細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

海峡の南   伊藤たかみ

2009-11-12 21:43:48 | 読書メモ あ行
海峡の南   著者 伊藤たかみ

《内容》
祖父の危篤の報を受け、〈僕〉は遠縁の歩美とともに父の故郷・北海道へ渡る。若き日に関西に出奔した父は、金儲けを企てては失敗し、母にも愛想を尽かされ、もう何年も音信不通のままだ。親族に促され父を捜す〈僕〉は、記憶をたどるうち「北海道とナイチ(内地)」で父が見せた全く別の面を強く意識しだす。海峡を越えて何を得、何を失ったのか、居場所はあったのか。それは30を過ぎても足場の定まらない自身への問いかけへと重なってゆき……。北海道と関西の空気を見事に織り込みながら、現代の父と息子の不確かな繋がりをとらえてみせる意欲的な長篇です。
             (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――愛さえなければ、いろんなことが上手くいく。不思議なもので、僕と父は口論ひとつしたことがなかった。

―――つぎはぎだらけの、ちぐはぐな人生を送った男。彼をひとまとめに覚えてやれる人間は、きっともう、息子である自分しかいないのだろう。嫌だろうがなんだろうが、彼がいつか骨になったとく、ナイチ(内地)での彼を筋道立てて覚えていてやれるのは自分しかいない。
 いや息子にだって筋道は立たない。人間なんてそんなものだ。



相克  堂場瞬一

2009-11-09 21:29:44 | 読書メモ 
相克   著者 堂場瞬一

《内容》
捜査一課から失踪課に来た協力要請。情報提供して消えた目撃者捜しだという。筋違いと主張する高城を制し、阿比留は法月と明神に捜査を命じる。時を同じくして、少女が失踪。友人が訴え出るものの、親族以外からの捜索願は受理できない。だが、少女の家族の態度に違和感を感じた高城は、醍醐と共に非公式に調べ始めるが…。
           (紹介文より)

K

骸骨ビルの庭(上) 宮本 輝

2009-11-08 17:58:05 | 読書メモ ま行
骸骨ビルの庭 上    著者 宮本 輝

《内容》
住人たちを立ち退かせるため、八木沢省三郎は管理人として骸骨ビルに着任する。そこは、戦後、二人の青年が子供たちを育てた場所だった。食料にも事欠き、庭で野菜を作りながら、彼らは命を賭して子供たちと生きた。成人してもなおビルに住み続けるかつての子供たちと、老いた育ての親、それぞれの人生の軌跡と断ち切れぬ絆が八木沢の心を動かす。すべての日本人が忘れられない記憶。現代人が失った純粋な生き方が、今、鮮やかに甦る。
        (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――優れた師を持たない人生には無為な徒労が待っている。なぜなら、絶えず揺れ動く我儘で横着で臆病で傲慢な我が心を師とするしかないからだ。


―――世間の愚か者が撒き散らす風評なんて取るに足らないものだとはいっても、そこからは恐い毒が出ているわ。人は嫉妬する生き物なのよ。どこで誰が何を理由に、ひとりの人間に嫉妬の心を抱いているかわかったもんじゃない。人間が抱く嫉妬のなかで最も暗くて陰湿なのは、対象となる人間の正しさや立派さに対してなの。


―――子どもに限らず人間てみんなそうなんだって思うんだけど、こっちの喋りたいことや言い分があるときは、相手の言葉って心に入ってこないのよ。


―――自分と縁する人たちに歓びや幸福をもたらすために生まれてきたのだ、と。


―――そんな自分の思いを他人に上手に説明できるような豊かな言語能力を私は持っていない。だから、もっと大きく行きたかったよいう言葉しか思いつかない。そして、どう生きることが「大きく生きる」ことなのかもわからない。

若竹ざむらい-書き下ろし長編時代小説 芦川 淳一

2009-11-08 15:45:17 | 読書メモ 

若竹ざむらい-書き下ろし長編時代小説  著者 芦川 淳一

《内容》
猪田藩藩士で一刀流の遣い手・俊作はある日、同僚殺害という身に覚えのない罪で藩を追放される。途方に暮れる俊作だったが、ひょんなことから万請け負い業の仕事を手伝うことに。生来おっとりした性格で依頼主には気に入られる俊作だが果たして生きていけるのか?
            (紹介文より)


K


家族の言い訳 森浩美

2009-11-08 15:44:29 | 読書メモ ま行
家族の言い訳   著者 森浩美

《内容》
夫が蒸発した妻、妻に別れを切り出された夫、母に捨てられた息子、死期が迫る母…家族に悩み、家族に喜ぶ。数々のヒット曲であなたを熱くさせた名作詞家がつむぐ、ハートに響く初短編集。
        (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――過ぎてからでは遅い・・・・・・。道を間違ったくらいなら、後でどうにでもなるが、取り返しのつかないこともある。


―――責める気持ちや疑う気持ちはすぐ手の届く棚にあるのに、思いやりや楽しかった記憶は特別な踏み台を使わなければ届かないような棚の上に、いつのまにか追いやってしまっていたのかもしれない。
 なんとも言えない虚しさに襲われ涙が出そうになった。


「おかあちゃんの口紅」泣けてしまいました。


骨の記憶 楡 周平

2009-11-08 15:43:50 | 読書メモ な行
骨の記憶   著者 楡 周平

《内容》
没落した東北の旧家の嫁のもとに届いた宅配便は51年前に失踪した父の頭蓋骨だった。差出人は、中学卒業後、集団就職で町を出てその翌年に火事に遭って死んだはずの同級生。いったい誰が、何のために―。隠されていた過去が、昭和の記憶とともに今、明らかになる。人生の光と影を余すところなく描いた力作長篇。
              (紹介文より)

☆☆☆☆
―――人の一生とは必ずや帳尻が合うものでなければ、それこそ不公平というものだ。

殺気! 雫井 脩介

2009-11-08 15:43:34 | 読書メモ さ行
殺気!    著者 雫井 脩介

《内容》
大学生のましろは、12歳のとき、何者かに拉致、監禁された経験があった。無事に保護されたが、犯人は不明のままだ。今、当時の記憶はない。というのも、ひどいPTSDを抱えたため、催眠療法を受け、その出来事を頭に封じ込めてしまったからだった。そのためか、ましろには特異な能力があった。防御本能が極端に強く、周囲の「殺気」を敏感に感じ取ってしまうのだ。ましろの不思議な力に興味を持ったタウン誌記者の次美は、彼女の過去を調べ始める。やがて、拉致・監禁の真相が明らかになるとき、新たに恐るべき事件が…。
        (紹介文より)