《内容》
ある日、父が家に連れてきた少年は秋雨と名乗り、美妙より七つ年下の異母弟であった。それから五十余年、互いへの思いを心の奥底に秘め、それぞれの人生を歩んだ二人は、取り壊しの決まった、古い家で再会する。ともに暮らした幼い日々をなつかしみながら、長い歳月を慈しむように来し方を語り始めた。生涯のすべてを一日に込めて、至高の愛の姿を描く恋愛長編小説の新境地。 (紹介文より)
―――空には雲が流れてゆく。寂しい。何も、何もままならない。でもそれが人生なのだろう。やるせない気持ちに何とか折り合いをつけ必死にその日を明日につなげて生きてきたからこそ、今日のこの美しい日がある。
―――寄り添っても寄り添っても足りず、より近くに行きたいと、どこも離れたところがないようにぴったりと合わさって、ひとつになりたいと願うかのように。