Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

Intensivist第3号 特集AKI、お待たせしました 7月30日発行です

2009-07-23 23:53:54 | 集中治療
ご存知のようにAKI(急性腎傷害)は集中治療のメジャー部門のひとつです。

“AKIの集中治療といっても、所詮、尿が出なけりゃヴォリュームいれて利尿剤使ってだめなら血液浄化だけじゃないですか”という誤解を解きたい、血液浄化以前に知っておくべきこと、やっておくべきことをきっちり整理しておく必要性がある、と常々感じていました。そこで、第3号ではあえて“AKIの血液浄化以前”を特集しました。

そのような背景から、恐らく多くの方がもっているだろうと思われるAKIの常識を壊してみたいという悪戯心が見え隠れする内容になったと思います。“脱水でなぜBUNが上昇するか”、“なぜ乏尿は400ml/min以下なのか”、“BUN(尿素)は尿毒症物質ではなくそのマーカーである”、“尿素は細胞内外の浸透圧差を生じさせない”、“AKIにおけるGFRと血清クレアチニンの推移の時間的ズレ”、“FENaの常識”、“敗血症性AKIでは腎血流が低下していない。輸出細動脈の拡張がGFR低下の一因”、“ノルアドレナリンは腎臓に悪くない”、“Renalism、すなわち造影剤、バンコマイシンなどの抗菌薬の腎毒性に対する過剰な心配により患者が必要な検査、治療を受けていないのではないか、という批判”、“尿量低下 ≠ 腎機能悪化”、“薬物的にAKIに対して有効であると確定しているものはない”、“腎機能低下があっても初期投与量は減量しない”など、臨床の珠玉の名言(clinical pearls)がちりばめられています。

読んだ翌日に同僚、先輩、後輩に、“◯◯ってほんとうはXXなんだそうですよ”と自慢できるような知識が得られること請け合いです。一般病棟や救急外来に勤務する先生方に是非読んでいただきたい内容になったと自負します。また厚くなっちゃいましたが。夏休みのお供に是非どうぞ。

この場を借りて、企画・編集・執筆で大活躍された柴垣有吾先生(聖マリアンナ医大腎高血圧内科)、内野滋彦先生(慈恵医大集中治療部)、レヴューをしていただいた先生方(特集の中で謝辞を述べさせていただきました)、編集部の方々に深く感謝いたします。

