

当時の私にとって、なんか急に出てきた"恋愛小説"って言葉がなじみがなさ過ぎて恋愛小説って何だっけ???って若干混乱した記憶があります。
一応、ミステリー小説とかにも登場人物の恋愛事情が出てきたりするので、そのこと??みたいな。
(後に、有川浩に出会ったときに、あー、恋愛小説ってこういうやつか!って思いましたが。)

「あー、そうなんだ。」

「そーなんですぅー。ほとんどミステリー小説しか読まなくてぇー。でもそういう推理小説系だったらだいたい知ってますー。
misoさんは何系ですかぁー?」

「あー、私も推理小説?ミステリー小説?が好きかも。」

「あー、一緒ですぅー。誰のが好きですかー?」

「うーん、今読んでるのは、京極夏彦だね。」

「あー、ちょっと・・聞いたことないですねー。」

そう言って彼女は去っていきました。

ミステリー好きなのに、京極夏彦知らないのか・・・。京極夏彦も名前だけは大御所っぽいのにまだまだなんだな・・・って思った記憶が
あります。

なんか、こっちに寄せて寄せて、あ、もしかしたら今から同じ趣味の楽しい話ができるのかな?と、思わせといて、思いっきり肩透かしを
食らう、みたいな。

この他にも、同じパターンの会話を3回くらいやりとりしましたが。

3歳から空手をやってて、最高で、世界大会2位になったっていう男性社員は、「私も空手やってるんですぅ」って話をされてて、空手歴を
聞いたら、去年始めたって言われてちょっと私と似たような表情を浮かべてました。

観察してたら、「あ、それ私けっこう詳しいんですよー」っていうのが彼女の口癖だったみたいです・・・。

(まー、その子も結局それから2、3年して会社辞めちゃった子なんですけどね。)
コメント
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