細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

木練柿  あさのあつこ

2009-12-18 22:21:24 | 読書メモ あ行
《内容》
あの男には力がある。人を惹き付け、呼び寄せ、使いこなす、それができる男だ。娘は、男から刀を受け取り、抱き込みながら何を思い定めたのだろう。もう後戻りはできない。月の下でおりんは「お覚悟を」と囁いた。刀を捨てた商人遠野屋清之介。執拗に事件を追う同心木暮信次郎と岡っ引伊佐治。                            (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――商いは人が動かねば成り立たない。人を動かし、品を商う稀有な才覚をこの男は確かに掌中にしているのだ


―――だけど、血の繋がりってそんなに大切なんだろうか。親と子の繋がりって、血のことじゃなくて、心のことじゃないのだろうか。母になろう娘になろう。その思いこそが大事じゃないのだろうか。


―――人を疑い、己の心に鎧を被せるより、ささやかな喜びに身を浸し、好ましい相手と酒を酌み交わして生きて行きたい。
 それは眩しいほどの幸せではないか。


―――まっとうな人間は、まっとうな明日を信じて生きている。
 しかし人の生きる道は優しくも温かくもない。まっとうさなど欠片もない。突然に牙をむく。穴があく。闇溜まりに落ちる。あちこちに罠が仕掛けられているのだ。あちこちに巧妙に。


―――人の定めは人の力で変えられます。必ず、ね。

いつか響く足音 柴田よしき

2009-12-18 15:46:23 | 読書メモ さ行
《内容》
ばらばらのようで、つながっている。これって、なんだか家族みたい。かつては夢の町、今では世界の端っこみたいな、この団地。借金だらけのキャバ嬢も、息子に見捨てられた老女も、猫を追うカメラマンも、皆どこかに帰りたい場所がある。もう戻れないと、分かってはいるけど。でも、ここだって案外、あったかい――。「家族」を想う全ての人、必読!共に生きる意味を問いかける連作小説集。
           (紹介文より)


☆☆☆☆☆
―――頭の中で思い描いた通りに行動できれば、人生は随分と簡単で楽なものになるだろうに、と、


―――人の記憶とは、こんなにも都合よくできているものなのか、と里子は可笑しくなる。辛かったことや悲しかったことはどんどん忘れていくのに、楽しかったこと、嬉しかったことはいつまでも心に残っている。