( 大島の中津宮 )
報道されているように、ユネスコの諮問機関イコモスが、玄界灘の孤島・沖ノ島を世界文化遺産に登録するよう勧告しました。
( 宗像大社のパンフレットから )
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この報道を見て、私のブログ「玄界灘に古代の日本をたずねる旅」を読み返していただいた方もいらっしゃるようで、うれしい限りです。
このときの私の旅のメインテーマは、もうすぐ世界文化遺産に認定されるであろう宗像大社に参拝することでした。
その紀行のなかで、「海の正倉院」と言われる沖ノ島で行われてきた祭祀のことや、海人族・宗像氏にかかわる歴史についても書いています。
カテゴリー「国内旅行 … 玄界灘の旅」 の11、12、13です。
(11) 「いよいよ宗像大社へ、辺津宮に参拝する」 ( 2016、7、21 )
(12) 「『海の正倉院』と言われた沖ノ島の信仰」 (2016、7、27 )
(13) 「大島に渡り、中津宮に参拝する」 (2016、7、31 )
興味のある方は、ご一読ください。
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ただ、この勧告には問題があります。
日本からユネスコに推薦していたのは 「『神宿る島』 宗像・沖ノ島と関連遺産群」 でした。しかし、今回の勧告では、「『神宿る島』 宗像・沖ノ島」 が、「『神宿る島』 沖ノ島」と呼称を改めるように言われ、また、「関連遺産群」は除外されました。
「関連遺産群」とは、
〇 宗像三女神を祀る神社のうち、沖ノ島の沖津宮以外の2社。即ち、九州本土にある辺津 (ヘツ) 宮 と、本土から11㌔沖合の大島に祀られる中津宮。
〇 その大島の北岸にある沖津宮遥拝所。
〇 本土の海岸沿いにあり、祭祀を担った古代豪族 (海人族) ・ 宗像氏の墳墓とされる古墳群です。
結果的には、宗像三女神のうちの一女神しか認められなかったのですから、気持ちはすっきりしません。
「沖ノ島」 だけの認定なら、いっそう断ったらどうか、という意見もあります。
しかも、認められた 『神宿る島』 沖ノ島」は、今も、「女人禁制」 「入ることができるのは1年に1回のみ。しかも人数は制限され、神官とともに海でみそぎをし、行動を共にしなければならない」 「島で見聞きしたことは一切口外してはならない」 「一木一草一石たりとも、持ち出してはならない」 といった、古来からの掟が守られている島です。だからこそ、今も 『神宿る島』 なのです。
一般人が一切立ち入ることができない「沖ノ島」だけが認められ、「関連遺産群」が認められなければ、観光には縁がないことになります。地元は全くうるおいません。
そればかりでなく、「沖ノ島」が世界遺産となり、国内外に広く知れ渡るようになれば、悪意をもって「掟」を破り、上陸しようとする輩も出てくる可能性があります。「女人禁制」に反発して突入してくる連中もいるかもしれません。貴重な遺跡を傷つけ、汚し、盗む輩もいるかもしれません。そういう不届き者をどう排除するか、そういう対策も必要になってきます。
さらに、イコモスは、将来、今、世界的なブームになっている大型クルーズ船がやってきて、接岸し、観光客が大挙して上陸することへの懸念さえ表明しています。
現状では、それらに対する対策や負担は、島の所有者である宗像神社が受けて立たなければならなくなります。一神社に背負いきれるものではありません。
もう一つ、イコモスは重要な危惧を表明しています。
周辺海域で、将来、風力発電施設を建設する懸念はないのか、というのです。この島にとって、景観上の問題となる風力発電施設の建設は、将来にわたって禁止する措置を、イコモスは期待し、勧告しています。
2千年の歴史をもち、今も大切にされている、日本人の信仰の地の全体を、ユネスコが認めてほしいと、私も願います。
と同時に、必要な法整備や、財政的援助や、美しい日本の景観を守るという断固とした意志の表明を、国も、県も、行うべきだろうと思います。
例えば、富士山。富士山は、ディズニーランドではありません。山です。山は、押し寄せる観光客の出すゴミや糞尿を処理できないし、景観を破壊している土産店や旅館を規制できません。目の前に存在する醜いものを見なかったことにして、「美しい山ですねえ」と言う。それは、偽善です。
私権を尊重することは大切ですが、歴史的文化遺産や、景観や、美しい自然 ── 過去から未来に向かって存続させなければいけない公共の財産 ── を、時には私権を超えて、国や自治体が断固として守る、そういうことも必要だと思います。日本は、そういう点が、かなり弱いと思います。
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メンテナンス。
今回は、カテゴリー 「西欧旅行 … 街並み」の2編と、「西欧旅行 … 遥けきウィーン」の3編を更新しました。写真が入って、綺麗になりました。
1 「西欧旅行 … 『パリの街並み』考」
(1) 「文化は、街並み」 (2012、10、25)
(2) 「日本の景観には日本の心」 (2012、10、26)
2 「西欧旅行 … 遥けきウィーン」
(1) 「ローマ第13軍団のウィーン」(2012、11、15)
(2) 「オスマン帝国によるウィーン包囲」(2012、11、23)
(3) 「『第三の男』のウィーン」(2012、12、1)
の、計5編です。