◆米国オバマ次期大統領が、来年1月20日の正式就任をめざして、閣僚やスタッフの人選を進めている。大統領首席補佐官にラーム・エマニュエル下院議員が内定していると言われている。次の最大の目玉は、国務長官と財務長官である。
◆国務長官には、オバマ次期大統領と民主党の大統領候補指名選挙を戦ったヒラリー・クリントン上院議員の名前が浮上している。ヒラリー氏は、「要請を受けた」とも「受けていない」とも明言していないけれど、ヒラリー国務長官が実現した場合、米国のアフガニスタン介入は、いま以上に強烈になり、日本の軍事協力の要請がかなり強いものになる可能性が大である。それは、アメリカ主導のイラク戦争が、今日のような事実上、「アメリカの敗北」による泥沼化を招いた元凶が、クリントン政権末期の対アフガニスタン政策に根ざしていたからである。当時のアフガニスタン政権は、アメリカが現在、目の仇にしている「タリバン」が担っていた。アフガニスタン国土の3分の2をタリバンが実効支配し、クリントン政権も承認していたにもかかわらず、1997年秋、手のひらを翻すように態度を豹変させ、「タリバン政権を承認しない」と突如宣言し、絶縁状を叩きつけたのであった。
このときの国務長官が、マドレーン・オルブライト女史(国連大使から抜擢)であった。英国のサッチャー元首相に負けるとも劣らない「鉄の女」と呼ばれて、豪胆な「攻めの人権外交」を展開していた。その過程で、「人権擁護」を提唱する女性団体が「石油のために女性や子供を犠牲にするな」と書いたプラカードを掲げて、タリバンを支持するクリントン政権に対して抗議デモを繰り広げていた。これに賛同したのが、オルブライト国務長官であり、大学の同窓生であるヒラリー夫人までもが、クリントン政権に批判的であった。
クリントン大統領は、この2人の「猛女」の意見に圧倒されて、決して「反米」ではなかったタリバン政権を敵視する外交に転じた。この外交政策をブッシュ政権も引き継ぎ、タリバンを「9.11」事件の犯行グループの仲間と看做し、米英連合軍の「アフガニスタン空爆」へと突入して行ったのであった。〔このあたりの経緯は、拙著「ブッシュの陰謀」KKベストセラーズ刊、2002年2月)〕に詳述しているので参照されたい。
◆結論だけを先に述べておこう。アメリカを主力とするアフガニスタン派遣軍が、「テロとの闘い」という大義名分を掲げて展開しているタリバンとアルカイダ掃討作戦は、絶対に成功しない。これは断言してもよい。標高3000メートル以上の山岳がそそり立つアフガニスタンに放り込まれた兵士の多くは、高山病にかかり、先祖伝来、山岳地帯に慣れ親しんできたアフガニスタンの勇者たちに太刀打ちできるはずはなく、これからも決して勝つことはできない。これは、過去にアフガニスタン侵略を試みた外国軍が、その目的を完遂することができなかったという歴史が証明している。
まず、大英帝国が、三度失敗している。
【第1次アフガン戦争】(1838年~42年)―英国軍は手痛い失敗。
【第2次アフガン戦争】(1878年~80年)―保護国にするのが精一杯。植民地にはできず。
【第3次アフガン戦争】(1919年)―――――第1次世界大戦で、大英帝国が疲弊していたためアフガンを占領できず、逆に独立に至る。
次に、ソ連は、2度侵攻するも、「10年戦争」の末、撃退されている。
【1回目のソ連軍侵攻】(1978年4月)ソ連軍及び工作員がダウド大統領、政権担当者、その家族3000人を虐殺。
【2回目のソ連軍侵攻】(1979年12月27日~89年)ロボット政権を樹立するも米国CIAの支援を受けたムジャヒディン(聖戦士)の猛烈なゲリラ攻撃による甚大な損害を受けて撤退。
さらに、米英連合軍の「空爆」も、事実上、大失敗している。
【米英連合軍によるアフガニスタン戦争】(2001年10月7日~現在に至る)親米政権を樹立するも、再びタリバンが勢力を増大、新米政権は統治能力を喪失しつつあり、戦線は、国境を越えてパキスタンに拡大。
◆オバマ次期大統領は、正式就任後直ぐに日本政府に対して「イラクからアフガニスタンへ兵力をシフト」する一環として陸上自衛隊派遣を強要してくる形勢にある」と伝えられている。その際、麻生太郎首相や浜田靖一防衛相が、どう対応するのかが、注目される。しかし、「文民統制」の名の下で、これを悪用して自衛官を「死地」である「戦地・アフガニスタン」に送ってはならない。本来、違憲の存在であり、私生児的でもある自衛隊は、正式な軍隊ではないのであるから、日本国憲法を盾に、海外派遣の要請をきっぱり断るべきである。
戦地に送り込まれるべきは、国連安保理常任理事国として世界の安全保障に最も責任のあるアメリカ、英国、フランス、ロシア、中国が、きちんと若き兵隊を派遣して、世界秩序を維持すべきである。
これは、「テロとの闘い」ではなく、「テロを戦術とするタリバンやアルカイダとのレッキとしたアフガニスタン戦争」であることを明確に自覚する必要がある。日本は、インド洋上から、遠くアフガニスタンを眺めていればよいのである。