ちなみにAKI血液浄化以後は来年でます。乞うご期待。

讃井將満


以下内容です。

特集:AKI
1. 急性腎不全とは: 急性腎不全 ARF/急性腎傷害AKIの全体像を捉える
柴垣 有吾 聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科
2. 新しいAKIの概念とその診断基準
内野 滋彦 東京慈恵会医科大学 麻酔科・集中治療部
3. 病態生理
(1)病理組織からみたAKI: 組織構築と機能および病態別各論
原 重雄・伊藤 智雄 神戸大学医学部附属病院 病理診断科
(2)細胞レベルからみたAKI: 虚血性AKIを中心に
土井 研人 東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科・血液浄化療法部
(3)humoral mediatorからみたAKI: ベンチからベッドへのトランスレーション
安田 日出夫 浜松医科大学 第一内科
【コラム】AKIの病態生理: 急性尿細管壊死と腎前性腎不全という言葉の意義
内野 滋彦
4. AKIの診断・検査: その常識にチャレンジする
(1)病歴と身体所見: 病歴聴取のポイントと原因特定につながる重要な身体所見
谷澤 雅彦・柴垣 有吾 聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科
(2)一般検査: 各種マーカーの見かたと尿検査の適切な使い方
河原崎 宏雄 東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科
柴垣 有吾
(3)バイオマーカー: 新規バイオマーカーの有効性と妥当性
松井 勝臣・池森 敦子・木村 健二郎 聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科
5. AKIの予防,治療,管理
(1) 一般的予防策,初期治療: AKI患者を診る腎臓内科医は何を考えているのか?
赤井 靖宏 奈良県立医科大学 卒後臨床研修センター
(2) フロセミドとアルブミン: 利尿薬,アルブミンの使用は予後を改善するのか?
相馬 友和 東北大学大学院 腎高血圧内分泌学分野・医化学分野
(3) 血管作動薬: ドパミン,ノルアドレナリン,バソプレッシンの腎臓への影響を考える
森松 博史 岡山大学病院 集中治療部
(4) 栄養管理: AKI患者の代謝異常を考えての栄養管理の実際
庄野 敦子 島根大学医学部附属病院 集中治療部
橋本 圭司 松江赤十字病院 麻酔科・集中治療室
【コラム】電解質(カルシウム,マグネシウム,リン)異常の原因,症状: なぜ補正が必要か,補正法について
井澤 純一 沖縄県立八重山病院 内科
金城 紀与史 沖縄県立中部病院 総合内科
【コラム】陽圧換気と腎機能
福永 真由子 Beth Israel Medical Center 呼吸集中治療科
6. AKI各論
(1)急性腎傷害(AKI)の保存的診療: 造影剤腎症
笠原 正登 京都大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科/先端医療センター 腎臓・血液浄化領域グループ
植田 浩司 先端医療センター 腎臓・血液浄化領域グループ
向山 政志 京都大学大学院医学研究科 内分泌・代謝内科
【コラム】メタ解析にみる造影剤腎症の予防
内野 滋彦
(2)腹部コンパートメント症候群(ACS)とAKI: ACSとIAHの定義から診断,予後管理まで
若竹 春明・藤谷 茂樹 聖マリアンナ医科大学 救急医学
(3)周術期AKI: そのリスクファクター,誘因,予防,治療
宮田 和人 東京医科大学病院 麻酔科学教室
讃井 將満 自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
(4)septic AKI: 新しいコンセプトと推奨される治療戦略
江木 盛時 岡山大学医学部 麻酔・蘇生学 集中治療部
【コラム】心腎症候群 Cardio-renal syndrome
小松 康宏 聖路加国際病院 腎臓内科
7. 薬物と腎臓
(1)薬物と腎不全:基礎編
櫻井 裕之 杏林大学医学部 薬理学教室
(2)腎不全時の薬物投与の実践的知識
平田 純生 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・臨床薬理学分野
8. Acute Kidney Injury and Japanese Intensive Care
Rinaldo Bellomo Department of Intensive Cere, Austin Health, Melbourne, Australia
9.「特集 AKI」解説
(1)真の集中治療医と腎臓内科医のcollaborationによる専門性を超えた知識の再確認を
柴垣 有吾
(2)血液浄化を行う前に集中治療医として知っておくべきAKIの常識
讃井 將満

連載
■ 集中治療に役立つ内科ベッドサイド診断学(米国内科専門医の内科診断学)
第2回: EBMを実践しよう: 治療の論文の読み方〔パート 1〕
平岡 栄治 神戸大学医学部附属病院 総合診療部
■ 集中治療医のための基礎医学 101
第2回: 役立つ呼吸生理(続)
八重樫 牧人 亀田総合病院 総合診療・感染症科
■ 八雲立つ不思議の国な,ICU
第3回: 「そうかもしれないけど…」と立ち止まってみること
橋本 圭司
■ 集中治療室目安箱: ナース/ME,私の言い分
第3回: 集中ケア認定看護師について: 高度医療が求められるICUのケアと教育のスペシャリスト
中川 温美 自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部
■ ICUフェローからのメッセージ
③: Surviving Sepsis Campaign Guidelinesは“余計なお世話”なのか?: ガイドラインとの付き合い方がわかった3年間のオーストラリアICU留学
川崎 達也 静岡県立こども病院 小児集中治療科
④: アメリカ臨床トレーニング雑感: 西と東と,酸味と甘味
齋藤 雄司 University of California, San Diego(UCSD) 循環器科 臨床心臓電気生理フェロー
■ M&Mケースファイル
第3回: 入浴中に意識障害で発見された重症肺炎の死亡症例
JSEPTIC(日本集中治療教育研究会)
■ JSEPTIC(日本集中治療教育研究会)世話人座談会: 集中治療医育成プログラムの新たな試み
藤谷 茂樹 聖マリアンナ医科大学 救急医学
讃井 將満 自治医科大学さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
松浦 謙二 沖縄県立八重山病院 外科
橋本 圭司 松江赤十字病院 麻酔科・集中治療室
植田 育也 静岡県立こども病院 小児集中治療センター
林 淑朗 University of Queensland Centre for Clinical Research
■ 集中治療に関する最新厳選20論文
柴田 純平 信州大学医学部 麻酔蘇生学
藤谷 茂樹

◎ 日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)
第2回FCCS体験記
(1) つらくはあったが,患者理解が深まった充実の2日間
冨田 敦子 仙台市立病院救命救急センター 看護師
(2)ICUで働くスタッフの共通言語,それがFCCS
中川 富美子 日本大学医学部附属板橋病院 臨床工学技士室