「ドナウ川の白い雲」 も 61号になりました。このところ途絶えがちですが、まだまだがんばりますので、よろしくお願いします。
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BS・NHK・日曜日放映『為末大が読み解く! 勝利へのセオリー』が、面白い。
先日は、「静かなる知将」のサブタイトルで、卓球女子の全日本監督、村上恭和 にインタビュー。
卓球女子は、ロンドンオリンピックで団体銀メダルを獲得した。福原愛、石川佳純、平野早矢香が輝いていた。
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「どの国の代表チームにも勝てるチームを目指す、とか、バランスの取れた成長をしよう、とか、そういうのは、実は、『戦略の欠如』なんです」。
「ロンドンオリンピックの前、日本は、世界の中でランキング5位でした。中国は圧倒的に強い。2位はシンガポール。 メダルを取るため、3位の韓国に的を絞りました」。
「韓国は、カットのチームです。韓国の粘り強いカット打ちに、日本はずっとやられてきました。 日本の選手は、カット打ちに弱い。それで、カット打ちの選手を集めて練習相手にし、徹底的に練習しました」。
「やがて、国際大会で、カット打ちの選手に競り勝てるようになりました。オリンピックで韓国とは当たりませんでしたけどね」。
選手たちが練習している間の村上監督を、カメラが追う。
村上監督は、いつも、竿のついた網をもって、卓球台の間をうろうろと歩き回り、床に転がっているピンポン玉をひたすら集める。「ピンポン玉が床に転がっていたら、危ないですからね」「それに、こうやって監督がうろうろしていたら、選手は緊張して練習するでしょう」。
どう見ても、風采が上がらない。 田舎の朴訥なおじさん。
‥‥ 為末が聞く。「監督は、練習中、選手に指示を出したり、注意したりしないんですか?」
「私は基本方針を出すだけです。個々の選手の所属チームのコーチを参加させているので、彼らが必要な指示や注意はします」。
「私は、『考えるのは、監督』── では、ダメ だと考えています。少なくとも 卓球では、選手自身が自分の頭で考え、自分で行動しなければいけない。そういうスポーツだと思っています」。
「今日一日の練習で何をするかも、今日は練習するか、それとも一日、買い物や洗濯の時間に当てるかも、全て選手が決めています」。
「ここに来ている選手は、日本のトップの選手です。 卓球を極めたいと思って、参加しているのです。そういう選手に、ああせよ、こうせよと言えませんよ」。
「試合の極点で、いつも、『 監督!指示 ( 命令 ) してください』 というような選手は、絶対に勝てません」。
「選手は、ぎりぎりのところでアドバイスを求めてくる。 私は、アドバイスを出す。それは、あくまで参考意見です。それを採用するかどうか、それは選手自身です」。
平野早矢香曰く、「村上監督は、選手たちが最高にやりやすい環境を作ってくれます。例えば、私たちの練習相手にカット打ちの選手を集めてくれたり、強い中国選手を呼んでくれたり‥‥」。
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「バランスよく成長しようというのは、戦略がないのと同じだ 」。
「『考えるのは、監督 』では、ダメなんです 」。
「ここに来ているのは、卓球を極めたいという選手たちだ。そういう選手に、ああせよ、こうせよと、言えない」。
「試合のぎりぎりの場面で、『 監督、命令してください 』というような選手は、勝てない。監督の言うことは参考意見。決めるのはあくまで選手自身だ 」。
「選手たちがやりやすい環境と条件を整えてくれる監督です 」。
…… 全日本女子柔道の監督・コーチは、多種目の優れた監督・コーチの話を聞きに行くべきだ、と思った。