「テルアビブの風」 アドレナリン逆流・・・
古典機やW.W.1機を作る上でどうしても必要になるスポーク・ホィール、今回はエンリケ・マルツさんが製作したホィールを紹介します。彼は数年前からこのプロジェクトを立ち上げ、数多くの試作を繰り返して来ました。送られてくる写真を見るとその完成度は日増しに良くなって行き、近い将来いやもう既に完成の域に達しているのかもしれません。
過去にマスプロダクションでは数種類の完成ホィールを購入することが出来ましたが、その中でも秀逸なのはフルトン・ハンガーフォード製で、出来映えや強度や重量などどれをとっても素晴らしいものでした。製品としては既に絶版となってしまったのですが、そのホィールの出来映えを目標に少しでも軽くすること、そして好みのサイズを作ることが彼の情熱をかき立てた様で、最終形となって出来上がったホィールは製品価値としても十分通用するものに仕上がっています。
軽量化した場合には当然その強度が問題となってきます。ステンレスやピアノ線のスポークを使うラジコン機に使われるような製品を除き、強度を保持するにはタイヤとリム部分の素材に関わって来ます。この部分にレジンを使い表面の仕上げを完璧なものにしたセーヤーさんのホィールは一時期ペック・ポリマー社から販売されていました。恐らくこれは製品としての完成度では一番だったと思います。しかしレジンの変形や重量の問題、そして製作にかなりの時間が必要となりセーヤーさん本人ともお話ししましたが、バックヤードで数種類のサイズを大量生産をするには大変な作業で残念ながら製作を中止されてしまいました。
その後タイヤとリムの部分にハンガーフォード製と同じバルサを使ったアラン・コーヘンさんのホィールが発売されています。このホィールも完成度は高く、現在も塗装前の生地完製品と完成品が販売されています。バルサを使った場合、どうしても表面仕上げの行程で作業が難しく、またバルサ素材の均一性が保てないので強度や重量のバラツキが出てしまいます。
そこでエンリケさんはこの部分に軽量な発泡スチレンシートを使い、ギリギリの強度を保って軽くすることが出来ないか試作が始まりました。
最初目にした塗装前のホィールは驚くほど軽く仕上がっていましたが、少しばかりひ弱な感じがしました。しかし軽量機に使用するのであれば必要かつ充分な強度であること、そして塗装の問題をクリアーすればハンガーフォード製の約半分の重さのホィールを作ることが出来るという事実でした。飛行性能にはまったく寄与しない、どちらかといえば足を引っ張るスケール機のタイヤなんて少しでも軽いに越したことはありませんから、これを使わない理由もありません。
「このホィール、きっと欲しがる人がいると思うよ。いっぱい作って売り出したら?」
「ボクが作るからキミが売れ!」
しかしですね、このホィールだって1ペアー作るのにかなりの労力と時間が必要な事はわかっていますよ、僕達にそんな時間がありますかネ?
私が悩んでいた黒と銀色の塗り分けを彼は驚くトリックで解決しました!
おめでとうエンリケさん・・・おひとつ下さい!