板垣英憲マスコミ事務所
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◆国務長官には、オバマ次期大統領と民主党の大統領候補指名選挙を戦ったヒラリー・クリントン上院議員の名前が浮上している。ヒラリー氏は、「要請を受けた」とも「受けていない」とも明言していないけれど、ヒラリー国務長官が実現した場合、米国のアフガニスタン介入は、いま以上に強烈になり、日本の軍事協力の要請がかなり強いものになる可能性が大である。それは、アメリカ主導のイラク戦争が、今日のような事実上、「アメリカの敗北」による泥沼化を招いた元凶が、クリントン政権末期の対アフガニスタン政策に根ざしていたからである。当時のアフガニスタン政権は、アメリカが現在、目の仇にしている「タリバン」が担っていた。アフガニスタン国土の3分の2をタリバンが実効支配し、クリントン政権も承認していたにもかかわらず、1997年秋、手のひらを翻すように態度を豹変させ、「タリバン政権を承認しない」と突如宣言し、絶縁状を叩きつけたのであった。
このときの国務長官が、マドレーン・オルブライト女史(国連大使から抜擢)であった。英国のサッチャー元首相に負けるとも劣らない「鉄の女」と呼ばれて、豪胆な「攻めの人権外交」を展開していた。その過程で、「人権擁護」を提唱する女性団体が「石油のために女性や子供を犠牲にするな」と書いたプラカードを掲げて、タリバンを支持するクリントン政権に対して抗議デモを繰り広げていた。これに賛同したのが、オルブライト国務長官であり、大学の同窓生であるヒラリー夫人までもが、クリントン政権に批判的であった。
クリントン大統領は、この2人の「猛女」の意見に圧倒されて、決して「反米」ではなかったタリバン政権を敵視する外交に転じた。この外交政策をブッシュ政権も引き継ぎ、タリバンを「9.11」事件の犯行グループの仲間と看做し、米英連合軍の「アフガニスタン空爆」へと突入して行ったのであった。〔このあたりの経緯は、拙著「ブッシュの陰謀」KKベストセラーズ刊、2002年2月)〕に詳述しているので参照されたい。
◆結論だけを先に述べておこう。アメリカを主力とするアフガニスタン派遣軍が、「テロとの闘い」という大義名分を掲げて展開しているタリバンとアルカイダ掃討作戦は、絶対に成功しない。これは断言してもよい。標高3000メートル以上の山岳がそそり立つアフガニスタンに放り込まれた兵士の多くは、高山病にかかり、先祖伝来、山岳地帯に慣れ親しんできたアフガニスタンの勇者たちに太刀打ちできるはずはなく、これからも決して勝つことはできない。これは、過去にアフガニスタン侵略を試みた外国軍が、その目的を完遂することができなかったという歴史が証明している。
まず、大英帝国が、三度失敗している。
【第1次アフガン戦争】(1838年~42年)―英国軍は手痛い失敗。
【第2次アフガン戦争】(1878年~80年)―保護国にするのが精一杯。植民地にはできず。
【第3次アフガン戦争】(1919年)―――――第1次世界大戦で、大英帝国が疲弊していたためアフガンを占領できず、逆に独立に至る。
次に、ソ連は、2度侵攻するも、「10年戦争」の末、撃退されている。
【1回目のソ連軍侵攻】(1978年4月)ソ連軍及び工作員がダウド大統領、政権担当者、その家族3000人を虐殺。
【2回目のソ連軍侵攻】(1979年12月27日~89年)ロボット政権を樹立するも米国CIAの支援を受けたムジャヒディン(聖戦士)の猛烈なゲリラ攻撃による甚大な損害を受けて撤退。
さらに、米英連合軍の「空爆」も、事実上、大失敗している。
【米英連合軍によるアフガニスタン戦争】(2001年10月7日~現在に至る)親米政権を樹立するも、再びタリバンが勢力を増大、新米政権は統治能力を喪失しつつあり、戦線は、国境を越えてパキスタンに拡大。
◆オバマ次期大統領は、正式就任後直ぐに日本政府に対して「イラクからアフガニスタンへ兵力をシフト」する一環として陸上自衛隊派遣を強要してくる形勢にある」と伝えられている。その際、麻生太郎首相や浜田靖一防衛相が、どう対応するのかが、注目される。しかし、「文民統制」の名の下で、これを悪用して自衛官を「死地」である「戦地・アフガニスタン」に送ってはならない。本来、違憲の存在であり、私生児的でもある自衛隊は、正式な軍隊ではないのであるから、日本国憲法を盾に、海外派遣の要請をきっぱり断るべきである。
戦地に送り込まれるべきは、国連安保理常任理事国として世界の安全保障に最も責任のあるアメリカ、英国、フランス、ロシア、中国が、きちんと若き兵隊を派遣して、世界秩序を維持すべきである。
これは、「テロとの闘い」ではなく、「テロを戦術とするタリバンやアルカイダとのレッキとしたアフガニスタン戦争」であることを明確に自覚する必要がある。日本は、インド洋上から、遠くアフガニスタンを眺めていればよいのである。
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